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2012/3/13 10:00 · サービス解説 · 6 comments

今日は、端末の再利用についてのご質問について。いや、詳しい人は私なんぞよりよほど詳しいのですが、一方で、質問をお寄せくださる方も結構たくさんいますので、ここらで一度まとめておきたいと思います。

端末の再利用、と言うのは、たとえば友達が機種変更して、余った古い端末をもらって使いたい、そういう利用のこと。中古をショップで回収した行く末とかそういうのも興味深いですが、ひとまずそっち方向の話は置いておいて。単純に、「どんな組み合わせなら再利用できるのか」というのが、なかなか即座に調べられる範囲では調べきれないくらい複雑なことになっていたりするようです。

ってことで、例によってざっくりと表にまとめてみます。

元SIM 新SIM
ドコモ KDDI ソフトバンク イーモバイル
ドコモ × ○※1 ○※2
KDDI × △※3 × ×
ソフトバンク ×※4 × △※7 ×※4
イーモバイル △※5 × △※6
※1 2011年以降の端末、ショップでロック解除が必要
※2 2011年以降の端末、ショップでロック解除が必要、エリアによっては使用不可
※3 ショップでロック解除が必要
※4 ごく一部の端末のみ可、ショップでロック解除が必要
※5 2011年以降の端末、エリアによっては使用不可
※6 2011年以降の端末、共有バンドがないので全エリアで使えない可能性あり
※7 一般端末、iPhone、Android、DisneyMobile、データ契約、ウルトラスピード契約、4G契約、などなどのカテゴリをまたいだ再利用は不可

左側が、端末を使っていた古い会社、上側が、持ち込んで使いたい会社です。左の会社で使っていた端末に、上側の会社のSIMを挿して使おうとするとどうなるか、ということです。

まず、全体的な傾向としては、「同じ会社の端末ならそのまま使える」「違う会社の端末として使おうとするとエリアが限定されるなどの不都合が多い」ということになります。なので、まずは、違う会社の端末として再利用するのは、よほどの事情がない限りやめた方が良いかと思います。表中では、通話可否だけを気にしていますが、原則的に、会社を乗り換えると、iモードなどの情報サービスも一切使えなくなりますし、パケット定額も適用されなくなります(パケット料金が「PC接続利用」相当になります=ドコモ→8,190円、ソフトバンク→∞円)。

というデメリットもありつつ、会社を超えて再利用できる可能性が高いのが、ドコモ。ドコモが日本で発売している端末のほとんどが、1.7G(イーモバイルと同じバンド)、2G(ソフトバンクと同じバンド)に対応しているはずなので、案外、イーモバエリアでもソフトバンクエリアでもそん色なく使える可能性が高いと言えます。また、ドコモは原則全端末のロック解除に応じる姿勢なので、ドコモショップで解除処理さえしてもらえば、ソフトバクでもイーモバイルでも使うことができます。KDDIは後述。

ソフトバンクは、1~2機種だけ対応すると発表していますが、結局それだけ。それ以外の端末は、ロック解除ができないため、他の会社のSIMを入れても動作しません。ソフトバンクのお古は基本的にソフトバンクでしか使えないと思った方が無難です。[追記] あと、一般契約のSIMでiPhoneを使ったり、iPhone契約で一般端末を使うこともNGとなっています。

イーモバイルは、2011年以降はすべて(2010年発売分も一部)、ロックなしとなっているため、ドコモ、ソフトバンクのどちらのSIMを入れても動作するようになっているようです。ただし、イーモバイルの持っているバンドは1.7GHz帯で、イーモバイル以外ではドコモしか使っていません。純粋にイーモバイル向けに作られたものであれば、ドコモ(のごく一部のエリア)でしか動かないと思った方がよいでしょう。しかし、イーモバイルが海外端末をカスタマイズして売っているものの中には、結構2GHz対応した端末が多いですから、スペックを確認して2GHz対応となっているものであれば、ドコモでもソフトバンクでも十分なエリアで使える、と言えます。

