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2011/7/28 10:00 · 技術解説

今話題の通信速度倍増技術といえば、もちろんMIMO。これ、実際にはどういう条件で効きやすく、どういう条件だと効きにくいのか、というのがあると思うのですが、今回は私なりの考えを披露してみようという一言。※別サイトからの加筆・再掲です

MIMOは、あるアンテナから出たデータと別のアンテナから出たデータを、受信側のアンテナでうまく分離することで実現します。これは、イメージとしては、カメラのフォーカスと似たような感じ。カメラのフォーカスの場合はレンズの焦点距離を変化させて「一番はっきり見える位置」を探すわけですが、電波の場合はアンテナのパラメータを調整して既知のデータをうまく見えるフォーカス位置を見つけ出して、そのときの周囲のデータを読む、ということを別々の系統に対して行うことで複数のデータ列を読み出します。

一応補足ですが、実際は、「アンテナパラメータをちょっとずつずらしてきっちり見える位置を探す」なんていうややこしいことは行わず、数学的演算で「今見えているぼやけ具合」から一発で最適なパラメータを逆算できるようになっていますので、ピント合わせに時間がかかるのでは、と言うご心配は無用です。


↑混ざったデータから、あらかじめ分かっているパターンにフォーカスをあわせるようにしてデータを読み出す

さて、この、カメラのフォーカスでたとえると、二つの別々のフォーカス位置の物体を出来るだけきれいに解像したいというときどのような条件が良いかを考えて見ます。まず一つの簡単な解として、二つの色・模様などが非常に良く似た物体が非常に遠くと非常に手前、というように分かれている状況が考えられます。この場合、奥にピントを合わせれば手前の物体はぼやけてくれるし、逆もまだ然り、で、それぞれの形をきれいに解像出来るでしょう。

では、その物体が、非常に奥行き方向に大きな物体だとどうでしょうか。こうすると、その物体全体にきれいにフォーカスが合うポイントがなくなってしまい、結局どこかがぼんやりした像になります。単独ならこれでも問題ないのですが、別の位置の物体ときれいに分解したいという目的では、このぼやけた像が別の位置の物体のぼやけた像と干渉して邪魔しあうことになります。

つまり、「二つの物体が出来るだけ奥行き方向に離れていること」「それぞれの物体が出来るだけ奥行き方向に小さいこと」が、カメラのフォーカス的描像では重要といえます。

MIMOも基本的には同じ。「出来るだけ離れていること」は、アンテナ位置が出来るだけ離れていることに相当し、「出来るだけ小さいこと」は搬送波の帯域幅が出来るだけ小さいことを意味します。

ただし注釈付き。「離れていること」についてなのですが、これは「搬送波の波長を単位として」です。たとえば、800MHz帯は波長約40cm、に対して、2GHzは15cm。仮にアンテナ間が60cm離れているとしても、2GHz帯は4波長分、800MHz帯は1.5波長分にしかなりません。2GHz帯の60cmに相当するくらいの性能を出すためには、800MHz帯では160cmくらいの距離が必要になってしまうということです。要するに、たとえば送信基地局の全体の大きさとしては800MHzで2GHzと同じ性能を出すなら2.5倍の空間を必要としてしまい、受信端末としては端末のサイズが2.5倍になってしまう、と言う意味です。

ということは、「高い周波数を使う」と言うのはそれだけでMIMOにおいては広いアンテナ間隔を確保するのと同じ効果が出てくることになります。アンテナを設置できるスペースが同じなら、高い周波数を使ったほうがMIMOの効果は大きくなるということです。

また、搬送波の幅というのはどういうことか、これは、「搬送波の占有帯域幅」とほぼ同義です。ある純色のサイン波に対して、データを乗せて変調することで占有帯域幅は広がります。その広がり具合は、乗せるデータの量にほぼ比例します(正確には変調速度に比例)。また、単に変調で帯域幅が広がるだけでなく、伝送効率や多重化や耐干渉性のためにわざと帯域幅を広げる技術もあります。これももちろん占有帯域幅を広げるという意味で全く同じく、MIMOの効きを悪くします。

出来るだけ高い周波数を使い、搬送波の帯域幅を小さくする、というのが、MIMOを効かせるために重要ということになります。たとえば800MHz帯のWCDMA(5MHz幅)と1.9HGz帯のPHS(0.3MHz幅)では、当然後者の方がMIMOが効きやすいということになります。周波数が高いほどMIMOの効きは良くなり、同じ周波数を使うなら、帯域幅が狭いほど効きが良くなるわけです。

さて、それでは、当然ながら、10MHzや20MHzを占有するLTEやWiMAXよりも、5MHzのWCDMAのほうがMIMOは使いやすいはず、ということになってしまうのですが、さにあらず。そもそも、MIMOがそれほど周波数利用効率が重要視されない無線LAN(802.11系)で先に実用化され、周波数利用効率の向上が喫緊の課題だったはずのWCDMAでの実用化が遅れているという需給の逆転があります。圧倒的な需要のあるはずのWCDMAでのMIMOより、より広帯域で需要の低いWiFi、WiMAXの方が先でした。

広帯域のほうがMIMOが難しいという前提から言うとこれはおかしな話ですが、この話のタネは実は簡単。WiFiやWiMAXは、OFDMを使っているからです。OFDMでは、実際には小さなサブキャリアをたくさん束ねます。このサブキャリアは、30kHzとか10kHzとか、一般の携帯電話の搬送波の帯域幅に比べれば非常に小さな幅です。この幅の中である程度好きな大きさのカタマリに対してフォーカスを合わせる、と言うことが個別にできるんです(理論上最小はサブキャリア単位)。制御情報の中にもこのための情報を載せることが出来るので、システム上WCDMAなどに比べると非常にシャープなフォーカシングが可能なんです。これに比べれば、WCDMAの5MHzなんてのは、もうボケボケ。

OFDMとMIMOがほぼ同じ時期に熟成してきたので、この二つを組み合わせた周波数利用効率向上は「偶然の産物」と思われがちですが、実は、MIMOが実用化できるのは、それがOFDMだから、という理由もあるんですね。そういう意味では、今、WCDMA(HSPA)系通信方式では一生懸命MIMOを入れ込もうとがんばっていますが、おそらくまともに動かせないでしょう。OFDMでは何とかモノになってる4×4 MIMOなんてのは言うに及ばず、2×2 MIMOでもまともに動く条件は相当限られてしまうはずです。

ということで、「搬送波が高周波」「搬送波が狭い」この二つを満たす方式がMIMOに向いた方式。2.6GHzのWiMAXや3.5GHz帯のLTEなんてのが、MIMOには非常に向いた方式になります。逆に一番向かないのは、1GHz以下のWCDMA。また、LTEでさえ、1GHz以下ではMIMOなんて効かないから1GHz以下システムではMIMO無しにしましょうなんていう話も過去にはあったりするくらい、周波数とMIMOの関係は密接なようです。

そんなわけで、本日はMIMOの効く条件について考察してみました。

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2011/7/28 10:00 · 技術解説 · 1 comment
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1 Comment to “MIMOが効くしくみ”

  1. […] じゃぁWCDMAでもMIMOを使えばいいじゃん、ってことになると、以前に書いたMIMOが効く仕組みの話になります。つまり根本的に、OFDMAはMIMOが効き易い変調方式なんですね。逆に、新世代方式ではMIMOを大幅に拡張するためにOFDMAを採用したと言っても過言ではありません。これに比べればボケボケのWCDMAなんてMIMOはまず全く効かないはずです(たとえ標準化されても)。 […]

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