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石川先生の2.5GHz最強説についてツイートで軽く補足しようかと思っていたのですが、案外長くなりそうなので記事を一つ起こすことにしました。

さて、記事では「2.5GHzを先んじてゲットしたKDDI/SBMがそれを良く活用しており、2.5GHz帯の世界的エコシステムも整ってきたから最強のバンドなのかも」という感じの説が展開されています。これに関しては私は全く否定するところはないですし、以前私が「ドコモがなぜ品質が悪いのかのデータ見ちゃった」とつぶやいたのもこの件です。

ただ、私がそのデータを見たとき、もう一つ重要な背景が含まれてる、と感じたので、補足というか補強というか、そういう説明を改めてしておきたいと思うのです。単にいい感じの周波数ですよ、というだけではないのです。あくまでこれは私の仮説なので、これが正しいを言い張るつもりはありませんが。

さて、世の中、低い周波数と高い周波数というのがざっくりとあります。2.5GHzというのはちょうどその中間くらいではあるんですが、おおよそ、2GHz以下は低い周波数、それ以上は高い部類、くらいに考えておきます。で、高い周波数は飛びにくい、ちょっとした遮蔽でも止まっちゃう、という話はあまりに有名すぎる話なので理屈は省略しますが、とにかくそういう性質があるので、逆に、高い周波数はそもそも小さなセルになるように設計します。

こんな感じで、低い周波数で広いエリアを実現し、高い周波数をその上に重ねて通信容量を稼ぎます。基本的に携帯電話のエリア設計はこの応用で、東京都心部なんてのはすさまじい数の周波数が飛んでいますが、ど田舎のへき地ではいわゆるプラチナバンドしか飛んでない、なんてことになっているのが普通です。また、キャリアアグリゲーションなどの技術が向上したので、低い周波数を使いながら高い周波数をサブにくっつけて高速通信することもできるようになっていますので、割と柔軟に「ここは使う人多くて品質下がって来たあな、よし、周波数足したろ!」みたいな感じで品質向上施策を打つことができるようになっています。

また、これも原則論として「高い周波数は帯域幅も広いので容量もめっちゃ大きい」というのがあります。というのも含め、「容量が厳しくないところは低い周波数だけで効率よくカバーしつつ、使う人が多いところは大容量の高い周波数をガツンと置く」という戦略が成り立つわけです。

では、こんなエリアの中を端末が移動していくとどうなるか。

こんな感じで、低い周波数はべったりと塗ってあるけど高い周波数は飛び飛び、みたいになっている場合です。

こんな風に、「容量の大きい高い周波数が見えたらそっちに飛び乗って、見えなくなったら飛び降りる」という動きをするでしょうか。実際にはそういうことをする場合というのは結構レアです。

一つ目の切実な理由が、「飛び乗ったり飛び降りたりする」というのは「周波数間リセレクション」「周波数間ハンドオーバ」という動作になってしまうため、周波数サーチのために結構時間がかかるということに加え、ハンドオーバはまだしも、リセレクションの場合は「本来必要のなかった制御チャネルの通信が発生してしまう」という問題が出てきます。LTEといえど制御チャネルとデータチャネルは分かれていて、制御チャネルは容量を増加させるための各種技術がほとんど使えません。つまり、制御チャネルは容量が小さい。データチャネルを削って容量を増やすこともできますが、制御チャネルの容量を1ビット増やすためにデータチャネル容量を5ビット削る、みたいな無駄が生じます。ということで、エリアを設計するとき、特に「どの周波数帯で待ち受けするか」という設計では、こういった無駄を減らすためになるべく一続きの周波数に居続けるような設計をすることになります。

もう一つの理由は、そもそもキャリアアグリゲーションで高い周波数を後から足せるので、無理に高い周波数に飛び乗る必要はない、ということです。キャリアアグリゲーションという強力な武器があるのに周波数間リセレクションなんていう無駄なことをする必要はないよね、という話ですね。

ということで、ドコモのエリアはこのセオリー通りのエリアになっているようです。端的に言うと「高い周波数で待ち受けしない」というポリシー。で、この「待ち受け周波数」というのは、データ通信を始めようとした最初の瞬間に接続されるファーストステップの周波数であり、データ多いからキャリアアグリゲーションで周波数足すか、という判断がされるまでの間のつなぎで使われる周波数でもあります。

だんだん見えてきましたね。そうなんです。ドコモは、800MHz帯や1.7GHz帯という低めの周波数になるべく滞在するようになっているため、大概の人が最初の通信をその辺の周波数で始めてしまいます。当然、最初のちょっとの間だけとはいえ、ユーザ数が多ければバカになりません。通信のしはじめでやたらパケットが止まるのはおおよそコレ。

加えて、5G対応端末であればすぐに5G周波数を足してあげようという動作もしようとします。この5Gがまた曲者なんです。もうお分かりかと思いますが、5G周波数は高い周波数で、上の図のように飛び石エリアになってるんですね。しかし、低い周波数のセルは「このセルは対応する5Gのセルがあるよ」という情報しか持ってないので、端末に5Gが実際に見えるかどうかサーチさせて5Gを足す動作を判断します。サーチする、飛び石の端っこが見える、見えるから足したろ、5G足したんだからデータは全部そっちに流したろ、足してみたら結構品質悪くて全然データ流れんやん、というのがパケ止まりの正体。何しろ飛び石がダメなんです。

