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2011/2/21 10:00 · 事業考察, 技術動向

今日は私がネットワークインフラに対して思うことを。ネットワークの多重化ってことで。

ネットワークって、いろんな通信事業者がいろんな技術を使って作っています。事業者の数だけネットワークがあり、1事業者で複数ネットワークを持っている場合も少なくありません。それに対して一時期は、ネットワークの統合が提言されることもよくありました。

と言うのは、たとえば、無線ネットワークAと固定ネットワークBがあった場合、無線ネットワークAを廃止して固定ネットワークBのアクセス部分に仮想的に無線ネットワークAを設置するような手法です。こうすることで、ネットワークの維持費を大幅に削ることが出来ます。

こういった例はまだ良いのですが、たとえばもうちょっと「明らかに無駄」とか言われるのが、一つの事業者が同じカテゴリのネットワークを複数持つ場合。たとえば、ある事業者がWCDMAとCDMA2000の両方のネットワークを持ったり、と言うことがこれに当たります。

ちょっと考えれば確かにこれは無駄と言うことがすぐに分かります。WCDMAは音声とデータを扱う無線ネットワーク。そしてCDMA2000も同じく。この両方を持つことは、実際に無駄といわれても仕方がありません。

私も、こういった例に対して、「いや、それは全然無駄じゃない!」なんてことを強く言うつもりはないんですが、とはいえ、それぞれが「違う技術」であること、そしてそれらがその技術であることに起因するさまざまな特性を持っていることをあえて無視して「完全に無駄」と決め付けることにはちょっと抵抗感があります。

たとえば、WCDMAとPHSのネットワークを持つ会社があるとします。WCDMAは音声とデータ、PHSも同じく音声とデータを扱えるネットワークです。そして、PHSは明らかにWCDMAよりもデータ通信速度が低いわけで、またさまざまな要因から広大なエリアや高速移動も苦手としている、と言うことが分かっています。この会社は、「ではPHSは完全に無駄ですね」と結論するかもしれません。

こういった状況に対して、私はちょっと待った、と言いたくなるんですね。無駄と決めるための要素を拾い集めているだけにしか見えないんです。逆にPHSの持つ他の特性を生かすことを全力で考えるべきと私は思うわけで、たとえば、PHSであれば実質占有ライセンス不要の広大な帯域が割り当てられているという制度面での有利があり、自律分散によるエリア設計フリーと密集配置の実現など技術的な有利もたくさん持っています。

そうすれば、たとえばデータ通信速度の必要ない需要、テレメトリングやプレゼンスアプリの定期通信用など、PHSでも十分と言える使い道を見つけることが出来ます。逆に、こういった用途にWCDMAを使うと、コンテナのオーバヘッドの分だけWCDMAの資源を実際のデータ量以上に食ってしまうことにもなりかねません。WCDMAではデータ密度の高い効率的で大容量の通信に使い、密度の低い非効率的な使用をPHSに追い出すことでWCDMAの容量を飛躍的に向上させることが出来るわけです。

この例ではWCDMAとPHSでしたが、これはその他の組み合わせでも多かれ少なかれ出てくるはずです。たとえばWCDMAとGSMであっても、定量の容量を消費してしまう音声を積極的にGSMに逃がすことでWCDMA上で統計効果の出易いデータ比率を上げ、統計的に容量を向上させることも出来ます。あるいは、下りデータの多いインターネットトラフィックを扱うときは下り偏重構成としたTD-LTEに積極的にハンドオフさせそれ以外のデータのためにFD-LTE帯域を温存する、と言うことも出来ます。複数の技術のネットワークを持つと言うのは、こういう強みがあるはずなんですね。

つまり、一つの事業者が複数のネットワークを持ち、秒単位ないし分単位のフレキシブルさでそれらを使い分けることが出来れば、ネットワーク容量もユーザエクスペリエンスも大幅に向上すると思うんですよ。実際、日本の事業者はすべてこれが出来る可能性を持っていると私は思うんです。

しかし、大事業者であるドコモとKDDIはこういった視点にあまり積極的ではありません。いや、今もっているものを活かすという意味ではまぁほどほどにやっているとは思うんですが、積極的に多重ネットワーク化を考えているかと言うと、むしろ逆だよなぁ、と。ドコモもKDDIも2020年代には全LTE化を済ませ旧来のネットワークをすべて巻き取りたい、と言う趣旨の発言をしています。個人的には、これは非常にもったいないと感じるわけで。

だって、「CDMA」と言う一技術カテゴリを丸ごと捨てると言ってるわけです。CDMAは確かに扱いにくい技術ですが、特に都市部で屋内も地下もみっちりカバーする方式としては、むしろかなりイケてる方式だと思うんですよね。OFDMAになると、多分都心に細かい屋内セルを打っていくとき必ず強烈な干渉問題にぶつかるし、それをキャンセルするためには自ら容量を削るような真似をしなきゃならないはず。その「削る量」は必ずある程度のマージンを持つ、つまり干渉キャンセルに(原理的に)必要な量を必ず上回るはず。それに対してCDMAはその方式の原理が自動的に干渉をキャンセルしてくれる(干渉と容量を自動的に変換してくれる)。CDMA系がエリアカバーを担当し、OFDMA系は最大速度と容量を受け持ってエリアの穴は許容する、そういう棲み分けができると思うんです。

そしてさっきも書いた、TDD系の活用に全く目を向けていないですよね、この2社。これも、この2社にある種の「失望」を禁じえない部分なんです。はっきり言って、死蔵されてるノンペアバンドは結構あるんですよ。たとえばアイピーモバイルが撤退した2G帯とか。その他、空く見込みがあるけどペアじゃないから積極的にモバイル向け法制整備に手をつけてないっぽいところもちらほら見えます。そういったところにTDD系技術、と言うかTD-LTEを入れて、インターネットトラフィックの補助として使う、と言う視点が全くないんですよね。

その点、ソフトバンクだけは、こういった多重技術の利点をよく知っているように思えます。自らが技術開発をしていたら多分自らの技術に自負を持ちすぎて、他の技術に目を向けられなくなる、ソフトバンクはそういう意味で自ら技術を持たないことが幸いしているように思います。ある意味死蔵一直線だったウィルコムのXGPバンドにいち早く目をつけTD-LTE化を推進しています。実はこのバンド帯、アメリカでは既にTD-LTE化の準備済みなんですよね。おそらくそういったところ向けベンダから基地局などの機器も安く手に入るでしょう。また、現存のWCDMA帯を可能な限り引き伸ばして活用すると言う方針も、ある意味でCDMAとOFDMAのいいとこ取りを考えているとすれば、かなりセンスが良いと感じています。

要するに「TD-LTEに目を向けろ」「CDMAを捨てるな」ってのが、ここ最近の私の技術哲学のトレンドなんですが、なんか、嫌いな(笑)ソフトバンクだけがそれを実践していると言うのが、ねぇ(苦笑)。古株事業者諸氏にもぜひとも広い視点を持っていただきたいものです。といったところで、多重ネットワーク化の利点、について、でした。

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2011/2/21 10:00 · 事業考察, 技術動向 · (No comments)
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