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無線にゃん、ここ数年大規模通信障害を起こし、まことにもうしわけ

という話ではなくて。昨日のauとか、去年くらいのドコモとか、大規模通信障害というやつが起こっていますね。しかも、起こったらとことん大規模。

実際、この辺は避けようがないというのが実態だと思うんです。そもそも論ですが、携帯電話ネットワークというのは、どういう風に作られているのか、というと、超たくさんの基地局をたくさんの制御局に収容してそれらをほどほどの数の交換局に集約して、みたいな感じに作られているものですよね。LTE以降、この辺はIPアクセスによるフラットなネットワークを志向、なんていうことも言われていますが、実際に物理的にネットワークを作ろうとすると、どうしてもどこかに「呼処理」が集中するポイントが生じてしまいます。

呼処理というのは、簡単に言えば、ある携帯電話が正当なものであることを確認しその通信要求が正当なものであることを確認し適当なポリシーのもとに通信リソースを割り当てる、一連の処理のことです。ある一人の加入者が全国どこでも使えるようにする、という要求を満たす場合、すべてのネットワークノードは必ずつながっていなくてはなりません。さらに、その加入者の通信オプションや課金を正しく扱うためには、その加入者の情報がすべてのノードで整合性ある形でアクセスできなければなりません。今回のauの障害でもキーワードで出てきた、加入者情報の不一致云々、の話です。

仮に加入者情報サーバを二重化していたとしても、その二台のサーバの間に「データの不整合」が生じてはならないので、二台の間では常に整合性のためのやり取りが行われます。また、今回の障害の原因と言われているVoLTE交換機(IMS)も同じように「ある加入者の唯一性」を保証しなければ正常な処理はできません。そうした唯一性の保証が必要なサーバ類をたくさん置いて障害が起きても一部にしか影響が出ないようにする、というのは当然どこのキャリアもやっているわけですが、では、それらのサーバ間を直接メッシュ接続できるか? というと、そんなことはもちろん無理です。メッシュ接続というのは、例えば2台と3台のサーバ群同士をつなげる場合、6本の線を直結させる、というやり方。今や加入者情報サーバだのIMSだのは何十台という規模で、メッシュ接続するとなると数百本の接続が必要になります。もちろん、論理的にこれができることは当然ですが、じゃあ物理的にできるか、というと、一つの筐体に何百本のケーブルをつないでそれぞれが独立した回線で全国につながる、なんていうことは無理です。回りくどく書きましたが、物理的にはどこかで集約するための巨大なルータ的なものに入ることになります。このルータにはもちろんその他いろんな通信が論理的には別々の回線のようにふるまいながら収容されています。

さて、もしこのルータが壊れたら。当然、このルータも冗長化されていますから、即座にスタンバイ系に切り替わるわけで、一見、あらゆる呼処理が集中していても問題がないように思われます。ただ、この冗長化した二台のルータは、つながっています。比喩でもなんでもなく、冗長、というのは、その二台を束ねる何らかのコントローラの上で成立するものです。このコントローラ機能は、古くは独立した装置だったりしましたが、最近では二台のルータ間やルータの下位ノードとの間で成立している冗長化プロトコルのステートマシンという論理的な存在が担っています。なんにしろ、その二台の状態を把握して障害時に正しく切り替え処理を行う頭脳の役割が存在し、それを介して必ず冗長した二台のルータはつながっている、ということです。

そしてこの頭脳そのものは、冗長化できません。だから、もしこの頭脳に何らかの変調が起きると、冗長機能が働かなくなります。もちろん、その状態でもルータ自身が正しく動いていれば問題ありませんが、この頭脳が変調を起こすような設定の誤りやバグというのは、えてして、片方のルータが落ちたときに顕在化するものです。つまり、あらゆる呼処理が集中しているルータ自身、どんなに完璧な冗長を組んだとしても全台破綻、ということがありうるわけです。これは隕石が落ちてくるほどの低い確率ですが、でも実際に隕石は落ちてくる。だから、そうした事態に備えた訓練を各キャリアは欠かさないわけです。