最後にKDDI(au)ですが、この一社だけは方式が違うため、他社と端末を取り換えて使うことはできません。ごくごくまれに、ドコモ・ソフトバンク・イーモバイルの方式とKDDIの方式の両方に対応した端末がありますが(iPhone4Sなど)、日本でKDDIが発売しているものではそういったものについてもロックをかけているため、取り換えて使うことはできません。また、KDDIだけは、電話番号単位で端末にロックをかけているため、同じKDDI同士でも、ショップで解除手続きをしないと中古を取り換えて使うことはできません。一番面倒な会社です。

ということで、なるべく変な用語を使わずにまとめてみましたが、まだわかりにくい点などありましたら遠慮なくご指摘くださいませ。それでは。

[追記]
ソフトバンクの再利用制限がめちゃくちゃきついという情報提供いただきました。そこまで厳しくなってんの?もうさすがに「○」とはかけないレベルですね、そこまできついと。ってことで、修正しました。もう、その内容まで確認したくもないので、「カテゴリをまたぐと全滅です」って感じで。

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2012/3/13 10:00 · サービス解説 · 6 comments
2012/2/17 10:00 · 品質動向 · (No comments)

iPhoneのSiriが日本語対応する件で、突然トラフィックが増えて大変なんじゃないでしょうか、というご意見をいただきました。

うん、全くそんなこと考えたこともありませんでした。先日の障害とコールモデルの話で書いた、「ヒットアプリがトラフィックモデルを変える」の話を地で行くような話ですよね。書いた私が気づいてないんだから、世話ないですね。

Siriの詳しい仕組みはあまりよくわかっていませんが、「音声データをそのままあるいはちょっとだけ加工してセンターに送って解析する」という手法をとっているようです。つまり、ちょっとした言葉でもほぼ生の音声データを送ることになるため結構巨大なデータ量になってしまう可能性があるということ。

こちらのほうでSiriのデータ使用量の検証を行っていますが、その中で特に参考になるのが、SMSとe-mailについての検証。英語で6単語と10単語で12KBと18KB、15単語で36KB、40単語で109KBという結果。1単語当たり2KBちょいという結構精度の高いデータが出ています。

ネイティブの発話速度が大体200単語/分と言われていますから、1秒当たり3.3単語、6.6kB分。おおよそ、50kbps強というところです。何となく、48kbpsないし56kbpsコーデックにヘッダがついた、くらいな気がします。

さて一方、これがどのくらいの使われ方をするのか。ここで問題になるのが、Siriの発生させるトラフィックが、通常のインターネットトラフィックの中心であるダウンロード方向(下り方向)ではなくアップロード方向(上り方向)である、ということですね。

単純に考えると、つまりこれは、インターネットからのダウンロードにあまり影響を与えずに済む、ということになります。であれば、Siriの利用は、少なくとも今の下りデータの逼迫には問題を与えないのではないかと言えそうです。ただ、無線上は、下りデータがなくても上りでデータを送る場合は上下ともに最低限のチャネル確保が必要であるため、CDMA方式の容量であるところの「空間電力」はしっかりと消費してしまうので、影響皆無とはいきません。が、Siriを使う頻度を考えれば大した問題ではないでしょう。

一方、上りデータが思ったよりも多くなる、ということが、困ったことを起こさないとも限りません。そもそもが、インターネット中心であれば上りトラフィックは非常にマイノリティのはずなので、頻度の低いSiriでもインパクトは大きく出ます。これは、無線そのものの影響というよりは、それより上のネットワークアーキテクチャの部分、特に地域ごとや全国で集線をかけているような部分で、「下からこんなにデータパケットが飛んでくることになるとは思わなかった」みたいな問題を起こすかもしれません。

Siriの利用頻度にもよりますが、たとえば1クエリ(コマンド)が5秒以下、みんなが一日10クエリ使ったとして、1キャリアにiPhoneユーザが500万人いるとすると、1.5~1.8TB。完全に平均すると144~200Mbps。仮に特定の1時間に50%が集中すると考えると、1.7~2.5Gbps。きれいに分散すれば、現状何百Gbpsという単位で困った困ったといっているキャリア諸氏から見れば、微々たるトラフィックと言えるかもしれませんが、特定の時間に利用が集中する場合はちょっと見過ごせないトラフィックの増かも。また、この量のほぼすべてが「上り」という特性上の特異性がある、という感じ。

