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2010/10/21 10:00 · 技術解説

日本でデジタル携帯電話といえば、PDCのことを指すくらい、国内ではPDCは大きく普及しました。もはや過去のものではありますが、PDCとはどういうものだったのかについて解説したいと思います。

よく、海外で普及したGSMに対して国内のPDC、と言う言い方がされることが多いのですが、実は、GSMとPDCは驚くほど似ていません。むしろ、PDCと比べるのであればPHSのほうがよく似た方式であるとさえ言えます。

もちろん、FDD-TDMAであるという方式は共通ですが、実は変調方式が全く違っていたりします。ものすごく極端に言ってしまうと、GSMはFMラジオみたいな変調、PDCは今風のデジタルっぽい変調で、最近ではほとんどのデジタル通信方式で使われている変調方式です。

また、設計思想にも違いがあり、GSMでは比較的少数のユーザが大きなエリアに散らばっていることを前提に作られているのに対して、PDCはもっとユーザが集中することを前提に考えられています。

PDCでは、ひとつの搬送波を3つに時間分割します(TDMA)。原則的に、1つの分割時間(スロット)を1つの通信が占有します。つまり、ひとつの搬送波に3人までしか入れないという方式です。

これに対してGSMは8スロットが定義されているため、同時接続数は8回線です。これだけを見るとGSMのほうが多回線を収容できるように見えますが、実はもうひとつ大きな違いがあります。

PDCは、ひとつの搬送波の伝送速度を大きく落としている代わり、その占有帯域を50kHzに抑えています。一方、GSMは1搬送波200kHzです。単純計算で、GSM1波の中にPDC4波が入る計算になり、同じ帯域幅なら12人が同時接続できます。

そして、場所によってこの搬送波の数を増減させるという設計もできます。誰もいないような田舎は1波だけで設備を節約し、集中する都会はめいいっぱい搬送波を追加する、と言うようなアダプティブなエリア設計が可能、と言うことです。PDCがユーザの集中(疎密格差)をより考慮しているといえるのはこの点です。

さらに、ハーフレート運用として、一人当たり2回に1回しか使わない、つまり全体としては6分割にするような機能も入っています。もちろんこのモードでは、その搬送波でカバーされた全エリアがハーフレート運用になってしまいますが、同じ搬送波で倍の利用者を収容できます。

このように、PDCはGSMより総じて良い特性、特に周波数利用効率はかなり高かったといえるのですが、それでも、他の国でGSMがまだ現役であるようにPDCも現役を貫くことができなかったのはなぜか、と言う点が疑問として持ち上がるかと思います。

最大の問題は、その効率の高さ。最初から完成された効率で世に出てきたことが、ある意味PDCにとって不幸なことだったといえます。

実際の数字で言うと、PDCは50kHz占有に対してシンボルレート21ksps、一方、GSMは200kHz占有に対してシンボルレート270.8ksps、占有帯域幅は4倍ですが、シンボルレートは13倍にも及んでいます。13倍もの高いシンボルレートを持ちながら収容数は2~3倍に過ぎなかったという言い方もできます(もちろん高いシンボルレートと低い占有帯域幅を両立させるためにひずみに強い変調を使わざるを得ませんでしたが)。

GSMの270kspsと言う高速変調は、しかし、次の拡張への足がかりとするに十分でした。もし単純に1bit/symbolとしても、最大270kbpsの伝送が可能です。一方、PDCは同じ条件でも21kbpsです。PDCは最初から既に4値変調(2bit/symbol)を使っているため42kbpsが可能でしたが、もしGSMが同じ4値変調を使えば540kbpsとなります。1搬送波あたりの最大伝送速度の可能性では大きな差がついていました。

無線通信では、原則として、1無線機に1搬送波です。1無線機とは物理的なひとつの無線機であり、物理的にこの数を増やさない限り同時に使える搬送波は増えません(この原則をインチキで仮想的に破ったのがOFDMとMC-CDMAです)。つまり、1つの無線機としては、PDCはいずれにせよ最大21kspsのくびきに縛られてしまいます。仮に最近実用になってきた64QAMや256QAMを使っても、最大速度は126kbpsあるいは168kbps、ヘッダや物理的冗長部を除けば、せいぜい100kbpsが出ればよいほう、と言うものです。

一方のGSMは270kspsですから、同じ思考実験をすれば最大1620あるいは2160kbpsです。実際には、GSMは厳しいロールオフのために8PSKまでの拡張にとどまっていますが、それでも伝送速度は810kbpsですから、用途を広げすぎなければまだ現役で十分活躍できる性能と言うわけです。そして、半導体技術の進歩で、実際にこの厳しい変調拡張が実現できるようになったことは、GSMにとっては僥倖であったということでしょう。

このようなわけで、GSMは拡張を重ねてまだ現役ですが、PDCは完成されていたがゆえに早期に次の世代への交代が求められ、早くはcdmaOneへの交代が、今では少なくとも全ての事業者が第三世代にシフトしているという日本独特の状況が出来上がっているわけです。

ということで、PDCが同じ世代のGSMとどういった違いがあるのか、PDCが早々に捨てられてしまったのはなぜかなどを絡めての解説でした。

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2010/10/21 10:00 · 技術解説 · (No comments)
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