三方式を比べるの話、一応最終回の今回は、各方式の「将来性」を考えてみたいと思います。

「将来性」と言うときは、ほぼ9割以上のその含意は「速度向上」になるかと思いますが、それぞれの方式で今後どのような速度向上が考えられているのでしょうか。

HSPAに関しては、基本的には、複数の周波数を複数の基地局から受信するという方向での速度向上が進められています。基本的な周波数の広さは5MHzのまま、複数束ねるという方式です。現在実用化されているものが、DC-HSDPAで、二つのセル（基地局）からの電波を同時に受信し、倍の速度を得ます。

このとき、「受信機が複数になって大変だ」と言うことになりかねませんが、DC-HSDPAではまずは「同じ運用バンドに含まれる周波数同士」だけを束ねることになっています。この場合、二つのセルからの電波が含まれる大きな範囲をがばっと一つの受信機で受信して、内部で二つのオフセットだけ分離するという方法で作れるため、比較的受信機の規模を小さくすることができます。この延長線上の方式として、QC-HSDPA（Quadra-Cell HSDPA）と言うものも開発が進んでいるようです。

また、実際には同じ運用バンドで束ねる複数の周波数を取れるという条件はなかなか難しいので、異なる運用バンド同士を束ねるという方式も検討されています（DB-HSDPA；Dual-Band HSDPA）。これらの高速化で、今のところ最大4つの周波数を束ねることが出来ることになるので、合計40MHzを消費して82Mbpsをピーク速度とした方式までが見込まれています。

WiMAXに関しては、周波数帯域幅を広げるとともにMIMO多重数を大幅に拡大する方式（WiMAX2）が検討されています。実はこの辺はまだあやふやな部分も残っているのですが、帯域幅を最大20MHzから40MHzに広げ、MIMO多重数を4にすることで、あるいは、最大帯域幅を20MHzのままMIMO多重数を8にすることで、いずれも300Mbps以上の伝送速度を実現する、としています。

MIMO多重数を増やすことも帯域幅を直接広げることも、OFDMの特長をうまく活かした方法で、特に帯域幅に限って言えば、さらに直線的に帯域幅を広げることで高速化を図ることが出来ます。

LTEに関しては既に具体的にLTE-Advanceと言う拡張方式が開発中です。こちらもWiMAXと同じく、帯域幅の拡大とMIMO多重数の拡張がメイン。こっちもまだあやふやですが、帯域幅を最大100MHzに増やし、MIMO多重数を8にまで増やすことで、最大3Gbpsだのなんだのと言う数字が出てき始めています。もちろんここまで来るとそもそもデバイスの処理能力的に不可能問題なので、実質の最大スペックは300Mbpsとする方向となっている模様です。

と言うことで、OFDMを使った二方式がそろって300Mbps超を狙い、HSPA系がCDMAであることの限界からか、100Mbps以下にとどまる、と言うのが、三方式を比較したときの結論となります。

もちろん、実際の周波数割当を考えると、各方式が目指している周波数帯域幅が取れることはまずありえないので、現実的なラインを割当から考えてみると、連続20MHzがある2GHz帯でなら、HSPA系が4波取れて、ピーク80Mbpsが可能、同帯域でLTEも20MHz取れるので、20MHzでの規格めいいっぱいを考えると600Mbps、ただし端末能力的に300Mbpsに絞られる形、WiMAXは2.5GHz帯で連続30MHzがあるのでこれをすべて同時に使えるとすれば250Mbpsを超えるくらい、と言う形です。

このような感じで、HSPA系はやや置いていかれる形になりますが、OFDM系はほぼ同じペースでの進化が見込まれています。LTEは既に規格上は3Gbpsと言うとんでもないところまで進んでいるため、デバイスの進化ですぐに高速化に向かうことが出来ますし、WiMAXも将来帯域幅の拡大による高速化の可能性はまだ残されていますので、今後も同じように進化していくのではないでしょうか。

と言う感じで、三方式の将来について考えて見ました。では。

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