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2011/8/18 10:00 · 技術解説

非接触充電規格Qiについて、磁界現象を使っているものなので、携帯電話のデバイス、たとえば無線チップや電子コンパスに影響があるのではないでしょうか、と言うご質問をいただきました。

結論から言うと、全く影響がないということはありえません。非接触充電も電波も電子コンパスも電気・磁気に関わる現象ですし、影響がないと考えるほうが無理があります。

しかし。それはもちろん、「影響があるか、ないか」と言う二元論なら「当然ある」と言うことになるというだけで、影響を無視できるほど最小化できるか、と言う質問に対しても同じくYESと答えることが出来ます。むしろ、Qi機器開発ではこの点が一つの技術上の課題といえそうです。

まずは無線への影響。Qi自体がどの程度の周波数で発振しているのか、寡聞にして正しい値は知りませんが、検索すると145kHzと言う推測値がもっともらしい模様。まずはこの「振動する磁界」の影響を考えて見ます。

電界でも磁界でも、それが振動すれば、基本的に「電波」が発射されます。つまり、無線への影響を見る場合、この「電波」が、その機器が使いたい電波と干渉するかどうか、が一つのポイント。で、まぁ大体答えは分かるかと思いますが、GHzオーダーの電波を使う携帯電話と、kHzオーダーの電波では、桁が6つも違うわけで、さすがに直接干渉することはありえません。

ただ、この世に完璧な正弦波と言うものを作るデバイスが存在しない以上、どのような電波源でも、目的外帯域の周波数成分を作ってしまいます。ではそれがどの程度になるのか。これはおそらくほとんど心配ないレベル。Qiについてはそれが非常に小さくなるような規格であるという点が生きてきます。と言うのが、Qiは共鳴型結合と言うものを使っていて、言ってみれば、ある周波数に共鳴する「アンテナ」同士をぴったりとくっつけて電力を伝送する方式。つまり、アンテナと言う共鳴デバイスによってあまりに外れた不要周波数はほとんどカットされてしまうんですね。

むしろ、無線への影響で言えば、そのアンテナ自体が問題。無線のアンテナと言うのは、その形状や寸法で対応周波数や放射方向・利得が変化し、それが回路内に実装した状態で最適となるように作ってあります。しかし、もしここに、別の誘電体(金属)が近づいてくると、非接触充電の電気的な結合と同じように、アンテナと近づいた金属が「結合」してしまい、アンテナのみかけの形状・寸法が変わってしまうんです。となると、そのアンテナは最高の実力を発揮できなくなる、と言うことに。

一つの課題は、端末自身が持つ無線アンテナとQiアンテナの干渉。ただ、これについては、それら両方が実装された状態で最適になるように設計すれば良いだけの話。ただ、ここに、Qi充電パッドがつくと話が変わって、と言うのも、Qi充電パッドのアンテナは、端末のQiアンテナと「結合」してしまいます。もし、無線アンテナがQiアンテナとの結合を前提として最適化してあると、結合する相手のQiアンテナが充電パッド側アンテナと「結合」して実効寸法が変わる、つまり、無線アンテナから見た「結合相手」のプロファイルが変わってしまうということになってしまうわけです。となると、それと結合した無線アンテナの見かけのプロファイルも変わってしまうため、最適からずれることになります。

なので、こういったことを防ぐために、無線アンテナとQiアンテナは出来るだけ結合が小さくなるように慎重に配置しなければならないだろうと考えられます。要するに無線アンテナから見ればQiアンテナは「邪魔な障害物」なので、できるだけ遠くに置きましょう、と言うことです。

さて、では、電子コンパスなどその他のセンサーへの影響はどうでしょうか。まず電子コンパス。これは、地磁気を直接計測しているので、他の磁束源が近くにあることはそれを大きく狂わす可能性があります。ただ、Qiの給電電界自体は135kHzと言う高速な振動をしているため、時間平均すればこの影響は取り去れます。一方、位置あわせのためのパッドの磁石、これは否応なく影響が出てくる可能性があります。この位置あわせ磁石(磁性体)、どのように働くのかはあまり分かりません。最初の位置あわせのときだけ磁力を使い、それ以外はOFFなのかもしれません。であれば、位置合わせのときだけ、電子コンパスがちょっと狂うかも、と言うことがありえます。

その他はどうでしょうか。影響を受けそうなものと言うと加速度センサーとか。加速度センサーはごく小さな稼動部を持ち、その稼動部の運動で加速度を検出しているらしいのですが、もしその稼動部が磁力に反応するようだと、検出地は大きく狂います。と言っても、実際はその稼動部にわざわざ磁力に弱い鉄やニッケルを使うということはありませんので、こちらは影響はないでしょう。その他も、影響を受けそうなデバイスと言うのはほとんどなさそうです。

と言うことで、簡単に言ってしまえば、Qiの影響は、Qiのための比較的大きなアンテナを新たに内蔵しなければならない、と言う意味では、これまで無線デバイスを次々と増やしてきた携帯電話がまた新たに無線デバイスを一つ増やすという意味に集約できそうです。要するにアンテナ干渉が起こりうる最も面倒な問題で、こればかりは設計で回避するしかないということ。であれば、実際に市場に出てくる機器では、この問題は原則回避されていると考えて良いでしょう。もちろん、携帯電話をスチール机の引き出しにしまえば感度が悪くなるのと同じで、やたらと金属を使った充電パッドを使うと感度が落ちてしまうのは仕方が無いので、携帯電話用にはそういった金属装飾の少ないものを選ぶほうが気持ち程度ですがよろしいのでは、と言う程度。

と言うことで、Qiの携帯電話への影響についてでした。

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2011/8/18 10:00 · 技術解説 · (No comments)
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