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石川先生の2.5GHz最強説についてツイートで軽く補足しようかと思っていたのですが、案外長くなりそうなので記事を一つ起こすことにしました。

さて、記事では「2.5GHzを先んじてゲットしたKDDI/SBMがそれを良く活用しており、2.5GHz帯の世界的エコシステムも整ってきたから最強のバンドなのかも」という感じの説が展開されています。これに関しては私は全く否定するところはないですし、以前私が「ドコモがなぜ品質が悪いのかのデータ見ちゃった」とつぶやいたのもこの件です。

ただ、私がそのデータを見たとき、もう一つ重要な背景が含まれてる、と感じたので、補足というか補強というか、そういう説明を改めてしておきたいと思うのです。単にいい感じの周波数ですよ、というだけではないのです。あくまでこれは私の仮説なので、これが正しいを言い張るつもりはありませんが。

さて、世の中、低い周波数と高い周波数というのがざっくりとあります。2.5GHzというのはちょうどその中間くらいではあるんですが、おおよそ、2GHz以下は低い周波数、それ以上は高い部類、くらいに考えておきます。で、高い周波数は飛びにくい、ちょっとした遮蔽でも止まっちゃう、という話はあまりに有名すぎる話なので理屈は省略しますが、とにかくそういう性質があるので、逆に、高い周波数はそもそも小さなセルになるように設計します。

こんな感じで、低い周波数で広いエリアを実現し、高い周波数をその上に重ねて通信容量を稼ぎます。基本的に携帯電話のエリア設計はこの応用で、東京都心部なんてのはすさまじい数の周波数が飛んでいますが、ど田舎のへき地ではいわゆるプラチナバンドしか飛んでない、なんてことになっているのが普通です。また、キャリアアグリゲーションなどの技術が向上したので、低い周波数を使いながら高い周波数をサブにくっつけて高速通信することもできるようになっていますので、割と柔軟に「ここは使う人多くて品質下がって来たあな、よし、周波数足したろ!」みたいな感じで品質向上施策を打つことができるようになっています。

また、これも原則論として「高い周波数は帯域幅も広いので容量もめっちゃ大きい」というのがあります。というのも含め、「容量が厳しくないところは低い周波数だけで効率よくカバーしつつ、使う人が多いところは大容量の高い周波数をガツンと置く」という戦略が成り立つわけです。

では、こんなエリアの中を端末が移動していくとどうなるか。

こんな感じで、低い周波数はべったりと塗ってあるけど高い周波数は飛び飛び、みたいになっている場合です。

こんな風に、「容量の大きい高い周波数が見えたらそっちに飛び乗って、見えなくなったら飛び降りる」という動きをするでしょうか。実際にはそういうことをする場合というのは結構レアです。

一つ目の切実な理由が、「飛び乗ったり飛び降りたりする」というのは「周波数間リセレクション」「周波数間ハンドオーバ」という動作になってしまうため、周波数サーチのために結構時間がかかるということに加え、ハンドオーバはまだしも、リセレクションの場合は「本来必要のなかった制御チャネルの通信が発生してしまう」という問題が出てきます。LTEといえど制御チャネルとデータチャネルは分かれていて、制御チャネルは容量を増加させるための各種技術がほとんど使えません。つまり、制御チャネルは容量が小さい。データチャネルを削って容量を増やすこともできますが、制御チャネルの容量を1ビット増やすためにデータチャネル容量を5ビット削る、みたいな無駄が生じます。ということで、エリアを設計するとき、特に「どの周波数帯で待ち受けするか」という設計では、こういった無駄を減らすためになるべく一続きの周波数に居続けるような設計をすることになります。

もう一つの理由は、そもそもキャリアアグリゲーションで高い周波数を後から足せるので、無理に高い周波数に飛び乗る必要はない、ということです。キャリアアグリゲーションという強力な武器があるのに周波数間リセレクションなんていう無駄なことをする必要はないよね、という話ですね。

ということで、ドコモのエリアはこのセオリー通りのエリアになっているようです。端的に言うと「高い周波数で待ち受けしない」というポリシー。で、この「待ち受け周波数」というのは、データ通信を始めようとした最初の瞬間に接続されるファーストステップの周波数であり、データ多いからキャリアアグリゲーションで周波数足すか、という判断がされるまでの間のつなぎで使われる周波数でもあります。

だんだん見えてきましたね。そうなんです。ドコモは、800MHz帯や1.7GHz帯という低めの周波数になるべく滞在するようになっているため、大概の人が最初の通信をその辺の周波数で始めてしまいます。当然、最初のちょっとの間だけとはいえ、ユーザ数が多ければバカになりません。通信のしはじめでやたらパケットが止まるのはおおよそコレ。

