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NTTの光ファイバ貸し出し議論、「一分岐貸しか一芯貸しか」と言うものがあり、今日はこれに関して技術的な面も含めて私の考えをまとめてみたいと思います。

そもそも分岐がどうとかいうのは技術的には何を意味するのか、と言う点から話をしておきたいと思います。ここが完全に前提が違っている(と言うかあえてミスリードして議論している)事業者がいるので。

光ファイバと言うのは、一本の線です。この線の上に流れるビットストリームは、原則、1つだけです。物理層で複数の波長を使うとか何とか、いろいろと拡張する技術はありますが、その物理層が上のリンク層に提供するビットストリームは一つだけです。

しかし実際には、光ファイバのビット速度はものすごく速いため、これを1対1で使うのはもったいない、と言われるような用途がたくさんあります。そこで、相手先が複数ある場合、その近くまで一本の光ファイバを引っ張り、そこで分岐して使っちゃえ、と言うことを思いつきます。これが、分岐だなんだといっている話です。

この分岐と言うのが実際に何をしているのか、と言うと、実は、「LANのハブと同じ」です。正確にはリピータハブと同じ。単に、受信したフレームを複数にコピーして別個の光ファイバに乗せなおしているだけです。受信した側が、あて先アドレスを見て、自分宛なら取り込み、自分宛じゃなければ破棄する、と言うことをしている、それが「光の分岐」の正体です。

ソフトバンクなどはあたかも「一本の光ファイバの中に複数の光伝送エンティティがある」かのように説明をするのですが、これは完全に間違い。光伝送エンティティは一つしかなく、その上で、伝送フレームのアドレスであて先を区別しているだけなのです。

そうなると、おかしいことに気がつきますね。そもそもなぜ「8分岐」が前提で議論しているのか。この仕組みなら、8分岐どころか、100分岐でも1000分岐でも可能です。だって、単にLANのハブに複数の端末を接続しているだけなんですから。

その答えは、NTTがフレッツサービスのために採用した「B-PON」と言う特定技術です。B-PONは、この同報&あて先指定のためのベースとして「ATM」を採用しました。このATMでは伝送フレームをセルと呼んでいますが、これを使うと、同時に送信できるあて先が制限されてしまいます。その制限数が32。で、NTTは局舎内で一旦4本の光ファイバに分岐させていて、個宅近くで再度8分岐する、と言うやり方で32同報を使っているのですが、この「個宅近くの8分岐」と言うのが槍玉に挙げられているわけです。注記:語弊がありました。その後NTT自身もGE-PONなどに移行しましたが、当初B-PON採用で32分岐に縛られた経緯から、事務手続き上、当初の32分岐の設計を引き継いだため現在も4×8構成となっているだけで、「現在ネットワークの分岐数の技術的裏づけ」がB-PONと言うわけではありません。

しかし、光ファイバの同一の信号列を複数で使うやり方は、ATMを使うB-PONだけではありません。最近主流は、イーサネットフレームを使うGE-PONです。これを使えば、実際、100分岐でも1000分岐でも可能です。まさにLANのハブと全く同じだからです。普通に考えれば、後発サービスとしてはこの技術を使うほうがコストも抑えられるし収容力も上がるし、しかもイーサネットフレームは可変長なのでベストエフォートで光ファイバの最大能力を引き出すことも出来、競争上こちらを使う事業者も増えています。NTTコミュニケーションズやKDDI、地域電力系などは個人向けも法人向けもほぼGE-PONにシフトしています。

さて、「分岐」と言うものがこういうものだと分かれば、ソフトバンクたちの言っている事がいかにおかしなことか、気がつきますね。ここで、「光」ではなくて通常のLANケーブルで話を置き換えてみましょう。先ほども書いたとおり、技術的には「光の分岐」は「LANのハブ」と同じだからです。

ビルの管理者であるNさんがLANケーブル貸し出しサービスを始めました。どこでも好きなところにLANケーブルを敷設するというサービスです。ただ、このLANケーブルはとてもグレードが高くとても壊れ易いため、月額100円の維持費がかかってしまいます。良心的なNさんは、原価そのままの100円でだれにでも貸し出しますよ、と通知しました。また、ケーブルを通す導管だけなら1円で貸しますということもやっています。

