実は結構前から、オトナの事情で、会社でスマートフォンを使わされています。業務連絡用の番号として。まぁ事情とやらはどうでもいいのですが、やっぱりこれはありえない。と思わざるを得ないのです。
まず、純粋な電話機として見て、誤タッチに対する対処が少なすぎます。電話アプリの作りこみはメーカごとに千差万別ではあるんですが、それでも、発着信履歴を閲覧中の誤発信は何度も経験しています。これは自分のスマホでも同じなので、作り云々というよりもそもそも「どこでも触れるどこでも反応しちゃう」という入力装置の根本的問題と言わざるを得ません。電話とタッチパネルはとことん相性が悪い。W-ZERO3シリーズでいやという程経験しましたが、Androidだからと言ってよくなっているわけではなく、むしろタッチ感度がよくなった分恐ろしいほどに悪化しています。
これが単なるおもちゃならいいんですが、業務連絡用ですから、もちろん、取引先とかからもかかってくるわけですよ。その履歴を見ている最中に誤って「ワンタッチで発信しちゃうエリア」を触っちゃって大慌てしたことが何度あったことか。情報を「閲覧する」「操作する」のには非常に優れた力を発揮するUIも、「制御する」ことには非常に弱い。制御=controlとはつまりブレーキです(not 操作=manipulate)。ハードウェアキーなら、まず物理的な抵抗力による制御があり、処理が始まっても「切断ボタン」という最強のキーがある。制御のために押さなければならない部分をいちいち視認しなきゃならないなんてこともないし、間違った操作で「制御のための操作部」が隠れてしまうということもない。
そもそもAndroidは、何かのキーにすべての処理を止めさせる最強の力を与えるということが根本的にできない作りになっているっぽいので、もうこれは、Androidの構造的欠陥というしかありません。そりゃ、「切断ボタン」に、すべてのアプリをKILLしてホームに戻す、という機能を割り当てるくらいはできるでしょうが、そういうこっちゃないんです。だってそれをやっても、バックグラウンドで勝手にやってるgoogleなんちゃらサービスを強制的に妨害することはできませんよね。フィーチャーフォンは、「切断ボタン」が無線のL1をたたっきるぐらいの強力な力を持っている、そのくらいの制御力があるから、安全に使うことができるわけですが、Androidではそれがもう完全に不可能なんですよ。特定の操作にそこまで強力な制御力を持たせる仕組みがそもそも無いように思われます。
電話に関してはこうですが、次に決定的にダメな点は、待ち受け時間。バッテリの持ち。
いろんなアプリやサービスが裏で非同期で動いていて、それらがいちいちネットワーク接続を立ち上げちゃう、というのが、バッテリの持ちの悪さを一番に加速しています。もちろん、でかすぎる表示パネルもそうですけど、見えない悪役という意味で、悪質。いや、そういうとき、そのアプリの消費電力としては、アプリのCPU使用時間換算分しか出てこないじゃないですか。そのアプリが原因でOSが勝手に立ち上げた無線リンクがアプリによる通信が終わった後もドーマントに落ちるまでだらだらと消費する電力、ってのは、アプリの消費電力には乗らないわけじゃないですか。だけど、スマートフォンというデバイスの中で無線機は紛れもなくトップクラスの電力食い部品です。ほんとうに、無線なめるなと言いたい。何kmも先の基地局に届くように電波を送るって、エネルギー収支でいえば、大声を出して数km先の人と会話するのと同じレベルですよ。無指向性アンテナなので、メガホンもなしです。大変ですね。そのくらい大変なことを、アプリが何バイトか送りたいんすけどというたびにOSはノーチェックで無線機にやらせているんですよ。しかも、無線起動には熱心でも切断することに関しては無線機が自発的にドーマントに落ちることにまかせっきりでOSはノーケア。もうありえないんですよ。
フィーチャーフォンなら、OSが内蔵アプリやインストールされたアプリの通信契機を能動的に制御していますし、些細なトリガーでいきなり無線ONにするようなへまはやらないしもちろんデータ送信が終わったらOSが能動的に無線を切りに行くんです。ところが、Androidは、本当に些細な契機でじゃんじゃん無線をONにしちゃう。というか、無線を制御している低レイヤのデータリンクサービスが、とりあえずトリガ(OSアクティブ化やデータ送出)があったら無線ONにしちゃえ、っていうつくりっぽいし、その上のIPレイヤも送出パケットを誰かが作ったら即座にデータリンクに投げつけちゃえ、ってつくりで、しかもそのIPレイヤをすべてのネットワークアクセス権のあるアプリが好き勝手に叩ける、っていう構造。このどこにも、「デバイス一体としての制御」をしている部分が介在・制御していないっぽい作りなんですよね。もうこれも、Androidの構造的欠陥の最たるものですよ。権限さえ認めれば後は何をやってもいい、っていうつくり。
