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2011/6/3 10:00 · 技術解説

ベースバンドって言う言葉を無線の世界でよく聞くことがあると思うのですが、本日は「ベースバンドとはなんじゃ?」と思っている人向け。知っている人は読むの禁止。突っ込みどころ満載になる予定なので。

デジタル通信であれば、以前に書いた無線機と搬送波に書いてあることで終わりです。0と1で書かれた最後の信号、後は変調して空中に飛ばすだけ、と言う状態の信号のことを「ベースバンド信号」と呼び習わすのが通例です。

なんですけど、「ベースバンド」の本来の意味は、「高周波の搬送波に載せる直前の基底帯域」の意味なので、通信システム・方式によって、どの部分をベースバンドと呼ぶかが変わってきますし、文脈でもベースバンドと言う言葉が指す位置が結構ころころ変わってしまうという厄介な言葉だったりします。

さて最初から面倒な話はしたくないので、一度大元に戻ります。デジタル通信とは、と言うお話から。デジタル通信とは、簡単に言えば0と1で書かれた信号を使った通信方式のこと。0か1かと言うよりは、電気信号としてONかOFFかで情報を扱う、と言うのがデジタル方式。なぜデジタルなのかと言うと、それは、途中で信号が劣化してもある程度復元できるから、とか、比較的簡易に論理演算回路が組めるから、とかいろいろもとの理由はありますけど、今ではデジタルではない通信方式のほうが珍しくなっています。デジタルでないものは、たとえばAM/FMラジオとかは、音声のアナログ波形をそのまま電波に乗せるという意味ではアナログ方式。携帯プレーヤのイヤホンも、ジャックから出たアナログ波形の電気信号でスピーカを鳴らしているという意味で、アナログなインターフェースです。

さて、このようなデジタル通信方式であっても、デジタル機器内部の配線上の電気信号の伝送も電波と同じアナログ現象ではあるんですが、それをそのまま電波で飛ばすというわけには行きません。と言うのは、電波の場合、ある決まった周波数で送信しなければうまく飛ばない&そうしなければならないという、工学上&制度上の制約があります。「周波数」と言うのは、「揺れの速さ」なんですが、何の揺れか、というと、これは実は「電気信号の揺れ」なんです。

デジタル機器内部でデジタルデータが流れるということは、電気信号がONとOFFとの間でパタパタと「揺れ」が発生することです。ところがこの「揺れ」の速さは、必ずしも通信用電波が求めている「揺れ」の速さとは一致しません。むしろ大きく外れていることのほうが多いといえます。さらに、0が連続できたり1が連続できたりと言うこともあるため、パタパタの頻度を合わせるだけでもダメです。

そこで出てくるのが「搬送波」であり、デジタル的にパタパタしている信号を、もっと「高速でブルブルしている信号」のパターンの組み合わせに変換します。これが「変調」。同じ速さでブルブルしていても、ブルブルのスタート点(ブから始まるかルから始まるか)やブルブルの大きさと言ういろんなパターンについて、「ブから始まるブルブルは0」「ルから始まるルブルブは1ね」とあらかじめ取り決めをしておき、0と1に合わせてそのブルブル波を並べ、間を滑らかにつなぎ合わせて「基本はブルブル」の信号を空中に発射することになります。

さてこの「ブルブルの集合」が空中を飛ぶ電波すなわち「無線周波数(RF)」で、その前の「パタパタ」が(やっと出てきました)ベースバンドと言うことになります。なので、「高周波に乗せる前の基底信号」と言う意味ではこの「パタパタ」のことを指すことになります。

で、この「パタパタ」とは、デジタル機器内でONとOFFの電気信号が伝わっている現象のことでした。なので、電気的ベースバンドは0と1の信号列(「00100101011101010101010101010101」みたいな)と一対一で対応するため、このビット列そのものもベースバンド信号と言ったりします。

さて、デジタル信号のベースバンドはこのように0と1の信号です。そして、デジタル信号はある程度劣化しても復元できるという特徴があります。なので、デジタル特有の恩恵があったりします。

たとえば、単純に無線機の中の「ベースバンドを出力する処理装置」と「無線周波数を発生して送信する装置」を分けてしまっても大丈夫かも、と考えられます。ベースバンドの信号は比較的遠くまでエラーなしで伝えることができるからです。無線信号と言うのは外乱に弱く、回路基板上の配線でのわずかな距離でさえ致命的なダメージを受け得ることを考えると、長い距離を劣化せずに走れるというのはそれだけで大きなご利益です。