加えて、5G対応端末であればすぐに5G周波数を足してあげようという動作もしようとします。この5Gがまた曲者なんです。もうお分かりかと思いますが、5G周波数は高い周波数で、上の図のように飛び石エリアになってるんですね。しかし、低い周波数のセルは「このセルは対応する5Gのセルがあるよ」という情報しか持ってないので、端末に5Gが実際に見えるかどうかサーチさせて5Gを足す動作を判断します。サーチする、飛び石の端っこが見える、見えるから足したろ、5G足したんだからデータは全部そっちに流したろ、足してみたら結構品質悪くて全然データ流れんやん、というのがパケ止まりの正体。何しろ飛び石がダメなんです。

その理屈だったら、KDDIもSBMも同じでしょ? という話になるんですよね。ここで、件の2.5GHzが登場します。実際の2.5GHzはですねえ、だいたい、こんな感じになってます。

みっちり。

で、ここからが2.5GHz独特の特徴なんですが、えーと、2.5GHz帯は、携帯電話ではありません。WiMAXとかXGPとか言ってたアレ、すなわち、「BWA(ブロードバンドワイヤレスアクセス)」という携帯電話とは別のシステムなんです(法的には)。そして、建前上、BWAはそれ単体でサービスを提供できなければなりません。また、BWAは「時速○○kmの移動でもちゃんと使えるよ」という宣言を最初にしています(細かい数字忘れちゃった)。そういう約束で周波数をもらってるんですね。つまり、BWAはBWAだけできちんと高速移動を担保できる連続したエリアを作らなければならなかったという事情があったんです。当然、BWAバンドでの待ち受けも必須要件です。このためにUQとかWCPとかはめちゃくちゃ汗かいてるはずなんです。

さらにここに5G事情の後押しが入ります。5GはBWAとはまた別の話じゃん、と思われるわけですが、一方、5Gのエリア構築を進めるときに、5Gのためだけに電波塔を建てるか? という話です。いや、電波塔とは言っても都市部ではビルの屋上の間借りとかではあるんですが、そういう場所を新しく準備するには、大都市中心部のビル屋上は枯渇しすぎ。ということで、KDDIとSBMがとった手段は、BWAの基地局が置いてあるところを使っちゃおう、というアイデア。で、「高めの周波数は飛ばないのであえてセルを小さめに設計する」というのがここで活きます。あえて小さく設計したセルは、BWAより高めの5G周波数にもマッチするんです。つまり、5Gでもみっちりカバーができるんです。だから、飛び石の端っこをつかんでパケ止まり、ということが起こりにくい。5Gの大容量を効率よく使える。2.5GHz自体の容量は大した問題ではなく、その場所に5Gの超大容量周波数をみっちり展開できた、これがKDDI、SBMの品質が良い理由なんです。

そして最後の決め手は、端的に言えば各社のポリシーの問題。「連続的にみっちり確保できないのであればできるだけ低い周波数だけで待ち受けさせよう」というドコモに対し、KDDI、SBMは「高いところもみっちり確保できる前提で高い周波数で待ち受けさせよう」になってるんじゃないかと思うわけです。なので、高い周波数や5Gを足すという動作を省けるし、低い周波数がファーストステップ通信でつぶされるということを防げている、というあたりが体感品質の差になってる気がするなあ、というところまで、当初データを見たときに感じたわけです。

ということで、私の説は、「2.5G TD-LTEが最強なのではなく、それを展開するときに余計な汗水を流したことが5Gエリア構築で活きてる」なのです。

という感じで補足をさせていただきました。

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無線にゃん、ここ数年大規模通信障害を起こし、まことにもうしわけ

という話ではなくて。昨日のauとか、去年くらいのドコモとか、大規模通信障害というやつが起こっていますね。しかも、起こったらとことん大規模。

実際、この辺は避けようがないというのが実態だと思うんです。そもそも論ですが、携帯電話ネットワークというのは、どういう風に作られているのか、というと、超たくさんの基地局をたくさんの制御局に収容してそれらをほどほどの数の交換局に集約して、みたいな感じに作られているものですよね。LTE以降、この辺はIPアクセスによるフラットなネットワークを志向、なんていうことも言われていますが、実際に物理的にネットワークを作ろうとすると、どうしてもどこかに「呼処理」が集中するポイントが生じてしまいます。

