キャッシュレス化には、懐疑的なんです。こんにちは無線にゃんです。
(なんだこの書き出しは)
なんか政府肝いりでキャッシュレス社会がどーとか言い出して猫も杓子もキャッシュレスな昨今。キャッシュレスって本当に便利かな? なんていうベーシックな疑問からもっと深堀した課題まで考えを進めると、どうしても懐疑的にならなきゃならなくて。どうなんでしょね。
キャッシュレス化を進めようとしている意図は、オリンピックとその先のインバウンドの拡大を見据えたものだろうことは容易に想像がつきます。現金って刷れば刷りっぱなしでそれ以降はコストがかからないもの、ではないんですよね。現金の回転数が増えれば損耗も増えますし、現金の流通範囲が広がれば偽造リスクも上がります。なんにしろ、使う人の数と範囲が広がることは日銀に負荷をかけることが分かっているので、そうした負荷を下げたい、という意図があるんだろうなー、と思うわけですけど。
物理カード内部にセキュアに保存された電子マネー。まあ、これは分かる。現金代替物としてはたぶんこれが唯一にして最良のソリューションだと思います。使うための準備が面倒なんですけど。
クレジットカード。これも、分かる。まあ、いろんなところに目を瞑って、なんとか認められる範囲。
QRコード決済。ないわー(笑)。
なんでこんな評価になっているのかというと、それは私が通信オタクだからです。
電子マネーは、内部の電磁的な記録を、接触か非接触かで店舗の『金庫』に移し変えるものです。接触型であればほとんど心配は有りません。まあ、接触型電子マネーって逆に見たことないんですけど。非接触でも、NFC的な近接無線は結構な信頼度が有りますから、それほど心配していません。店舗の『金庫』にたまった電子マネーも、一日に一度かそのくらいで電気通信的な手段で口座に入金すればいいわけですから、現金を使っているのとほとんど同じです。仮にその一日一度の入金作業のときに通信が途絶しても、「じゃあ明日でいっか」で済むわけです。当然ながら、入金に使う通信回線はお店が自分で契約しているものですから、シビアな入金管理をしているなら、それなりに信頼性と補償の充実した回線を契約すればよくて、通信起因で一日入金が遅れたらその分の損害を補償してもらうくらいのことまでお店でコントロールできるわけです。
クレジットカードは、支払い行為をした瞬間にセンターと通信して承認を取る必要があるため、通信途絶時に買い物が出来なくなるというリスクがあります。まあそれでも、昔ながらの『券面のカーボンコピー+サイン』って方法があるので多少決済が遅れても買い物が全く不能になるってことはないんですけど。でも、未だにクレジットカードの券面をガチャコンッとカーボンコピーできるアレ(名前知らん)を置いてるお店なんてあるんですかねぇ(笑)。もちろんそのときにはオンラインでの信用照会が出来ないので、偽カードも使い放題だし。『店を停電させる』→『偽カードのオフライン決済で買い物する』という攻撃が成立します(笑)。まあなんにしろ、ほとんどの場合はお店が用意した通信回線の信頼性に依存するということです。つまり、決済の信頼性も信用補償もお店が自分の裁量でほとんどコントロール出来るわけですね。
QRコード決済には、大きく二通りのやり方があります。『お店の印字QRをスマホで読み取り、金額を入力して支払い済み画面を店員に確認してもらう』『スマホ画面に表示したQRをお店で読み取り自動決済する』の二つ。後者は、どちらかと言うとクレジットカードに近いですね。というかほぼクレジットカード決済と同じ。決済する瞬間にお店の回線が繋がっている必要があります。回線が途絶すると、代用手段は有りません。また多くの場合、支払いごとに新しいトークンが生成されるため、客のスマホ側も通信回線が正常である必要があります。前者は、なんというか、やりたい放題です。犯罪者が(笑)。印字されたQRを読む方式は、言ってみれば、お店としてオンラインでQR決済システムに連携するシステムを(コストなどの理由で)持てないことが主な理由です。となると、スマホ画面に偽の「決済済み画面」を表示して店員に確認させたとしても、店員がその場で本当に決済が済んだのかを確認する方法が有りません。その方法を準備できるくらいなら後者の方法を取りますから。やっぱり、決済のためにそれなりに信頼性の高い回線を準備すると言うのはコストがかかります。読み取り機の購入金額とかよりも、将来的にも固定費となってしまう回線の維持費のほうが、クレジットなどの導入をためらう理由のはずで、だからこそ前者のQR決済方式がもてはやされているわけです。それが、やりたい放題(笑)。そのうち、絶対に各QR決済システムに対応した「偽決済完了画面生成アプリ」が出来ますよ。もちろんそんな不正なアプリはapp storeなりgoogle playなりで弾かれる。ほんと? その弾く作業が本当に正しく行われてるかってどうやって確認します? 海の向こうの言葉も通じない誰かの良心が決済の信用性のよりどころなんですよ。また、通信オタクの観点で言うと、どちらの方式も、『客が契約している回線の信頼性に依存している』という最大の欠点があるように思うわけです。先日のソフトバンクの全国全ユーザ断というとてつもない障害を引き合いに出すまでもなく、通信設備の小規模の障害は毎日起こっています。基地局1基が落ちるレベルの障害は発表さえされません。それがたまたま自分がお店を持つエリアで起きたら。たとえば基地局が置いてあるビルが火災になりました、基地局は全部焼け落ちてしまいました、店内の通信復旧は周辺局のアンテナ調整などで半日後です、じゃあ半日間売り上げが激減してもしょうがないとあきらめられますか。ねぇ。あきらめるしかないんです。自分とは全くかかわりのない客の契約した携帯会社の障害のせいで損害食らって、それで誰にも補償の請求を出来ない、万一海の向こうのアプリ審査者が不正アプリを見逃して不正決済で損害を食らってもアプリ掲載ストアには一切補償の請求なんて出来ない、そんな決済手段を喜んで導入しているお店はちょっとアレがアレなんじゃないかと思います。で、売り上げの0.5~2%の手数料を喜んで払ってるわけですよね、下手するとクレジットと同じくらい。ないわ~。
ってことでね、普及するのは勝手ですけど、QRコード決済の普及を以って『キャッシュレス社会を実現しました』なんて吹いてほしくないわけです(笑)。もうそれ言いたいんだったら、政府が自分のお金で国民全員に電子マネーカードと電子マネー金庫(読み取り機能付き)を配るくらいしなきゃ。あ、キャッシュレス社会の実現は一応民間企業が自主的にやってる体になってるんでしたっけ? よくわかんないや。まあそんな感じで。