だから、ちょっと前から、「Android OSを採用しつつ、フィーチャーフォンの操作性と形状・デザインを採用したものが出てくれば」なんてことを言ってますけど、そういいつつ、たぶんAndroidが今の形である限りそういうものは出てこないだろうな、とも思ってるんです。少なくとも、出来あいのAndroidを使う限りは。Android OSの制御力の低さ。これがすべてです。特に低レイヤ機能(通話、通信)に対してのリアルタイム制御を、別の管理アプリがOS経由で統合制御する、なんていうつくりができないですよね(できるやり方あったら訂正します)。それができない限り、フィーチャーフォンレベルの安心・安全は実現できないと勝手に断言します。
googleのAndroidチームの人たちはcontrolとmanipulateの違いを全然わかってないんじゃないの、とまでは言わないですが、manipulate >>>>> controlな現状は、実用OSとしてはちょっと欠陥品と言わざるを得ません。ちょっと前に書いた、AndroidはiOSの数倍のトランザクションを発生させる、なんていう話も、controlの技術のなさ(あるいは技術はあってもあえて無視していること)がよく表れた例だと思うんです。
何となく愚痴とも文句ともつかないことをグダグダと書いちゃいましたが、いや、最近、とある会社が「従来型フィーチャーフォンは完全撤退してそれっぽいのをAndroidベースで代替します」なんて言ってるのを聞いて、フィーチャーフォンの未来は暗いなぁ、と思ったので書かせていただきました。でわ。
[…] Androidの制御力 | 無線にゃん: Androidの制御力 | 無線にゃん […]
確かに、フィーチャーフォンの終話ボタンは強力なのでミスったときとっさに押して「無かったこと」にしやすいです。
iphoneとwindows phoneはandroid同様、タッチパネルを持つデバイスですが、同じ問題点を抱えているのでしょうか。
それと、OSの制御力の面を3者で比較してみると面白いかもしれませんね。
iPhoneを機種変更して2世代に渡って使い続けていますが、電話するときのタッチミスはないですね。思い通りに動きます。
物理キーとしての終話ボタンはありませんが、電話をかけると画面上に大きく表示され、押せばちゃんと反応します。
物理ボタンのホームボタンとスリープボタンはアプリの終了から再起動まで、いざというときにいろいろ役に立ちます。
誤タッチやバッテリーの持ちなどの問題はタッチパネル云々というより、Android特有の問題だと思います。
[…] ドコモ、2012年夏モデル19機種を発表 失望した!フィーチャーフォン実質ゼロに心底失望した!・・・嘘です。ある程度、というかかなりの確度でこうなることは予想してました。ていうか予想してなきゃこんなエントリ書きません。今後、コストの高いフィーチャーフォンはゼロか最低限の1~2機種程度、あとは全部コストが安くて粗製乱造の効くスマートフォンになっていくんだろうなぁ、という失望感が当時の記事を書く原動力。今更、こんな発表があったからって失望してなんていられません。好きなアプリが選べるからということを免罪符にした出荷品の品質の低さを許容する空気は、本当にスマートフォンのコストを低く保っていて、なおかつパケット定額セット率はほぼ100%だろうし、一度スマートフォンで甘い汁を吸うとやめられなくなるのは当然だろうなぁ、という気がします。そのしわ寄せはすべてユーザ体感とインフラに向かっているんですけど、ユーザ体感はほっとくとしても、キャリアの中のインフラ部門が本当に弱っているんだろうなぁ、と感じます。会社内のパワーゲーム的に。昔は、コールモデルを保つためには端末にこういう仕掛けを入れねばならん、なんていう事情で端末の仕様が決まっていたくらいなのに、今は、「あ、新しい端末、勝手にこんな通信するんでコールモデル変わります、よろしくね」なんて感じだと思います。結果、インフラのスペックと実地の乖離は以前よりはるかに激しく、時間帯による品質悪化の幅も非常に大きくなっている、ということなのかなぁ、と。前にも書いたけど、ドコモ、最近の時間帯によるデータ速度低下は本当にすごい。ドコモってこんな会社だっけ、ってくらい。それは、スマートフォンのコスト効果、増収効果があまりにでかすぎて、インフラ部門の発言力が弱まった結果だと私は勝手に分析しています。 […]
[…] 36: SIM無しさん ID:1xAbTCZE http://wnyan.jp/3166 Androidの制御力 […]