次に、Nさんは、維持費100円のケーブルを100円で貸していても儲けにならないので、せっかくなら何とか商売にしようと考えました。そこで、一本の線の先に8ポートのハブを取り付け、維持費100円の長いLANケーブル1本と維持費10円の短いLANケーブル人数分だけで最大8人の通信を支えるサービスを、月額50円で始めました。他のKさんなどは、LANケーブルの先に自分で100ポートの高級ハブを設置し月額40円のサービスを打ち出して大人気になっています。1円の導管だけ借りて自分でもっと壊れにくいLANケーブルを引っ張ってNさんに対抗するサービスをする人も出てきています。

さてここで言いがかりをつけてきたのがSさん。Nさんに対して「お前だけハブを使って原価が安いのはずるい」といい始めました。「そのハブを使って通信させろ。ハブにつながってるLANケーブルはお前が勝手に引っ張ったものだから賃料は払わない。その代わり、ポート利用料として原価の8分の1の12円だけ払ってやるよ」と言います。Nさんは自分が工夫して原価180円で最大400円儲かるサービスにしたのに、Sさんに12円で貸してはたまりません。ビルの管理者だからと言って、NさんはSさんに12円でハブのポートの利用権を貸さなければならないでしょうか。

もう答えは簡単ですね。Sさんは、自分も儲けるサービスをするなら、自分でハブを置いて使えばいいのです。もしそれで加入者が少なすぎてLANケーブルの原価が回収できないなら、さらに、他のサービスをしたいという人に、1ポート20円なりで貸して原価回収をすることも出来ます。Kさんみたいに高級ハブを使えばさらに原価を下げることも出来ます。維持費の安いLANケーブルを持ってくることさえ出来るはずです。こういう努力をすべて放棄して、Nさんの努力の結果だけを掠め取ろうとするのがSさんです。

光ファイバの物理層を維持管理する、と言う役務に対して支払うのが、各事業者がNTT東西に支払う貸し出し料金の正体です。これは法で縛られ、原価相当しか請求してはいけないことになっています。ところがソフトバンクはそれを勝手に拡大解釈し、リンク層のアドレスごとに原価(?)で貸し出せ、と要求しているわけです。そのアドレス宛のパケットが流れていない時間は自分の取り分じゃないから払わない、と。それを言い出したら、IPアドレスが割り当てられていない時間は原価外だとか利用者がPCの電源を切っているときの料金は減免しろとか利用者がWEBブラウザを立ち上げていない時間分減額しろとか利用者がダウンロードしていない時間分の料金は支払わない、なんていうことまで帰納的に言い出すことが出来てしまいます。

完全に事業者間交渉の範疇の話を、行政を巻き込んで大騒ぎし、世論操作する、と言うのはあの会社の常套手段なのでもはや珍しくも無いのですが、彼らが非常におかしな主張をしている、と言うことだけは、ぜひご承知置きいただければなぁ、と思います。といったところで本日はこれにて。

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2 Comments to “光ファイバーの分岐貸し出し義務について”

  1. […] ソフトバンクグループ、FTTHサービス接続を巡りNTT東西を提訴 分岐のしくみについてはこちらを参照のこと。とうとう裁判ですか。むちゃくちゃですね。現実として物理上は「8回線のうちの1回線」なんてものは存在せず、単にNTT東西が自社サービスとして1回線の中に8人分のデータを時間区切りで入れているだけなんだよね。これを使いたければエンドユーザとしてその中の一人になりサービス回線に対する正規の料金を支払えば済むだけの話。物理回線の1本を借りて好きな数だけ分岐させてサービスをするのか、サービス回線の1本を借りて再販的にサービスをするのか、選択肢は与えられている。なのに、「エンドユーザ相当のサービスを受けたい、ただしその料金は払わない」と提訴している。何度も言うけど「8つに分岐する」と言うのはNTT東西固有のエンドユーザ向けサービスの付加価値の一つであり、物理的に8つの回線が束ねられているなんていう事実はありません!!8つに分岐するという「付加価値」に対して一銭も払わない、なんていうソフトバンクの主張は乞食以上の何物でもありません!!! […]

  2. […] また、NTTが光ファイバ敷設そのもので儲けることは法律的に難しいため、身銭を切って敷設・管理している光ファイバを用いて他の通信事業者向けの商売はできない。ゆえに、原価で借りている他事業者よりも簡単に価格を落とすことは容易でない。 […]

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