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2011/9/2 10:00 · 技術解説

なんか携帯・PHSの某大御所さんから「UVカットガラスと携帯電話」って感じでネタフリされちゃったので(笑)、考えて見ます。

と言ってもUVカットガラスは分かりません。どういう仕組みか。google先生に調べてもらったところ、カット対象としたい周波数に対して、周波数選択性の屈折素材をガラス表面に積層する、なんてことを書いてあったりします。

さて、「屈折率」と言うのは、光、すなわち電磁波に対する特性です。屈折率が高いというのは、電磁波の進行速度が遅くなることを意味します。これをうまく積層することで、UV周波数帯の電磁波を反射あるいは吸収しているのだと思われます。

また、同じく「屈折率」とは「誘電率」でもあります。比較的大きな誘電率を持つ物体は、いくつかの特別な場合を除いて、電波に対してはある種の障害物として振舞うことが知られています。誘電率の大きな水中では減衰が激しく、無線通信は難しいといわれるのはこのため。

あわせて考えれば、「UVカットガラスは誘電率の高い素材を含む」→「誘電率の高い素材中では電波が減衰し易い」→「UVカットガラスを通ると電波は減衰する」と結論できます。

純粋な理屈上はこういえるんですけど、もちろん、UVカットガラスの誘電率変異層の厚みなんてたかが知れています。そこで減衰するにしてもそんなに大きなものではないと思います。また、ガラスの厚みに対して、実際の無線通信に使われる電磁波の波長はあまりに長いため、波が薄膜を容易に乗り越えてしまい影響を出にくくするとも言えます。

ってことで、UVカットガラスで電波を使った通信が阻害されるというのは、起こることは起こるんだけどその効果は非常に小さい、と私は考えます。まぁそもそもが、UV周波数帯域だけをカットしてそれより周波数の低い通常の可視光を透過したい、って言う目的のUVカットガラスなわけで、可視光よりもさらに低い周波数の電波は、トレンドとしては「よりカットされにくい」方向なはずなんですよね。

ただ、その薄膜が導電体である可能性もあります(よく分かりませんけど、可能性として)。この場合、そのガラスは巨大なアンテナです。アンテナとしてのガラスに吸収された電力は抵抗損失となって消えてしまいます。もちろん薄膜はあまりに薄いので電波の大半は乗り越えて行きます。しかし、無線機のアンテナをその導電体薄膜に近づけた場合はさらに違う効果が出てきます。無線機アンテナが導電体薄膜と電磁気的に結合し、無線機アンテナの特性が変わる(普通は劣化する)と言うことが起こりうるからです。簡単に言えば無線機アンテナで集めた電力が結合した導電体薄膜に漏れ出して損失してしまう、と言うこと。

と言うことで一応、ガラスで電波が減衰する可能性について考えてみましたが、多分よほど電波が弱くないと気になるほど減衰はしないんじゃないかなぁ、と思います。むしろ、たとえばUVカットガラス使用の車の中で電波がいまいち・・・と言う場合、車のボディが鉄と言う電波反射・遮断材で出来ている効果のほうが大きそう。遮断はもちろん、ボンネット反射による自己干渉とか。

と言うことで簡単ですが、UVカットガラスの電波への影響について考えてみました。

[追記]
「問題になるのは熱線反射ガラスのほうでは?」と言う指摘を受けました。なにそれ。googleせんせー!!

・・・あー、あの、表面に金属を蒸着したやつね。あぁ、確かに、あれなら、UVカットガラスよりもはるかに強力に電波を遮断してくれます。上で書いた、「薄膜が導電体の場合」に相当します。ガラス自体がアンテナ&負荷になって電波を消費してくれますので。

とはいえ、確かに減衰は大きいけど、それで通らないくらいならそこは元々圏外なんだよね、くらいの勢いなんですよね。大きいといっても知れてるんですよ。たとえば携帯電話のエリア設計では、そのくらいの減衰は織り込み済み、のはず。一般に、屋外→屋内の減衰は5dBとされていて、多分金属蒸着ガラスによる減衰はその数%というレベルなんじゃないかなぁ、よほどガラス形状とかがマッチしない限り。何しろ携帯も無線LANも、波長が数cmのオーダーでしょ、赤外線を反射するといっても、その波長は数マイクロメートルですから、4桁も違うんですよ。電波が「反射」と言うことは多分ありえなくて、「偶発的アンテナ」としての減衰効果しか出てこないはず。

とはいえ元々がぎりぎりの電波状況なら、そういうガラスが致命的になる可能性は十分にあります。無線LANや携帯電話のエリアにとっては0.1dBでも結構影響がでかいですからね。屋外の公衆システムを活用するのであれば、なるべく熱線反射ガラスのビルは避ける、と言うくらいのことは考えても良いかも知れません(さもなくば屋内局を設置してもらうとかになっちゃう)。

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2011/9/2 10:00 · 技術解説 · 2 comments
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2 Comments to “UVカットガラスで無線通信が妨害されるか”

  1. rawpepper

    > なるべく熱線反射ガラスのビルは避ける

    なるほどー…

    欧州車には結構フロントガラスにこのフィルムを貼っているのが有るんですよね。

    なので、ETC のアンテナをフロントガラスに設置する場合、その部分のフィルムをはぐようにってマニュアルには書いてあります。

  2. myasu1959

    うーん、電磁シールドの概念からすると、導電性皮膜のシールド効果は高いと思うんですがね?
    極端に薄い場合は除き少なくとも数db以上は有るでしょう。
    はるか昔に学んだ空中戦・電波伝搬では、負荷として動作するとシールド効果は低下するって覚えてたんですが…
    電磁シールドが主目的のガラスだと1GHz以上だと最低でも20dB以上の減衰は有るようです
    更に熱戦吸収・反射ガラスとしても機能します。

    P.S.
    不注意てメールフォームで送信しちゃいました。
    そちらは無視してくださいませ...

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