その理屈だったら、KDDIもSBMも同じでしょ? という話になるんですよね。ここで、件の2.5GHzが登場します。実際の2.5GHzはですねえ、だいたい、こんな感じになってます。

みっちり。

で、ここからが2.5GHz独特の特徴なんですが、えーと、2.5GHz帯は、携帯電話ではありません。WiMAXとかXGPとか言ってたアレ、すなわち、「BWA(ブロードバンドワイヤレスアクセス)」という携帯電話とは別のシステムなんです(法的には)。そして、建前上、BWAはそれ単体でサービスを提供できなければなりません。また、BWAは「時速○○kmの移動でもちゃんと使えるよ」という宣言を最初にしています(細かい数字忘れちゃった)。そういう約束で周波数をもらってるんですね。つまり、BWAはBWAだけできちんと高速移動を担保できる連続したエリアを作らなければならなかったという事情があったんです。当然、BWAバンドでの待ち受けも必須要件です。このためにUQとかWCPとかはめちゃくちゃ汗かいてるはずなんです。

さらにここに5G事情の後押しが入ります。5GはBWAとはまた別の話じゃん、と思われるわけですが、一方、5Gのエリア構築を進めるときに、5Gのためだけに電波塔を建てるか? という話です。いや、電波塔とは言っても都市部ではビルの屋上の間借りとかではあるんですが、そういう場所を新しく準備するには、大都市中心部のビル屋上は枯渇しすぎ。ということで、KDDIとSBMがとった手段は、BWAの基地局が置いてあるところを使っちゃおう、というアイデア。で、「高めの周波数は飛ばないのであえてセルを小さめに設計する」というのがここで活きます。あえて小さく設計したセルは、BWAより高めの5G周波数にもマッチするんです。つまり、5Gでもみっちりカバーができるんです。だから、飛び石の端っこをつかんでパケ止まり、ということが起こりにくい。5Gの大容量を効率よく使える。2.5GHz自体の容量は大した問題ではなく、その場所に5Gの超大容量周波数をみっちり展開できた、これがKDDI、SBMの品質が良い理由なんです。

そして最後の決め手は、端的に言えば各社のポリシーの問題。「連続的にみっちり確保できないのであればできるだけ低い周波数だけで待ち受けさせよう」というドコモに対し、KDDI、SBMは「高いところもみっちり確保できる前提で高い周波数で待ち受けさせよう」になってるんじゃないかと思うわけです。なので、高い周波数や5Gを足すという動作を省けるし、低い周波数がファーストステップ通信でつぶされるということを防げている、というあたりが体感品質の差になってる気がするなあ、というところまで、当初データを見たときに感じたわけです。

ということで、私の説は、「2.5G TD-LTEが最強なのではなく、それを展開するときに余計な汗水を流したことが5Gエリア構築で活きてる」なのです。

という感じで補足をさせていただきました。

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2023/8/30 18:26 · ニュースコメント · 4 comments

いやいやいやちょっとびびって思わず筆を執ったわけだけど。

Starlink衛星でスマホと通信とかないわー。いや、出来たら超ロマン砲なんだけど、ちょっと容易には信じがたいなー、と。

どこの周波数使うかわかりませんが、既存スマホでも使えるとか言ってるので、よく飛ぶ700MHzとか、だーれもつかってない1.5GHzとかその辺を使うんじゃないかと思うんですよね。で、Starlinkの衛星は低いものでも500km。だとすると、700MHzで140dB以上、1.5GHzだと150dBの損失ですよ。自由空間損失だけで。あと、スマホはスマホ自身が結構大きな損失源で、向きによっては平気で10dBとかやられます。150dB以上の損失があるパスに、高々200mW (23dBm)の電力で信号押し込んで受信できますかって話ですよ。衛星側での受信電力-120dBm以下ですよ。受信機液体窒素で冷やしてんのかって話ですよ。

楽天のスペースモバイルはまだぎりぎり納得感あったんですよ。当初「そんなん無理やろ」と思って調べてみたら、20m四方とかのクソでかいアンテナを飛ばすんですっていう話で、なるほどー、となったわけです。ギガヘルツ帯の電波に対して20m四方ですからね、利得40dBとかいってもおかしくない。波長に対して縦横それぞれ100倍のサイズですからね。

でもStarlinkの衛星ちっちゃいやん。めっちゃちいさい。一回の打ち上げで40機とか飛ばせるレベルでちっちゃい。電力も利得も全然足りません。むりむりむーりのかたつむり。混乱中。

でもサービス開始がだいぶ先っぽいので、もしかするとこれからスペースモバイルみたいなクソでかいアンテナ付き衛星を打ち上げ始めるとかって話かもしれません。正直、SpaceXの開発速度、課題解決のスピードは異常ですからね、ありえないとも言えないし、逆に、そう考えた方が腑に落ちるくらいです。でもそのレベルで巨大衛星をSpaceXが上げまくったら、夜空は大変なことになりそうです(苦笑)。

どっちにしろ続報早く欲しいですね。

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2023/8/30 18:26 · ニュースコメント · 4 comments
2023/8/29 16:49 · ねこ, 技術解説 · 1 comment

猫でも分かるシリーズ(シリーズ?)。今回はGPSです。

なんとなく、GPSについて間違ったイメージが一部に固着している感じがするので、猫でも分かるシリーズにぶち込んでみます。

GPSというと、「GPSモジュールをつけておけば衛星を使ってその位置を追跡できる」みたいに思っている人、意外と多いんですよね。

この理解は正確ではありません。「衛星」「位置」辺りのキーワードはそろっているんですが、そこから飛躍して「衛星がターゲットを追跡する」みたいになっちゃってる例が映画やアニメなどでも散見されます。そのために、完全に誤った理解が広がっている感があります。

