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2012/12/7 10:00 · 技術解説

今回は無線通信の本当に基本的な手順について、改めて解説してみたいと思います。通信ってそもそも目に見えないし、ましてや見えない電波を使う無線通信となると専門家でさえ理解していない部分の一つや二つや10や20くらいはあったりするわけで。私は軽く100くらいは全くわかんないことがあります。でも偉そうにドヤ顔で解説します。目標は、これを読んだ皆さんがドヤ顔で友達に解説できるレベルになることです。

とりあえず、話のスタート地点として、アンテナとアンテナがあったらその間に電波のやり取りができて、電波の形をうまく整えれば0/1の信号を送れます、と言うところまでご存知のこと、と言う前提で始めます。

この状態なら、アンテナ1から電波を出してアンテナ2が受け取れば、出した0/1の信号はアンテナ1の人からアンテナ2の人にそのまま伝わります。これが一番原始的な無線通信。今でも多くの場所でこのやり方が使われています。

しかし、出た電波と言うのは、もわーっと広がるように飛びます。池に石を投げ込んだ時の波と同じような広がり方です。アンテナの形を工夫すれば方向をある程度絞ることはできますが、完全に一点に絞り込むということはできません。と言うことは、もしその飛んでいく先にもう一個のアンテナ、アンテナ3があったらどうなるでしょうか。アンテナ3の人は、図らずもアンテナ1とアンテナ2の間の通信内容を受信できてしまいますね。放送ならこれでいいんですが、1対1が基本の通信では、これはよろしくありません。

と言うことで、通信相手ごとに通信を分割する手法が用いられるわけですが、この辺の仕組みは、TDMAOFDM辺りをご覧ください。いろんな方法で、もやっと広がった電波から特定の相手に届けることができるようになっています。

しかし、問題は、「相手を特定する」と言う手順です。この辺が無線通信独特のいろんなノウハウが活きてくるところ。

たとえば、「特定しない」と言う方法があります(なんじゃそりゃ)。特定せず、全員に同じデータが届くようにして、もっと上位のプロトコル(たとえばTCP/IP)で自分宛てのデータかどうかを調べる、と言うやり方ができます。ただしこれは比較的低レベルの方式。無線LANなどがこれに近いやり方です。

一般的に相手を特定するには、まずはどちらかが声を発して相手に届ける必要があります。これはたとえば、お互いの特徴や持ち物など全く情報がない中で、初めて会う人と待ち合わせをする状態。ただ、最初の掛け声だけは「おーい、私は○○です」であるという取り決めだけがあります。

待ち合わせ場所には100人くらい他人がいて、誰が会う相手なのか分かりません。だけど掛け声だけは決まっているので、とりあえず「おーい、私は○○です」と声を出してみます。もしその掛け声が相手に聞こえる位置だったら、相手が自分に気づいてくれて、そこから会話を始めることができます。

とにかく一旦最初の会話さえ始められれば、あとは簡単ですね。声の聞こえた方向が良くわからないにしても、「おーい、私は鈴木です」に対して「はーい、私は田中です、白い服を着ています。あなたは?」「私は赤い服を着ています」「赤い服が見えました、そちらに向かいます」と言う感じでお互いを特定する情報を交換して最終的に直接会話が可能になります。

無線通信も全く同じです。最初にあらかじめ決められた方法とフォーマットで信号を発し、それを受け取った側が返答をしてすべてがスタートします。この最初の「おーい」に相当する信号を「ランダムアクセス」と言います。「ランダム」は乱数の意味ではなく任意の意味。「おーい」と声を出すのがどのタイミングでもいいので、任意のタイミングで声を発してもいいです、と言う意味で「ランダムアクセス」と呼ばれます。

では、待ち合わせ場所にいる100人くらいのうち何人かが、別々に田中さんに会いに来ていたとしましょう。たとえば、待ち合わせ時間を事前に指定していなくて、その場で決めよう、と言うことになっていた場合。

