無線通信で、帯域幅と通信速度になぜ関係が出てくるのか、と言う点がいまいち理解できないです、と言うお便りをいただいたので、ちょっと大元のところから解説してみるという試み。うまくお伝えできないところが多くなりそうですが。
無線通信と言うのは、電波を使っているわけですが、電波は名前の通り「波」です。何が揺れているのかと言う話はとりあえず置いといて、その「揺れっぷり」が、周波数、帯域幅、などなどの指標で表されます。
周波数は、単純に「どのくらいの速さで揺れているか」です。1秒間に10回揺れていたら10Hz(ヘルツ)。1万回なら1万Hz。通常はk、M、Gなどの1000単位の接頭文字を使って、これを10kHzと書きます。携帯電話向けに良く使われているのは2GHzと言われるところなので、1秒間に20億回揺れている波、と言うことになります。
帯域幅と言うのは、その揺れの速さがどれくらい揺らいでいるか、と言う数字です(わかりにくいですね)。一つのアンテナから出ている電波が、ある時は9Hzで、ある時は11Hzで揺れていて、その幅の中で常に動いていてふらふらと落ち着かない、と言う状態は、「中心周波数10Hzを中心に2Hzの帯域幅を持っている」と言う様に表現されます。
ここまでが前置き。
さて、電波が揺れる、と言うのは、正確には「正弦波」のリズムで揺れています。三角関数のアレ。理論上の方程式を解くと、ちゃんと正弦波が出てくるんですね。なので、もしある電波が完璧に正弦波の波形を描いていたら、それはある周波数に完全に一致していて、周波数が揺らいでいない、と言うことになります。つまり、帯域幅がゼロ、と言う状態です。
次に、電波に情報を乗せる、と言うことを考えます。電波に情報を乗せる方法の原則は、「わざときれいな正弦波からずらす」と言うものです。正弦波の元の波形は理論的に求まるので、そのきれいな正弦波と、実際に受信した波形の差を調べることで、どんな情報を乗せたか、を求めることができます。これが無線通信の基本です。
さて一方、こうやってわざと「正弦波を汚す」ことで、電波の波の周波数が局所的に高速で変化していることになります。その変化の幅こそが「帯域幅」です。「正弦波を汚す」=「帯域幅を広げる」と言うことです。
で、乗せる情報の多さと正弦波の汚れ具合は、実はほぼ比例する、と言う簡単な関係にあります。正確には同じ汚し具合でも詰め込むビット数が異なるやり方があるのですが、実際には今実用化されている方式はビットの詰め込み具合は限界近くに来ているので、通信速度と汚れ具合がほぼ比例すると思ってよいです。
ってことで、「帯域幅を広げて高速通信を」と言っているのは、逆に、同じ電波にたくさん情報を乗せようとするとどうしても正弦波が汚れて帯域幅が広がらざるを得ない、と言う事情からなんですね。
ちなみに、単純に大量の情報を強引に乗せようとすると、データが壊れやすくなってしまいます。そこで、今主流のOFDMでは、仮想的に正弦波をたくさん作ってそこに比較的緩めに情報を乗せ、それを数学的にうまく束ねることでむちゃくちゃ広い帯域幅の通信が可能になっています。また、数学的処理に汎用性があるため、帯域幅をぐりぐり可変にできるという利点もあります。LTEでいろんな帯域幅のサービスがどんどん出てくるのはそういう理由です。
と言うことで、ざっくりと帯域幅と通信速度の関係と言うことでお送りしました。
[…] 無線帯域幅と通信速度の関係 | 無線にゃん 無線通信で、帯域幅と通信速度になぜ関係が出てくるのか、と言う点がいまいち理解できないです、と言うお便りをいただいたので、ちょっと大元のところから解説してみるという試み。うまくお伝えできないところが多くなりそうですが。 無線通信と言うのは、電波を使っているわけですが、電波は名前の通り「波」です。何が揺れているのかと言う話はとりあえず置いといて、その「揺れっぷり」が、周波数、帯域幅、などなどの指標で表… […]
今更ですが、気になって検索したらこの記事にたどり着きました。4G,5Gを高速化するために広い帯域を確保するみたいな記事が横行しており、私には違和感がありまして。
記事にある「同じ電波にたくさん情報を乗せようとするとどうしても正弦波が汚れて帯域幅が広がらざるを得ない」で納得できます。
目的と手段がぐちゃぐちゃになっていると思います。
大量のデータを電波に載せることが目的、そうするとスペクトラムが広がる(広い帯域が必要)、このため高い周波数帯を使うこと、これが手段だと考えます。