こうした呼処理が集中する場所で通信断が起きると、先ほどの「唯一性」と「整合性」を重視するサーバたちは一斉にうごめき始めます。データの不整合が発生した可能性がある以上、何とかして最新の情報を得なければならないからです。また、そういった状態になると、端末側も通信の接続や再開ができないために、何かあったのかもしれない、ということで、通信の手続きを最初からやり直そうとします。こうしたことが雪だるま式に膨らんでいくことで設備の処理能力が枯渇し、なおかつ「唯一性」に自信が持てなくなった各種ノードは通信手続きをやめてしまうわけで、大規模な障害に至るということです。

こうした大規模な障害を回復させるには、まず、入ってくる量を減らすところから始めます。つまり、基地局で「規制」をかけます。これで、端末が何度もアクセスすることを防ぎます。次に、「唯一性」と「整合性」を回復させなければなりませんが、これも、冗長を組んだたくさんの装置を一台ずつ同期させていくという地道な作業になるはずです。なおかつ、その同期させようとするデータが大きすぎるとこれまた設備負荷になり、安全弁が働いて途中で止まり、芋づる式にデータすべてが再び不整合、なんていう面白いことが起こったりします。面白くないですねすみません。そんなことを考えると、一度集約部分で混乱が起きるとその終息にどのくらい時間がかかるかというのは全く誰にも読めない、と思われるわけです。

実際、最近は小規模な障害は比較的減っていますが、ごくまれにこういうどでかいのが起こる感じですよね。それは、障害を防ぐ仕組みがどんどん進んでいるから、ということの裏返しでもあります。標準化でも障害耐性というのは大きなテーマで、障害を防ぐ、障害が起きた時も小規模で済ます、起きた障害が速やかに収束する、そうした仕組みを標準の中にどんどん作り込んでいるので、実は日常的に小さな障害は起こってるんだけど利用者にばれるほどにまで大きくならない、みたいなところはあります。で、最後に残ったのが、こういう物理的にドカンとくるやつ。こういうのもしっかりと機能と収容加入者数をばらして分散化していけばいいわけですが、いかんせん、「唯一性」の問題があり、どこかにどうしても集中する場所が生じることになります。仮にそういうのを物理的にばらして置いたとしても、その物理的に離したサーバの間を加入者が移動するような場合には情報を交換する必要があるわけで、やっぱりそこでは最低二台の間での集中は起こります。ついでに言えば、昨今の官製値下げの影響で、各社ともぎりぎりまで設備を集約して効率化しようと頑張っています。三社ともアホみたいに利益を出しているように見えますがそれぞれがそれぞれに帳簿上の利益を減らせない大人の都合があってしわ寄せは設備投資に向かうわけです。

こういうことが起こらないようにするにはどうすればいいのか? という話については、まあぶっちゃけ、完全に物理的に隔離された冗長ネットワークがあればいいんじゃね? ってことになります。簡単に言えば、別キャリアです。もちろん別キャリアにしてローミングで救済する仕組みにしても、そこに「ローミング接続」があったら無意味です。なので、ローミング情報も何らかの形で隔離して持っていく必要があります。13桁のパスワードをかけたUSBとかで。というのは冗談にしても、実際、一つのキャリアの全域である加入者の唯一性を保証するという条件でネットワークを物理的に分断することはできないので、最悪他キャリアにローミングできる仕組みを全キャリアでしっかりと話し合った方がいいよね、と私は思うのです。もちろん、大障害の時にローミングアクセスが集中してローミング先も落ちた、なんていう本末転倒なことは必ず起こるので、ローミングでの利用については相当に絞った形にするしかないでしょうが。で、そのローミング利用料をお互いに払うようにすれば、ある意味、障害のリスクをカネで解決してるわけですから、お互いいろいろと楽になるよね。