これが良く知られている(そして間違っている)イメージ。GPS衛星で対象のGPSモジュールを追跡はできません。

じゃあ実際にGPSってのは何をしているのか? ちょっと詳しい人には大きな間違いに目をつむってもらうこととして、ざっくりのイメージ図を示します。

これがGPSのイメージです。GPS衛星は、大声で「自分は今どこらへんにいますよー」と地上に向けて叫び続けています。それを地上の人が見て、「あの衛星があの辺に見えるってことは、逆に自分はこの辺だな」と計算するわけです。なので、GPSシステムを使ってできることは「自分の位置を知ること」だけです。

仮にGPS衛星と地上の人がしゃべれるとしても、意味がありません。この例では青猫がオレンジ猫の所在をGPS衛星に訪ねていますが、GPS衛星は当然知りません。オレンジ猫が地上にいることさえ知りません。GPSモジュールは「受信専用」だからです。そもそもから言うと、GPS衛星には通信機能がありません。※こまかいこと言うと運用管理用の通信機能はありますが、あくまで衛星の管理のため。

ということで、「GPSモジュール」を手元に持っていると、「自分の位置がわかる」のがGPSです。
では、なぜGPSを使った追跡ができるような気がするのでしょうか?
それは、「通信」と組み合わせているからです。GPSと通信は事実上切っても切れない関係になりつつあります。

誰かに「追跡してもらう」ためには、GPS衛星からの信号で計算した自分の位置を「どこかの仲介者」に伝えておかなければなりません。自分が東京にいるとわかったら、仲介センターに自分の位置を登録するわけです。で、第三者はそのセンターに問い合わせてようやくオレンジ猫の居場所がわかるわけですね。この仲介センターはいろんな形が考えられて、究極的には、オレンジ猫自身が直接回答するセンターの役割を担っても構いません。それでも、青猫とオレンジ猫の間には通信が必要となるのは、なんとなくわかりますね。

で、スマホを持ってると全国どこに行っても自分の位置が分かったり、位置を使ったサービスを使えるような気がするのは、携帯電話のエリアがクソ広いからです。衛星を使ってるからではないんです。衛星はあくまで「目安のための信号源」であって、本当に位置情報を使ったサービスを実現するには携帯電話のエリアが必要です。ついでに言うと、GPS信号を受信しやすくするためにGPS衛星のおおよその位置をあらかじめ教えておいてあげるような仕掛けもあります。これも携帯電話の通信機能を使っています。とにかく、携帯のエリアがないと何もできないのがGPS位置追跡です。

例えば、です。ちょっと漂流してしまいました。GPSを使ったら、どうやら千葉県沖50kmのところにいるようです。助かった。。。

と思ったら、スマホが圏外でした。ここで青猫がオレンジ猫の行方を検索しても、「知らね」で終わってしまいます。実際、沿岸50kmも離れれば確実に携帯電話はエリア外です。あと、電波法的に領海外で使うのがどうとかこうとかもあるので、GPSを持っているだけでは、携帯電話の電波が届かない沖や山奥では、救助は期待できません。

ということで、本気で遭難に備えるには、携帯電話以外の通信方式を使わなければいけません。沿岸にめっちゃ飛ぶ(かつ法的問題をクリアした)無線機を置くとか、衛星通信を使うとか、船舶通信を使うとか、です。山岳遭難に備えたものとしてはイリジウムを使ったGPSトラッカーとかありますね。海上では、GPSこそ使っていないものの救助用ビーコンを複数の船で受信して要救助者の位置を特定するものが良く使われています。めっちゃ飛ぶ無線=LPWAを使ったソリューションもいくつか出てきているようです。今後は、Starlinkみたいな低軌道でアホみたいな数飛んでる衛星を活用することで従来よりも電池が長持ちする衛星通信タイプが出てくるかもしれません。

アニメとかで「よし、GPSを取り付けた、あとは信号を追うだけだ!」なーんてシーンがありますが、「……で、通信は?」なんて突っ込むとキモげふんごふん、かっこいいですよ。以上、GPSはそれ自身では位置追跡はできないよ、のお話でした。

※最後に蛇足。
実際はGPS衛星一個だけでは自分の位置は分かりません。最低3個の衛星が見えないと位置の計算ができないからです。最近はGPSだけでなくほかの国のGPS互換システムがたくさん飛んでいるので、3個見えないというケースは相当減ってきてはいると思います。

図中背景パース地形:出典は「国土地理院」、海域部は海上保安庁海洋情報部の資料を使用して作成

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2023/8/29 16:49 · ねこ, 技術解説 · 1 comment
2023/7/20 11:19 · 技術解説 · 2 comments

プラチナバンドを他社から借りて「最強」とうたうキャリアがあったりあします。
ネット上の論調でも、某社のエリアが狭いのはプラチナバンドが無いからだ、とする向きがあります。
下手すると、プラチナバンドが割り当てられれば一気に不調を挽回できるとする論説もあります。
本当ですかね?