まぁ上の計算は徹底的に厳しい条件を集めた計算なので、なんだかだでSiriでものすごく異常で面白い使い方が発見されて大流行なんてことにならなければとりあえずは大丈夫そうな気がします。そもそもがスマホってのはほんの1パケット送るためだけに勝手に回線繋いで莫大な無線資源を浪費してくれちゃう困りものデバイスなので、それに比べれば、ユーザが自発的に操作する分なんてのはかわいいものという気がします。

ということで、Siri日本語対応の影響を考えてみました。でわ。

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2012/2/17 10:00 · 品質動向 · (No comments)

光ケーブルの切断事故などが報道されることがあるけど、そんなに簡単に切れるもの?そんなに適当なところ(空中とか)にみんな引っ張りまわしているもの?というご質問をいただいています。

この辺は、事業者のポリシーや自治体のポリシーなどがあるので、一概に「たいていは電柱の間をにょろにょろと引っ張りまわされていますよ」と断言はしにくいのですが、現状の問題は置いておいて、それでも「適当なところに引っ張りまわしがち」なのかと言われれば、「多分そうかもなぁ」と言えそうな気がします。

というのは、前にも書いた「災害時の復旧の速さ」とかにも関係があるのですが、基本的に、むき出しになっているものはなっていないものよりもメンテしやすいというのは事実だからです。

なんだかだで光回線の契約数は結構なペースで伸びていますし、そうなると、スプリッタから家庭まで素早く線を引けることは競争上極めて重要です。そんな時に、たとえば、地下10mのだれも触れないような深度に頑丈な溝を埋設して、その中に回線を通し、厳重に埋め戻して整地・舗装する、なんてことはやってられません。もちろん、光の線なんてタダ同然、つまり結局は工事期間=コストですから、コストの面から言ってもこういった面倒な工事を伴うことはぜひとも避けたいと思っているはずです。

となると、まずは、どこの市内にもくまなく張り巡らされた電柱網、これを使わない手はありません。電柱のロケーション代も工事の手間に比べれば極めて安いわけで、まずは空中で線を引っ張りまわすのが最初の候補になるはずで、むしろこれが候補にあがらないあるいはあがりながら他の方法になってしまう、という状況が思いつかないほどです。

ってことで、そうやって引っ張られた光の線は、要するに「空中のてきとーなところを引っ張られている」わけで、大型車両がひっかけちゃうくらいのことで簡単に切れちゃったりするわけですね。

一方、もうちょっと別の事情で地下に埋めるような場合でも、やはり同様の理由で浅いところに埋めることになります。地下10mの手の届かない場所で不測の事態により断線してしまった場合の復旧作業と、せいぜい1~2mの位置に埋めてある場合、手間もコストも段違いです。もちろん、人間が入れる大きさの共同溝が整備されていればこの限りではありませんが、そうでない場所で、地下に埋めたい線があったら、せいぜい1~2mに埋めることになるでしょう。

実際、かなり根元に近いような基幹線であっても、そんなに深くは埋めていないし、人が入れるような大きな溝を作ってあることも稀です。たいていは浅い位置に、直径数十㎝以下の管を埋め込んで、片側から線を押し込むようにして埋設します。線に何かがあっても一旦引っこ抜けばいいし、管に何かがあっても浅い位置なので掘り起こすのが楽、というわけです。

まぁ結局は、そうやって埋めたものが、不慮の事故で掘り起こされて断線するリスクとの兼ね合いということになってしまうわけですけど、ほら、道路だと、「この下に重要な通信線があるので連絡するように」なんていう看板があるじゃないですか、ああいった別方面の対策で掘り起こし事故を最小化できることを考えれば、浅く埋めることによるメンテ減力の恩恵の方がきっと大きいんだろうなぁ、と思う次第です。

