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2010/12/17 10:00 · 事業考察

携帯キャリアの収益拡大のために、一人当たりの利用料、いわゆるARPUを向上させる競争が激しくなっています。加入者数で今後爆発的な伸びが期待できない以上、ARPUをどのように向上させるか、と言う視点に移行していくのは自然の流れです。

さてそこで、どのようにすればARPUを向上させられるのか、と言う点について、今回は一般論的に考えてみようというお話。大昔にも別サイトの前身のサイトで似たような話題を書いたこともありますが。

ARPUを向上、と言うことは、支払額を増やさせなければなりません。携帯電話利用者が支払う料金は、大きく分けて「基本料」「通信・通話料」「オプション定額料」「コンテンツ利用料」と言う感じです。これらに分けてまずは考えて見ます。

基本料は、その名があらわすとおり、基本的な料金で、基本的には増減しません。もちろんプランによって異なる料金で、また、割引サービスなどによる高低もありますが、多くの場合は、減ることはあっても増えることはありません。増える場合も、利用者がプランを高額なものに変更するか、利用形態の変化から割引サービスが廃止されるか、です。他の利用料の変化がその原因となることが多いので、これ自体を増やすことが目的となることはまずありえないでしょう。しかし、利用量を増やすことで間接的に増加方向に持っていく(大量利用の場合安くなるのは高額の基本料の場合が多いため)ことは出来ます。

通信・通話料については、利用者がたくさん利用すればするほど増えるものです。つまりこれに関しては「たくさん利用させる」「たくさん利用する人を増やす」と言う直接的な方法が直接支払額を増やすことにつながります。定額サービスなどのオプション定額料のセット率を増やすこともここがスターと地点です。

オプション定額料は、通信・通話料に何らかの割引を受けるため、あるいは付加サービスを利用するために必要となります。と言うことは、これに関しても利用者がたくさん利用する、あるいは、利用者が付加サービスを利用する、と言うことを促進することで間接的に増加させることが出来ます。

最後のコンテンツ利用料ですが、これは利用者がコンテンツを使う、と言う状況を作らなければ絶対に追加されないものですし、コンテンツを使うにしても、有料のコンテンツがそれを支払うのに十分な価値を持っている(無料のもので代替出来ない)ことが条件となります。こればかりはコンテンツの魅力そのものを増す必要があるため、上記のような単純な一方向の評価は出来ません。

要するに、コンテンツ利用料を除けば、何を置いても「利用者の利用量を増やす」ことがARPUを向上させる一番の方法となります。

ここで、携帯電話事業者にとって、無線リソースの次に重大なリソース問題に直面します。それは、利用者の「人間リソース」です。

一人の人間が一日の間に処理できる情報量と言うのは、せいぜいたかが知れていますし、これが何らかの技術革新で増えるということはまずありません。無線リソースと同じく、原理的なものでその上限が縛られている「貴重な資源」のひとつと言うことができます。

情報量と言っても、単にビットで見るなら、目に入りもしないような画面の隅に莫大なビット数の情報を詰め込めば閲覧しているビット数を増やすことは出来ます。ただ、それは実際には何の意味もないビット。人間のリソースと言うときは、その人が持っている「時間」に注目すべきで、つまりその人の人生の時間を何秒間奪うことが出来るか、と言うのが、今後のARPU向上に向けての一番重大なテーマになるのではないかと考えます。

たとえば、データだけ先に読み込んでしまって後はじっと閲覧するだけ、とか、ゲームで遊んでいるだけ、と言う時間は、厳密にはデータ通信を発生させませんので、利用量を直接増やすことには貢献しません。しかし、その時間を奪えたという結果が重要で、その奪った時間に徐々に通信料やコンテンツ課金を乗せこんでいく、と言うことが可能になります。無料ゲームサイトなどはまさにこの発想で、まずゲームに没頭させ時間を奪い、次いでアイテム課金で奪った時間の上で収益を得る、と言うモデルです。

また、静止画や音楽や動画などの単純なコンテンツでも奪う時間に差が出てきて、それに伴って収益機会も増やせます。たとえば、静止画なら保存していつでも見られるので奪う時間は最適化されて少量で済みますが、音楽は最初から最後まで連続した時間領域を奪いますし、動画は音楽で奪った「聴覚の時間」に加え「視覚の時間」も奪うわけでその分データ量を大きくし、収益チャンスを増します。と考えると奪う時間自体は感覚多重が出来るとも言え、たとえば次は香りの出る動画とすれば追加で嗅覚の時間を奪い、それに伴って通信量やコンテンツ料を上乗せするチャンスが比例して増えるわけです。

さてそうなると、たとえば最近増えてきた3D液晶端末は、この発想の一つの方向で、2次元しかなかった視覚にもう1次元を追加して、視覚に関する奪う時間を1.5倍に多重化している、と考えることが出来ます。この考えで言えば、無意味に高詳細なディスプレイは奪う時間を増やすことにはあまり貢献しないということも言うことができます。つまり、人間リソースの拡大と言う視点では、高詳細化よりも3D化のほうがよい、と言うわけです。

なぜこのように感覚多重方向に走らなければならないか、と言うことはもはや説明するまでもないでしょう。人間リソース、つまりある人の「人生の時間」は限られていて、しかも、恐ろしく強力な競合が世の中にひしめいているからです。おそらく最強の競合は「睡眠」ですし、「仕事」「趣味」「家族」などもかなり強い競合となります。そういったもろもろとガチで時間の奪い合いをするほどのサービス・コンテンツを作るか、さもなければ、既に奪えたわずかな時間をいかに多重化するか、どちらかしかないわけです。

通信事業者がARPUを増やすというときには、まさにこのような苦しい戦いが待っていて、しかも、最近は2台3台持ちが珍しくなくなりつつあり、通信やインターネットがヒトから奪うことが出来たわずかな時間でさえさらに事業者間で奪い合うという状況になりつつあります。人間リソースの利用効率の向上は、ARPU向上を目指す事業者にとっては喫緊の課題としなければならないと私は考えます。

ただそもそも、こういった「人間リソースの壁」を考えたとき、ARPUを向上させるという営業目標そのものが既に今の情報が溢れた時代に即さないと思うんですよね。一番簡単に人間リソースを増やす方法は「人間を増やす」ですもの。つまり、ARPUを上げる努力をするよりは加入者を増やす努力をするほうがはるかに実効的で即効的だと私は思います。

と言うわけで、ARPU向上を考えたときに立ちはだかる一番大きな壁の存在の提言として、僭越ながら稿を上げさせていただきました。でわ。

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2010/12/17 10:00 · 事業考察 · 2 comments
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2 Comments to “ARPU向上とリソース問題”

  1. […] This post was mentioned on Twitter by namanori, 無線にゃん. 無線にゃん said: ARPU向上とリソース問題 http://wnyan.jp/199 […]

  2. […] 以前、ARPU向上と人間リソースの話を書きましたが、まず人間の数に限りがあるので頭数で稼げない以上、ARPUを上げていくしかない、と言う結論に達した前提では、その人間そのものが1日に24時間しかリソースを持っていないというところが、収益向上の壁となることを書きました。 […]

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