というわけで、前にも似たような話を書いたかもしれませんが、改めて。

プラチナバンドは、1GHz以下の「とても飛びやすい」電波、ということになっています。飛びやすい、というのは、距離による電波の弱り方が少ない、障害物に当たったときに通り抜けやすい、そんなことを指しているというわけです。
これはもちろん事実です。同じ場所に数ギガヘルツの高い周波数とギガヘルツ未満の低い周波数の二つの基地局を置けば、もちろん、低い周波数のほうが遠くまでカバーエリアにできます。ただ、これに関しては、「ネット上の論説ほどは効果はないよ」というのを付け加えておきます。

実際、ソフトバンクがプラチナバンドの割り当てを受けた後、その整備に苦労していた話があります。プラチナバンドは確かに飛ぶんですが、「飛びすぎる」問題もあります。携帯電話のエリアを設計するときは、飛ばすことよりも「狙ったところできっちり切り落とす」ことのほうが大変です。ある建物をカバーするために近所からプラチナバンドを浴びせる、確かに建物の中は通りは良くなったけど、建物の周りで電波が飛びすぎて隣のエリアに干渉を起こして大惨事。こんな間抜けなことをするキャリアは一応日本にはありません(今のところ)。どうするかというと、高いところから上下を切った電波を飛ばして、地面に届く距離を一定にする、という工夫で、飛びすぎる電波も狙ったところで切り落とします。

そう、プラチナバンドを使うには、高い鉄塔が必要なんです。もちろん、ど田舎でそういうこと考えずに何なら上向きにぶわーっと電波をばらまく、みたいなことをしてもいいです。でも後々それで割を食うのは自分です。まともなエリア設計技術を持っているキャリアならそんなアホなことはしません。しっかり高い位置から狙った「エリアのフチ」がアンテナの特性で切り落とせる角度をつけて吹き降ろします。この「高い位置の確保」にとてもお金がかかるので、プラチナバンドは整備費用が掛かるんです。

そしてもう一つ、プラチナバンドの弱点があります。「屋内」「地下」です。

いやいや、プラチナバンドは屋内に浸透するっていうたやん、と思うかもしれませんが、程度問題です。いくらプラチナバンドとはいえ外からの吹込みでカバーできる限度というものがあります。木造一戸建てなら問題ありませんが、タワマンは無理です。感覚的に、鉄筋コンクリートビルなら、外からカバーできるのは会議室1~2個分くらいじゃないかな。中心部にエレベーターがあるようなビルなら、エレベーターは間違いなく届きません。

実のところ、ちょっと大きめのビルなどは、個別の屋内基地局を設置するのが普通です。感覚的には、いま日本には、おびただしい数の屋内用基地局が設置されています。都心なら半分くらいは個別に対処されてんじゃね、ってくらい。最近はちょっと大きめのビルの建設時には、最初からキャリアと協力しながら建てるくらいです。J-TOWERとかJMCIAとか、そういうキーワードで出てくるアレ。公共性が高い場所だからみんなで一緒に屋内整備しましょうね、っていうやつです。

で、みんなで屋内整備する、というと、こんなイメージがあったりしませんか?

こんな感じで、各キャリアが基地局をおいて、みたいな。これは間違いです。
実際はこんな感じになっています。

緑色を付けた部分は、共同所有だったりビルのオーナーの所有だったりJMCIA的な共同整備機構の所有だったりします。ビルのオーナー側も携帯基地局のアンテナやケーブルがごちゃごちゃ置かれるのは嫌なので、できるだけみんなのを一つにまとめてほしいんですね。

さらに言うと、この共用設備、たいていはプラチナバンドに対応していません。一つの理由は、プラチナバンドがそもそもバラバラだから。ドコモ・KDDIは隣り合っていますがソフトバンクは少し離れています。全部対応するとそれなりのコストアップになります。もう一つの理由は、そもそもプラチナバンドである必要が皆無だから。屋内なので、飛ぶことよりも大切な要件がたくさんあります。たくさんの容量が取れて対応している端末が多くてどのキャリアも共通で使える。こういう要件を合わせていくと、基本的にBand1 = 2GHz帯にたどりつきます。また、Band3 = 1.7GHz帯が選択されることも多いようです。

ということで、プラチナバンドが手に入っても、都心の屋内はほとんど変わりません。ついでに言うと、プラチナバンドローミングができても、同じ理由で大きなビルなどでは屋内基地局が使えず外からの弱い漏れ込みに期待するしかない状態になっていると思います。逆に、すでにBand3を持ってるはずなのにBand3の共同設備を使った屋内整備ができてないのはどういうことだろな? なんてことを某キャリアに対しては思わないでもないのですが、共同整備のためには膨大な交渉の手間とコストがかかります。そういうところを惜しんでいるだけのことを「プラチナバンドを持ってないから」みたいなごまかし方をするのはあまりよろしくないのではないかと私は思わないでもないのです。

ということで、プラチナバンドのローミングができたり獲得出来たりするだけで”最強”になれるのか、というと、どうだろね、の話でした。

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2023/7/20 11:19 · 技術解説 · 2 comments

無線にゃん、ここ数年大規模通信障害を起こし、まことにもうしわけ

という話ではなくて。昨日のauとか、去年くらいのドコモとか、大規模通信障害というやつが起こっていますね。しかも、起こったらとことん大規模。

実際、この辺は避けようがないというのが実態だと思うんです。そもそも論ですが、携帯電話ネットワークというのは、どういう風に作られているのか、というと、超たくさんの基地局をたくさんの制御局に収容してそれらをほどほどの数の交換局に集約して、みたいな感じに作られているものですよね。LTE以降、この辺はIPアクセスによるフラットなネットワークを志向、なんていうことも言われていますが、実際に物理的にネットワークを作ろうとすると、どうしてもどこかに「呼処理」が集中するポイントが生じてしまいます。