呼処理というのは、簡単に言えば、ある携帯電話が正当なものであることを確認しその通信要求が正当なものであることを確認し適当なポリシーのもとに通信リソースを割り当てる、一連の処理のことです。ある一人の加入者が全国どこでも使えるようにする、という要求を満たす場合、すべてのネットワークノードは必ずつながっていなくてはなりません。さらに、その加入者の通信オプションや課金を正しく扱うためには、その加入者の情報がすべてのノードで整合性ある形でアクセスできなければなりません。今回のauの障害でもキーワードで出てきた、加入者情報の不一致云々、の話です。

仮に加入者情報サーバを二重化していたとしても、その二台のサーバの間に「データの不整合」が生じてはならないので、二台の間では常に整合性のためのやり取りが行われます。また、今回の障害の原因と言われているVoLTE交換機(IMS)も同じように「ある加入者の唯一性」を保証しなければ正常な処理はできません。そうした唯一性の保証が必要なサーバ類をたくさん置いて障害が起きても一部にしか影響が出ないようにする、というのは当然どこのキャリアもやっているわけですが、では、それらのサーバ間を直接メッシュ接続できるか? というと、そんなことはもちろん無理です。メッシュ接続というのは、例えば2台と3台のサーバ群同士をつなげる場合、6本の線を直結させる、というやり方。今や加入者情報サーバだのIMSだのは何十台という規模で、メッシュ接続するとなると数百本の接続が必要になります。もちろん、論理的にこれができることは当然ですが、じゃあ物理的にできるか、というと、一つの筐体に何百本のケーブルをつないでそれぞれが独立した回線で全国につながる、なんていうことは無理です。回りくどく書きましたが、物理的にはどこかで集約するための巨大なルータ的なものに入ることになります。このルータにはもちろんその他いろんな通信が論理的には別々の回線のようにふるまいながら収容されています。

さて、もしこのルータが壊れたら。当然、このルータも冗長化されていますから、即座にスタンバイ系に切り替わるわけで、一見、あらゆる呼処理が集中していても問題がないように思われます。ただ、この冗長化した二台のルータは、つながっています。比喩でもなんでもなく、冗長、というのは、その二台を束ねる何らかのコントローラの上で成立するものです。このコントローラ機能は、古くは独立した装置だったりしましたが、最近では二台のルータ間やルータの下位ノードとの間で成立している冗長化プロトコルのステートマシンという論理的な存在が担っています。なんにしろ、その二台の状態を把握して障害時に正しく切り替え処理を行う頭脳の役割が存在し、それを介して必ず冗長した二台のルータはつながっている、ということです。

そしてこの頭脳そのものは、冗長化できません。だから、もしこの頭脳に何らかの変調が起きると、冗長機能が働かなくなります。もちろん、その状態でもルータ自身が正しく動いていれば問題ありませんが、この頭脳が変調を起こすような設定の誤りやバグというのは、えてして、片方のルータが落ちたときに顕在化するものです。つまり、あらゆる呼処理が集中しているルータ自身、どんなに完璧な冗長を組んだとしても全台破綻、ということがありうるわけです。これは隕石が落ちてくるほどの低い確率ですが、でも実際に隕石は落ちてくる。だから、そうした事態に備えた訓練を各キャリアは欠かさないわけです。

こうした呼処理が集中する場所で通信断が起きると、先ほどの「唯一性」と「整合性」を重視するサーバたちは一斉にうごめき始めます。データの不整合が発生した可能性がある以上、何とかして最新の情報を得なければならないからです。また、そういった状態になると、端末側も通信の接続や再開ができないために、何かあったのかもしれない、ということで、通信の手続きを最初からやり直そうとします。こうしたことが雪だるま式に膨らんでいくことで設備の処理能力が枯渇し、なおかつ「唯一性」に自信が持てなくなった各種ノードは通信手続きをやめてしまうわけで、大規模な障害に至るということです。

こうした大規模な障害を回復させるには、まず、入ってくる量を減らすところから始めます。つまり、基地局で「規制」をかけます。これで、端末が何度もアクセスすることを防ぎます。次に、「唯一性」と「整合性」を回復させなければなりませんが、これも、冗長を組んだたくさんの装置を一台ずつ同期させていくという地道な作業になるはずです。なおかつ、その同期させようとするデータが大きすぎるとこれまた設備負荷になり、安全弁が働いて途中で止まり、芋づる式にデータすべてが再び不整合、なんていう面白いことが起こったりします。面白くないですねすみません。そんなことを考えると、一度集約部分で混乱が起きるとその終息にどのくらい時間がかかるかというのは全く誰にも読めない、と思われるわけです。