ということで、ほとんど私の想像と妄想なんですが、たぶん、光の線とかって結構簡単に切れるところを引っ張りまわされてると思いますよ、の一言でした。

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総務省の災害用優先電話のページに、「着信は優先扱いはありません」という趣旨のことが書いてあるけど、これは携帯にも当てはまるの?というご質問をいただきました。

結論から言いますと、その通りです。携帯電話での優先電話の話に絞ると、もともと優先させる仕組みの一つとして、それ以外の電話を発信規制する、というのがベースの仕組みです。これは、端末の自発的な動作なので、それゆえにネットワークに一切負担をかけずに電話を規制し、規制されないものを優先させる、ということが可能になっています。

一方、着信は、ネットワークの呼び出し信号が端末に届いてそれに端末が反応する、というのが基本的な仕組みなのですが、仮にここで、端末が自発的に「被規制動作」をしてしまうと、どうなるでしょうか。「呼び出しがかかったけど、自分、規制中っすから無視っす」とかやるとどうなるか、ということです。

ネットワークとしては、呼び出したのに反応がない、というのは、単に電波が悪いだけかもしれない、と考え、再度呼び出しをかけたりなどいろんな救済を行おうとします。すると、当然ながらネットワークは余計な仕事をすることになるわけです。「ネットワークに負担をかけない」というおおもとの目的を達することができなくなります。なので、ネットワークとしては、「ここまで着信信号が来てるってことは発信側での規制をすり抜けた大切な通話に違いない」という前提で着信信号はすべて通すし、端末も「ネットワーク様がそうおっしゃるなら大切な通話に違いない」と規制を無視して応答する、ということになります。

しかしこれでは、着信通話だけでネットワークが大変なことになってしまいはしないでしょうか。心配ですね。そこで仮に、呼び出し先の電話番号が、優先電話か規制対象の電話か、というのをネットワークで判断できるものとしてみましょう。であれば、規制対象の電話であればそもそも呼び出すのをやめてしまえば、ネットワークの負担はなくなりますね。このようにすれば、着信でも優先制御ができることになります。これができないのであれば、今のシステムは非常に片手落ちですね。

では、もしこの仕組みが実現したとします。ある大災害の日、優先電話を持っている、たとえば災害救助隊が、ある倒壊した家屋の住人が中にいないかどうか電話をかけてみようとしました。ところが、その家の住民は当然ながら優先電話なんて持っていません。なので、救助隊のかけた電話は相手方ネットワーク上で「呼び出し先は規制対象だから呼び出さないよ」と判断されて、相手まで呼び出し信号が届かなくなってしまいます。そう、こんなことが起こってはならないので、今はわざと片手落ち状態にしてあるんです。

基本的に、「優先電話を持っている人とそのネットワークが電話をかけるかどうかの判断の権利を持っている」というのが今の優先電話システムの大前提。この前提を実現するために「発信側のネットワークが通してもよいと判断した発信は、着信側の判断で落としてはいけない」ということにつながります。もちろん、交換機が大輻輳を起こしているときはさすがにこの限りではありませんが、それでも、交換機は優先電話からの発信の可能性を考慮して最後のリソースを残しておくように設計されていることが多いようです。

また、細かい話になるのですが、電話は事業者をまたぐ通話が結構あります。その時、発信が優先だったかどうかというのを相手方に伝えることは、一般的にはできません。もしそういったインターフェースを普通の事業者間接続で開放するといろんな悪用の方法があるためです。緊急電話でさえ、緊急電話専用の交換台からしか緊急着信をさせることはできません。ですので、発信者が優先だったかどうか、ということで着信可否を判断するというのも、実際のネットワークでは実現不可能となっています。

そういうわけで、交換機の混雑で着信が受けられない、という事態でない限り、基本的には着信はすべて通すし、端末も、着信信号に関しては規制状況に関係なく通常通り応答するようになっています。こういう関係は結構昔に決められたので、たぶん今後、いろんな技術革新、たとえばIP交換網によるIP相互接続が基本になってさまざまな付加情報を発着信信号に乗せられるようになり、優先の扱いが容易になる、というようなことがあったとしても、おそらく変えることはないのではないでしょうか。そうやって発着信相互の事業者でいろんな情報をすり合わせするよりも、「発信側ネットワークがすべて判断する」としておく方がシンプルですし、結果的にはおそらく統計効果で細かい制御をした場合と大して変わらないことになりそうな気がします。

