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2011/9/7 10:00 · 技術動向, 海外動向

さて、モバイル事業の行く末の問題として必ず出てくるキーワード、M2Mですが、今回はなんとなくぼんやりとM2Mがらみのお話を筋も無く並べてみます。

以前、ARPU向上と人間リソースの話を書きましたが、まず人間の数に限りがあるので頭数で稼げない以上、ARPUを上げていくしかない、と言う結論に達した前提では、その人間そのものが1日に24時間しかリソースを持っていないというところが、収益向上の壁となることを書きました。

そのことはサービスプロバイダも重々承知している話。で、結構前から出てきているキーワードが「M2M」となりますが、一応書き下しておくと、これは「Machine to Machine」の略、つまり、(人間ではない)機械と機械の間での通信サービスのことです。

M2Mの正確な定義となると逆に難しいのですが、「機械が自律的に発したトリガーを契機に通信をするタイプの送受信者のみからなる通信」と言う感じになるでしょうか。たとえば、インターネットをノートPCで使う場合、確かにノートPCも「機械」でインターネット(のサーバ)も「機械」ですが、そのノートPCが人間による通信を企図した操作を契機として通信を行っているので、これはM2Mにはなりません。

と言っても、じゃぁその契機をプログラミングしたのは人間じゃないか、なんてことになるので、この定義にはあまり踏み込みません(笑)。ただ、M2Mが持つ通信の特徴としていくつかが挙げられています。たとえば、「大量の機械が一斉に通信開始すること」「一回当たりのデータ量が少ないこと」「セッションが短く頻度が高いこと」などなどです。こういった特徴を持つことが、M2Mかどうかを考える一つの指標とすることも出来ます。

さて、このM2Mがなぜ脚光ワードになっているか、と言うと、もうお分かりのとおり、「人間の頭数にもリソースにも限りがある」と言う前提から、これ以上さらに成長を続けるのであれば、限りのある市場から別の市場に事業を拡大していかなければならないから、となります。で、その対象が「機械」。人間一人が生きていくには一人当たり何十台と言う機械に頼っていかなければならないわけで、と言うことは、潜在的に今の何十倍の市場が見込める、と言うのが、M2Mに脚光を当てている人たちの皮算用。

そんなわけで、いろんな分野のM2Mを活性化しようとしています。たとえば身近なところでは自販機。電子マネー対応とか身分確認対応で携帯電話システムが使われたのは有名な話。また、カーナビが自動で地図を更新したり、バス停にバス近接情報が出たり、気象観測ポストが自動でデータをサーバに送信する、と言うのもM2Mです。とにかく身の回り、M2Mのネタは腐るほど転がっています。

しかし一方、それが本当にコスト低減やサービス向上に繋がるのかとはまた別、従来どおり人間が一つ一つ対応するほうが速くて安い、なんてことも多々あります。たとえば電気の検針、あれを全部モバイル端末にしてしまえば省力効果は抜群ですが、一方、従来どおり人手でやっても家が密集している都会なら1件5分ほどで回れてしまいます。しかも必要なのは1ヶ月に1回。その1ヶ月につき5分(時給1000円換算なら80円程度?)を節約するために、基本料通信量端末代その他管理費のかかるモバイル端末にするのか、というと、これはちょっとありえないですよね。

と言うことで、M2Mは宝の山ではあるんですが、実は適用可能なものはそんなに多くない、むしろそこをしっかり見極めてサービス化しないととんでもない大ゴケが待っていると言えます。で、適用可能な案件の条件を集めてみると、やっぱり「大量で」「データ量が少なくて」「セッションが短く」「頻度が高い」と言う条件のものが、M2Mに向いている、と言うことになってくるんですね。

で、注目を集めつつあるのが、スマートグリッド。このコンセプトは話す人によってころころと変わるので私もここで「これが正しい定義だ」と断定は出来ないんですが、究極の目標は電力の最適な生産、消費、備蓄を自動で行うシステム、と考えます。

生産する機器(発電所、工場、家庭の発電機など)の情報と、消費する機器(工場の機械や各家庭の電気機器)の情報、備蓄する機器(揚水発電所や工場・通信局・家庭などの蓄電池)の情報を集め、消費に合わせて生産の増減と備蓄の取り崩しを調整し、燃料を使う生産を最小化したり出力調整の難しい生産機器への負荷を一定化したり、と言うことを行うのが目的と考えます。

こうなると、各家庭のすべての電力消費機器にこういった通信デバイスが必要になってきます。現実的にはブレーカあたりに統計予測機能のついた端末をつけるくらいがまず手始めになるでしょうが、こういった目的だと、10分に1回ごとに数バイトの情報を送る、と言うような非常に細かい通信が人の手を煩わせずに行われなければなりません。こういった目的にはM2Mな通信システムが不可欠で、今、携帯電話業界は主にスマートグリッドをターゲットとしたM2M通信システムの開発を行っているようです。

さて最後に、世界的動向。こういったM2Mへの興味のシフトは世界的動きです。どこの国でも人口に対する携帯電話の普及率はかなり高いところまで達しており、それ以上をのぞむにはM2Mしかないと考えているようです。標準規格開発でもM2Mは最重要課題で、たとえば、短時間での接続・切断を繰り返すことに対応するためにメッセージオーバヘッドを大幅に削った接続シーケンスを検討したり、一斉アクセスに対応するために無線機能としてアクセス時間を乱数化する機能を考えたり、と言うことが行われているようで、3GPPや3GPP2やWiMAXなど通信規格の垣根を越えた新しいM2Mのための標準化団体、「M2MPP」の設立まで考えられている、と言うのが世界的な状況です。

ということで、M2Mに関係しそうな話をつれづれなるままに書き付けてみました。でわ。

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2011/9/7 10:00 · 技術動向, 海外動向 · 2 comments
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2 Comments to “M2M (Machine To Machine) 通信”

  1. nekoto

    関電エリアですが、最近家の電気工事をした際にメーターも最新のものに交換となりました。中に大井電気と書かれたユニットが入っているのが見えたのでこれはPHS内蔵なんじゃないかと思って調べてみると当たりでした。
    30分おきに使用量をチェックして電力会社に送るようになっているようです。
    もちろん公衆回線を使うわけではなく、近所のメーター同士でPHSのトランシーバーモードでバケツリレーで伝えて行って、最終的にはどこかの電柱に設置された局へたどり着いてそこから先は有線で電力会社まで送られていくようです。

    http://www1.kepco.co.jp/rd/news/rd449.html
    ここのPDFの4ページあたりに電力量系の説明が載っています

    http://www.ekouhou.net/disp-A,2009-118170.html
    このメーターの通信方法らしきものが書かれた特許

  2. > 「大量の機械が一斉に通信開始すること」

    前に電車の中で携帯電話がつながらなくなるネタがありましたが、もし電車に大量のM2Mデバイスが搭載されている場合、一斉にLU/RAU/TAUとかHandover実施してネットワーク側が処理しきれないケースとか発生するのでしょうね。
    3GPP仕様ではM2Mデバイスは普通はLow Access PriorityとしてConfigurationされるようなので、なおさらつながらないM2Mデバイス続出となるのでしょう。

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