実際、最近は小規模な障害は比較的減っていますが、ごくまれにこういうどでかいのが起こる感じですよね。それは、障害を防ぐ仕組みがどんどん進んでいるから、ということの裏返しでもあります。標準化でも障害耐性というのは大きなテーマで、障害を防ぐ、障害が起きた時も小規模で済ます、起きた障害が速やかに収束する、そうした仕組みを標準の中にどんどん作り込んでいるので、実は日常的に小さな障害は起こってるんだけど利用者にばれるほどにまで大きくならない、みたいなところはあります。で、最後に残ったのが、こういう物理的にドカンとくるやつ。こういうのもしっかりと機能と収容加入者数をばらして分散化していけばいいわけですが、いかんせん、「唯一性」の問題があり、どこかにどうしても集中する場所が生じることになります。仮にそういうのを物理的にばらして置いたとしても、その物理的に離したサーバの間を加入者が移動するような場合には情報を交換する必要があるわけで、やっぱりそこでは最低二台の間での集中は起こります。ついでに言えば、昨今の官製値下げの影響で、各社ともぎりぎりまで設備を集約して効率化しようと頑張っています。三社ともアホみたいに利益を出しているように見えますがそれぞれがそれぞれに帳簿上の利益を減らせない大人の都合があってしわ寄せは設備投資に向かうわけです。

こういうことが起こらないようにするにはどうすればいいのか? という話については、まあぶっちゃけ、完全に物理的に隔離された冗長ネットワークがあればいいんじゃね? ってことになります。簡単に言えば、別キャリアです。もちろん別キャリアにしてローミングで救済する仕組みにしても、そこに「ローミング接続」があったら無意味です。なので、ローミング情報も何らかの形で隔離して持っていく必要があります。13桁のパスワードをかけたUSBとかで。というのは冗談にしても、実際、一つのキャリアの全域である加入者の唯一性を保証するという条件でネットワークを物理的に分断することはできないので、最悪他キャリアにローミングできる仕組みを全キャリアでしっかりと話し合った方がいいよね、と私は思うのです。もちろん、大障害の時にローミングアクセスが集中してローミング先も落ちた、なんていう本末転倒なことは必ず起こるので、ローミングでの利用については相当に絞った形にするしかないでしょうが。で、そのローミング利用料をお互いに払うようにすれば、ある意味、障害のリスクをカネで解決してるわけですから、お互いいろいろと楽になるよね。

ということで、無線にゃん、今後一切このような長期間の障害を起こすことのないようしっかりと見直しを・・・いや、別にしなくていっか。ではまた来週か来月か来年か♪

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えー、auネットワークでiOS12にアップデートするとSMSが使えなくなるという話があるそうですが、どんなメカニズムでしょうか、というご質問をいただいているのですが。

知らん、アップルに聞け。

まあ一言で言うとこういうことになるんですけど。いや、単純にバグです。iOSのバグ。まあ、auのネットワークはCDMA2000と相互接続(?)している都合もあっていろいろと癖があるのは確かなんですが、それでも3GPP標準どおりに作ってあるのは確かです。なので、アップルの単純なポカ。です。

そもそもの話、しますね。アップル、iOS、バグ多いです。そんなこと無い、と主張する人も多いでしょうが、あくまで私の主観として、iOSは結構酷いOSです。

ユーザインターフェース部分に関しては、かなり洗練されています。なので、ユーザとして使う分にはほとんど不便を感じないと思います。

問題は、通信。プロトコルの実装。本当にバグ多いです。バグと言うか、分かっててやってる感じがする変な実装が多いようです。アップルが世界中で「俺様商売」をしているのはご存知のとおり、なので、あえて変な実装をしてiOSとしての変な機能を実現したとしても、世界中のほとんどのインフラベンダーは泣く泣く変な実装にあわせてアップデートします。もちろんそのお金を出すのは通信事業者。通信事業者にお金を払っているのは一般のスマホユーザ。アップルのおかしなバグまがいの実装のために結構な金額がどぶに捨てられています。Androidユーザはもっと怒っていい(笑)。

Androidもプロトコルがらみのバグは少なくないですが、メーカ独自実装の部分に集中しています。3GPPにきっちり規定された部分に関してはかなりバグ少ないです。めちゃくちゃ品質高いです。「出来上がった標準を活用する」という立場と「俺様が標準だ」という立場の違いですかね。Androidはオープンなリソースを共有しようという精神からできたOSなので、通信プロトコルの実装に関してもあくまでオープン、素直に標準(オープンリソース)どおりに作られています。そこにあえて変なメーカカスタマイズを入れた部分が大体バグを出します(笑)。

