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2012/12/6 10:00 · その他技術ネタ

LTEとWCDMA(あるいはCDMA2000)の間でハンドオーバできることについて、WCDMAやCDMA2000ができた当時なんてのはLTEなんて方式は存在しないはずだったのにどうしてできるの?と言うご質問をいただきました。今日はそんな話。

LTEの他システム連携の話で書いた通り、LTEでは、旧来の方式との連携機能を大きな特徴の一つとしています。しかし、こういった方式では、LTEだけにそんなしくみを入れこんでもダメで、旧方式の方にもそれを受け入れる素地が無きゃできない、と言うのは直観的にもっともな話で、質問者さんの疑問につながるのも当然と言えば当然です。

まずはLTE側の都合だけを言うと、そもそもLTEを作る段階ではWCDMAやCDMA2000は世に出ていますから、それに合わせて、必要な情報を扱える仕組みを備えればよろしい。もちろん情報だけでなくチャネルの構成や測定方式の仕様に関してもある程度昔の方式に合わせこめるように作らなきゃならない部分もあるんですが、これはもう新しく作る方式なので、振る舞いとかの特徴も十分にいろんな会社にノウハウが溜まっていますから、ガッチガチに作りこまなくても最大公約数程度の妥協点で作りこみは可能なんですね。

さて、それはわかった、では、WCDMAやCDMA2000側の方の事情はどうなっとるんだ、と言う話です。

先に答えを書いてしまうと、元々、古い方式の方も拡張しやすいように作ってありました、ってことになります。

WCDMAやCDMA2000は、たとえば、後に出てくる何か新しい方式と連携しなくちゃいけない、なんていうモチベーションではなく、単に、あとで新しい機能を追加したくなった時も簡単に追加できるようにしとこう、と言う単純な理由で拡張可能に作ってあります。そのおかげで、たとえばHSDPAとかそういった大胆な拡張が同じシステムの上で出来るようになっています。

ものすごく話をシンプルにしてみます。たとえば、LTEと連携するために、3G網経由でLTE網側に何か情報を伝えなきゃならない、と言うことになった時。3Gの方で何をするかと言うと、新しいメッセージを作っちゃいます。簡単に書くと、メッセージは、そのメッセージが何のメッセージなのか、と言うのを意味する通し番号(識別子)がふってあるのですが(たとえば3は位置登録要求、8は音声通話発信要求、とか)、最初に仕様を作った段階で、48以上は使ってない予約領域、みたいにしてあるんですね。なので、じゃぁ新しいメッセージには48番を使おう、もう一個必要だから49も使っちゃえ、と言う感じで増やせます。一方、そういう番号のことを知らない古い端末は、そういう自分が知らない番号のメッセージが来ても無視する、ってことも最初から決めてあります。なので、古い端末の動作がおかしくなったりせず新しい機能を追加できるんです。

また、メッセージの内容自体にも工夫があります。メッセージを記述する「言語」が一般的な記述法としてあらかじめ定義してあって、その記述法にさえ従っていれば必ずデコード・解釈できるようになっているんですね。なので、すでにあるメッセージの内容を変えなければならないような場合でも、その記述法に従って変形さえすれば、古い端末はデコードした結果自分に関係のあるところだけ読み出せるし、新しい端末は新しく追加された情報を使った新しい動作ができる、っていうことになります。

こういうやり方が主流になったのは、おおよそIMT-2000がどうとか言い始めたころ。世界中の利害関係者が集まって一つの仕様を作りましょう、と言う活動が盛んになったころ、「いろんな人の要望を聞いてたらきりがないから、そもそもの記述方法を柔軟にしておいて後で順次機能追加できるようにしておきましょう」ってことになったわけです。もちろん、一般的な記述法にしたりふんだんな予約領域を取っておくってのは、情報単価的には不利ですが、それもやっぱり伝送路が強力になってきたので、わずかくらいの無駄には目をつぶって一般化することができるようになったことも大きいですね。

ってことで、案外どんな機能でもやり方次第でいくらでも追加できちゃう、ってのが、古い方式でもLTEとの連携機能を取り入れられた理由です。余談ですが、実はWCDMAができた一番最初くらいの版に、すでにCDMA2000とのハンドオーバを記述するためのコードが入ってたりします(あくまで識別子の定義程度ですが)。IMT-2000ではグローバルローミングが必須要素で、特にWCDMAの弱かった北米のことを考えるといずれCDMA2000との連携は必要かもしれない、と言うことで入れようとした形跡があるわけです。それに比べれば、シグナリング定義のほとんどを共有しているLTEとWCDMAの間のハンドオーバなんてなーんにもハードルがありません(コア間連携のハードルはすっごく高いですが)。

と言うことで、なぜ古い方式が新しいLTEのことを知ってんの?と言うお話でした。

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2012/12/6 10:00 · その他技術ネタ · (No comments)
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