ということで、無線にゃん、今後一切このような長期間の障害を起こすことのないようしっかりと見直しを・・・いや、別にしなくていっか。ではまた来週か来月か来年か♪

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 ロシアが近々、インターネットを完全に遮断するというニュースがありました。そんなこと本当に可能なんでしょうか。

 結論から言うと、理屈上は可能です。が、条件付きで抜け穴は作れます。

 インターネットが相互に通信できている核となっている技術は、ルートDNSサーバの存在と、経路広報の仕組みです。

 ルートDNSは世界に13個ぐらいしかない、最大の権威を持つDNSサーバで、事実上すべてのドメイン名の解決の「根っこ」になっています。近隣の権威サーバでたいていは事足りますが、国をまたぐようなドメイン名の解決ではまれにこのルートDNSが解決の役を果たすことになります。逆に言うと、最後の最後にはルートDNSが大岡裁きをしてくれることがインターネット上の他のDNSサーバの権威を支えているということです。

 ではロシアはそのルートDNSへのアクセスまでも遮断してしまって通信は成り立つのか? という疑問については、成り立ちます、と答えます。なぜなら、ルートDNSへのアクセスは遮断されているので、ロシア国内の権威DNSがルートDNSと同等の権威をもつことになるからです。どれだけ好き勝手な名前解決をしても上から怒られないんだから、やり放題です。google.co.jpというアドレスをロシア国内のてきとーなサーバのアドレスに読み替えるくらいのことをしてもいいですし、なんなら、トップレベルドメインが.ru以外のドメインは全部特定のアドレスに割り当てちゃえばいいんです。そのサーバにアクセスすると、「残念、それはプーチンのおいなりさんだ」とでも表示するようにしておけば。逆引き? 何それおいしいの? 逆引きが必要なのは(ユーザ・サーバ間の公平な)セキュリティを確保したいときくらいです。政府に都合のいい似非セキュリティを確保するためにインターネット切り離すっつてんだからセキュリティなんて確保するわけねーじゃん。

もういっこ、大切なのは、経路広報です。アドレスを解決しても、そのアドレスにパケットが飛んでいかなきゃならない、その時、大まかにこのアドレス帯はこのルータのこっちのポートの先にあるっぽいよ、とお互いに教えあっているのが、経路広報の役割です。この情報をもとに、パケットを受け取ったルータはバケツリレーでパケットを運びます。通常は、そのアドレスを持っている団体なりなんなりが自分の責任で「このアドレス帯域はここだよ」と隣のルータに広報しています。それを受け取った隣のルータが、必要なら他のアドレス帯域と併せてさらに隣のルータに伝達するわけです。

 じゃあやっぱりインターネットを遮断したらその広報情報も届かないからダメじゃん、ってなりますが、別にいいんです。だってそれやりたいんだもん。ロシア国内のルータのロシア国内からロシア国外に通じるすべてのポートをシャットダウンして、代わりに、そのポートで受け取っていた経路広報情報をあたかもロシア国内の別の場所にあるかのように偽装して広報すれば完了です。こうすることで、DNSを使わずにIPアドレスでアクセスしようとした人を、ロシア国内のてきとーなサーバに誘導することができます。そのサーバにアクセスすると、「残念、それはプーチンのおいなりさんだ」とでも表示するようにしておけば。

 という感じのことをやるんだと思いますし、実際に2019年末にそれらしい演習をやったらしいですね。詳しくはわかりませんが。演習の成果を出せる、とウキウキしている技術者がいっぱいいそうです。

 しかし。これは、ロシア国境を超える通信がIPである場合の話。非IP通信の場合は、そう簡単にはいきません。いや、インターネットっつってんだから非IP通信なんてありえないだろ、と思うことなかれ。

 一番強力で対処方法がないのは、イリジウムです。そう、あの衛星携帯電話の。あれ自体は、独自の伝送方式でポイントツーポイントで結んだトンネルの中にIPを通しているだけです。さらに重要なのが、イリジウムは衛星間通信を使って地球局がない場所から地球局がある場所へと伝送路をつなぐことができます。イリジウムが南極でも使えるのはそのためです。話題のStarlinkは、その方式がありません。あくまで、地球局から直接見える衛星を経由してユーザ端末との間でデータリンクを張る方式。なので、ロシア国内でStarlinkを使うためにはロシア国内にStarlinkの地球局を置くしかなく、その地球局が当局に抑えられたら終わりです。

