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2012/11/6 10:00 · 技術解説

auの3Gのハイスピードモード、チャネルを同時に三つ使うやつですね、あれについて、実際に、容量を拡張する効果があるのかあるいは無駄遣いする方向なのかについて知りたい、と言うお便りをいただきました。

というかこれに限らず、要するに「束ねる方向」の方式一般について、それは容量拡張の効果があるのかないのか?というのは気になる話です。と言うことで、考察してみたいと思います。

たとえば、1つのチャネルを三つ束ねる方式があった場合で考えてみます。この方式導入前は、一つの端末は一つのチャネルしか使えません。それぞれの端末がそれぞれいろんな理由で三つのうちの一つのチャネルを選んでそこで通信をします。それと同時に、一つのチャネルの中で複数の端末が通信していますから、そのチャネルの中のリソースの割り振りも同時にしているイメージです。

全部の端末がランダム的に一つのチャネルを選ぶのなら問題ないですし、通常、基地局側もそのように制御するようになっています。しかし、いろんな偶然が重なると、これがすごく偏ることがあり得ます。たとえば、たまたまチャネル1番を使う端末ばかりが、高トラフィックの通信をしちゃった、みたいな場合。

そういった偶然は、おそらく常に起こっていて、基地局はそれをいちいち手続きをして平準化する(空いている別のチャネルに遷移させる)、と言う作業をしているはずです。これは、チャネルの中でリソース割り振りを切り替える処理よりもはるかに長い時間がかかる手続きです。

では、束ねる方式の導入後。端末は、三つが束ねられた一つのチャネルとしての大チャネルが割り当てられます。こうすればもちろん通信速度は向上します。一方、すべての端末がこの大チャネルを割り当てられることになるので、一つの大チャネルの中に従来の3倍の端末が入ってしまうことになります。

しかし、たとえばある端末に大チャネルのリソースを割り当てると、その割り当てられた時には、その端末は従来の三つのチャネルを同時に全く平均化された負荷で使うことになります。これは、他の端末がその大チャネルを使う時も同じです。つまり、基地局が従来通りのリソースの割当・切替をしているだけで、三つのチャネルには完全に均等な負荷がかかることになります。元々やりたかった「通信チャネルごとの偏りをなくしたい」と言う目的を完璧に達成できるわけです。

と言うことで、従来生じていたような、チャネル間の負荷の偏りが原因の非効率が防がれる分、束ねる系の方式は確実に通信効率を向上させる効果があります。HSDPAやLTEなんてのも言ってみればこの方向の方式。HSDPAでは細切れのコードを一括割当することでコード間の負荷・電力の非平衡を防ぐわけですし、LTEもサブキャリアやアンテナポートなどいろんなリソースを「束ねる」方向で効率を上げているわけです。

ただし。一つだけ、束ねる方式が効率を落とす可能性があって。リソースの割り当て(スケジューリング)の周期次第では、効率が悪くなる可能性があります。もちろんLTEやらHSPDAやらマルチキャリアEVDOなんてのは数ミリ秒単位で割り当てができるのでこんな問題は起こらないんですが、たとえば、一度リソースを割り当てられたら次のリソース切替指示は10秒後、なんていう方式だと、10秒間は保持してしまいます。もしこれで束ねる方式をやると、束ねた分速度は速いので送受信はすぐに終わってしまうのに、そのあと10秒までは保持してしまうわけで、一つの割り当てリソースの中でデータ送受信に使っていない無駄時間が極端に増えてしまうことになります。こんな方式は多分ほとんどないと思うのですが、ウィルコムの4x/8xパケット方式がちょっとこれに近い動きをしているっぽい感じです(詳細不明ですが)。

ということで、束ねる方式は容量無駄食いではなく、負荷の偏りを防いで効率化することができる方式でした、と言うことで。でわ。

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2012/11/6 10:00 · 技術解説 · 2 comments
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2 Comments to “束ねる方式”

  1. yunna

    丁寧なご返答ありがとうございます。
    やはり効率は上がるのですね。
    と言うことは、iPhone5発売辺りからのauの
    速度低下やパケ詰まりは、また別に原因がありそうですね…

    昨年の4S発売から今年の9月頃までは、
    いつ測ってもだいたい2Mbps前後は出てたのに
    最近では100kbps近くをマークすることもしばしば。

    auは比較的パワーユーザーをWiMAXやLTEに捌けてる印象もあり、EV-DO Advancedやマルチキャリアなどいろいろ効率化してると思うのですが
    800MHz掴むと特に遅いので、やっぱり新800MHzが5MHz幅で運用されてる以上、諦めるしか無さそうですね‥‥‥

    LTEに急いで移行していく方針自体は分かるのですが
    まだ買って1年で早くも軽視されていくのは残念です(-_-;)

  2. […] あとは、グループ間のバランスもありますね。ソフトバンクグループはウィルコム・イーアクのグループ化で保有周波数で事実上トップ、加入者当たり周波数だととびぬけて多い。そう考えると、ドコモかKDDIグループに割り当てるのが順当、ってことになります。で、あとは加入者当たりって話になるとするとドコモ割当かなぁ、と言う結論にもなります。ドコモの要求はスペックブーストを指向しているとはいえ、束ねる方式でも書いた通り、束ねれば統計効果で容量増もできる、と見れば、容量観点でまるで無駄と言うわけでもないですし。 […]

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