ということで優先電話と着信の話でした。

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2012/1/20 10:00 · 品質動向, 技術動向 · (No comments)

先日の「LTE仮想化によるスピードアップ」から奇しくも同日発表のWCPのクラウド基地局の話につながった、LTE仮想化ノードによるエリア構築スピードアップの話、twitterにて「拡充スピードだけが本当に大切だろうか、本当に大切なのは品質ではないか」とのご指摘がありました。

全くその通りなんです。実は、あの仮想化のお話、逆説的に「最近の雨後の筍的LTEってのはそういった汎用で品質の担保できない怪しげなものでもある」ということを含ませる意図もなきにしもあらず、で。

確かに、専用設計のハードと専用設計に近いOSの組み合わせってのは、コスト的に非常に高額になるし小回りもきかないものになりがちです。しかし、ハードもOSも、そしてその上で動くノードソフトウェアも自社設計であるということは、かなり品質を自在に設計できるということでもあるんです。

もちろん、従来通り超高品質なものを維持してもいいし、あえて品質を落としてネットワーク側のマージンを稼いでも良い、そういうことができるのは、やはり専用設計品だと思うんですね。

一方の仮想化していく方は、とにかく安くて速いんだけど、詰め込めば詰め込むだけ品質担保レベルが必然的に下がっていきます。おそらく究極的には、やっぱりハード1台に1ノード、という構成だけが品質を担保できる構成で、それ以上を詰め込むことは、同一ハード上・同一メモリ上でお互いが情報雑音となって確率的に品質が担保できない状態になるんではないかと思うんです。

これは、何もLTEノードに限った話ではなくて、昨今のエンタープライズシステムの仮想化の話とかに対しても個人的には同じことを思っていて、一つのソフトウェアエンティティやデータベースエンティティを仮想化かつ分散化していく過程で、他のエンティティと同じメモリを共有することによりお互いが情報雑音になることが、どうしても気持ち悪いなぁ、と思ってるんです。個人的には嫌いな考え方。

昔のリアルタイムOSならメモリ管理はほぼ100%できるのが普通でしたが、最近のノンリアルタイムOSではどうしても確率的にメモリ競合が起きてしまうもの、と思っていて、実際、今までいろんな機器・ソフトウェアの開発や検証を見てきた(傍観してきた;笑)中で、必ずメモリ競合によるごく低い確率での動作不具合は起きていて、しかもそれは根本的に解決不能で、だけどその確率がものすごく低いことがそれを製品として成り立たせている、そういうものをたくさん見てきました。

一つのハードを複数のソフトウェアで共有することはそのメモリ競合を必ず起こる状態にすることだし、仮想化エンティティを増やすということはその起こる確率を倍々ゲームで増やすということです。だから、「何十もの基地局を仮想化して一台に収めた」というのは、品質という観点では必ずしもほめられたものではない、と私は思います。

とはいえ、黎明期にあってはとにかく品質よりもユーザに見えるエリア面積です。要するに営業上の見せ方の問題として、やっぱり「展開速度」は経営上もっとも強力な武器なんです。ということで、さて今後ドコモ・KDDIが、高品質なノードでどのように「整備速度で向かってくる敵」を迎え撃つのか、というあたりが興味深いわけですね。そんなわけで「ドコモさんKDDIさん、メインプランとは別に新興事業者対策の抜け道プランを用意しといた方がいいですよ」という意味のコメントなのでした。でわ。

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2012/1/20 10:00 · 品質動向, 技術動向 · (No comments)
2012/1/19 10:00 · 品質動向 · 1 comment

最近、通話料がどこが安いのかどこがつながりやすいのかというのがさっぱりわからなくなったのでまとめてほしいですという趣旨の質問をいただきました。PHS-MOBILEの方にいただいたご質問なんですが、一応全モバイルに関係ありそうなのでこちらでまとめてみます。

