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2011/11/18 10:00 · 技術解説

GPSの感度についてご質問を頂いています。と言うのは、ウィルコムのHybrid W-ZERO3を使ったことのある方から、最近のスマホのGPSは受信までが断然早くなっているのは、受信感度の向上などがあったのか、と言う趣旨で。

というかなんというか、もういろいろと、「半端な作りのGPS」と最近のスマホみたいなGPSでは全く測位にかかる時間が違うということはよく知られた話で、これが本当に「受信感度の差」と言ってしまって良いものか、と言うことになるわけですが。

結論を先に書いてしまうと、どんなに受信感度がよくても、まっさらな素のGPS受信機で測位を行うためには結構な時間がかかるものです。

と言うのは、GPSと言うのが非常に多くの衛星によって成り立っているシステムだから。そして、GPSは完成され閉じたシステムではなく、後からいくらでも追加できるシステムとして作られているから、と言う点も重要です。

簡単にGPSの仕組みをおさらい。GPSは、複数の衛星からの電波を受信して、その受信時間の差から自分の位置を知る、と言う衛星を使った測位システム。となると、ここで非常に重要になるのが「衛星そのものの位置」です。その衛星がどの位置から電波を発射したのかが分からないと、受信した側はいくら受信時間差が分かっていてもどこからその時間差分のものさしを当てればいいのか分からないからです。

簡単な解としては、あらかじめ打ち上げてあるGPS全ての軌道データを受信機に打ち込んでおき、受信機が内部データベースで保持、受信したときにその軌道データと時間から衛星の位置を算出する、と言うやり方。

しかしこの解法だと、あるGPS衛星が壊れたので後から追加します、と言う事態に対応できません。GPS衛星を打ち上げたり退役させたりするたびに全てのGPS受信機を総とっかえ、と言うのは現実的ではありません。

ということで、実際のGPSでは、もっと柔軟なやり方を採用しています。と言うのが、例の「GPSが送信している信号」、この信号、ただのパルス信号とかじゃぁもったいないので、ここに、その衛星自身の軌道信号を乗せています。ナントカカントカっていう比較的小さなデータで完全に衛星軌道を決められる国際標準形式で。

なので、それを受信したGPS受信機は、その信号の遅延云々の前に、その衛星の軌道情報を完全に得ることが出来るんですね。つまり、アメリカが打ち上げたGPS衛星だけじゃなく、同じ形式で電波を送りさえすれば他国の打ち上げた衛星の電波も(同じ周波数帯であれば)同じように受信して、測位情報として使えるわけです。有名どころでは、日本の打ち上げた順天頂衛星「みちびき」なんかもその一環。順天頂だから特別と思う無かれ。順天頂と言うのはたまたま衛星軌道と地球自転が同期しているだけで、実際には他の衛星と同じように特定の軌道を回っているわけで、その軌道情報を信号に乗せさえすれば全く同じように位置を特定し測位の糧とすることが出来るわけです(ただしGPSの正規リスト外の衛星なので、受信機側に「正規以外のGPSっぽいものがあるよ」と教えておく必要はありますが)。

さてここまでお話すれば、なんとなくGPS受信に時間がかかる理由が見えてきたのではないでしょうか。そもそもGPSでは、受信機自身が受信する相手のリストそのものを持っているわけではなく、あくまで空から飛んでくるデータを元にその軌道を逐一再生しているんです。そして、その飛んでくるデータ、これがまた、ものすごく速度(送信頻度)の遅いデータ。なので、軌道データの取得だけで最低30秒はかかる仕組みになっています。受信感度がどんなによくても、GPSは遅いものなんですよね。

にもかかわらず、スマホではアホみたいに測位が速い。実はこちらのほうが、GPS的には異常な状態なんですね。ではどうしてアホみたいに速いのか。

一つは、GPSで受信した軌道データ、これを保持し定期的に保守できる、と言う辺りが一つの理由かもしれません。これはもう、新しいGPS受信システムでは大抵似たようなことをやっていて、一度受信したデータのキャッシュをある程度持っておき、あるいは定期的に自動受信して更新する、みたいな作りをしてあるGPS受信機が多いようです。

そしてもう一つ、通信屋的にはこちらがメインディッシュなんですが、アシスト型GPSと言うシステムがあります。これは、双方向通信のできる通信端末向け。何をやるかっていうと、あるところで測位したいなーと思ったら、端末がネットワークに向けて「この辺でどんな衛星が今見えてるか教えてよ」とお願いするんです。で、ネットワークは、その通信に使われた基地局位置などを元にどの衛星が見えそうかってのをささっと計算して、見えそうな衛星とその軌道情報のリストを教えてあげる。これだけで、衛星の軌道情報を取得する、って言う無駄な動作を一気に飛ばして、いきなり受信時間差計測から始めて良いことになります。

ということで、そもそもGPSは通信の仕組み上時間がかかるもので、それを他の技術や工夫を使って短くしているもの、と言うことで、感度と言うより仕組み自体が違うものなんですよ、と言うお話でした。

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2011/11/18 10:00 · 技術解説 · (No comments)
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