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2010/11/1 10:00 · 技術解説

アクセス方式、と言う言葉があります。今回はそのお話。

アクセス方式と言うとかなり大雑把な言葉になってしまいますが、無線通信、特に移動体通信では、一つの搬送波に複数の回線を収容するためにどのような方式を使うのか、のことを多重化方式、多元アクセス方式、あるいは単にアクセス方式と言うことがあります。と言うことで、今回の話は多元アクセス方式について。

アクセス方式には実はいろんな種類があって、しかもそれぞれが組み合わせできるものなんで、なかなか個別に解説してもらちがあかない部分もありまして、そう言うわけで今回は、今ケータイで使われている技術で主要なFDMAとTDMAとCDMAについて同じ比喩を使いつつ解説してみたいと思います。

で、ここでこまかーい話をしてもいいんですけど、そんな話つまんないですよね?(と決めつけてみる)。と言うことで、ざっと技術的な部分を流したあとで、「だからなんなんだ」という点を特に解説してみます。

まずTDMA。これは、時分割多重アクセスと訳されますが、電波を細切れにして、順々に別の人が使うようにする、と言う方式。椅子が一脚あったら、みんなで順番に座れば良いよね、っていう方式です。

さて一方のCDMAは、符号分割多重アクセスと訳されますが、これがちょっと説明が難しい。まず、あらかじめぐっちゃぐちゃのランダムな電波を用意しておきます。で、実際の情報をこのランダムな電波に掛け合わせて乗せてしまうんです。受け取った側は、もちろんランダムな電波なんでノイズにしか見えません。でも、あらかじめ作っておいた「ランダムな電波」を受け取った側でも用意しておけば、そのランダムな電波の部分だけを特殊な方法で取り出すことができます。するとあら不思議、元の情報が復元されてしまうんです。で、このランダムな電波をたくさん用意しておけば、違う情報をそれぞれのランダムな電波に乗せることで別々の人に届けることができるわけです。これは、送信パワーに余裕があることを利用して、無理矢理同じ電波でパワーだけを変えてどんどん重ねて送信してしまうことになります。少し乱暴に例えると、一脚の椅子があった場合、座っている人の膝の上にどんどん座ってしまうような方式です

最後にFDMAは、と言うと、椅子が一脚ではなく、使いたい人数分の椅子を用意して、一人一脚を使ってもらうという方法です。もちろん椅子の数は無限ではないですし、むしろ非常に限られた数と言うことを考えると、一人一脚を占拠するのはあまり効率的ではなく、最近はこの方式はほとんど使われません。

これが各方式の簡単な説明なんですが、さてこういう方式であるとどういうことが起こるのか?と言うお話。ここからはともかく椅子のたとえで進めます。

例えば、座りたい人が新しく加わる場合。FDMAでは、新しい人のためには空いている椅子がないといけません。もし椅子がなければゲームオーバー。その代わり、椅子さえあれば何も考えずに新しい椅子の場所を教えてあげて通信を開始することができます。

TDMAでは、順々に椅子を譲り合っているので、まずはその譲り合うルールとタイミングを新しい人に教えなければなりません。また、もしすぐ隣にもう一つ椅子があって、同じく順々に譲り合っているとすると、立つタイミングと座るタイミングを合わせた方がよりスムーズに公平な椅子の利用ができます。

一方のCDMAでは、とにかく今座っている人の一番上の人の膝に座っちゃえば良いんです。何も考えずにとりあえずひょいと一番上に座る。これでOKなんですよね。すぐ隣に別の椅子があっても別に関係なし。好きなときに座って好きなときに立てば良いわけです。

こうやってみると、新しく人を増やすのは、FDMAやTDMAよりCDMAの方が簡単なようです。実際のケータイでも、FDMAやTDMAよりはCDMAの方が柔軟にチャンネルを増やすことができるようになっています。

