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2011/11/4 10:00 · 技術解説

LTEの周波数利用効率が高いということが当たり前のように言われるのですが、なぜ高いのか、高いと言いきれるのか、と言う点がよくわからん、と言うご質問をいただきました。

早速ですが、まずは周波数利用効率について。周波数と言うのが有限の資源です、と言うのは改めて説明するまでもないのですが、有限であれば当然より効率よく使わなきゃ、と言うことになるわけで、そうした中で「周波数利用効率」と言う考え方が出てきています。

最も端的でシンプルな周波数利用効率は、単位を「bps/Hz」とする利用効率。基本的にはこれを前提に、最後にちょっとだけ他の拡張した指標も考えます。

bpsは言わずと知れた、通信速度の単位。Hzは周波数の単位ですが、この利用効率の話をする場合には、「搬送波の占有帯域幅」を指します。つまり、中心周波数が2GHzであっても60GHzでも、占有帯域幅が10MHzであればそれは全く同じ10MHzと扱います。

占有帯域幅と言うことについても定義が必要になりそうですが、これもいろいろと面倒な定義がいろんな場面で使われるので、単純化してしまうと、同じシステムを同じ場所に置くときにお互いに干渉しない中心周波数の離隔(間隔)と考えると分かり易くなります。ある中心周波数であるシステムの電波を発射しているところに、同じシステムの電波を追加で発射してシステムの容量を増やしたい、と思ったとき、では最初に発射している電波とどのくらい離さなければならないか、と言うのが、物理的な理屈と技術的な制約から最終的には技術標準と電波法規で定められることになるわけで、この最終的に決められた「離さなきゃならない幅」が実際には「占有帯域幅」(そのシステムがそこにあることで他の人が入れなくなる周波数の幅と言う意味で)と言ってもよかろう、と思います。

この考え方で行けば、WCDMAはきっちり5MHz、CDMA2000はきっちり1.25MHz、などなどとなるわけです。つまり、最終的にはそれぞれのシステムの電波1波で出せる最大速度を、この占有帯域幅で割り算すればよろしい。

WCDMAでは、HSDPAがどうとかDC-HSPAがどうとかありますが、今のところ、1波で出せる速度は21Mbpsくらいが限界のようです(今後MIMOで机上では倍速になる見込みがありますが、実際は動かない)。DC-HSPAだと42Mbpsでは、と思われるかもしれませんが、DC-HSPAは隣の基地局の電波も使う、つまり、2波使ってその速度。なので、1波と限定すれば21Mbpsが限界速度。

21Mbps / 5MHz、つまり、4.2 bps/Hzが、WCDMAの周波数利用効率と言うことになります。

では、LTEは、と言うと、最も広い帯域を占有する版で、150Mbps / 20MHzと言うのが今のところの最高速度(こっちもまだMIMO拡張で大幅にアップする予定ですが)。単純に割り算すると、7.5 bps/Hz。ざっくりと1.8倍も利用効率が良い、と言うことになります。

さてこれだけ利用効率が大幅にアップしているのはなぜか、と言うことなんですが、ぶっちゃけると、MIMOのおかげです。MIMOが無いとLTEでもたいした利用効率にはなりません。

じゃぁWCDMAでもMIMOを使えばいいじゃん、ってことになると、以前に書いたMIMOが効く仕組みの話になります。つまり根本的に、OFDMAはMIMOが効き易い変調方式なんですね。逆に、新世代方式ではMIMOを大幅に拡張するためにOFDMAを採用したと言っても過言ではありません。これに比べればボケボケのWCDMAなんてMIMOはまず全く効かないはずです(たとえ標準化されても)。

そしてもう一つ、OFDMAの特徴の一つは、「占有帯域幅を容易に拡大できる」と言う点があります。と言うと、鋭い方はすぐに突っ込みを入れるはずです。「結局は占有帯域幅で割り算するんだから拡大して最大速度を上げても意味が無い」と。

ここで注意しなければならないのは、上記の、21Mbpsとか150Mbpsとか書いた速度ってのが、純粋な物理レベルのビット速度だということ。実際のシステムでは、データに対して制御信号やヘッダがくっつき、そのくっついた結果の総ビットがビット速度を消費します。また、純粋なシステム制御信号だけがリソースの一部を占有しなければなりません。つまり、実際のユーザデータが流れる速度は、この机上の速度よりずっと遅くなるんです。

ところが、こういった制御信号などは、占有帯域幅が広がっても増えることはほとんどありません。たとえば、20MHzの周波数が用意されているところに、5MHzのWCDMAを4つ置くと、制御信号は4システム分のリソースを食いますが、20MHzのLTEを1つ置くのなら1システム分の制御信号リソースですみます。浮いた分は当然、ユーザに割り当てられる領域です。

つまり、単にビット速度に現れる以外でも、広帯域のシステムにすることで制御信号の比率を下げ、結果としてユーザの使えるデータのための利用効率を向上できるというわけです。

ということで、まぁぶっちゃけちゃえばMIMOさえ入れれば大幅に利用効率は上がるし、帯域を広げれば実効効率もあがるよ、ってことなんですね。

で、最後にもうひとつ。これをちょっとだけ拡張した考え方に、「bps/Hz/Cell」なんてのがあったりします。Cellってのは、発射した電波が届く範囲を一つの単位としたもの、単純化して言えば、一つの基地局当たりの、と言う意味です。もちろん、基地局を一個だけ置いて端末も最も電波良好な場所に一台だけ置いて考えたときは、この単位は上述のbps/Hzと完全に一致します。

一方、基地局からの電波は現実では距離により減衰するわけですが、その届く範囲に端末がランダムに散らばっている、と言う場合。そうすると、遠くの端末は電波品質がよくないため同じリソースを使っても速度が上がりにくくなります。これを全端末分足し合わせて、占有帯域幅で割る。すると、上述のbps/Hzよりもずっと小さな値になってしまいます。遠くの端末にちょっとだけ割り当てて、近くの端末には豪勢に奢る、と言うアルゴリズムが主流なのは、このタイプの利用効率を上げるためにあります。すぐ近くで電波の良好な端末にたっぷりリソースを割り振れば、それだけで理論上の利用効率にかなり近くなるからです。

さらには、もっとたくさんの基地局があり、それぞれにたくさんの端末がランダムに散らばっている場合。これも同じように電波状況が悪い端末の分を加算すると理論上の利用効率より低下します。しかし、基地局からの電波が十分に良好なうちにしっかりと止まるようにアンテナを建て(たとえばすごく高い鉄塔から絞ったビームでしっかりと吹き降ろす)、届かないところは隣の基地局からやはり同じようにしっかりと止まる電波でカバーする、と言うことを繰り返していくと、「電波の悪いところにいる端末」がほとんどいなくなり、格段に利用効率を上げることができます。常々「電波は飛ばす技術より飛ばさない技術が重要」と言っているのはまさにこの点です。高トラフィック時代では、いかに電波を劣化させずにしっかりと止めるか、と言う技術が非常に重要なのです。

で、実はLTEは、こういった「飛ばさない」と言う点でもCDMAには出来ない工夫を入れ込む余地があり、この意味での周波数利用効率(bps/Hz/Cell)を上げやすい方式でもあったりします。

ということで、LTEなど新世代の通信方式がなぜ周波数利用効率が高いといわれるのか、についてでした。

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2011/11/4 10:00 · 技術解説 · (No comments)
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