 また、アナログな方法ですが、国際電話でモデム通信をする、という方法で逃れることもできます。電話は単なる音声ですから、IP遮断の対象ではありません。じゃあ電話も全部禁止ー、というところまで踏み込めるかっていうと、そこまではやり切れない気がします。フィンランド国境とかならアマチュア無線でIP交換やってる猛者もいるかもですね。

 実のところ、これに似た非IP的手法でいろんな通信をロシア国内外でやり取りしている会社は結構あると思います。衛星とか光ファイバとかで非IPの信号をやり取りしているパターンですね。今我先にとロシアから逃げ出している会社はまさにそういった会社なんじゃないですかね。拠点にロシア兵が踏み込んでくるかも、って状況では営業どころじゃないですからね。特に、データセンターを持ってる会社はやばいので、とっとと電源落としてディスク叩き割ってるんじゃないかな。

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 ニュースでは、「分離プラン義務化」ばかりが取り上げられていますが、私は、分離プラン義務化はなーんにも今の各社の事業に影響はないと思います。だって、現時点で各社とも分離してるもん。というより、見かけのプランの安さを売り込むために積極的に分離してますよね。で、文脈によって「端末代コミ」(「分割支払いサポート割引コミ」)と「端末代抜き」を使い分けて表示し、プランも安い! 端末も安い! って見せ方をしていますからね。

 それよりもこの法案の一番のキモは、「代理店(契約取次店)の届出制」です。この制度さえきっちり運用されるなら他は全くのザル法でいいです(笑)。

 普通の人は、詐欺的な表示でだまされて契約したとき、詐欺犯はケータイ会社だ、と考えます。だから、クレームは当然ケータイ会社に殺到します。

 でも、実態は違うんですよね。詐欺的な表示を率先してしているのは、代理店です。キャリアから課せられたルールを無視して詐欺的な勧誘をしているのは、代理店なんです。実のところ、詐欺的商売で名高いソフトバンクでさえ、かなり厳しく細かいところまで違反表示をしないよう指導していて、違反したら最悪代理店契約打ち切りくらいの対応をしています。それでも、代理店は「バレなければいい」の精神で積極的に違反表示をしています。民間企業に過ぎないキャリアには、全国に何千とある代理店を取り締まることは不可能なんです。特に、NTT系に多いのですが、直接の代理店の下に二次・三次代理店がついているケースがあり、こうした二次・三次代理店はほぼ無法地帯です。

 店頭であからさまな詐欺的表示をするなんてのは可愛いほうです。私が実体験したまたは聞いたことのある三次代理店の手口にはこんなものがあります。

・(訪問してきて)この地域の電柱がすべて交換されることになり、固定回線の切り替えが必要になりましたので、ご了承のサインをお願いしております。
 (実際はフレッツの勧誘、サインするのはフレッツの契約書)

・お使いの固定回線がサービス終了となりますので切り替えのお願いです。
 (実際はフレッツry)

・(auひかり使っている人に)お使いの固定回線の新プランのご紹介です。
 (実際はフレッツry)

・この地域のケーブルテレビ提供会社が変わりますので切り替えのお願いです。
 (実際はフレッツry)

 NTTの勧誘であるとも名乗らないし代理店名も当然名乗りません。下手すると、今使っているサービス会社の社名を堂々と名乗ります。怪しげな浄水器売りつけてるほうがよほどホワイトに見えるくらいの真っ黒代理店が跋扈しています。

 で、分離販売云々に戻るんですが、もし通信と端末の分離をやったとしても、店頭でそのように表示しなければ何も意味がありません。実際、キャリアがいくらちゃんと分離表示してねってお願いしても、代理店は言うことを聞きません。で、これが法で義務化されたとしても、「どうせ御上に怒られるのはうちじゃなくてキャリアだし」になるのは目に見えています。

