ニュースでは、「分離プラン義務化」ばかりが取り上げられていますが、私は、分離プラン義務化はなーんにも今の各社の事業に影響はないと思います。だって、現時点で各社とも分離してるもん。というより、見かけのプランの安さを売り込むために積極的に分離してますよね。で、文脈によって「端末代コミ」(「分割支払いサポート割引コミ」)と「端末代抜き」を使い分けて表示し、プランも安い! 端末も安い! って見せ方をしていますからね。
それよりもこの法案の一番のキモは、「代理店(契約取次店)の届出制」です。この制度さえきっちり運用されるなら他は全くのザル法でいいです(笑)。
普通の人は、詐欺的な表示でだまされて契約したとき、詐欺犯はケータイ会社だ、と考えます。だから、クレームは当然ケータイ会社に殺到します。
でも、実態は違うんですよね。詐欺的な表示を率先してしているのは、代理店です。キャリアから課せられたルールを無視して詐欺的な勧誘をしているのは、代理店なんです。実のところ、詐欺的商売で名高いソフトバンクでさえ、かなり厳しく細かいところまで違反表示をしないよう指導していて、違反したら最悪代理店契約打ち切りくらいの対応をしています。それでも、代理店は「バレなければいい」の精神で積極的に違反表示をしています。民間企業に過ぎないキャリアには、全国に何千とある代理店を取り締まることは不可能なんです。特に、NTT系に多いのですが、直接の代理店の下に二次・三次代理店がついているケースがあり、こうした二次・三次代理店はほぼ無法地帯です。
店頭であからさまな詐欺的表示をするなんてのは可愛いほうです。私が実体験したまたは聞いたことのある三次代理店の手口にはこんなものがあります。
・(訪問してきて)この地域の電柱がすべて交換されることになり、固定回線の切り替えが必要になりましたので、ご了承のサインをお願いしております。
(実際はフレッツの勧誘、サインするのはフレッツの契約書)
・お使いの固定回線がサービス終了となりますので切り替えのお願いです。
(実際はフレッツry)
・(auひかり使っている人に)お使いの固定回線の新プランのご紹介です。
(実際はフレッツry)
・この地域のケーブルテレビ提供会社が変わりますので切り替えのお願いです。
(実際はフレッツry)
NTTの勧誘であるとも名乗らないし代理店名も当然名乗りません。下手すると、今使っているサービス会社の社名を堂々と名乗ります。怪しげな浄水器売りつけてるほうがよほどホワイトに見えるくらいの真っ黒代理店が跋扈しています。
で、分離販売云々に戻るんですが、もし通信と端末の分離をやったとしても、店頭でそのように表示しなければ何も意味がありません。実際、キャリアがいくらちゃんと分離表示してねってお願いしても、代理店は言うことを聞きません。で、これが法で義務化されたとしても、「どうせ御上に怒られるのはうちじゃなくてキャリアだし」になるのは目に見えています。
だからこそ、今回の改正での一番の目玉は「代理店の登録義務」と、「違反した場合は代理店が直接お咎めを受けること」なんです。法案では、(支配的事業者の)代理店に関しては問答無用で罰則を適用可能になっています。つまり、上で挙げたような勧誘があった場合は、通報すれば警察が動くってことです(笑)。すばらしい。
ってことでね、もう私は(いろんな人から聞いた話を総合して)悪徳代理店こそが日本の通信事業の競争環境を破壊している犯人だと確信していたので、今回の改正案は諸手を挙げて賛成なのです。悪徳代理店が駆除されて、そういった悪徳代理店から間接的にコスト的な被害を受けていたキャリアが正常な価格競争に動く。これを期待したいところです。
ですよね、メガキャリア三社さん?