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2010/11/29 10:00 · 技術解説

本日は、代表的な高速モバイル通信方式同士を比較しながらそれぞれの特徴を解説してみる回。昨今代表的なモバイル通信方式といえば、おおよそ、HSPA系、WiMAX、LTEと言うことになるかと思いますので、この三つを比べながら解説してみます。

まずは基本的な方式。二重化方式(送信と受信を区別する方式)としては、HSPAとLTEが周波数を分けるFDD、WiMAXが時間で分けるいわゆるピンポン方式、TDDと言う大きな違いがあり、一方、多元化方式(多数のユーザ同士を区別する方式)に関しては、HSPAがCDMA、WiMAXとLTEがOFDMを使うという違いがあります。

これらのことから、まずは周波数・エリア構築の面で大きな違いが出てきます。周波数の使い方として、FDD方式は上下対称のペア周波数が、ある程度きちんと距離を置いて必要となります。「同じ幅で」「ある程度距離を置き」「なおかつ離れすぎず」と言う周波数を、歴史的にさまざまな理由で分割され利用されている周波数領域の中で探すのはなかなか大変です。周波数の利用と言う面ではFDDであるLTE(FDD)、HSPAは大きな不利点を持っています。

一方、TDDはそういった強い制約はありませんが、連続した面的エリアを構築する場合は、必ず連続した領域同士が同じタイミングで動作していなければなりません。この要求仕様はかなり厳しく、数マイクロ秒と言う単位で同期させなければならない場合が多くなります(要求精度はシステムや地形などによって変わります)。GPS信号を受信して波頭に合わせれば良いんでしょ?と言うのが技術的な回答になるわけですが、これ、実は意外なほど大掛かりな仕組みが必要になってきたりします。加えて屋内対策に決定的な弱点を持つことになり、よほどノウハウが無いと同期ネットワークにはなかなか手が出せないのが実情です。

また、CDMA、OFDMと言う多元方式によっても違いがあり、CDMAはシステム帯域幅を可変できないため、小さな周波数を利用したり大周波数を束ねたりと言うことは(原則として)出来ません。OFDMは帯域幅を可変させることに対してはきわめて柔軟で、LTEもWiMAXもさまざまな帯域幅のシステムが定義されています。また、技術的にOFDMのほうが同じ周波数帯域幅でも通信速度を向上させやすいとされています。

逆に、OFDMは電力方向の柔軟性が低くなっています。一つは、端末の送信電力が制限されやすくなること、もう一つは、エリア内で隣接セルから到来する電力による干渉がCDMAよりもかなり大きく影響するということです。これは、端末のバッテリー寿命や送信速度に影響があることに加え、セル同士のオーバーラップがあまり大きく許されないためCDMAよりも厳密なセル配置が必要となり、反射による影響の大きな都心部などでは容易にセル半径を小さくしにくくなります。もちろん、屋内-屋外システムでも干渉するため、屋内対策は困難になります。

こうやって並べてみると、それぞれの特徴が分かってくるのではないでしょうか。HSPA系は、とにかく周波数帯域の自由度が低くシステムスペックも低めに固定されがちになる代わりにエリア設計は一番容易な条件がそろいます。WiMAXはその真逆で、周波数帯域とスペックの自由度はきわめて柔軟ですが、エリア設計は難しく特に屋内対策に弱点を持つようになります。LTEはちょうどその中間くらいの特性を持っている、と考えればよいでしょう。

もちろんLTEにもTDD版があり、これはかなりWiMAXと似た特性を持つようになります。とはいえ、上り方向がSC-FDMAである分、端末の要件が緩和されているため、上り方向の電力に余裕が出来、結果としてエリアは広げやすくなっていると言えます。

さて、二重化方式と多元方式だけでかなり長くなってしまいましたので、スペックなどについては次回以降とします。本日はこれにて。

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2010/11/29 10:00 · 技術解説 · 1 comment
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1 Comment to “HSPA vs WiMAX vs LTE (1)”

  1. […] This post was mentioned on Twitter by 山田志門(Shimon Yamada), 無線にゃん. 無線にゃん said: HSPA vs WiMAX vs LTE (1) http://wnyan.jp/154 […]

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