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2010/11/26 12:00 · 事業考察, 技術解説

今も続いているのかな?ちょっと前に話題になった、ソフトバンクの上り回線が64kbpsに制限されている、と言うお話を、技術的に考察してみます。

まず事の真偽は置いておいて、そういう制御自体は出来るのか?と言うお話があるわけですが、答えから書きますと、簡単に出来ます。

特に、「全員一律に規制する」と言うのなら、きわめて簡単に出来ちゃいます。W-CDMAでは、パケット通信とはいえ、その通信チャンネルの速度が通信開始時に基地局から割り当てられ、それを守って通信が行われます。実際にはデータのあるときには相当するチャンネルを占有するような形で割り当てられるのですが、それが非常に細かく制御されているため、パケット単位でのやり取りに見える、と言うような感じです(やや語弊あり)。

とすると、基地局のパラメータをちょこっといじって、「上り方向は64kbpsしか割り当てません」と言うフラグを立てちゃう(と言うか他の速度のチャンネルの割当をOFFにしちゃう)だけで規制は実現できます。実際は、何らかの「規制レベル値」がダイナミックに通知可能になっていて、規制レベル値ごとに各チャンネルの割当可否パラメータセットがあらかじめ設定されている、と言う感じだと思います。

おそらくこれまでも時々こういう制御はやっていたはずですし、一日の中でも時間帯によってこういうことをやっていた可能性は高いと思います。また、加入者別に規制することも可能なようになったと聞きますので、加入プラン別にこういう規制が行われていたと考えられます。もちろんこれはソフトバンクだけでなく、ドコモやauも当然同じような制御をやっているはずです。

さて問題は、なぜここまで大規模に、長時間規制をするような羽目になってしまったのか、と言う点です。もちろん元々ソフトバンクは無線容量が足りずそれに加えてiPhoneと言うトラフィック大量生産装置を販売数一位になる勢いで売ったわけで、無線容量が逼迫するのは分からないでもありません。しかし、インターネットトラフィックのメインである「下り」ではなく「上り」が長時間にわたって規制されてしまったのは不自然に思えます。

私は、この規制は、単にトラフィック増大による容量逼迫によるものだけとは思っていません。実は、もう一つ、ソフトバンクのネットワークに重大なインパクトを与えるものがあります。それは、フェムトセル。

ご存知のとおり、フェムトセルは、ほとんどの場合、自社ネットワークの周波数に干渉を及ぼします。そしてあまり知られていませんが、フェムトセルによる干渉は、実は「下り」よりも「上り」のほうがはるかに深刻だったりします。

「下り」に関しては、フェムトセルが出す電波が、屋外セルの出す電波に重なって、屋外セルの受信品質が多少悪くなることが考えられますが、実際には、屋外セルの電力に比べてフェムトセルの電力は微々たる物です。干渉を与える範囲はきわめて狭い範囲に限られ、そういった範囲(せいぜい数メートル)さえ無視してしまえば、ネットワーク全体に影響を与えることはまずありません。

ところが上りはそうは行きません。フェムトセルは出力も小さいですが、アンテナもきわめて小さく、利得も低いものです。このため、これと通信するための端末は、フェムトセルに近い場所でも比較的大きな電力を送信してしまいます。その端末の発射した電波は、基本的には全方向に広がり、最終的には周辺の屋外セルの基地局に受信されてしまいます。

屋外セルにとっては、このフェムトセル配下の端末が出した電波は完全な「干渉波」です。しかも、他の屋外端末が送信しているのと同程度の電力で飛んできます。さらにフェムトセルが増えれば、このフェムト端末も増え、屋外セルが受ける干渉も単純に足し算で増えます。CDMA方式にとって、「干渉量」=「容量消費」です。何も通信に寄与しない干渉波により、大量の容量が浪費されてしまう可能性があるわけです。

このようなわけがあるので、ドコモもauも、フェムトセルを開始しておきながら、都市部では積極的に展開していません。一方、ソフトバンクはもともとの下り容量不足を補うためにものすごい勢いで配っています。となれば当然、この「上り」の干渉は確実に深刻化するはずです。

今回の上り規制は、こういった事情があるのではないかと考えています。もちろん、ソフトバンクが全個宅にフェムトセルを配ってしまえば、そもそも干渉を受ける屋外セルに端末がいなくなるので、規制をする必要もなくなりますが、それは実質不可能です。一方、配ってしまったフェムトを引き上げるわけにも行きませんから、「ソフトバンクの上り容量逼迫」は、根本的な問題として残ってしまうと考えられます。

と言うような感じでソフトバンク上り規制を考察してみましたが、この推察が当たっているかどうかは分かりません。しかし、少なくともフェムトセルを増やす限り上り回線は逼迫に向かうというのは事実ですので、一時的に解消しても、今後も同じく上りサービス品質は劣化する方向じゃないかなぁ、と思います。と行ったところで、本日はこれにて。

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2010/11/26 12:00 · 事業考察, 技術解説 · 9 comments
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9 Comments to “フェムトセルによる干渉”

  1. […] This post was mentioned on Twitter by DJ okamOTO, 無線にゃん. 無線にゃん said: フェムトセルによる干渉 http://wnyan.jp/152 […]

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  6. […] ネットワーク強化どころかむしろ上り速度低下の要因にすらなってる http://wnyan.jp/152 という悲惨な状況みたいだよ。 […]

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  9. […] 基本的にドコモの「マイエリア」は、エリア補完目的ではなく、フェムトセル特有の特徴を活かした単独のサービス。もちろんエリア補完目的に使うこともできますが、十分にエリアである場合でも、申し込めば設置してもらえる、そういうタイプのサービスです。となると問題になるのが、干渉です。 […]

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