 だからこそ、今回の改正での一番の目玉は「代理店の登録義務」と、「違反した場合は代理店が直接お咎めを受けること」なんです。法案では、(支配的事業者の)代理店に関しては問答無用で罰則を適用可能になっています。つまり、上で挙げたような勧誘があった場合は、通報すれば警察が動くってことです(笑)。すばらしい。

 ってことでね、もう私は(いろんな人から聞いた話を総合して)悪徳代理店こそが日本の通信事業の競争環境を破壊している犯人だと確信していたので、今回の改正案は諸手を挙げて賛成なのです。悪徳代理店が駆除されて、そういった悪徳代理店から間接的にコスト的な被害を受けていたキャリアが正常な価格競争に動く。これを期待したいところです。

 ですよね、メガキャリア三社さん?

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えー、auネットワークでiOS12にアップデートするとSMSが使えなくなるという話があるそうですが、どんなメカニズムでしょうか、というご質問をいただいているのですが。

知らん、アップルに聞け。

まあ一言で言うとこういうことになるんですけど。いや、単純にバグです。iOSのバグ。まあ、auのネットワークはCDMA2000と相互接続(?)している都合もあっていろいろと癖があるのは確かなんですが、それでも3GPP標準どおりに作ってあるのは確かです。なので、アップルの単純なポカ。です。

そもそもの話、しますね。アップル、iOS、バグ多いです。そんなこと無い、と主張する人も多いでしょうが、あくまで私の主観として、iOSは結構酷いOSです。

ユーザインターフェース部分に関しては、かなり洗練されています。なので、ユーザとして使う分にはほとんど不便を感じないと思います。

問題は、通信。プロトコルの実装。本当にバグ多いです。バグと言うか、分かっててやってる感じがする変な実装が多いようです。アップルが世界中で「俺様商売」をしているのはご存知のとおり、なので、あえて変な実装をしてiOSとしての変な機能を実現したとしても、世界中のほとんどのインフラベンダーは泣く泣く変な実装にあわせてアップデートします。もちろんそのお金を出すのは通信事業者。通信事業者にお金を払っているのは一般のスマホユーザ。アップルのおかしなバグまがいの実装のために結構な金額がどぶに捨てられています。Androidユーザはもっと怒っていい(笑)。

Androidもプロトコルがらみのバグは少なくないですが、メーカ独自実装の部分に集中しています。3GPPにきっちり規定された部分に関してはかなりバグ少ないです。めちゃくちゃ品質高いです。「出来上がった標準を活用する」という立場と「俺様が標準だ」という立場の違いですかね。Androidはオープンなリソースを共有しようという精神からできたOSなので、通信プロトコルの実装に関してもあくまでオープン、素直に標準(オープンリソース)どおりに作られています。そこにあえて変なメーカカスタマイズを入れた部分が大体バグを出します(笑)。

あと数年はアップルもこういう商売ができるとは思いますが、その先は見てるでしょうかね。アップルのシェアがある程度下がったどこかの段階で「こんなマイナーで変な実装、もうケアしてやるのやめようぜ」と世界中のインフラベンダが声を揃えたとたんに破綻するんじゃないかな、なんて思います。

まあ、そういいつつも、そうなったらそうなったでiPhoneを切り捨てられないいくつかの国(特に日本)では独自ネットワーク化が進みインフラコストが上がってスマホ料金が諸外国に比べてどーんとあがる、ってことになるんでしょうけど。総務省の方にはこういう視点で見てほしいですけどね。無理か。

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2017/7/12 10:02 · ニュース解説 · (No comments)

しばらくメールからの問い合わせやリクエストに反応できない時期が続いたのですが、やっぱり出来るだけお応えしたいと思いますので、まずは直近に頂いたメールより。「auの新料金プランをどう思いますか?」