呼処理というのは、簡単に言えば、ある携帯電話が正当なものであることを確認しその通信要求が正当なものであることを確認し適当なポリシーのもとに通信リソースを割り当てる、一連の処理のことです。ある一人の加入者が全国どこでも使えるようにする、という要求を満たす場合、すべてのネットワークノードは必ずつながっていなくてはなりません。さらに、その加入者の通信オプションや課金を正しく扱うためには、その加入者の情報がすべてのノードで整合性ある形でアクセスできなければなりません。今回のauの障害でもキーワードで出てきた、加入者情報の不一致云々、の話です。

仮に加入者情報サーバを二重化していたとしても、その二台のサーバの間に「データの不整合」が生じてはならないので、二台の間では常に整合性のためのやり取りが行われます。また、今回の障害の原因と言われているVoLTE交換機(IMS)も同じように「ある加入者の唯一性」を保証しなければ正常な処理はできません。そうした唯一性の保証が必要なサーバ類をたくさん置いて障害が起きても一部にしか影響が出ないようにする、というのは当然どこのキャリアもやっているわけですが、では、それらのサーバ間を直接メッシュ接続できるか? というと、そんなことはもちろん無理です。メッシュ接続というのは、例えば2台と3台のサーバ群同士をつなげる場合、6本の線を直結させる、というやり方。今や加入者情報サーバだのIMSだのは何十台という規模で、メッシュ接続するとなると数百本の接続が必要になります。もちろん、論理的にこれができることは当然ですが、じゃあ物理的にできるか、というと、一つの筐体に何百本のケーブルをつないでそれぞれが独立した回線で全国につながる、なんていうことは無理です。回りくどく書きましたが、物理的にはどこかで集約するための巨大なルータ的なものに入ることになります。このルータにはもちろんその他いろんな通信が論理的には別々の回線のようにふるまいながら収容されています。

さて、もしこのルータが壊れたら。当然、このルータも冗長化されていますから、即座にスタンバイ系に切り替わるわけで、一見、あらゆる呼処理が集中していても問題がないように思われます。ただ、この冗長化した二台のルータは、つながっています。比喩でもなんでもなく、冗長、というのは、その二台を束ねる何らかのコントローラの上で成立するものです。このコントローラ機能は、古くは独立した装置だったりしましたが、最近では二台のルータ間やルータの下位ノードとの間で成立している冗長化プロトコルのステートマシンという論理的な存在が担っています。なんにしろ、その二台の状態を把握して障害時に正しく切り替え処理を行う頭脳の役割が存在し、それを介して必ず冗長した二台のルータはつながっている、ということです。

そしてこの頭脳そのものは、冗長化できません。だから、もしこの頭脳に何らかの変調が起きると、冗長機能が働かなくなります。もちろん、その状態でもルータ自身が正しく動いていれば問題ありませんが、この頭脳が変調を起こすような設定の誤りやバグというのは、えてして、片方のルータが落ちたときに顕在化するものです。つまり、あらゆる呼処理が集中しているルータ自身、どんなに完璧な冗長を組んだとしても全台破綻、ということがありうるわけです。これは隕石が落ちてくるほどの低い確率ですが、でも実際に隕石は落ちてくる。だから、そうした事態に備えた訓練を各キャリアは欠かさないわけです。

こうした呼処理が集中する場所で通信断が起きると、先ほどの「唯一性」と「整合性」を重視するサーバたちは一斉にうごめき始めます。データの不整合が発生した可能性がある以上、何とかして最新の情報を得なければならないからです。また、そういった状態になると、端末側も通信の接続や再開ができないために、何かあったのかもしれない、ということで、通信の手続きを最初からやり直そうとします。こうしたことが雪だるま式に膨らんでいくことで設備の処理能力が枯渇し、なおかつ「唯一性」に自信が持てなくなった各種ノードは通信手続きをやめてしまうわけで、大規模な障害に至るということです。

こうした大規模な障害を回復させるには、まず、入ってくる量を減らすところから始めます。つまり、基地局で「規制」をかけます。これで、端末が何度もアクセスすることを防ぎます。次に、「唯一性」と「整合性」を回復させなければなりませんが、これも、冗長を組んだたくさんの装置を一台ずつ同期させていくという地道な作業になるはずです。なおかつ、その同期させようとするデータが大きすぎるとこれまた設備負荷になり、安全弁が働いて途中で止まり、芋づる式にデータすべてが再び不整合、なんていう面白いことが起こったりします。面白くないですねすみません。そんなことを考えると、一度集約部分で混乱が起きるとその終息にどのくらい時間がかかるかというのは全く誰にも読めない、と思われるわけです。