あと数年はアップルもこういう商売ができるとは思いますが、その先は見てるでしょうかね。アップルのシェアがある程度下がったどこかの段階で「こんなマイナーで変な実装、もうケアしてやるのやめようぜ」と世界中のインフラベンダが声を揃えたとたんに破綻するんじゃないかな、なんて思います。

まあ、そういいつつも、そうなったらそうなったでiPhoneを切り捨てられないいくつかの国(特に日本)では独自ネットワーク化が進みインフラコストが上がってスマホ料金が諸外国に比べてどーんとあがる、ってことになるんでしょうけど。総務省の方にはこういう視点で見てほしいですけどね。無理か。

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+メッセージなるものが始まりました。なんでしょこれ。

ってことで、主に「LINEと何が違うねん」という質問をいただいております。そんなお話です。

最初に言います。えーと、LINEとほぼ同じです。劣化版LINEです。

いろんなところから石を投げられそうですが、今現在(2018年)の実装では、(おそらく)LINEの劣化版です。

+メッセージは、RCSというプライベート標準を使っています。RCSは国際標準だ、という向きもあるでしょうが、個人的に、RCSを作ったGSMAは私的団体と思っているので、RCS自体もプライベート標準だと私は勝手に思っています。少なくとも、この標準をガン無視してもLTE端末は作れますし。重要なのは、この私的団体に加入している人たちでさえ、採用していない例が多いということ。あえて採用しなくても代替手段がいくらでもあるし、この標準が出来るより前にとっくにこの需要を満たすアプリが世の中に満ちていたってのも、プライベート標準さを際立たせます。

で、技術的にLINEと何が違うのか、という点ですが、正直LINEの実装をはっきりと認識しているわけではないので、という逃げ道を用意しての説明になりますが、たぶんほぼ同じものです。ベースになるのは、IMS(IP Multimedia Subsystem)という、IP電話やSMSやその他いろんな「個人間の情報のやり取り」に便利に使われているシステム。名前のとおり、マルチメディアを前提としているので、文字だろうが音声だろうが画像だろうが、それなりにやり取りする仕掛けがそろっていて、その仕組みを上手く拡張(?)して作ったのがRCS、たぶんその仕組みの上で独自にメッセージのフォーマットをやり取りする仕掛けを作ったのがLINE、という感じ。

なので、IMSサーバにオンラインであることを登録して、メッセージを送るときはIMSに送信を頼み、メッセージが飛んできたらIMSから通知を受ける、という仕組み自体はもう完全に同じものです。ってことで、後追いの+メッセージにはLINEに勝てる要素は(コンテンツなどを除いて)ほぼありません(笑)。

さて、ここまでは前置き。じゃあなんでRCSなんていうめんどくさい標準仕様が出来たのか、って話です。実は、RCSが前提としているのは、使う「IMS」に特徴があるところ。

ご存知かもしれませんが、LTEのSMSや通話(VoLTE)では、IMSを使っています。ただ、このIMSはLTE上で極めて特殊に扱われるIMS、モデムチップのレベルでこのIMSとのやり取りが規定されていて、特別扱いされるもので、たとえば着信でみれば遅延もなくパケロスによる通知漏れも確実にリカバリされるなどなど、品質の上では「一般のIMSによるIPプッシュ着信」よりは数段上。バックボーンや無線上のパケットそのものもほかのデータ通信より優先処理されることになっています。災害などでデータが通じにくくなってもこのパケットは届くとか、そういうものです。RCSは、そのIMSに相乗りすることが前提です。なので、SMSやVoLTEと同じように、キャリアを超えても電話番号でメッセージを送信できる、というサービスになっているんです。

ただし。先ほども書いたとおり、現時点では「LINEの劣化版」。どういうことかというと、RCS端末には二種類あり、「ハードウェアレベルでRCSを埋め込んじゃった端末」と「アプリダウンロードでRCSに対応できる端末」が規定されています。前者の場合は、端末のHWやOSが総動員でRCSメッセージングを優先処理(というかSMS/VoLTEと同等扱い)してくれますが、後者は一般のアプリと同等。で、現時点で「アプリをダウンロードすれば使えまーす」って言っているサービスは、もう説明するまでもありませんが、後者のタイプです。つまり、LINEとRCSはモバイルネットワーク上では単なる一般アプリケーションとして同等に振舞います。ってことは、機能が少ない分だけ(略)。