率直に言えば、「はよやれや」です(笑)。

こんなもん、データ量従量化した最初期にやるべきことですよね。

LTEが従量料金でなければならなくなったのは、そもそも、LTEがすごい量のデータを扱えちゃうから。確信犯的に「無茶な使い方をしてやろう」という人が一定数いますし、そうでなくともひたすら動画・ファイルのキャッシングにいそしむ人もいます。そういう人たちは基本的に「ピークスループットいっぱいいっぱい」まで意識的に使います。一方、そうでない人は、WEBでも動画でもアプリでも、必要なときに必要なだけ使うので、通信方式がどう変わろうが実は通信プロファイルはあまり変わらなかったりします。だから、ピークスループットが速くなればなるほど、格差が広がっていき、通信事業者は無用な投資を強いられることになるわけです。

そんな事情もあって従量化したというのに、結局本当の「従量プラン」、すなわち「使った分だけ支払う」というプランは、MVNOの一部くらいにしか見られません。そりゃみんなMVNOに行きますって。話が飛びますけど、日本の製造業が軒並み不調なのは「成果主義人事制度」を導入したからだという論調があります。あらかじめ達成目標を決めてその達成度で昇給や賞与が決まる、っていう仕組み。これが上手く働かないのは、日々変わる環境に追従できず、自身の昇給のためには目の前で発生した課題を無視するしかなく、目の前で発生した課題を解決するには昇給をあきらめるしかない、そんな状況に従業員が追い込まれているからなんですね。LTEの多くのプランもそうですよね。前月までに、来月の利用量を事前申告し、そのとおりの料金を(事実上事前に)払う。結果としてその利用量を無駄なく使えるか、というと、絶対にそうはならないわけです。あらかじめ5GBと決めて翌月を迎える、急な遠出が重なってかなりの容量を使ってしまった、残る期間の遠出がないことを祈るか、いつもどおりに使うのを我慢するか、そういう状況に常に付きまとわれているわけです。

と言うのが前置き。

そんなわけで、使わなければ安いし使えば高い、といういまさら感たっぷりのauの新プラン。と言いつつも、ドコモケータイ+auスマホ+ソフバンPHSという三社体制の通信環境を持つ私としては、当然ながら新プランに変更するわけです。やっとかよ、とぶつくさと文句を言いながら。

今までこれが出来なかったのは、KDDIの社長がバカだったからではなく、KDDIの株主がバカだからです。その証拠に、このプランが発表されるや否やKDDI株価は暴落しました。バカですね。目先の減益しか見えないようで、総じて市場には近視な人しかいないみたいです。ぱそこんのもにたーばかりみてるからおめめがわるくなるんだよ、おにいちゃん?

この馬鹿な株主の反応さえ無視できるなら、ドコモもソフトバンクもすぐにでも追従したいはずです。ただ、ソフトバンクは微妙かもしれない。というのが、このプラン、モロにワイモバイルにぶつけてきたプランだからです。一年間のキャンペーンを含め料金水準がほぼ丸被り。300円のいわゆる「ネット接続基本オプション」が基本料に込みになってるってところまで同じ。ちょっと露骨すぎ(笑)。ソフバンが微妙だからなのか、ソフバン系の情報サイトでこのニュースに対するネガティブ記事連発現象が起きてます(笑)。それを言ったらUQにもモロ被りなんですけど、なんなんでしょうね、いい加減にめんどくさくなってUQの息の根止めに行ったんですかね(コラ)。

なんだかだ言いつつ、トータルで今まで見た中では一番使いやすいプランだと私は思っています。私の使い方だと何をどうやっても値下げになりますし。下手なMVNOよりは使いやすいですから、多少はMVNOへの流出の止血にはなるんじゃないですかね。さすがにワンコインMVNOなどとは比べるべくもないですけど、2000円以下でボトルネックがないMNO網を使えるってのは、それだけで(私には)十分な魅力なのです。