といっても、通話料についてはほぼ横並び状態になっているので、通話料に関してはあまりまとめる余地がないというのが実情です。なんですが、定額周りで違いがあるのでここであえてまとめてみると。

ドコモ KDDI ソフトバンク イーモバイル ウィルコム その他
代表プラン タイプXi プランZ ホワイトP スマートPライト 新定額P
網内定額付き基本料 1480 980 980 1980 1450
網外定額付き基本料 1980 2430
通話料/30秒 21 21 21 18.9 21
網内家族定額 24H 24H 24H 24H 24H
網内特定相手定額 24H 24H 01~21 24H 24H
網内定額 24H 01~21 01~21 24H 24H
網外定額 なし なし なし 300回/10分 500回/10分

それからついでに個人的なエリア・つながりやすさの感覚をまとめると、

ドコモ KDDI ソフトバンク イーモバイル ウィルコム その他
都会エリア 十分 十分 地下個店不安 地下個店不安 地下個店ほぼ不可
郊外エリア 十分 十分 十分 十分 屋内不安
地方過疎地エリア 十分 十分 不十分 不可 不十分
都市部混雑 不安 やや不安 不安 なし なし
駅混雑 逼迫 不安 逼迫 不安 なし
郊外混雑 なし なし なし なし なし

特に混雑状況に関しては私の主観と又聞きが100%なので十分に注意してください。

そういうわけで、通話料に関しては、イーモバイルがわずかに安いものの、基本的には21円で横並び。定額に関しては、Xiで網内100%定額を作っちゃったドコモが大手では一歩抜き出ていて、イーモバ・ウィルコムはそれに加えて網外定額オプションを持ち対抗している、という感じ。こうやってみると、定額通話の先駆け的存在だったソフトバンクが今ではもっとも定額対象が狭い事業者になっちゃってるんですね。

混雑に関しては、もうドコモに関しては身をもって体感したうえで「ダメ」の烙印を押させていただきます。都内だと、近くを電車が通過しただけでパケットが完全に止まるとか、さすがにおかしい。一方もう一つ使っているauの方は今のところ不安なし。一度だけ、大きな乗換駅でパケットがつながらなくなったことがあるくらい。ソフトバンクは私自身はわかりませんが、「ドコモと同程度かそれ以下ですよ」というメールをいただいたものを信じるなら、ということで上のような評価。一応データ通信での逼迫具合ですが、音声も基本はそれに準ずるはずなので。

イーモバは最近は使っていないのですが、やっぱり大きな駅では怪しいという声も聞くので、auと同程度かなぁ、と。ただそれ以外は結構快適みたいです。ウィルコムは、「混雑?それなに?」状態。先の大震災でもつながらなかった時間は地震直後の5分程度でしたから。まぁ100kbpsオーダーの速度しか出ないパケット通信はさすがに今のご時世では厳しいのですが、いざというときの通信手段としては一番つながりやすいはずです。そういう意味で、ブラウザもメーラも載せてない端末を一台持っておくのは悪くない気がします。

という感じで簡単にまとめてみました。追加要望や混雑状況に関する情報などありましたらぜひお寄せください。

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2012/1/19 10:00 · 品質動向 · 1 comment
2012/1/6 10:00 · 事業考察, 品質動向 · 4 comments

ちょっと前のドコモのSPモードメール障害の話、その他、スマートフォンの小さな不具合の数々を見るにつけ、障害、不具合に関する考え方、というものについて考えさせられてしまうわけで、今日はそんなお話。

最近、ドコモが障害や不具合を多発しているイメージが強く、一方、障害・不具合に関しては横綱級のソフトバンクについてはあまりそういう話を聞かない、この辺について、ちょっと思うところがあるんですよね。それは、両者の障害に対する考え方、ポリシーの違い。

