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2010/11/24 10:00 · 技術解説

今日はLTEについて。今一番旬の技術をまだ解説していなかったことに驚き。LTE技術はなんだかんだでいろいろと盛り込んでかなり豪華な規格になっちゃってるので、今日はとりあえず入門篇。

LTEは、OFDM技術をベースとした、最大20MHzのシステムです。基本的には3GPP系のシステムを受け継ぎ、GSMやW-CDMAと同じような制御を行っていますが、とはいえリソースのあり方やコアネットワークのアーキテクチャががらりと変わっているため、「発展させた方式」とは言い切れないところです。

まずは簡単な諸元を並べますと、20MHz 2x2MIMOで下り150Mbps、10MHz同で75Mbpsの通信速度を実現できるとされています。ちなみに上り速度はそれぞれ50Mbps、25Mbps(上りはMIMO不可)。また、周波数幅としては、20MHz、10MHz、5MHz、3MHz、1.4MHzが定義されていて、表記上の速度は単純に周波数幅に比例しています。この辺、制御用のリソースも含めて表記するHSDPA/LTE系と、除いて表記するWiMAX/XGPで差が出てくることもWiMAX陣営より指摘されていたりもしますが。また、MIMOは4×4まで定義されているため、単純なスペック上はこの倍の速度が可能とされています。

多重アクセスは、OFDMA/TDMAとなっていて、一応SDMA(MU-MIMO)も定義されています。基本的には、OFDMで分けた周波数方向のサブキャリアごとにユーザ割り当てを行い、それを時間方向に分割してダイナミックに変化させていくという方式。周波数方向の割り当て単位は180kHz毎、20MHzで100分割、10MHzで50分割以下同文、時間方向は0.5ms毎に切替、と言う感じです。ちなみにこの180kHz x 1msのことを「リソースブロック(RB)」と呼んでいます。

この割り当てを、0.5ms毎に基地局から端末に通知しているため、きわめてフレキシブルにリソースの割り当てを行うことができます。もちろん毎回全端末宛にこれだけの通知を行うのならそれに消費されるリソースも大変なものになるわけですが、ここも通知領域の共通化と通知フォーマットの可変できわめてコンパクトに収めています。

もちろん、報知情報やページングなどの制御情報も同じOFDMA多重の中にちりばめられていますが、この辺の詳細は省略。ただ、これに関しては従来の携帯電話方式と同じく、規則正しい周期的な送信で、間欠受信を前提とした構成となっている、と言うのが、旧来の方式から受け継いだ特徴です。

一方、旧来からがらりと変わっているのが、ネットワークアーキテクチャ。携帯電話ネットワークではおなじみだった「階層アーキテクチャ」から昨今流行の「フラットアーキテクチャ」に大きく変化し、制御系もユーザデータ系もそれぞれ一つのゲートウェイ的存在の下に全ての基地局が直接ぶら下がる、と言う形になっています。

従来は、いわゆる「RNC」とかなんとか言う、無線リソースを管理するノードが基地局より上位に一つおいてあり、このノードが基地局の無線リソースを管理し、なおかつ、ネットワーク側管理ノードとのやり取りの仲介をしていました。この辺の機能が、全て基地局側に分散化されたのが、LTEネットワークの大きな特徴であり、これによってTDDとFDDと言う全く異なるアクセス方式が同じ規格として策定され得ることになったわけです。

話はそれますが、LTEにはTDDモードも存在します。ここまで書いた諸元は全てFDDをベースに話を進めていますが、個人的には、主流はTDDになると思っています。とにかく使いやすいし作りやすいし。最大の問題である「同期ネットワーク」をどうするか、ですが、少なくとも国内ではイーモバ以外全ての事業者が同期ネットワークのノウハウを持っているはず(ドコモ=PHS後期、KDDI=CDMA2000、ソフトバンク=ウィルコムPHS+XGP)なので、いずれはFDD+TDDのデュアルネットワークになるんじゃないかなぁ、と。

このようなもので、基本的には、OFDMを使って超高速の通信を、と言うコンセプトはWiMAXと同じです。実際に周波数利用効率の面でもほとんど変わりがありませんが、一方、拡張性と柔軟性ではWiMAXよりもかなり作りこまれています。

先ほども書いたとおり、最小1.4MHzと言うシステムも定義されているため、たとえばGSM10波分だけを置き換えて使うというような使い方もできます(厳密には7波で足りますがガードバンドも考えるとこのくらいが現実的)。たとえばGPRSまでで言えば1波約170kbps、10波合計でも1.7Mbpsだったのが、LTE1.4MHzを1波にするだけで最大10Mbps、しかもそれを一つの波の中でスケジューリングできるため統計効果で容量の向上も期待できます。データ通信需要が増えたとき、下手にEDGEやDC-EDGEに対応するために基地局ボードを入れ替えるくらいなら、LTE化してしまったほうが効率が良くなるわけです。この点、占有帯域幅が固定的なW-CDMAよりもLTEのほうが大きな利点を持っていると言えます。

また、現状では最大20MHzとされていますが、そもそもがOFDMなので、連続的にであれば(理論上は)いくらでも帯域を広げることができます。既に3GPPでは40MHzシステム規格が策定されていて、しかもこれが将来的には100MHzくらいまではほとんど手を入れずに拡張できるように作られています。3.5GHz帯などのような広大な帯域が使えるようになったときに、この利点はきわめて強力です。

もちろん、同じ3GPP規格なので、HSDPAでやっているインチキ、DC-HSPAのように複数波を使うような高速化コンセプトも受け継いでいて、連続的に大きな帯域が取れないような狭い帯域同士を束ねて高速化することもできるようになるとされています(複数RFと強力なA/Dが必要なので本当に実現するかはちょっとだけ眉唾)。

と言うことで、一応入門篇と言うことで、全体的に大雑把な説明になってしまいましたが、具体的にこんなところを解説してほしい、などなどご意見大募集中ですので、お気軽にコメントまたはメールでどうぞー。

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2010/11/24 10:00 · 技術解説 · 2 comments
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2 Comments to “LTE (1.入門篇)”

  1. […] This post was mentioned on Twitter by 山田志門(Shimon Yamada), kotake and DJ okamOTO, 無線にゃん. 無線にゃん said: LTE (入門篇) http://wnyan.jp/148 […]

  2. […] ドコモがTD-LTEをまったくやろうとしないのは、PHS後期のノウハウってのを完全に捨てちゃってだれも知らない、なんて事情があったりして。 […]

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