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2010/11/15 10:00 · 事業考察, 技術解説

「Skype au」の料金体系発表と言うニュースについて、本日の無線にゃん。

前にもちょっと書きましたが、Skype auは、音声通話に関しては回線交換を使うというかなり独特なサービスになっています。

どうして回線交換を使うのか、と言う点についてはいろいろな理由もあると思いますが、大きなところでは二つ、一つは「遅延が無い」、もう一つは「データ通信と干渉しない」と言うところだと思います。

auのネットワークは、CDMA2000とひとくくりにされてはいますが、実際には音声と低速データの「1x網」と高速データの「EV-DO網」に分かれています。auのデータで脚光を浴びているのはもっぱら「EV-DO網」を使った高速通信で、しかしその陰でこっそりと音声は「1x網」を使っている、と言う状況です。

このネットワークの分かれ方、単に論理的に区別されているだけでなく、実際の無線周波数が違っています。1x網の周波数とEV-DO網の周波数は別々なんです。と言うことは、1xの通信はどんなに無茶をしてもEV-DOに影響を与えないし、逆にEV-DO通信が1xに干渉することもありません。同じ帯域内でやりくりしているHSDPAとは根本的に設計が異なっています。

さて、もし単にSkypeのアプリを入れただけだとどうなるか。当然ながら、SkypeがIPで近所のSkypeノードに接続し、音声発呼をするとそのノードとの間でSkypeなプロトコルをIPの上にのせてやり取りして音声通話を行うことになります。IPがのっているのは当然データ通信接続なので、他の通信と同じパケット通信帯域を共有することになります。

この場合、音声がのったパケットがノードに届けられるのは、無線パケット送信機会がどのように端末に割り当てられるかによります。無線パケットのスケジュールが確保できなければパケットの送信はどんどん遅れるし、しかしSkypeアプリやIPプロトコルスタックは、原則として無線プロトコルスタックで渋滞が起こっていることを知る術がありません。ある程度以上パケットがたまると原始的なフロー制御が働いてバッファがいっぱいになったことを知ることが出来るだけで、さっき送ったパケットがどのくらい遅れているのか、をリアルタイムに知ることは出来ない、と言う問題があります。

と言う話になると、次に来るのが「QoSの仕組みを入れれば」と言うことになるかと思います。実際、IPパケットのTOSを使うことでIPまでしか知らないSkypeアプリからでもQoSをいじくれる可能性はありますが、そもそも無線の割当を決める基地局が「次のIPパケットのTOS値」を知る術がありません。となると端末や基地局は回線単位でしかQoSを制御できなくなりますが、Skypeを使っていれば他のパケットも一緒くたに優先処理されてしまう、つまり要するにSkype対応端末ばかりになればみんな同じ優先度になってしまいQoS自体が無意味になるということになってしまいます。

と言うことから、「Skypeの音声だけ」を優先する、と考えると、逆にSkype音声だけを別回線にしてしまえばよい、ならいっそ音声回線にしてしまえ、と言うことにたどり着いたものと思われます。なかなか賢い。これにより、データ回線は従来どおり電波状況に応じて公平に割当をするだけで良いし、キャリアサービスとしてのSkypeの品質も高く保てる。また、Skypeは余裕があればいくらでも音声帯域を広げて音質を向上させようとしますが、もしそれをパケット回線でやられるとパケットの逼迫が避けられません。音声回線交換なら最初から決まった帯域しか消費せず、パケットへの影響を確実に避けられます。

と言うのが、音声回線交換を使う理由の私なりの考察ですが、もちろんこれだけの利点があっても、やはりそれに見合うだけのリスクがあります。何より、「音声向け帯域を消費する」と言う最大の問題。パケットであれば統計効果で利用効率は上がりますが、音声回線はどんなに頑張っても利用効率は変えられません。どんな内容であれ律儀に1回線分のリソースを消費します。

で、前にも書きましたが、確かに無線の逼迫も厳しいのですが、同時に、回線交換特有の問題として「回線交換のための処理リソース」を確保してしまうという問題もあります。これが、基地局から制御局から交換局から中継局まで、一律に消費しちゃう。パケットのようにパケット単位で一瞬一瞬の処理リソースを食われるのではなく、完全に長時間にわたってハードウェアのリソースを占有しちゃう。いやこの手の装置って、意外とこういう処理リソースの過負荷に弱いんですよ、私の知る限り。しかもこの手の装置は寿命が長く、しかもその開発した時代でもかなり型落ちの「枯れたデバイス」を使う傾向があるため、処理能力は最新の家庭のPCにも劣る、ってくらい貧弱だったりします。少なくとも、回線を確保しているルートの中のどれか1台がこんな貧弱な機器だったら、あっという間に処理能力オーバーです。

いや、たとえば「ソフトバンクは音声定額やってるしそれで大丈夫じゃん」と言う声もあるかと思いますが、ソフトバンクの場合は何より最繁時間帯は定額外にするという対策がしてある。それに対してSkype auはそういった対策も無く、しかも無料通話相手は全世界のすべてのSkypeだというんですから、ちょっと予想のつかないトラフィックになってしまうんじゃないかと。そういうわけで私は「無料は難しいんじゃないかな」と予想したわけですが、見事に裏切ってくれました。

と言うことで、無料ですよ、Skype宛ての回線交換品質の音声通話が。ただ、一応逃げ道を用意していて「2011年11月まで」なんて言っていますが、そこになって「やっぱ無理」とか言って逃げたらいくらなんでも笑いものになるでしょう。何らかの対策案もあっての暴挙(笑)だとは思いますが、これはちょっと面白いサービスになるかもしれません。特に、これが一般のケータイ(フィーチャーフォン)に搭載されたら。売り方にもよりますが「電話」のあり方ががらっと変わるかも。

以上個人的にはちょっと面白いと思っているSkype au。例の、スマートフォン向けの割引サービスもあるので、一台調達して使ってみたいかも、なんて考えている今日この頃。といったところで、本日はこれにて。

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2010/11/15 10:00 · 事業考察, 技術解説 · 4 comments
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4 Comments to “Skype auの回線交換について”

  1. […] This post was mentioned on Twitter by HR, Hatebu and コータロ, 無線にゃん. 無線にゃん said: Skype auの回線交換について http://wnyan.jp/134 […]

  2. Ko

    一応ドコモもアンドロイドマーケットにSkypeアプリの日本向けがでれば
    規制しないなどというはなしもあるようですが、たしかに回線交換か
    否かというのはじゅうようですよねぇ。

    夜間のトラフィックはそのとおりですけど
    >しかも無料通話相手は全世界のすべてのSkypeだというんですから、ちょっと予想のつかない

    これについてはあまり関係ないような。
    Skype au対応機の数だけ考えりゃいいので、
    サービスインからいきなり全機種でそうなるわけでもないし、
    キャリア間通話無料の場合と比較した場合
    むしろ、発信、着信共にauでない可能性がある分
    余裕があると思いますけど。
    時差による、時間帯の多様性についても
    結局はau側が当然国内であるからしてそれも大きな変化は
    無いんじゃないかと。
    まぁグローバル展開してる企業が利用したら夜間以外のトラフィックのほうが少し影響あるかも知れないですが、
    所詮法人利用では何時間も電話し続ける暇な人はそれほどいないでしょうし。

  3. Ko

    >むしろ、発信、着信共に
    のところがオカシイので

    発信、着信の両方共が・・・というふうに理解していただければと

  4. […] それでも気になります。 詳しい解説は他のサイト ◆にお任せするとして。。。 […]

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