実際、最近は小規模な障害は比較的減っていますが、ごくまれにこういうどでかいのが起こる感じですよね。それは、障害を防ぐ仕組みがどんどん進んでいるから、ということの裏返しでもあります。標準化でも障害耐性というのは大きなテーマで、障害を防ぐ、障害が起きた時も小規模で済ます、起きた障害が速やかに収束する、そうした仕組みを標準の中にどんどん作り込んでいるので、実は日常的に小さな障害は起こってるんだけど利用者にばれるほどにまで大きくならない、みたいなところはあります。で、最後に残ったのが、こういう物理的にドカンとくるやつ。こういうのもしっかりと機能と収容加入者数をばらして分散化していけばいいわけですが、いかんせん、「唯一性」の問題があり、どこかにどうしても集中する場所が生じることになります。仮にそういうのを物理的にばらして置いたとしても、その物理的に離したサーバの間を加入者が移動するような場合には情報を交換する必要があるわけで、やっぱりそこでは最低二台の間での集中は起こります。ついでに言えば、昨今の官製値下げの影響で、各社ともぎりぎりまで設備を集約して効率化しようと頑張っています。三社ともアホみたいに利益を出しているように見えますがそれぞれがそれぞれに帳簿上の利益を減らせない大人の都合があってしわ寄せは設備投資に向かうわけです。

こういうことが起こらないようにするにはどうすればいいのか? という話については、まあぶっちゃけ、完全に物理的に隔離された冗長ネットワークがあればいいんじゃね? ってことになります。簡単に言えば、別キャリアです。もちろん別キャリアにしてローミングで救済する仕組みにしても、そこに「ローミング接続」があったら無意味です。なので、ローミング情報も何らかの形で隔離して持っていく必要があります。13桁のパスワードをかけたUSBとかで。というのは冗談にしても、実際、一つのキャリアの全域である加入者の唯一性を保証するという条件でネットワークを物理的に分断することはできないので、最悪他キャリアにローミングできる仕組みを全キャリアでしっかりと話し合った方がいいよね、と私は思うのです。もちろん、大障害の時にローミングアクセスが集中してローミング先も落ちた、なんていう本末転倒なことは必ず起こるので、ローミングでの利用については相当に絞った形にするしかないでしょうが。で、そのローミング利用料をお互いに払うようにすれば、ある意味、障害のリスクをカネで解決してるわけですから、お互いいろいろと楽になるよね。

ということで、無線にゃん、今後一切このような長期間の障害を起こすことのないようしっかりと見直しを・・・いや、別にしなくていっか。ではまた来週か来月か来年か♪

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 ロシアが近々、インターネットを完全に遮断するというニュースがありました。そんなこと本当に可能なんでしょうか。

 結論から言うと、理屈上は可能です。が、条件付きで抜け穴は作れます。

 インターネットが相互に通信できている核となっている技術は、ルートDNSサーバの存在と、経路広報の仕組みです。

 ルートDNSは世界に13個ぐらいしかない、最大の権威を持つDNSサーバで、事実上すべてのドメイン名の解決の「根っこ」になっています。近隣の権威サーバでたいていは事足りますが、国をまたぐようなドメイン名の解決ではまれにこのルートDNSが解決の役を果たすことになります。逆に言うと、最後の最後にはルートDNSが大岡裁きをしてくれることがインターネット上の他のDNSサーバの権威を支えているということです。

 ではロシアはそのルートDNSへのアクセスまでも遮断してしまって通信は成り立つのか? という疑問については、成り立ちます、と答えます。なぜなら、ルートDNSへのアクセスは遮断されているので、ロシア国内の権威DNSがルートDNSと同等の権威をもつことになるからです。どれだけ好き勝手な名前解決をしても上から怒られないんだから、やり放題です。google.co.jpというアドレスをロシア国内のてきとーなサーバのアドレスに読み替えるくらいのことをしてもいいですし、なんなら、トップレベルドメインが.ru以外のドメインは全部特定のアドレスに割り当てちゃえばいいんです。そのサーバにアクセスすると、「残念、それはプーチンのおいなりさんだ」とでも表示するようにしておけば。逆引き? 何それおいしいの? 逆引きが必要なのは(ユーザ・サーバ間の公平な)セキュリティを確保したいときくらいです。政府に都合のいい似非セキュリティを確保するためにインターネット切り離すっつてんだからセキュリティなんて確保するわけねーじゃん。

もういっこ、大切なのは、経路広報です。アドレスを解決しても、そのアドレスにパケットが飛んでいかなきゃならない、その時、大まかにこのアドレス帯はこのルータのこっちのポートの先にあるっぽいよ、とお互いに教えあっているのが、経路広報の役割です。この情報をもとに、パケットを受け取ったルータはバケツリレーでパケットを運びます。通常は、そのアドレスを持っている団体なりなんなりが自分の責任で「このアドレス帯域はここだよ」と隣のルータに広報しています。それを受け取った隣のルータが、必要なら他のアドレス帯域と併せてさらに隣のルータに伝達するわけです。

 じゃあやっぱりインターネットを遮断したらその広報情報も届かないからダメじゃん、ってなりますが、別にいいんです。だってそれやりたいんだもん。ロシア国内のルータのロシア国内からロシア国外に通じるすべてのポートをシャットダウンして、代わりに、そのポートで受け取っていた経路広報情報をあたかもロシア国内の別の場所にあるかのように偽装して広報すれば完了です。こうすることで、DNSを使わずにIPアドレスでアクセスしようとした人を、ロシア国内のてきとーなサーバに誘導することができます。そのサーバにアクセスすると、「残念、それはプーチンのおいなりさんだ」とでも表示するようにしておけば。

 という感じのことをやるんだと思いますし、実際に2019年末にそれらしい演習をやったらしいですね。詳しくはわかりませんが。演習の成果を出せる、とウキウキしている技術者がいっぱいいそうです。