ドコモの障害に対する考え方というのは、これこそ日本の通信事業者に特有の考え方なのかもしれませんが、まず最優先することが、「万一を起こさない」という予防絶対主義です。万一のことを起こしてしまったら負けであり、まず何をおいても万一を起こさないように鉄壁の運用をする、というのがドコモの考え方。

一方、ソフトバンクは、ボーダフォン時代の昔こそ万一を起こさないことを前提のポリシーでしたが、最近はむしろ「万一は起こるものである」「起こってからの対策が重要である」と考えているようです。対策至上主義。

どちらがいいのかというと、これまたどちらも善し悪しがあるのですが、複雑化・高度化するシステムに対しては、どうやら予防主義より対策主義の方が有効に働いていることが徐々に分かってきたようです。

古いシステムでは、起こりうる事象の組み合わせもシンプルで、障害を絶対に起こさないようにする、という運用も可能でした。予防絶対主義の原典にはこうあります。「たとえ1ミリ秒でも何らかの形でユーザに不都合を与えてはならない」と。つまり、ユーザにサービス断という形の影響をそもそも与えてはならない、というのが予防絶対主義の考え方で、この考え方は長らく主流でした。

対する対策至上主義は、ユーザに不都合を与えることは許容する代わり、その不都合の継続時間を閾値以下に抑えればよい、ということになります。

ドコモの予防絶対主義は、とにかくシステムの設計自体を鉄壁にしようとします。考えられるあらゆる不具合事象に対してあらかじめその起こる可能性を排除しようとします。障害の想定が思いつく中にすべて網羅されるならこれが最も良い考え方ですが、複雑化するシステムにおいては、「想定漏れ」の起こる確率が高まります。むしろ、最近の3G以降のシステムでは想定漏れが起こらない方が不思議なくらいです。

この場合、もしその「想定漏れ」の障害が起こると。そもそも、「想定できなかった」事象なので、当然ながら対策できません。何が起こっているのかわからないままずるずると時間がたち、結局、影響を与えるユーザ数が莫大な数に上ってしまうことになります。

一方、ソフトバンクは、とりあえずありもので海外などでよく運用された技術を使います。障害を起こさないように鉄壁にすべくシステムを作りこむ、ということも行いません。一方で、起こりうる障害の「結果」に対して、その対策(海外で有効に働いたもの)を網羅します。「障害の結果」というのは、システムが複雑化しても案外シンプルにまとまるものです。「つながらない」「切れる」「過課金」などなど、ということであれば、大体起こりうることはまとめられます。

そうして、それぞれの事象に対して対策を施します。「つながらない」ならとりあえずアクティブ系を全断して全シリーズをスタンバイ系に切り替えてみる、とか、過課金なら原因究明の前に返金処理システムを動かす、などなど、聞けば乱暴に思えるようなことを思い切ってやっちゃうわけです。

総務省などへの報告義務の基準などでもそうですが、結局、障害は影響人数と継続時間です。予防絶対主義はこれらをゼロとすることを目的とし、対策至上主義はゼロにはしないが最小化するという考え方。そして、複雑化するシステムで障害の発生をゼロにできないことが顕著になれば、当然後者の考え方の方が、障害影響を最小化するという目的には最適となっていくのは当然です。「障害ゼロは不可能」ということを受け入れられる思考・組織の柔軟性があるかどうかがポイントです。

ソフトバンクがボーダフォンから事業を継承してから2年くらい、あほみたいに影響の大きな障害が多発しましたが、最近それをあまり聞かないのは、障害が起こらなくなったからではなく、障害の影響が最小化されて総務省報告が必要ないレベルだったり報道されないレベルに抑え込めているから、ということです。障害に対するポリシーの転換が行われ、起こったことを最小化する(うやむやにする)、という仕組みがうまく回り始めたことを意味しています。

スマホの不具合に関してもそうで、とりあえずドコモは起こった不具合を完璧に潰そうとするし、完璧でなければ大仰にアナウンスしなければならない、というポリシーのため、外に見える不具合が非常に多いように見えますが、一方、ソフトバンクは兄弟機でおそらく同じ不具合が出ているはずのところを、不具合アナウンスをする前にサクサクとアップデートしちゃう。不具合があったのかどうかもわからないレベルの段階でさっさと対策を先にばらまく。これが結局、スマホの顕現した不具合件数の差として世間に認識されるわけです。

