仕事柄海外をふらつくことが多く、昨年は数えてみたらビジネスデイの4分の1は海外にいた計算になっていていまさらながらびっくりしているんですが、海外を見る機会が多くなればなるほど、やはり、日本(の通信)は「安易な」グローバル化を唱えるべきではないという思いが強くなるんですよね。
もちろん、グローバルに追随すべきことも、グローバルビジネスを引っ張るべきところもたくさんあると思います。たとえば、無線の周波数バンドなんてのはグローバルに合わせて当たり前だし、そうでない場合はむしろ「他のグローバルバンドよりもはるかに魅力的」なバンドを提案してグローバルを引っ張るくらいの気概が必要だとは思います。端末・デバイスや、無線方式なんてのももちろんそう。
だけど、これはもう完全にインフラと言う視点になってしまうんですが、日本と言う国がインフラ的にいかに特異かと言うのは、海外を見れば見るほど痛感するんです。
まず、異常な都市部集中。いわゆる「都市圏人口」と言う統計を見ると、東京が世界でダントツのトップなんですよね。この統計は「ある住宅から隣の住宅までの距離が一定以下で連続している範囲の人口」で、要するに「実際に人が住んでいる範囲」での人口過密状況をよくあらわすような気がする統計なんですが、二位ニューヨークを4百万人、三位ソウルを9百万人も引き離してのトップなんです。
実際にいろんな国の首都を見ても、大体日本で言えばせいぜい札幌か仙台か、そのくらいの密度。ヨーロッパなんて首都から歩いていける範囲にうっそうとした森があり、森の中に小さな集落が点在する、と言う感じ。アメリカだと、広大な農地が大都市に隣接して広がってる。
で、なんと言っても、みんなまっ平ら。土地が。そっちに見慣れると、関東平野がでこぼこの山地に見えるくらい。こんなにまっ平らで、しかも住居が分散しているので大規模建築もわずかで、そりゃ無線もよく飛ぶよなぁ、と。有線インフラの整備もそりゃ楽ですよ。それに比べたら、日本なんて、もう山そのもの。海の中に山が突き出している、と言う表現そのものの国土です。しかもそんな山地にたくさんの人がしがみついて集落を形成している。だから海外なら人っ子一人いなくて無視しても良いような山奥までインフラが必要になっちゃう。
電波はさえぎられるし有線は回り道させられるし、と言う状況で、海外のまっ平らな土地でうまく行っているやり方を持ち込んでもうまく行かないのは道理なんですよ。ほら、よく脳みそのシワを伸ばすとテニスコート一面分、なんて比喩があるじゃないですか。同じように、インフラ観点での「経路長」ベースで日本をきれいに伸ばすと、アメリカよりも広いかもしれない。そのくらい日本は異常な地形に異常な数の人間が住んでいるんです。
なので、日本より狭い国とか同じくらいの広さの国でやっているやり方を真似してもまずダメ。日本よりはるかに広い国でエコシステムが成り立っている例を見習わなきゃならないんです。ぶっちゃけ「北アメリカ全部」とか「ヨーロッパ全部」くらいの単位と比べてのインフラ計画を考えたほうがよくて、いや実は、ドコモなんてのはヨーロッパ全部をサービスエリアとしている多国籍キャリアと同じくらいの売り上げがあったりするので、その方が実際にあっているんです。
つまり、「日本をグローバルに合わせる」と言うよりも、「日本そのものを一つのセミグローバルエリアと考える」くらいでやらないといけないんですよ。で、「日本」と、たとえば「欧州全部」を対等のセミグローバルエリアと考えて、対等な協調を考える、そのくらいの気概で臨まないといけないくらい、日本は(線路長的に)広すぎるんですよ。広い範囲にそれほど多くない人数、と考えると、当然一人頭の負担額、つまり「通信料金」は高額になる。でも、日本と言う国の通信インフラ上の困難性を考えると、当然の高額化だと私は思うのです。
もちろん、だからと言って競争を放棄してみんなで値上げしましょう、なんてことをそそのかしているわけではなくて、そういう意味では、それだけ困難な状況にもかかわらず世界水準(一部は以下)の通信料金を実現していることは、ある意味で競争の賜物だと思うわけです。
要は何を言いたいか、と聞かれると、実は特に何が言いたいってわけじゃなくて、まぁなんとなく「日本なんて所詮小さな市場で・・・」「こんなちっぽけな島国でガラパゴス化しても・・・」みたいな、自虐的なグローバル追随視点はなるべくやめようよ、っていう、そういうことを、海外に行くたびに思うんですよね、っていうお話。でわ。
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まあ、イギリスより1.5倍広いだけの土地に、2倍近い人口がねじ込まれている国ですからねー。山だらけだから、実質イギリス以下?
自動車市場もそうですよね。
車が売れなくなった売れなくなったとネガティブなニュースばかり報道されますが、
それでも500万台、世界第3位の販売台数を持つ市場なわけで(たしかに1位の中国と2位のアメリカの販売台数とは桁が違いますが)
まだまだたくさん車が売れてる国ではあるわけです。
携帯と同じく車も国内市場だけで十分やっていける規模があるんですから(だから軽なんて独自規格が生き残り続けているわけで)
ポジティブな視点からのニュースもやってほしいところですね。
携帯や車に限らず、なんか意図的にネガティブな見方のニュースをマスゴミが流しているように思えるのは、ネットでの意見に毒されているからなのかな?(笑
「日本の国債発行額はこんなにとんでもない額で…!」とかいうニュースも、「発行された国債はほとんど国民が買ってるから、中国にたくさん買ってもらっているアメリカとか他の国とかと比べたら危険度は格段に低いわけで、
もちろん借金は増やさない、減らすに越したことはないにせよ、
まずは景気回復策に国が投資して、国民が税金を多く払っても大丈夫な余力がもてるようになってから増税で回収すればいいとおもうんですけどね。
まず「増税ありき」の今の政府の政策とそれに同調するマスゴミはどうなんだろうと思ってたり。
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> icthyosaursさん
実は私はイギリスも結構異常な島に見えています。あそこもちょっと日本と似た香りがするんですよね。それを自覚してるのかどうなのか、あえて独自のポンド経済を維持しているし。フランスと地続きじゃなければグローバルオペレータが入ることもなかったかも知れない、と思います。
> みっくさん
マスコミの自虐視点は本当になんなんでしょうね。なんかもうすこし、日本人のやる気を喚起してほしいところです。叱られて伸びる子もいますけど、叱られてやる気をなくす子も多いんですよね。褒められて傲慢になるほうがまだマシと言う気が。