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2012/2/21 10:00 · 事業考察

さて、スマートフォンの過大なトラフィックに起因したトラブルなどが報告され、報告されないまでも実際にスループットが極端に落ちて時間と場所によってはまともに使い物にならないような状況さえ出てきているような現状、それでも各社がスマートフォンを主力に据えて拡販するのはどういうことでしょうか。

これはもう答えはわかりきっていて、「スマートフォンの方が儲かる」からです。ではなぜスマートフォンは儲かるのか。ちょっと考えてみると、意外な状況が浮かび上がってきているように思います。

まず、単純に、スマートフォンの方が原価が安い、という指摘があります。実際、フィーチャーフォンと比べた場合に一番高額な部材とも言える広画面高精細なディスプレイはスマートフォンの爆発的なヒットでかなり安くなっていて、下手をするとフィーチャーフォン向けの小さなディスプレイと価格が逆転しているかもしれません。それ以外の通信関係部品の価格は変わらないか、あるいは普及品のアプリケーションプロセッサ一体型を使うことによりフィーチャーフォンよりも実質価格は安くなっているかもしれません。

また、フィーチャーフォンはとにかく機械部品が多く、一体成型できてしまうスマートフォンより確実に部材費用は高額になり、加えて、各可動部すべてに対して物理的なテストを施すテスト工数も馬鹿になりません。こう見ると、スマートフォンはほとんど動く部分がなく、さらに、メニューボタンなどもタッチ化することで削るような例さえも数多く出てきました。とにかく動く部分を削れば簡単にコストは落とせるわけです。

そして、フィーチャーフォンは多くの場合、ライセンス関係のめんどくさい独自のOSを使っていることが多いようです。OS自体がOSSベースであるAndroidや、自社OSオンリーのiPhoneとはソフト(OS)にかかるライセンス費用も桁違いになっているはずです。テストも同じく自分で開発するものと出来あいを持ってくるものとではだいぶ違うと想像できます。もちろんスマートフォンとはいえOSのテストもきちんとやってはいるでしょうが、OSの個別モジュールのテストまでは必要のないであろうAndroidなどは、この辺も相当省力化できているかもしれません。

さて、ここまではおまけ。ここからが重要。事業者の中の人っぽい人に聞くと、スマートフォンが「儲かる」最大の仕組みは、端末販売ではなく、本業、つまり通信費用の方にあると言います。つまり、スマートフォンの方が、ARPUが高くなるということなんですね。

実際に、パケット定額の料金を比べても、スマートフォンの方がやや高く設定されています。これが「ARPUが上がる」原因の一つと言えますが、もう一つ重要なのが、そもそもの定額セット率が非常に高い、おそらくほぼ100%が定額セット回線になっている、というところです。

パケット定額になったからと言って、事業者の取り分がキャップされてしまうことでより多くデータを使わせるモチベーションは下がる、というわけではありません。何百万回線と言う回線数をバルクで見ると、やっぱり「データをたくさん使わせる=高収益」なんですよね。それは、パケット定額がONかOFFかできっちり分かれるマイクロ視点な考え方ではなく、定額ONとOFFが一定確率で重ね合わせ状態になっているように見るマクロ的視点。パケット定額セット率という隠れたパラメータがありつつも、表にはきっちりと「データ使用量増→パケット料金増」というきれいな関係がまだ出ているようなんですね。

つまり、「パケットをたくさん使わせる」という、非定額時代の営業モチベーションは相変わらず強いんです。そうなると、スマートフォンは強い。何しろ、ユーザが意識した通信の何倍もの通信を発生させる。全く意識しない状態でも勝手にさまざまな通信を発生させる。この仕組み、なんだろうと思った時に気づいたんですよ。

ちょっと前、携帯電話の普及率が100%になった後、それ以上「人間のユーザ」を増やすことには限界があるし、もちろん「人間が携帯電話を使う時間=人間リソース」を物理的に増やすことも困難、であれば、次に向かうブルーオーシャンは必ずマシン・トゥー・マシン(M2M)になるはずだ、という議論が盛んにされていました。M2Mなら、人間が睡眠する時間さえも勝手にトラフィック=売上を発生させてくれるからです。

本来的には、何かの機械(マシン)に通信モジュールを取り付け、それが別のサーバなど(マシン)と自律的に定期的にコミュニケーションする、そういうものを想定していましたが、今、スマートフォンで起こっていることは、まさにこれです。スマートフォン自身が勝手に別のマシンと通信してトラフィックを発生させる。ユーザが仕事中でも寝ていてもお構いなしに。本来のM2Mに打開を期待されていた「人間リソースの壁」を、スマートフォンという端末が易々と乗り越えている、という状況なんです。

しかも、M2Mのユースケースは本当に小さなトラフィックを発生させるモジュールをたくさん、というもので、結果的にモジュール一つ当たりの料金は相当安く(せいぜい数百円に)設定しなければ普及は見込めませんが、スマートフォンであれば、人間向けのかなり高額な料金をM2M通信に適用させられるわけで、なんというか、これに気づいたときは「すごい抜け道だなこれ」と思ったものです。

スマートフォンって、ユーザが意識しない(だけど了承している)通信によって大量のトラフィック=マクロ的売上を発生させる、打ち出の小づち的存在。比較的通信を抑制気味のiPhoneよりもAndroidを、特にドコモが強く推しているのもこの辺が理由な気がします。まぁそのせいでネットワークが落ちてりゃ世話ないですが、それと引き換えに大きな収益が見込めるのなら、それでもスマートフォンを推す流れは変わらないのでしょう。

ということで、スマートフォンは実は人間料金が適用されたM2Mである、というお話でした。

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2012/2/21 10:00 · 事業考察 · (No comments)
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