ただ、auとソフトバンクは既存のSMSアプリのアップデートで対応、とあるようなので、もしかすると、LTE接続のときだけは埋め込みレベルでの対応も期待できるかもしれません。いや正直、よー分からんのですね。SIM抜いてもWi-Fiでも使えるとか言ってるし。ネットワーク機能として優先的に配送してくれる仕掛けはLTE上にしかないのに、LTE接続がなくても使えるってことは、やっぱりネットワーク機能を使わずアプリケーションレベルの実装にとどまってるのかなあ、などなど、理屈が行ったり来たりしちゃうわけです。まあ、難しいこと考えずにアプリケーションレベル実装を既存SMSアプリにアドオンしただけと考えちゃえばすっきりするわけですけど。

そんなわけで、+メッセージは電話番号でやり取りできるLINEくらいの認識でそんなに外れてないと思います。もちろん、「電話番号でやりとり」=「交換機レベルでの相互接続が必要」なので、MVNOに提供されるかどうかはMVNOの接続先のMNOの方針にもよりますし、何よりSMS/音声に対応していないSIMの場合はIMSへの登録もされない(タテマエ上)ので、対象外となります。この辺、電話番号とは別のIDによるフリーライド利用を開放するかどうか、開放するとしたら三社のうち誰がそのフリーライド用設備を管理するのか、課題山積で、当面は決着が付かないと思います。いっそLINEと相互接続するのが一番の解だと思うんですけどね。それはそれでRCS標準から外れちゃうので無理だと思いますけど。

という感じの+メッセージの一言でした。

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2017/10/11 10:02 · サービス解説 · (No comments)

Amazon Primeはどうしようか毎回悩むんですよ。

Amazonはそれなりに使うので、小額発注でも送料無料になるのは便利なんですが、それほど急ぎ出ないものを適当にカートに放り込んでおいて月一回くらい発注処理するくらいの使い方ならPrimeで無くても送料無料になるし。最近はPrime限定商品なんてのも増えてきてめんどくせーとか思うこともありますが、そういうのは他のほどほどに信頼できる通販サイトに逃げればいいし。

悩むポイントは、送料よりも、オマケ。動画とか音楽とか、最近は書籍とかの使い放題がオマケでついてくるようになったじゃないですか。あれがオマケでついてくるなら、このくらいの値段ならいいかなあ、と思うこともあるんです。

でも、よくよく調べてみると、やっぱりオマケはオマケ。動画は予告編ばっかりだし音楽も好きなジャンルはゼロだし、書籍では、先日開始時点でのラインナップがたったの千冊足らず。オマケサービスが始まるたびに、いよいよPrime契約かあ、とか思いながら調べて、その内容のショボさにどーでも良くなる、を繰り返してるんですよね。

ぶっちゃけ、私は映画も音楽もちっともたしなまない性質で、もう、コンテンツと言えば本なんです。今いろいろあって結局auのブックパス使ってるんですけど、これで読み放題ラインナップがたしか数万冊とか。これでも読みたいと思う本に出会える率は、月に10タイトルあればいい方です。なんだよ千冊って。正確には八百何冊だっけ。オマケにもなりません。

実はkindle unlimitedにも手を出してみようと思ったんですが、お勧めラインナップって出てくるタイトルが、ブックパスそっくり。え、これも読めるんだ! みたいな驚きがゼロ。要するに、出版社側が読み放題として提供してもかまわないとしているリストを出版社自身で管理していて、電子媒体各社に対して一律横並びで許諾している、みたいな感じなんですよね。

まあそれだったらキャリアに縛られないkindleのほうがいいのかも知れませんが、今まで着々と積み上げてきた数百冊分の読み放題本棚を解体するのが惜しくて、まあ要するに、本棚を人質に取られてブックパスを離れられない状態です(苦笑)。どーせラインナップはほとんど被るんだから、本棚のポータビリティとかできればいいのにねえ。ん、まてよ。読み放題アプリのデータからISBN番号か何かのキーをうまく読み出して他の読み放題アプリに引っ越すアプリとか作ったら儲かるんじゃね? アイデア料は売り上げの1%でいいので誰か作って(コラ)。

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2017/10/11 10:02 · サービス解説 · (No comments)
2015/2/20 10:00 · サービス解説 · (No comments)

光コラボレーションモデル、いわゆる光サービス卸が始まって、特に、大手携帯3キャリアについていろんな記事があふれています。

簡単に言うと、スマホと光回線をセットで使ったときどこが一番安いのか。

って記事が大量に。しかも、記事によって、ドコモがお得、auが安い、ソフバンが最安、などなど、結論が違うんです。もちろん、それぞれのキャリアがもっとも安くなる条件を無理やり作って記事を書くからそうなるんですけどね。

そんな不毛な「提灯記事合戦」に終止符を打ちます!

