知ってるんですよ、私。
エリアマップで圏外になってるところ、たいてい電波届いてるんです。
だから、じっくりと確実に衛星通信できるところを見極めてるんです。
ってことで、au starlink directが始まっていくつか体験談が上がってますが、私はまだ様子を見ているのです。
いや、がっつり圏外の場所っていうと、東京に住んでると最低でも車で二時間ですよ。で、どうせ現地で車止められるところとか圏外になる場所とか探してさ迷うことが確定しているので、ほぼ一日仕事になるんですよ。知ってるんです。なので、様子を見ているのです。敵を知り己を知れば百戦ほにゃほにゃ。功遅は拙速にほにゃほにゃ。
てゆーかほんと後でも書くけど日本のキャリア頭おかしい。こんなとこまで電波飛ばすなよ。エリアマップで圏外なのに電波届いてるのほんと頭おかしい。衛星掴みたい人の苦労わかってんのか。そもそもエリ(中略)とかそういうね、人にも猫にも優しい社会を目指してほしいです。
閑話休題。
まあそういうことなんで、30年物の私のメイン番号をauに。ん? メインの番号はPHSとともに去ったのでは、って?
ふはははは、ばかめ、あそこで斃されたのは我が番号四天王でもたかが20年モノの最弱! 30年物の四天王がまだゴロゴロ残っておるわっ!
んなことはどうでもいいんですが、いくつかのレポートを見ると、思いのほか衛星と通信できるタイミングって限られてるっぽいですね。つながる時間とつながらない時間があるという話。なんとなく色々見てるとつながる時間は3割かそこらという感じです。え、600機も飛んでてそんなもん? と思うかもしれませんが、これって案外私の感覚とずれがないんですよね。
さてここで、衛星コンステレーションの話。衛星コンステレーションを図で書くとこんな感じです。
複数の斜め方向の軌道が、経度を少しずつ変えながら地球を囲むようにして展開し、その軌道上を複数の衛星がぐるぐる回っています。ついでに、地球も回っているので、常に斜め方向の軌道の位置が地上の経度と相対関係を変えているような感じです。なので、衛星をどのように制御しても特定地域を100%カバーし続けるようにするのは不可能です(いや、衛星の制御用推進剤が無限にあれば可能ですが)。そんなわけで、衛星の数が限られている以上は、統計的に衛星が見えるか見えないかという話になります。
加えて、衛星を利用する状況も影響してきます。低軌道の衛星は、大体仰角10°くらいで利用できるようになっています。つまり、地平線まで何も邪魔が無ければ、結構な時間、衛星が見えていることになります。衛星携帯電話のイリジウムなんてのもこの前提です。
一方、日本という国はちょっと頭おかしい国で、上記のような開けた場所は大体携帯電話でカバーできちゃってます。カバーできてないのは基本的に山間部。いや、この日本のエリアカバーの頭おかしいっぷりはほんと一度アメリカとか東欧とか行って確かめてみてほしいんですが(え)、ともかく、日本で衛星を使いたくなる状況ってのは次のような状況です。
なので、結構高い位置に衛星がないと衛星が使えません。ざっくり45°くらいの仰角で使うことになるんじゃないでしょうか。実際問題、地形は超重要なんです。なるべく開けた場所で電波が届いていないところ。でも開けたところだとたいてい遠方の電波受かっちゃうとかそういうアレでね。なので、日本で衛星使うっつったら、もう45°以上の仰角ですよ。じゃあそれってどのくらいの確率? っていうと、こういうの、公式は絶対書いてくれないんですよね。イリジウムも同じなんですけど。仰角10°くらいの最良条件で途切れなく使えますよっていう前提で、実際のことは何も言わないのです。
ということで、勢いで衛星シミュレータ作って検証しました。と言っても、軌道情報とかを厳密に入れるのではなく、軌道傾斜角、衛星数、衛星高度の三つのパラメータだけでモンテカルロ的にシミュレーションするやつです。コンステ内の衛星が軌道に従って運航しているとしてその位置が地上に対してどの位置にどのくらいの確率で来るかを計算した感じ。そのシミュレーションにプラスして、地上の任意の位置でその衛星が指定した仰角以上で見える確率を計算します。