では、さらにどんどん座りたい人が増えたらどうしましょう。

FDMAでは、座れる椅子を増やすことでしか対応できませんが、椅子は国から許可をもらわないと増やすことはできません。しかも実際には、この椅子が増えることはきわめて稀で、それはそもそもが、使える椅子の数が物理的に制限されてしまっているからです。この壁がある以上、FDMAで座れる人を増やすことはかなり困難です。

TDMAの場合は、交代交代で座っていますが、一人当たりどのくらいの時間座ってられるかと言う数字の最低限値をあらかじめ決めておいて、それが達成できないほど人が増えたら、新しい人は拒否します。もっと簡単に言えば、例えばこの椅子は最大10人で交代で使いますよ、と決めておいて、11人以上になったら遠慮してもらうと言うことです。その時点で、隣に新しい椅子を用意すればOK、ってこと。

では一方のCDMAでは、と言うと、どんどんどんどん座っていくと、いずれ一番下の人が悲鳴をあげます。最終的には一番下の人が耐えきれずに潰れてしまうでしょう。もちろん潰れてしまっては殺人事件ですから、それは絶対に防がなければなりません。もちろんせっかく座るんですから、少なくとも、一番下の人が快適だと思っていられる限界までには新たに入る人を止めなければなりません。ではその一番下の人が快適だと思える膝の上の人数は?と言われると、個人の感覚や鍛え方による部分が大きいわけです。実際のCDMAも同じで、どこまで利用者を詰め込めるかは、一番環境が悪い人の位置や条件などなどで変わってしまうんです。だから、20人膝の上にのせても平気な人もいれば5人で悲鳴を上げる人もいるわけで、一体全体どの時点で隣に新しい椅子を用意すれば良いのか、いまいちよくわからない、と言う部分があります。

というような感じで、大体各アクセス方式の特徴がぼんやりとわかるのではないかと思ったりするわけですが、FDMAではあらかじめ完全に需要が予測できているようなときにしか使えませんが設計はきわめて簡単、TDMAは今ある所にチャンネルを増やすのはちょっと大変だけど、あらかじめ需要予測して設計しておくのは比較的簡単、一方、CDMAは、ちょっと無理すればチャンネルは簡単に増やせるけれど、本当の限界に来る瞬間を予測するのが難しいため結局余裕のある設計が必要となる、と言う感じになります。

もちろんそれぞれもっといろんな細かい技術的な違いはあるのですが、ケータイ屋さんがいずれかの方式を使う、と言うときに、どれを選ぶかは結局この大きな基準、容量の柔軟性と設計の難易度、が一番の指標になると思うわけですね。

最後に各方式の最近のトレンド。FDMA方式自体は、最近では全く使われていません。その一方、FDMAを高度に拡張したOFDMA方式は高速無線通信の主流となっています。これはFDMAの直接の拡張と言うよりは広帯域通信を周波数分割するという方向で発展したもの。これについてはまた後日。

TDMA方式では、TDMA分割数をフレキシブルにするなどの工夫を取り入れた方式なども提案されていましたが、原則的には他の方式と組み合わせて使う要素技術としての活用が多くなっています。特に、高速大容量通信をする場合にユーザ間の割当のフレキシビリティを増すために使われており、HSDPAやEVDOでは、CDMAに加えてTDMAでユーザを分離することにより瞬間最大風速を大幅に増すことに成功しています。

CDMAは、ある意味で現在主流であらゆる通信でCDMAまたはそれと似通った原理が活用されています。たとえばOFDMAベースの通信方式であっても、重要な情報を擬似ランダム的に周波数方向に散らすことで強度を高めるということを行っています。これはCDMA方式の一つである周波数ホッピングの考え方です。

と言うような感じで、今回はアクセス方式をまとめてざっくりと解説してみました。

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2010/11/1 10:00 · 技術解説 · 1 comment
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1 Comment to “アクセス方式 (加筆再掲)”

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