・・・ってことでまとめましたるがこちらです。

条件は、
・光回線+プロバイダ+スマホ人数分
・一戸建て
・期限付きキャンペーンを除くすべての割引を適用
・データ量の共有サービスはフル適用
・音声定額は考えない(ただし音声定額プランが必須の場合はその限りでない)
です。

これで、家族一人当たりのスマホ利用データ量と家族の人数ごとに、ブロードバンドとスマホ基本料+パケット定額料+その他必須料金を合算したものがもっとも安いキャリアをまとめています。

D、A、Sと単体で書いてあるのは、それぞれドコモ、au、ソフバンが一番安いパターン。ただし、一人当たりの料金の差が200円未満の僅差の場合はD(a)のように書いてあります。D(a)はドコモが最安だけどauも僅差、D(as)なら、ドコモが最安だけど三社とも僅差、という結果です。

見てのとおり、一人当たり3~4GBで家族が3~5人というボリュームゾーンは三社がひしめいていて、このあたりだと実はどこを使っても似たような料金になります。実際、比較記事ではこのあたりでぎりぎり調整して特定のキャリアが安いかのように書かれていることが多いです。

ただ、そのあたりを大きく外すと、とたんにキャリアごとの偏りが見えてきます。まず、一人当たり13GB以下だとほぼauの独壇場。ただし、一人当たりが2GB以下で家族が多い場合はドコモ・ソフバンが分け合っています。また、13GBを超えるとほぼソフバンの独壇場。単身の場合に限ってドコモが安いようです。

そんなわけで、たいていの人はどれを選んでも同じだと思うんですが、ちょっと上ブレる可能性を考えるとやっぱりauが一番お得になるんですよね。シェア前提で主回線だけ割り引きだったりデータ量の多寡で割引額が変わったりするのに比べて四の五の言わず全回線一律1410円割引、ってところから受けるイメージとほとんどずれてない感じです。ただ、一人当たりの利用が極端に少なくて上ブレてもたいしたことがなく、家族が多いなら、シェアが充実してる(シェア相手にデータ定額が必要ない)ドコモ・ソフバンが有利になってきます。

最後に、参考までに、ですが、実際の料金算出結果(円・月額・税抜)を載せておきます。

今回の計算における各パターンで一番安い料金ですが、一応注意として、いろんなオプションとかの条件でこの料金は変わってきます。ぴったりこれと同額になる人は少ないはずです。なので、あくまで参考です。ただ、同じオプションを使えば大体同じ料金なので、比較という意味では外していないはずです。

どーでもいいけど、下のほう見ると平気で10万とか超えてるんですね。月に通信費10万・・・な、なんだそれ。

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2015/2/20 10:00 · サービス解説 · (No comments)
2013/10/16 10:00 · サービス解説 · (No comments)

ユニバーサルサービス料って何?と言うご質問をいただきました。と言うのが、こちらの記事でユニバーサルサービス料って何なのかをauに聞いてみた結果と言う記事があって、その中に「携帯電話の鉄塔も入るって書いてあるけど本当?」と言う趣旨のようでして。

結論から言うと、嘘です。嘘記事、答えた「お客様センター」も大嘘の回答をしてしまっています。と言うことでご注意。

総務省の説明を読めば分かるのですが、ユニバーサルサービス料で設備整備費用の補填が認められているのはNTT東西だけです。ユニバーサルサービス、つまり、すべての国民に普遍的に供給されるべき通信サービスとして認められているのは、適格事業者はNTT東西のみ、基礎サービスは加入電話と公衆電話、あとは地域緊急機関への接続サービスだけです。

と言うことで、携帯電話の基地局鉄塔は間違ってもユニバーサルサービス料で補填される対象になることはありません。ユニバーサルサービス料として(2013年現在)1電番3円ずつ集められたお金を受け取る資格があるのはNTT東西だけです。

この記事、どうにも、「みんなが払った3円を使って田舎にも電波が届く仕組みを作ってるんですよ」と言うように読める(と言うか確実にそう書いてある)し、この3円を取るかどうかと言うのも各社が自分で勝手に決めてますよ的なニュアンスで、誤解を生むことはなはだしく、さっさと記事削除してくれないと結構まずいことになりそうなんですけどね。