たとえば、先に鈴木さんが来て後から佐藤さんが来てそのあとに高橋さんが、と言う様にうまくタイミングがずれていれば、田中さんはそれぞれを相手すればよろしい。ただ、たまたま鈴木さんと佐藤さんが同時に来たとした場合。この場合、「おーい、私は鈴木です」と「おーい、私は佐藤です」がほぼ同時に聞こえてしまうことになります。

田中さんは、重なった声が聞こえてなんといったのかよくわからないので、とりあえず無視する、と言うのがたいていの無線通信の手順の一つです。そしてその場合、もう一つ決められている手順として、無視された鈴木さんや佐藤さんは、それぞれテキトーな時間をおいて同じように呼びかける、と言う決まりがあります。そうすると、二回目のテキトーな時間後の呼びかけが重なってしまう可能性はぐんと減ります。これを、三回、四回と繰り返して、最終的に誰か一人の最初の呼びかけが確実に田中さんに届くようにします。

それぞれの相手の最初の声が聞こえたら、「はーい、私は~~」に加えて「次は5秒後に返事お願いね」と言う様に伝え、別の人には「はーい~~次は10秒後に頼む」と言う様に伝える、などなどの方法で特定の相手との会話がかぶらないようにします。これが先ほどの通信相手ごとに通信を分割する手法です(この場合はTDMAです)。

なので、とにかく最初の呼びかけ=ランダムアクセスさえクリアしてしまえば、あとは整然と特定の相手との会話をすることができる、と言うのが多くの無線通信の手順の基本。ぶっちゃけ、無線通信手順のエッセンスはこれで全部。「ランダムアクセス」と「通信相手ごとに通信を分割する手法」を組み合わせるだけで、世の中の無線通信のほとんどを再現できます。

最後に応用問題。先ほど待ち合わせ場所に100人がいてそのうち3人が田中さんに会いたいと思っているとしましたが、もし100人全員が田中さんと約束があって会いに来ていたとしたらどうなるでしょうか。100人のうち誰かが「おーい、私は○○です」と声を発したとき、他の人が確実に黙っているという状況はどのくらいの確率で作れるでしょうか。

100人が田中さんに大して会いたいと思っていなければぶつかる確率は低いですが、すぐ会って話せると思ってきている場合、もうほとんどひっきりなしに「おーい、~」と言う声が上がっているはず。当然それぞれはぶつかり合うので、田中さんは重なった声が良く聞き取れなくて無視するわけです。無視されたらテキトーな時間後にもう一回声を出すわけですが、それもたぶん誰かと重なるでしょう。100人のうち誰も田中さんに声をかけることが出来ないという状態が延々と続いてしまうわけです。

これが、無線が混雑して全くデータアクセスができなくなったりする理由の一つ。ランダムアクセスさえ通ってしまえば、相手ごとに通信を分割する手法で遅いなりにデータ接続を維持できますが、全く通信できないような状況は、たいていの場合はランダムアクセスがぶつかりまくってなかなか田中さんに自分の存在を伝えられないような場合だったりします。大きな駅や地下鉄などで駅に入線したときに全くデータ通信ができない時間が30秒くらい続いたりするのは、たいていはこれです。

こんな状況になってしまうと、どんなに手を尽くしても混雑は回復できません。そのために必要なのが、「ランダムアクセスを止める」こと。これがいわゆる通話規制、ケータイの画面に「しばらくお待ちください」と出ちゃうタイプの規制です。田中さんが頭の上に「あ行とさ行の名字の人は話しかけないでね」と言う帽子をかぶるようなイメージ。すると、たとえば明石さんや佐藤さんはその帽子を見て黙るので、他の人が多少はつながりやすくなる、ってことです。

と言うことで、無線通信の最低限の手順は、こんな感じですよ、と言うお話。実際の無線通信では、加入者の認証とか暗号化とかいろいろ難しいことやってるんですけどね。でわ。

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2012/12/7 10:00 · 技術解説 · 1 comment
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1 Comment to “無線通信手順の基礎の基礎”

  1. […] この「あ、」、無線通信でいうところの「ランダムアクセス」に近い役割を果たしてるんですよね。あるいは、衝突型通信におけるフロー制御的な。 […]

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