というかんじで。

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2017/7/12 10:02 · ニュース解説 · (No comments)
2014/10/24 10:00 · ニュース解説 · 15 comments

mineoでiPhoneが使えないっていう話について何かコメントないですか的なメールを結構たくさんもらってて、さすがに放置できないので軽く。

現状を整理すると、具体的な問題はmineo+iOS8。症状は、一瞬アンテナピクトが立つけれどすぐに圏外になる、とのこと。

なんとなーく原因に想像がついちゃったので、以下妄想。

iPhoneってもともと、かなり変な作りをしてあります。かなり低レイヤの部分にまでへんてこりんなカスタマイズを入れてあるようです。

このために、iPhoneを扱うキャリアは、iPhoneのためだけにネットワークの設定をいじくったり、あるいは専用の接続先を用意したりと苦心して、iPhoneが正常に動作するようにいろんな仕掛けをしているようです。

本来、3GPP標準の理念としては、「どのようなネットワークであっても動作するよう端末が必須機能を柔軟に実装する」という原則があり、だからこそ3GPP系端末はローミングが容易にできるわけですが、iPhoneに関してだけは本当に力関係が逆で、ネットワークがiPhoneの特殊な実装に合わせていかなきゃならないんですね。こればかりはAppleの異常な自己肥大を批判したくなりますが、まあ、これだけ世界中で支持されるプロダクトを作った以上このくらいの無茶を通したくなるのもしょうがないかもしれません。

で、どうもiPhoneって、割と上位レイヤのサービスのアクセシビリティを見て、ダメだったら低レイヤでネットワークを蹴っ飛ばす、みたいなことをするらしいんです。

一旦IPレベルで接続しても、Appleが要求するサービスへのアクセスに失敗すると、「このネットワークは出来損ないだ、使えないよ。明日ここに来てください(以下略)」みたいな感じで、ネットワークを蹴るんです。本当はあっちゃいけないことなんですけどね。

なので、おそらくiOS8で「これにアクセスできないとネットワークを蹴っ飛ばすよ」っていうサービスがいくつか追加されていて、mineoのネットワークがそのアクセスを担保できないとかなんだと思います。たぶんmineoもゲートウェイ自前で立てる感じのMVNOだと思うので、そのゲートウェイ周りにちゃんと仕掛けしておかないと、その「サービスX」が通らないんでしょう。

本当はAppleがその「サービスX」の要件を公開して対応をお願いしなきゃならないはずなんですけどね、まあそこは秘密主義のAppleです。開示を求められても「は?そんなんしらんよ?」で何も進まないでしょうね。mineoが自力でiOS8系の解析でもしなきゃ何も対応できないでしょう。

他のMVNOはその辺、偶然上手く通るようにできていたか、あるいは、裏でこっそりドコモから情報をもらっていたか(もしそうだったらたぶんApple激怒だとおもうんですけど)とかだと思います。

もしかすると今後偶然mineoがその「サービスX」の正体を突き止めてサービスを再開できるかもしれませんけど、少なくとも、Appleの秘密主義とAppleとキャリア間の超強力な秘密保持契約がある以上、難しいでしょうし、今後、同じように「サービスY」「サービスZ」が追加されていったとき他のMVNOも無事でいられるとは保証できないわけです。MVNOでiPhoneを、と思っている人は、今後も自己責任で(無責任)。でわ。

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2014/10/24 10:00 · ニュース解説 · 15 comments

ドコモがiPhoneだそうで。わーわー(棒読み)。

さんざん迷走したうえ、と言う感じですが、実はあの迷走はこのための布石だったんじゃね?とか思ったりも。ツートップ戦略なんて、ツートップ以外に対する大虐殺ですよ。狙い通りNECもパナも撤退してますし。しかし、iPhone発売が決まっていたのなら、わかるんですよね。邪魔な国内サプライヤーをなんか理由付けて叩き潰しておこう、と。そうしないとアップルノルマ達成できないし、と。サムスンやソニーなんていうグローバルメーカを潰すのは難しいから、これをあえてツートップとか言って持ち上げちゃえば、奴ら自爆すんじゃね?くらいだったんじゃないか、なんていう邪推が出来ちゃいます。シャープはともかく富士通生き残っちゃいましたねえ(ニヤニヤ)。