ユーザ体感としても、実際にソフトバンクの対策の方が理にかなっています。一部の声の大きなユーザこそ「不具合を認めて謝罪なりアップデートなりをしろ」と叫びますが、大半のユーザにとっては、あれ、ちょっと動きおかしかったかな?と思っても、アップデートで自然に現象が出なくなることですぐに忘れるような内容なんですよね。

で、このドコモ型の予防絶対主義、私の知るところでは、ドコモに加えてKDDIとウィルコム(旧)がこのタイプで、ソフトバンクは完全に対策主義、イーモバイルも対策主義に近い考え方です。ウィルコムもソフトバンク傘下になってだいぶ変わってきている感じがします。とにかく予防絶対主義を採用している事業者は、何しろ動きが遅いのが特徴。予防が完璧になるまでリリースしないし、障害が起こってからも、それに対する対策が「次の予防」に対して完璧であることを確認できるまで動けないイメージ。これはもう組織の作りの欠陥、お役所主義の弊害というしかないですね。

ここから原発云々の話に展開してもいいのですが、原発関連は宗教論争に発展するので触れません(苦笑)。ということで、障害に対する事業者の考え方についてのお話でした。

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2012/1/6 10:00 · 事業考察, 品質動向 · 4 comments

てことで今日から始動します。ことよろ。

今日は何となく年末年始のネットワーク状況について。毎年、携帯電話各社では規制だ輻輳だと大騒ぎしていたりするわけですが、不思議と今年はただの一回も規制や輻輳に当たりませんでした。年明け、午前0時直後くらいも。

たまたま運が良かっただけなのかもしれませんが、私の持つドコモ・auともに規制なし、パケットもサクサクで、家族のドコモも同じく年明け直後からパケットはサクサクでした。なんだこれ。

ドコモでふたたびspモードメールがらみのごちゃごちゃが多少起こっていたようですが、それ以外もほとんどニュースはなく、なんというか、少なくとも私の近辺では混乱のかけらもないような状況。あれ、年末年始ってこんなに静かだっけ?(ケータイギョーカイ的に)っていう感じでした。

去年ですよね、一応。いや、スマートフォンが異常に伸びたのって。ソフトバンクはiPhoneでだいぶ先取りしていたわけですが、ドコモもauも去年中に契約台数で何十倍、トラフィックではたぶん何百倍にもなっているはずなんですけど、それがみじんも感じられない年末年始でした。

ただ、たぶん、トラフィックの性質が違ってきているんでしょうね。フィーチャーフォンの場合は、トラフィックよりもトランザクションが激しい。つまり、パケットの論理接続が張られたり切られたり、っていう遷移が非常に多いため、交換・認証系への負荷がめちゃくちゃ大きくなるわけですが、スマートフォンは基本的にIP-Always-Onなので、交換・認証への負荷がほとんどなく、無線の切り張りによるRANへの影響とIPパケット処理のためのゲートウェイへの負荷に限定されることになります。これでもしスマートフォンがフィーチャーフォンみたいにこまめにIPセッションの切り張りをしていたら相当大変なことになっているはずです。

ゲートウェイなんてのは結局はパケット一つのライフタイムごとに全部忘れてもいいようなものなので、ぶっちゃけたくさん並べれば何とかなる、という方向のもの。もちろんRANについては端末の位置により(分布の偏りはあるものの)分散されざるを得ないものなので、その二つに影響が集中する限りは混乱は起きにくく、むしろ、IPセッションのライフタイムのスケールで動く交換系と認証系は、一度に覚えておかなければならない相手が積みあがりやすいし、それを他の分散先に放り出すのも基本的に無理なので偏りが解消しにくいわけで、そういう意味では、年末年始のトラフィック(トランザクション)には、スマートフォンは意外と優しいのかも知れません。

というのはもちろん妄想レベルの話なんですが、ともかくも、今年もよろしくお願いします。

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