あと、電気ガス水道にもありますなんて無茶を書いていますが、これ、お客様センターが本当にこんな回答をしたんですかね。絶対ありえないですよ、この記者の創作が多分に入っているように思えます。ユニバーサルサービス料の制度は、NTT東西が不採算の僻地にも最低限のサービスを届けるために負担している費用を、NTT東西と相互接続している通信事業者(携帯電話事業者に限らず)がみんなで負担しましょう、と言う「行政制度」なのであって、たとえば、電気については、確かに僻地費用をみんなで負担していますが、それはあくまで電力会社が自身の判断で全体で僻地費用を按分しましょうと内部的に解決している問題であって、「自宅に電気メータがある人は一律月々○円を負担しましょう」と言う法律なんて聞いたことないですよね。都市ガス・プロパンなどいろいろな選択肢があるガス事業や自治体が税金で整備している水道事業なんて言わずもがな。KDDIが会社の正式回答としてこんなむちゃくちゃなことを言ったんだとしたら、社長が謝罪会見すべきレベルですよ。

と言うことで、この記事に書いてあることは1ミリも信じないように(このサイトの記事、全体的に程度が低く感じるので、その程度のサイトなんでしょうけど;苦笑)。制度としてのユニバーサルサービス料は、あくまで「貧乏くじ引いたNTT東西と僻地加入者を救済するために全ての通信利用者に公平に負担をさせるしくみ」であって、携帯電話事業者の設備整備に使われたり「どちらの会社さんでもあるはず」なんていうあいまいな制度でもありません。ということで。

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2013/10/16 10:00 · サービス解説 · (No comments)
2013/9/12 10:00 · 品質動向 · 12 comments

ということで、新iPhoneの対応バンドなどの情報がそろったので、今時点での私のiPhone用インフラ評価をまとめてみます。こうやって並べてもやっぱり一長一短と言う感じですねぇ。ちょっと先のことを考えればドコモが一番よさそうな気がする、くらい。

ドコモ エリアについては、都市部のLTEカバーは強力。ただし郊外では全くKDDIに追いついていませんし、穴だらけでバッテリへのダメージも大。800での整備も加速するという話なので、今後は徐々に良くなりそうです。ドコモの特長は屋内。四社共同整備の公共トンネル(地下鉄など)では差が出ませんが、一般の民間施設をきめ細かにカバーするところはドコモが一番強いので、高品質で使える屋内施設はかなり多くなっていくはずです。
iPhoneは1.5Gを外したのですが、対応している800、1.7、2Gを持っているため、今後容量についても徐々に強化されることが見込まれます。最強を目指すと自称していますが、名実ともに最強インフラになる可能性が一番高いキャリアです。
KDDI 広さだけで言えばエリアは圧倒的。800をベースにエリアを作っているので、エリアの連続性や屋内への浸透も抜群。ただし、飛びすぎるためにS/N比がかなり劣化傾向で、都市部では通信速度・品質が下がる傾向が今後強くなっていくと思われます。これを補完するバンドの候補がすでにiPhone5で汚れている2Gしかないため、むしろ今がピークかも。ただそれを差し置いても、エリア面積で他社を圧倒する状況は当面続きそう。
容量に関しては、800と2Gと言う選択しかないため、他の二社に比べるとかなり不利。セルの分割が難しい800でそれをしなければならないなど巨額のエリア投資が必要なので、今後容量に不安が出てきます。あとペアになるシステムがLTEと親和性の低いCDMA2000なので、不整合による不都合が起こりやすいかも。
ソフトバンク 2Gと1.7Gは元々競合別キャリアとして整備してきたものなのでほとんど重複エリア、900帯のLTEを打ち始めればほどほどには広がると思われますが、それでも900帯の3Gエリアは他社800帯の広さに全くかなわないので、エリアの広さ自体での逆転は当分あり得ないです。エリア内では穴など無く連続エリアを確保できていて行儀のいいエリア構成。屋内カバーは相変わらず弱し。
900、1.7、2Gと言う三帯域を使えるという意味でドコモと同等のポテンシャルを持ちますが、900LTEの都市部整備はまだまだ先になりそう。ただし、都市部ではウィルコム譲りのストリートセルのコンセプトで高品質のマイクロセルを構築していて、容量にはかなりプラス。

[追記] 一応、各キャリアのLTEエリアの目安はっときます。

全バンド合計ロケーション数
LTEエリア
プラチナバンド (700~900MHz帯)
LTEエリア
2.1GHz帯
LTEエリア
1.7GHz帯
LTEエリア
1.5GHz帯
LTEエリア
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2013/9/12 10:00 · 品質動向 · 12 comments