たとえばそうやって作られたのが、ベースバンドの生成だけに特化したチップすなわち「ベースバンドチップ」だったりします。ベースバンドチップはデジタル上のあらゆる処理を終え、無線に出る直前の0/1のビット列を電気信号として出力します。この0/1信号は比較的遠くまで届くため、携帯電話端末の中での部品配置に大きな自由度を生むことが出来ます。

また基地局などでは、処理装置本体は非常に大きく重いため鉄塔の上には置けませんが、アンテナと無線周波数部分だけを上におき、処理装置本体からはベースバンド信号を出す、と言うわけ方も行われます。ベースバンド信号は劣化なしに鉄塔上部に届き、そこで改めて無線信号に変調されてすぐそばのアンテナから出て行くことになるため、無線信号そのものは最低限の劣化でアンテナから出て行くことができるわけです。

また、ベースバンドがデジタルであれば、劣化無しにコピーすることも出来ます。たとえば、コピーしたベースバンドを異なる周波数の無線機に別々にぶち込んで周波数ダイバシティを効かせる、などと言うことも簡単に出来ます(そのような周波数の無駄づかいをしている例はほとんどありませんが)。もちろんデジタルなのでメモリに保存しておいて時間差で送る(時間ダイバシティを効かせる)ことも出来ます。このへん、周波数が潤沢なPHS当たりで実は実用化されていたりします。

さて、ちょっとめんどくさい話。CDMAとOFDMです。CDMAやOFDMでは、なんと2回変調します。

CDMAでは、一旦普通に変調を行った後、ランダムに生成された比較的高速の「パタパタ」信号をもう一回掛け合わせて、帯域を拡散します。さてではどこがベースバンドなのか。デジタルなベースバンドと言う意味では、一回目の変調の前のデジタルデータがベースバンドと言うことになりますが、高周波数の搬送波に乗せる直前がベースバンドだと言う原義に従えば、一旦変調して高速パタパタを掛け合わせた後の信号が正しいベースバンドと言うことになります。デジタル通信ではベースバンドはデジタル信号だと思っているとここで引っかかります。最後の無線波になる直前のデータは、既にアナログ信号だったりするわけです。

一方OFDM。OFDMでの二回変調は、デジタルビット列を並列に並べてそれぞれをサブキャリアに乗せる一回目の変調と、それをIFFTで処理した結果のぐにゃぐにゃした信号を搬送波に乗せる二回目の変調です。ここでもやはり、搬送波に乗せる直前はアナログ波になっています。

となるとCDMAやOFDMでは先ほどのデジタルならではの恩恵はないのか、と言うとそういうわけでもなく、実は高速パタパタやIFFTで変換しても出てくるのは直接のアナログ信号ではなく、最終的なアナログ信号を模したデジタルデータだったりします(音声波形をそのままデジタル表現したPCMと似たような感じ)。このデジタルデータをD/A変換してアナログ波形に直したものが最終的な「ベースバンド」です。なので、この「D/A変換をする直前のアナログ波形を模したデジタルデータ列」を使ってデジタル特有のいろいろなご利益を得ることが出来ます。CDMAやOFDMでは、正確にはアナログ信号が最終ベースバンド信号ですが、その元データのデジタルデータを「デジタルベースバンド」として扱うことができる、と言うちょっとややこしいことになっているわけです。また、CDMA/OFDMに限らず、この「最終信号をデジタルで表現したもの」を使ってデジタルの恩恵を受ける例は結構あります(これをベースバンドと呼ぶ世界もあったりして、とてもややこしい)。

最後に。ベースバンドを使った面白い通信。というか、実は、今までベースバンドと呼んでいた「0と1の信号列」を直接空中にぶちまけてしまうという恐ろしい通信方式があったりします。無線ベースバンド伝送と呼ばれていますが、USBの無線版と言われるUWBも実はこの方式(にちょっとだけ手を加えたもの)だったりします。何よりカンタンに実現できちゃうという特徴があるのですが、電気信号で0と1は電圧がONかOFFかと言う信号なので非常に広帯域の周波数成分を含むため、よほど小さい信号でないと与干渉が多すぎて使えません。その代わり、十分に小さい信号であればどこかの周波数に電力が集中することも少なくなるため他の無線に影響を与えにくい方式として使えるという利点もあったりするため、超近距離な方式で採用する例がそこそこあるようです。

と言う感じで、ベースバンドについて、でした。でわ~。

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2011/6/3 10:00 · 技術解説 · (No comments)
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