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2012/8/1 10:00 · 技術解説

Single Frequency Network (SFN)という言葉を聞いたことがある人は、このサイトの読者には多いかもしれませんが、今日はその話。

単純に日本語であらわすと、単一周波数ネットワーク。無線ネットワークにおいて、単一の周波数のみでネットワークを作る手法のことですが、まずは、もう少し基本的なところから。よく御存じの方は、10行くらい読み飛ばしてください。読み飛ばさないと大変なことになりますよ(私が)。

無線ネットワークを作るとき、まず考えなければならないのは、周波数をどうするか、です。基本的に、同じ周波数の電波はお互いに邪魔者でしかないため、出来るだけ使わないようにするのが普通です。一方で、たとえばパラボラアンテナなどを使ってビーム状に電波発射するなどという場合には隣り合っていても邪魔者にならない場合もあるので同じ周波数を再利用できます。

ある周波数が邪魔になるかならないか、邪魔になるならどうやって邪魔にならないようにするか、というのが無線ネットワーク設計なわけで、たとえば一番簡単な方法は、「電波を送受信するすべての装置ペアが異なる周波数を使うこと」です。たとえば100台の端末同士が通信する場合には100 x 100 = 10000通りの組み合わせ(送信と受信があるので)、つまり10000種類の周波数を用意すればOKです。

OKなわけないですね。周波数は限られていて、しかも最近では、一つの通信リンクに消費する周波数の幅が大きくなってきているので、ますます周波数のバリエーションを取りにくくなっています。そんなわけで、たとえば、一定以上離れた場所では電波が弱ることを利用して、それより遠くでは同じ周波数でも再利用しよう、ということを行います。

たとえば、電波が完全に一定距離できっちり止まる、とか、反射や回折など電波の経路を直線以外に変化させる要素はゼロである、という仮定を置くと、理屈上は三つの周波数があれば完全にお互いに邪魔し合わない無線ネットワークが作れます。

ただ、無線通信方式の進化は非常に激しく、特に激しいのは、やはり「一度に使う周波数幅を増やして高速化したい」という方向の進化。0.05MHzで済んでいた音声やデータ通信が、より高速を求めて0.3MHzとかになり1MHzになり5MHzになりいよいよ10MHz、20MHzという巨大な帯域を一つのリンクで使ってしまう様になってしまいました。

一方で、通信事業者に割り当てられる周波数幅には大きな変化はありません。もちろん最近になるほどなるべく「まとまった」幅が割り当てられる傾向はありますが、それでも、隣接した10~20MHzがせいぜい、という感じになっています。

古い方式、0.3MHzや1MHz程度の方式なら、それでも簡単に三つ以上の組み合わせをねん出できます。しかし、幅が5MHzとかになるともうこれは難しい。三つであれば何とか取れるかもしれないけど、現実的にはきれいに三つの周波数でぶつからないようにエリアを設計するのは無理です。

そんなわけで、帯域幅を大きくすることと同時に、「同じ周波数がぶつかっても大丈夫な方式」への移行も進みました。代表的な例が、CDMAです。CDMAでは、特定のコードでノイズの山の中に埋まった信号を掘り出すことができる方式なので、隣のリンクの周波数とぶつかってしまっても問題が起こりにくくなっています。なので、全く同じ周波数を全員が使ったとしても、(一定の限界を超えない限りは)信号そのものは潰れずにちゃんと通信ができるようになります。このように、「全員が同じ周波数を使う」のが、SFNです。

3Gと呼ばれる方式には実はいろいろあるのですが、その中で代表的、かつほぼ100%シェアを取っているものは、WCDMA(TDD版であるTD-SCDMAというのもありますが)とCDMA2000。いずれもCDMA方式を利用した方式であるため、一般的には「3GネットワークはSFNである」と言われます。

一つのリンクに必要とする帯域幅が広大化するほどにSFNに対する需要は大きくなる、というのは先ほども書いた通り。となると、3Gよりもさらに大きな帯域幅を使う4G以降でも当然SFNでないと困ります。

ところが、CDMAにはCDMAの困った問題があって、大きな帯域を一律に占拠するような使い方は得意なのですが、より細かい割り当てをするという方向はちょっと苦手。特に、いろんな割当帯域幅に上手くはまるようにシステム帯域幅を調整する、と言うのがほとんど不可能。ということで、4GではCDMAではなく、OFDMAが主に使われます。OFDMAは、帯域の端まで無駄なく使いやすいうえ、中をより細かく分けてユーザごとに割り当てることもできるし、比較的簡単に帯域幅を調節でき、しかも異なる帯域幅が同じシステム内で混在してもいい、と言う便利な方式。すべての4G候補システムが最終的にはOFDMAとなっています。

では、OFDMAでもSFNが可能なのか、と言うと、これは実は少し微妙だったりします。CDMA方式では山の中から信号を掘り出す仕組みが原理的に付与されていましたが、OFDMAはそうではありません。古いFDMAシステム、つまりリンクごとに周波数を変える、と言う方法での分離を拡張した方式なので、同じ周波数で通信すると見事にぶつかり合います。

ですので、OFDMA方式での完全なSFNは基本的にはNGです。これを解消するために、「FFR」(Fractional Frequency Reuse)という技術が考案されました。これは、OFDMの中で細かく分かれた周波数(サブキャリア)の一部を意図的にパワーを落とす、と言う方式。こうすると、そのパワーを落とされた周辺のサブキャリアだけは、あまり遠くまで届きません。

一方、隣の基地局では、同じサブキャリアブロックをフルパワーで使います。逆に、それ以外のサブキャリアブロックのパワーを落とし、他に届かないようにします。こうすることで、同じ大きな周波数帯域幅でありながら、部分的には旧来のFDMAの周波数繰り返しのようなことを実現し、セミSFN的な状態にして単一周波数で運用することが考案されました。

考案されました、で止めているのは、実はこの技術、案外使い物にならないことが判明してきちゃったからです。LTEやWiMAXでは当然この技術を使ったSFNが当初想定されていましたが、この技術を使っても思ったほど干渉が減らせない上に使えるブロックを制限してしまうことによるパフォーマンス低下が著しく、特にWiMAXでは複数周波数を使った周波数繰り返しに先祖返りしてしまっているところも多いようです。

一方、LTEの方は、リソース配置をつかさどる制御チャネルエリアはある程度干渉してもカメラのフォーカスを合わせるように強く信号を取り出せるようになっていて、一方、リソース自体の非常に細かい干渉レポート機能も持っているため、リソース単位で干渉を受けたら他のユーザととっかえっこする、というような割り当てアルゴリズムが使えるため、同じくFFRを使うよりはこの割り当てアルゴリズムによる解決の方が好まれているようです。もちろんセルの端っこでは干渉を受けるリソースは増えるのですが、それでも、統計的に干渉を受けるリソースはばらつくため、あまり周波数のぶつかりを意識しなくてもSFNが実現できる、と言う形になっているようです。これは、CDMAの一種である周波数ホッピング式CDMAにも近い挙動と言えます。

ということで、実現方法こそ違いますが、とりあえず4GでもSFNを実現することは可能です。可能ではありますが、どちらかと言うと、制御チャネルの信号強度に頼った力技に近いやり方と言えそうな気がします。すなわち、より強烈な干渉を受けやすいセルの中に小さなセルを置くようなコンセプト(ピコセル)では、この力技もあまり通用しなくなる可能性が高くなります。多くの基地局ベンダやキャリアではこのタイプの強烈な干渉をいかに排除するかの研究をしているようです。

ということで、SFNについての徒然でした。

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2012/8/1 10:00 · 技術解説 · (No comments)
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