これから、いよいよ三社の中でどこが一番いいのか、なんていう議論が始まるんじゃないかと思うんですが、まぁそれぞれ一長一短あるんですよね。ドコモ参入となると、800MHz対応っていううわさもほんとかもしれないし、そうなるとエリアはKDDIが強そう。TD-LTE対応っていううわさが本当だとソフトバンクも結構強みがでるし。

上の両方のうわさが本当だとした場合の、今のところの私の印象はこんな感じ。

システム ドコモ=ソフトバンク>KDDI 通信システム、規格
エリア KDDI>ドコモ>ソフトバンク LTE通信できるエリアの広さ
容量 ドコモ>KDDI≒ソフトバンク LTEの通信容量
スペック ドコモ>ソフトバンク≒KDDI 通信速度等のインフラスペック
iPhone経験 ソフトバンク>KDDI>ドコモ iPhoneのサポート品目充実度
料金 ソフトバンク>KDDI≒ドコモ? よくわかんない

でわ。

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ちょっと古いネタですが、auの障害の時に音声もつながらなくなったのはどうしてでしょうか、という質問をいただいています。というのも、CDMA2000はデータと音声が独立したシステムなので仮にデータが輻輳しても音声には影響は出ないのではないか、ということからです。

普通に考えれば確かにその通りなのですが、そもそもLTEと旧システムが連携しているということを考えるとちょっと問題が複雑になってきます。

LTEが障害で全く使えない、完全にゼロ、という状態であれば、すべての端末は3Gに落ちてしまい、あとは3Gの輻輳だけが問題になってきます。CDMA2000であればシステムが独立しているので影響は出にくいかもしれません。もちろん、データ(EVDO)側が完全に輻輳でつながらないと、音声系(1x)のデータ回線に切り替わるということも起きるので(iPhoneの○印が出るアレ)、これが原因で輻輳ということは考えられますが、それでもデータ用チャネルよりは音声用チャネルを優先制御するくらいのことはやっているはずなので、この状況での影響は出にくいでしょう。

しかし、先ほどの記事の音声連携の仕組みを見るとわかるのですが、音声着信の信号(ページング)はLTE上で送信され、LTE上でそれに応答するのが連携システムの基本です。もしLTEが障害で信号がほとんど通らない状況だとすると、このページングが端末まで届かないため、音声着信ができないということになります。また、発信でも最初のネゴ(どの周波数が利用可能か、など)はLTE網を経由して他網と通信します。このため、LTE障害で信号が通らないとこれもアウトです。

上記の「ページング」や「ネゴのための信号」、実はどちらもLTEにおける特定装置を経由します。すなわち「MME」なんですね。ってことは、MMEが落ちるとどちらもダメになってしまうんです。先日のau障害はまさしくMMEの障害だったため、音声通話ができないというユーザが出てくる可能性が確かにあったわけです。当初、障害箇所はMMEっぽいという発表、それでも音声に影響ありませんと書いてあったのを見て私は「そんなわけないんだけどなぁ」と思ったくらいです。

もちろん、完全に全端末を3Gに落とせればこのタイプの通話不良は回避できるんですが、そもそもそういったこと(たとえば端末を強制Detachさせること)を制御できるMMEが死んじゃってるので、MMEが落ちたことに気づかずに在圏したままの端末はほどほど残ってしまうことになります(通信をしようとしてMMEからの応答がなくて3Gに落ちる、というような契機がないと普通はMMEが落ちていることに端末は気づかない)。いっそ全基地局の電波を止めるくらいのことをすればよかったんでしょうがそこまでやる大胆さをKDDIは持ち合わせず、半端にLTEに残ってしまった端末が音声不可になっていたものを思われます。実は私の端末もしばらくの間、LTEの電波つかんでました。

ということで、LTE障害なのに音声影響はなぜの話でした。あ、上の推測は全部憶測ですよ、念のため。

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