 しかし。これは、ロシア国境を超える通信がIPである場合の話。非IP通信の場合は、そう簡単にはいきません。いや、インターネットっつってんだから非IP通信なんてありえないだろ、と思うことなかれ。

 一番強力で対処方法がないのは、イリジウムです。そう、あの衛星携帯電話の。あれ自体は、独自の伝送方式でポイントツーポイントで結んだトンネルの中にIPを通しているだけです。さらに重要なのが、イリジウムは衛星間通信を使って地球局がない場所から地球局がある場所へと伝送路をつなぐことができます。イリジウムが南極でも使えるのはそのためです。話題のStarlinkは、その方式がありません。あくまで、地球局から直接見える衛星を経由してユーザ端末との間でデータリンクを張る方式。なので、ロシア国内でStarlinkを使うためにはロシア国内にStarlinkの地球局を置くしかなく、その地球局が当局に抑えられたら終わりです。

 また、アナログな方法ですが、国際電話でモデム通信をする、という方法で逃れることもできます。電話は単なる音声ですから、IP遮断の対象ではありません。じゃあ電話も全部禁止ー、というところまで踏み込めるかっていうと、そこまではやり切れない気がします。フィンランド国境とかならアマチュア無線でIP交換やってる猛者もいるかもですね。

 実のところ、これに似た非IP的手法でいろんな通信をロシア国内外でやり取りしている会社は結構あると思います。衛星とか光ファイバとかで非IPの信号をやり取りしているパターンですね。今我先にとロシアから逃げ出している会社はまさにそういった会社なんじゃないですかね。拠点にロシア兵が踏み込んでくるかも、って状況では営業どころじゃないですからね。特に、データセンターを持ってる会社はやばいので、とっとと電源落としてディスク叩き割ってるんじゃないかな。

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2022/2/17 18:36 · ひとりごと · 1 comment

 技術の進歩というのがなんなのか、というね、今更な話をするわけですけど、いや、最近久々に続きを見たいなと思う大河ドラマが始まって、その中の出来事を見てて思ったんですけどね。

 技術の進歩って、ものすごく大雑把に言うと、たいていのことは「世界を狭くする/時間を減らす」ことなんですよね。隣村に行くのに半日かかっていたのが、車があれば五分だし、アメリカに手紙を届けるのに一か月かかっていたのが、スマホがあれば一秒だし、お願いしてから何日も待たなきゃならなかった包丁がいつでも百円ショップの店頭に在庫があるし。そうやって世界が狭くなって、かけなきゃならない時間が不要になっていくと、その空いた時間を別のことに割り当てることができるわけですよね。つまり、明確に生産性が上がっているわけです。だから、一人の人が生み出すことのできる価値の総量が指数関数的に増えていく。それが技術の力なんですよね。

 その中でも、通信ってまさに世界を狭くすることに最大に寄与しているわけです。例えばですよ、東欧の某国が、その隣国から攻められそうになってる。いや、ほんとに攻めてくるかわからないけど、国境に兵隊がたくさん並んでる。もし、通信という概念がない世界だったら、目の前の事実だけをもとに判断するしかないじゃないですか。あ、攻めてきそう、やられるまえにやったろ、じゃないですか。そうじゃなきゃ自分が殺されるかもしれないんだもん。じゃあ、通信という概念を導入してみましょう。首都が国境から200km程西にあって、飛脚が手紙を運ぶとしましょう。頑張れば三日くらいで着くのかな? そんなもんだとしましょう。やべ、なんか攻められそう、と手紙を出します。手紙を受け取った偉い人が、まて、戦争になるから手を出すな、という手紙を送り返します。六日。たぶんその間にもう衝突始まってますよね。だって、やらなきゃやられるんだもん。まあ、あらかじめ手を出されるまで絶対手を出すな、なんてことを言い含めてあったとしましょう。じゃあ、首都の偉い人が、今度は相手国の首都に向けて「国境の兵隊、めっちゃこわいんですけど、あれ何?」って手紙を出しましょう。国境から相手の首都までも同じくらいの距離だとすると、片道六日。即日返事を出しても合計十二日。で、国境までの往復六日を足して、半月以上です。目の前で銃構えてる兵隊見ながら半月も過ごせますかね。先に手を出すか逃げ出すか、まあ私なら確実に逃げます(笑)。戦争って大体こうやって始まりますよね。

 ってことで、通信を含む技術が発達することにより生み出される時間ってのは、とてつもなく価値があるものなんですよ、っていうことなんですよ。

 東京に職場がある会社に出勤するとき、手段が徒歩だけだったら、まあ23区内くらいにしか住めませんよね。それ以上遠くになると通勤はかなり厳しい。でも、自転車や自動車や電車が発明されたおかげで、隣県くらいまでは一時間で行き来できるようになりました。逆に言えば、価値を生み出す可能性のある社員が隣県にいたとしても、その人の価値数時間分を毎日生み出しているわけです、電車とかは。それがたった数百円で乗れるなんてすごい。

 例の疫病のおかげで、テレワーク的な物が急に普及しましたよね。実はそれ以前からも可能だったことなんだけど、変化に抵抗して導入できなかったものが、うっかり導入せざるを得なくなった。なんていう後ろ向きな理由だとしても、急速に普及したのは確かです。職場に出勤しなければできない仕事もあるでしょうが、そうでなくてもできる仕事もある。そうでなくてもできる仕事については、テレワークの恩恵はとてつもなく大きいんです。何しろ、通勤2~3時間がゼロになるんですから。新たに毎日数時間分の価値を生み出すことができるようになっているわけです。

