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2013/6/13 10:00 · 技術解説

もう私から見ると雲の上のレイヤーの話になっちゃうのですが、VoLTE、LTE上の音声サービスについて、解説を希望する声が絶えないので、取り上げてみます。嘘書いてても知らないよ!!

VoLTE=Voice Over LTEの略で、LTE無線・システム上で音声サービスをするための仕組み、あるいはサービスそのもののことです。

従来、3Gまでのシステムであれば、音声交換専用のシステムと、音声伝送専用の無線チャネルが定義されていて、音声サービス=これらのシステム・チャネルを使ったサービス、と言う様にされていました。3Gまでは、基本的に、こういった音声サービスをベースに開発が始まり、データは付随物に近い扱いだったわけです。

しかし、LTEは最初からデータ向けシステムとして開発が始まり、もちろんご存知の通りデータ通信サービスから開始されました。少なくとも国内ではLTEはまだデータ専用システムで、ほとんどの諸外国でも同じ状況です。

従来3Gが、音声・データそれぞれで伝送システムやチャネルを異にしていたように、新しいシステムでも音声データ分離が行われるのであれば話は簡単なのですが、LTEはフルIPフラットネットワークを一番の売りにしています。ここに、音声専用の伝送系統が追加されるなんていうのはいくらなんでも筋が悪い。と言うことで、LTE上の音声は、最初からVoIPを流用したシステムとなることが決まっていました。むしろ、「IPのパイプさえ通っちゃえばあとはVoIPでもなんでも使えば音声だろうがビデオだろうがいくらでも通せるんだから気にしなくていいよね」的な発想でIP接続専用サービスとしてLTEが作られていった、と言うのが真相です。

ただしそうはいっても、素のLTEデータ回線上で、極ふつーのVoIPクライアントを使っても、電話サービスとして求められる品質の担保と言うところからほど遠いのは想像に難くありません。確かにアプリレベルでVoIPで通話ができるようなサービスはたくさんあり、ほどほどの品質を確保できているものもありますが、結局そういったアプリは無線の不安定さ、ネットワークの輻輳、そういったものに対しては完全に無力です。できることは、巨大なジッタバッファを用意することくらい。これは当然音声の盛大な遅延となって現れるため、単にバッファを大きくすればいいというわけでもなく、どこかで折り合いをつける必要があります。

ところが、VoLTEは、事業者クラスの電話サービスとしての品質が確保されるようにしなければなりません。特に日本では緊急呼を扱うという要請上その品質はかなり高度に保つ必要があります。単にIPパイプがあるから何でもやり放題だぞー、と言うわけにはいかないんですね。

めんどくさいので答えを書いちゃうと、LTEでは、普通のベストエフォートのIP接続の仕組みとは別に、帯域確保型(Guaranteed Bit Rate)のチャネルを用意する仕組みがあります。優先制御は割と細かく決められているんですが、その中でざっくりと、帯域確保かそうでないか、と言うのが決められていて、サービスごとに使い分けて良いようになっています。細かく言うと、たとえば音声は多少パケットがロスってもいいから帯域確保かつ低遅延で、みたいな感じになっていて、リアルタイム性を重視しつつ無駄なフレーム再送なども起こらないようになっています。

なので、VoLTEを使う時には、ある端末に対してきっちりと○○bpsを割り当てる、と言うようなことができるようになっているんですね。もちろん、無線の割り当ての上でどういう戦略で一定帯域を確保するか、と言うのはまさに技術的な工夫のしどころの一つで、この仕組みの出来如何でエンドトゥエンドの音声品質が全然違うということも起こると思います。

さて、そうはいってもVoLTEも中身はIP電話です。SkypeやLINEと違い、IPベースで通話を始めてもきちんと上に書いたような帯域の確保が行われるのはなぜか、と言う点も気になります。

ポイントは、こういった制御のためにきめ細かに定義された上位システムです。以下にざっくりと動きを書きますと。

まず、端末がLTEに接続するときに、VoLTE用のセッション管理サーバ(CSCFなど)(SIPサーバみたいなもの)の情報をLTE網(正確にはデータ接続ゲートウェイ)からもらうことができる仕組みがあり、これを通知してもらったらその内容に従ってセッション管理サーバに位置登録します。この専用のセッション管理サーバが後述のポリシー管理サーバ(PCRF)と連携して帯域保障無線チャネルを起動できるVoIPサーバのイメージです。この連携があることが、一般のVoIPとVoLTEの大きな違いとなります。

実際の通話のときは、端末がセッション管理サーバに向けて「今から音声通話したいです」と要求し、セッション管理サーバがポリシー管理サーバに対して「こいつに音声通話をさせてやりたいんですが」と問い合わせします。ポリシー管理サーバはここで、その加入者に音声サービスを提供できるかと言うポリシー的な判断をし、LTEネットワークに対して、その端末のための帯域保障チャネルを割り当てするようにお願いを投げます。これで、IP上で音声通話をすると決めただけなのになぜ帯域保障チャネルが張られるのか、と言う点がわかってきます。音声専用の伝送系があるわけではないのですが、上位システムとしてはやはりLTE音声のためのシステムが定義されている、と言うことで、「IPパイプがあるからVoIPサーバ立ててみた」と言うレベルとは厳然たる隔たりがあるわけです。

と言うことで、こういった連携で帯域保障チャネルを確保して、そこにVoIPデータを流すように端末とネットワークで調整を行い、音声が通る、っていうのがVoLTEの大まかな仕組みです。伝送系はIPで共有するので低コストながらも標準的なQoS制御と何よりも無線チャネルの専用割り当てを使うことで高品質を維持できる、というわけです。以上、VoLTEってのがどんなのかっていうお話でした。

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2013/6/13 10:00 · 技術解説 · 3 comments
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3 Comments to “VoLTE”

  1. […] VoLTE | 無線にゃん これが完成することで通信キャリアは将来的に3Gを収束させることが出来るはずで、キャリアとしては少しでも早く普及させたい技術だと思う(特に3Gでマイナー規格となったCDMA2000を採用するKDDIは)。 […]

  2. […] ムを使用し、帯域保障チャネルをしっかり確保→品質超安定!ということの模様(参考:無線にゃんさま)。とはいえそもそも通話料自体が減っている中、この定額制がどれだけのユーザ […]

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