LTE-Advancedってのはどんなものでしょうか、と言う質問を結構たくさんいただいています。メールため込んでる間に。ゴメンネ。
まず、ミもフタもないことを書いちゃうと、LTE-Advancedってのは、ITU(国際電機通信連合)の作ってる「IMT-Advanced」の規定を満たせる能力を持ったLTEのことです。LTEとLTE-Advanecdは違う規格じゃないんですよ。基本的には同じもの。ただ、IMT-Advancedが必須としている通信速度とかの条件を満たすためだけにいくつか機能追加をしましたよ、と言うものです。
この辺、なんつーか、IMT-Advancedの勧告に含めてもらうために、とりあえず無理やりに高速化技術をぶち込んでみました的な突貫なし崩し的にできたのがLTE-AdvancedでありWiMAX2だったりする、と言う側面もあります。と言うこともあって、LTE-Advancedと言うのは、説明する必要もないほど極めてシンプルです。
すなわち、速度アップのためのいくつかの仕様をぶちこんだ3GPPのRelease10と言われる仕様、これ以降の仕様を採用したものがLTE-Advanced。つまり、そこで無理やりにぶち込まれた「速度アップのためのいくつかの仕様」ってのがそのままIMT-Advancedの核です。
で、速度アップのための新仕様ですが、突貫工事でぶち込んだと言う事情からも想像がつくと思いますが、簡単に言うと力技です。旧来のWCDMAからHSPA系へは一定の飛躍があり、たとえばGPRSからEDGE、cdmaOneからCDMA2000、PHSから高度化PHS、と言う様な例を並べても、同じ系統でも次世代へ向けて技術的な飛躍のギャップがあったものなのですが、LTEからLTE-Advancedはそうではありません。技術的なベースは全く変えず、単に処理パワーを増やしただけです。
その一つがキャリアアグリゲーション(CA)であり、MIMOの多重数倍増、と言うことになります。どちらも、「使う周波数を増やす」「送信するアンテナ本数を増やす」と言う力技での速度向上であり、仮に、使う周波数帯が増えず、物理的なアンテナ本数も増やせない、となれば、Release10以降の仕様であっても純粋な無線パフォーマンスはLTEと何ら変わりがありません。
CAは、キャリア=周波数をアグリゲート=結合する、と言う方式。隣同士くっついたキャリアをくっつける方式は、広いライセンスをもらえたとき用。離れたキャリアをくっつける方式もあって、これは、端末の中であっちとこっちの別々の周波数にあるLTEのキャリアを持ってきてくっつけて、一気に処理しちゃうというOFDMならではの力技。一方、MIMOは、従来4本までOKだったアンテナ数を8本に拡張して理論上倍速、と言う話。と言っても、現在は2本MIMOが一般的で、それより上を使っている例はほとんどないので、8本どころか4本が一般的になるのも相当先になるはずです。
で、現実問題としては、ライセンス周波数が急に倍になることは無いし、フィールドにばらまかれた物理的なアンテナ本数を一朝一夕で倍に増設するなんてこともできないし、端末の大きさの制約から受信アンテナをいきなり2倍・4倍に増やすなんてのも現実的ではありません。正直、当面はLTE-Advancedと言われていても張子の虎です。
まぁ、CA用のバンドも各社そろいつつあるようなので、HSDPAで15本のチャネルを束ねるようになったときとか、EVDOで3本のチャネルを束ねるようになったときとか、PHSのチャネルが4本束ねられた時とかのように、2つのLTEチャネルを束ねることによる増速、っていう感じでそのうち始まると思います。それが(一応)LTE-Advancedです。いま日本にあるライセンスバンドではIMT-Advancedの要求にはぜーんぜん届かないですけどね。
まぁだからと言って、LTE-Advancedが単に資源をぜいたくに使うだけのゴミ規格だなんて言うつもりはなくて、束ねることによる分割損の低減と言う効果もありますし、スピードアップのために入れた仕様以外にも、Release10以降にはいろんな効率アップのための機能が入っています。たとえば、隣同士で協調送信してセル同士がオーバーラップしているようなところの通信効率を上げたり、逆に隣同士が遠慮して送信を瞬間的に止め合うことでどちらかをしっかりつかめるようにする、なんていういろんなやり方が用意されていて、エリアの状況などなどにより使い分けできるようになっています。
と言うのがLTE-Advancedです。無線オタク的には実につまらない規格なので、あまり触れずにいました(そうなの!?)。と言ったところで。