 それでも、古い価値にしがみつく人たちは、テレワークの欠点をあれこれと指摘しては抵抗します。この大きなチャンスを逃がそうとしています。もちろん、テレワークに欠点があることは否定しませんけど、欠点が問題になる仕事はふつーに出勤すりゃええやん。それよりも、テレワークで生まれた新たな価値時間をどんなふうに使えるか? そちらに知恵を絞ったほうがよほど有益だと思うんですけどね。それが、さらに通信技術の発達を誘発するし、いくつかの欠点も払しょくに向かうはずなんです。

 いや、なんでこんな話をいきなり書いてるかというと、いわゆる「アフターコロナ」に向けた議論をどこの会社でもしてると思うんですけど、私の勤める会社では、なんかテレワークは全廃しようぜみたいな頭の悪いことをいうおじいちゃんがたくさんいてですね。ほんともったいない。せっかく生まれた価値の使い方を考えようぜ。技術ってのは、そのためにあるんだから。

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2022/2/17 18:36 · ひとりごと · 1 comment
2020/7/29 17:38 · 技術解説 · 3 comments

久々に易しい電波のお話。今日は電波の干渉について。

さていきなりですが、土星を見ています。

いやー、いい望遠鏡使ってますね。とか言う話は置いといて。この土星、ちゃんとわっかの縞々までしっかり見えています。じゃあ、どうなったら、これが見えなくなるでしょう。目をつむるとか無し。

隣に太陽置いてみました。目が、目がぁ~。まぶしくて土星が見えなくなりましたね。
電波の干渉で通信ができなくなるっていうのはおおよそこういうことでいいです。
見たいものよりもまぶしいものが目に飛び込んできて見えなくなる。そんな感じです。

終わり。

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終わりません。

さすがにそばに太陽置いたら見えなくなるのは当たり前すぎます。実際の電波を使った通信でここまで強烈な干渉源(ここで言う太陽本体)があることはありません。では、うっかり隣に木星が見えたらどうなるでしょう。

こんなやつを隣に置きます。

土星も木星も、夜空で光っていますので、その周囲に光彩ができています。電波で言うとこういうのを「サイドローブ」とか言ったりして厳密には違う現象なんですが、まあ大体そういうところは電波も可視光も似たようなもんなので、同じということにしておきます。
で、よく見ると、木星の光彩が土星にかぶってしまっていますね。そのために、土星の環のディテイルが潰されてしまっているのが分かるかと思います。縞々が白飛びして見えない感じ。
これが、同じくらいの電波発射源でも隣同士に並んでいたら干渉してしまう理屈です。

さて、猫登場。

これが、猫が土星を見ているところです。

木星を見るときはこう。

で、両方視界に入ってしまうと、こんな感じで干渉して、大切な縞々が潰れてしまうわけです。

では、電波を使った通信では、これをどのように解決しているのでしょうか。
答えはこんな感じ。

木星から光が漏れないように囲ってしまいます。ただし、下の青い猫は木星を見たい猫なので、下の猫のために一方向だけ開けてあげます。こうして、オレンジの猫には見せずに青い猫は木星を見ることができます。電波で言えば、こういうのを「指向性アンテナ」とか「ビーム」とか言ったりします。かっこよく「ビームフォーミング」とか言いだしたりしますがめんどくさいのでほっときます。

で、実際に土星の近くに木星があったとしてもこんな感じで、オレンジの猫は土星だけを見ることができます。
この、木星を囲む壁ってのがまた設計が難しくて、青い猫のすぐ近くに木星を見たくない猫がいるかもしれないので、慎重に方向や開口部分の広さを計算しなくちゃいけないんですね。携帯電話ネットワークを作るときに難しいのはまさにこの辺。やみくもにアンテナを増やしてもダメ。なんです。

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さて、最後にもう一つ、ちょっとトリッキーな干渉対策を紹介します。

まず、縦の縞々模様のフィルターを準備します。

フィルターというのは、画像に濃淡をつけたりするためのものと思ってください。今回の例では、単純に画像の各画素からフィルター画像の明るさを減算するようなものにします。
同じように、横の縞々も。

これが横の縞々。
次に、一つルールを作ります。
土星の中の人は、自分の光を出すときに横の縞々フィルターを使うこと。
木星の中の人は、自分の光を出すときに縦の縞々フィルターを使うこと。

つまりこういうこと。土星は、

で、木星は、

ということです。この二つが一緒に視界に入ってくると、

こんな風に重なって見えます。ここで、土星を見たい人はさっきのルールを思い出します。あ、土星は横縞フィルター使ってるんだっけ、と。
てことは、この画像に、

この横の縞々を「足し算」すれば、土星画像が復元されるかもしれない。

やってみた。何となく、縞々のディテイルが残っている気がします。

左が土星の元画像。真ん中が何もフィルター使わなかったとき。右側が縦横フィルターを使い分けたとき。一部白飛びしそうなところがあるものの、大切な縞々は何とか判別できそうです。
こんな感じで、最初から画像=電波にわざと違う種類の汚れをつけて、その汚れの取り除き方をあらかじめ伝えておく、という方法で、干渉を取り除く方法もあります。なんちゃらMIMOとかそういうのは大体こんな感じです。

ということで、干渉の起きる仕組みと起こさない仕組みのお話でした。

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2020/7/29 17:38 · 技術解説 · 3 comments