傾斜角は53°という数字が出てきたのでそれ使ってます。Starlinkの直接通信衛星は現在600ほど、高度は500kmほどと言われています(たぶんちゃんと調べたらわかるけどめんどい)。サクッと結果をお見せします。
縦軸が仰角45°以上に衛星が1機以上いる確率。実際に45°以上で見える確率は3割前後で、これはいろんなレポートの感じと大体一致しているような気がします。たくさん飛んでても、実用的な角度で上を通る確率なんてこんなもんなんですよ。
さてここで私がちょっと気になってるのが、先日の楽天のAST衛星の発表です。
その中で、「S社コンステとは違い、ASTはいつでも100%使えるようになります」という発言がありました。
私、その発言にすごい違和感を持ちまして。
いや、絶対にそんなことないんですよ。あるわけがない。当初たった50機ですよ。感覚的にありえないと思ったので、同じく計算してみることに。
ASTの衛星はサービスインの時点で50機、高度は1500kmと言われています。ASTがつながりやすいと主張しているのは、この高度の部分です。高度が高いほど高い仰角で見えやすいからですね。その分、伝播距離が長いので、巨大なアンテナでリカバリしますということです。で、実際に1500kmだとどのくらい受かりが良くなるんでしょうか。
StarlinkとASTを同じグラフにプロットしています。Starlink3割くらいに対してASTはどうなるかというと、3割に少し足りない。Starlinkよりも確率的には低くなります。高緯度地域ではそこそこつながるようになりそうですが、北海道でも5割に届かないくらい(これはStarlinkも同様)。実際のところ、使えるのはこのくらいの期待でよいと思います。少なくとも「いつでも100%つながります」は結構ヤバめの発言な気がしています。
せっかくなので、10°の仰角だとどうなるかの計算結果も(たぶんどちらの衛星もこのくらいの仰角には対応してる)。
だいぶ確率上がりましたが、それでも6割を超えることはまれとみてよさそうです。また、ここまでくると、ASTがStarlinkと同等くらいまでよくなります。この辺が衛星軌道高度が高いことの恩恵と言えます。逆に言うと、山がちの日本では衛星の高さはあまり恩恵を受けにくい、衛星数を増やした方が効果的、ということになります。
最後に、StarlinkとASTの「最終形」についてシミュレーションしてみました。ASTのほうは、最終で衛星243という明確な数字が見つかりましたが、Starlinkのほうは「T-mobileのエリア補完のために最大7500機の衛星を使う免許を受けた」という記事しか見つからなかったので、7500でシミュレーションしています。仰角45°と10°をまとめて。
ASTは仰角45°前提だと8割くらいですね。一方、仰角10°だとほぼ100%。ASTの言っている100%はこのフェーズを指しているはずです。一方のStarlinkは前提の7500というのがちょっと怪しいので、まあ話半分だと思いますが、常に衛星が見えている状態です。実際、Starlinkのスマホ通信じゃないほう(お皿アンテナでブロードバンドするやつ)は全く途切れないので、それらの衛星の次期更改でスマホ通信対応させればこのレベルは不可能ではないはずです。周波数も大きく離れているので対応も容易なんじゃないかな。ちなみに話半分ってことで4000機でもシミュレーションしてみましたが同じく100%でした。さらにその半分の2000機で85%くらい(仰角45°条件)。
ということでね、こういう結果を見ても、実際はもう少しじっくりと腰を据えて、確実になってから現地調査すべきだということですよ。
さてここで、先ほどの格言で功遅は拙速にしかず、なんてのに、「おまえそれ逆やろ」と激しく突っ込んだ方もいるかと思うんですがね、ほんと、拙速、ダメ、絶対。エリアマップで割と近所にすっぽりと穴を見つけて喜び勇んで出かけて行っていつまで待っても衛星に切り替わってくれなくて「てめぇエリアマップくらいまともに塗れやぁ!」と怒りのドロップキック、みたいな拙速は本当によくないです。
