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2011/3/14 10:00 · ニュース解説, 事業考察

DTI ハイブリッドモバイルプランが安すぎる、と巷で話題騒然(笑)となっていることから、この安さのからくりとかを考えてみる今日の解説。

いやもう、答えは簡単で。元々、MVNOってそういうものじゃないですか(笑)。大元のMNOより高く売っても顧客を獲得できるわけが無いので、基本的には安く売る。ではそれをどうやって実現するのか?と言う点について。

この辺はMVNOの仕組みのところでも軽く書きましたが、MNOとMVNOの接続の仕組みとタリフの仕組みがポイントです。多くのMVNO向けタリフでは、「接続点におけるトータルビットレート」を課金対象としています。MNO(今回はドコモ)のネットワークと言うのは、基地局からそれを集約する制御局からユーザデータを転送するコアまで全部含めてMNOネットワーク。そのMNOネットワークからMVNOネットワークへは、契約上は一つの接続点しか定義されません。つまり日本中のすべてのデータがその接続点目指して集まり、その一点をすべてが通る、と言うものです。

その接続点におけるビットレートが課金の対象となり、100Mbpsならいくら、と言うような契約をします。もちろん契約形態によっては、接続点を地域ごとに2点設けてその合計とか平均とかそういうことをやることも出来ますが、基本的には「どの端末がどの程度の速度でどのくらいの量通信したからいくら」みたいな課金はしないものです(もちろんそういうMVNO=再販型MVNOもありますが)。

と言うものなので、実は、エンドユーザへの提供価格はかなり自由に設計できます。ドコモMVNO接続料金は10Mbpsで1300~1500万円。たった10Mbps、とみることも出来ますが、少なくともHSDPA端末一台がフルスピードで通信してもぶつからない天井です。そしてHSDPAでフルスピードが必要なデータダウンロードがどのくらいの頻度かと考えると、そんなに高くはありません。この「10Mbps」は、端末がつながっている時間ではなく、すべての時間ダラダラと10Mbpsを借りられるというものなので、多くの端末は接続さえしていないし、接続していてもダウンロードはしていないでしょう。所詮インターネットはベストエフォートの世界。複数人が同時にダウンロードして合計で10Mbpsの天井にぶつかり、一人1Mbpsに落ちてもだれも気にしません。

ぶっちゃけ、これを確率的に完全にばらつく、と割り切ってしまえば、収容可能数は飛躍的に伸びます。簡単に言えば、10Mbpsと言うのは、1ヶ月通しでみれば3240GBのデータ量です。モバイルデータ通信で一人当たり2GBくらい使うと仮定すれば、10Mbpsだけで1620人を収容できる、と計算できます。それでも一人当たり1万円くらいの原価ですが、別に、この「1620人」と言うのは、「制限」ではないんですよね。いくらでも増やせます。ただ、時々接続点のビットレート天井に引っかかって使用感が悪くなるなぁ、と思われるだけ。

つまり、MVNOにとっては、品質と価格はいくらでもトレードオフが効く、と言うことです。ドコモ自身にこれが出来ずMVNOに出来るのは、この辺がポイントです。ドコモは、自社ネットワークの隅々まで常に最良の品質に保つ必要がありますが、MVNOにとってはそれは「接続点」と言う壁の向こう。MVNOにとっては、単に「接続点のビットレート」を何人でシェアさせるか、と言う単純なトレードオフが出来るわけです。

さらに今回は、MVNEが間に入っています。MVNEは、MVNOを取りまとめるような役目。流行り言葉を使ってしまえば、クラウド的に「MVNOサービスが出来る仕組み」をまとめて提供する人です。MVNOをやりたいと思った事業者は、MVNEに「MVNOサービスに必要なコンポーネントを貸して~」と頼むだけでサクサクっとMVNOサービスが出来てしまいます。クラウドに関して以前コメントしましたが、クラウドは複数の利用者間でリスクとコストをシェアできることがポイント。これを利用してMVNOをする限りは、さまざまなリスクに備えたコストを自前で積み上げる必要が無いため(たとえば万一に備えて地域別冗長構成にするなんていうコストが直接は発生しない)、ドコモと直接取引するよりも結果的に安いトータルコストでサービスを実現し易いといえます。もちろん、MVNE自身も、多くのMVNOを収容する集線効果を見込んで安めのタリフを提案することもあるでしょう。

と言うのが安さのからくりなわけですが、実際こんな値段で提供されてドコモは痛くないのか、となると、これもまた痛くもかゆくも無い。だって、どんなにエンドに安く提供されようが、ドコモにとっては「全国で契約Mbps分しかトラフィックを食われない」と言う絶対的な保証があるからです。ドコモは全国トータルで何十何百Gbpsと言うトラフィックをさばき、それに対して毎月のように「やばい○Gbps増えたどうしよう」と悩んでいるような状況、そこに10Mbpsが何束加わったって蚊に刺されたほどの痛みも無いわけです。

と言うような感じで、ぶっちゃけちゃえば「ピークデータレート」こそ7.2Mbpsとは言いながらも、全国トータル帯域としてはかなり強い制限があるからこそ安く出来ている、と言うことになるかと思います。MVNOの原則の問題なのでそれだからどうこうと言うことはないわけですが、全く無関係な青森で大量ダウンロードする利用者のせいで帯域が消費されて東京で使っている人の速度が出ない、と言うことが起こる様なタイプのサービス、と言うこと程度は知っておいたほうが良いかと思います。といったところで、このへんで。

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3 Comments to “DTIモバイルが死ぬほど安いのはなぜの話”

  1. […] DTIモバイルが死ぬほど安いのはなぜの話 | 無線にゃん […]

  2. ここは酷い原子炉付自転車ですね…

    原付の免許取りたいけど事故が怖いです : 2chコピペ保存道場 http://2chcopipe.com/archives/51689747.html 原子力自動車ってのはアメリカで着手しかけたんだよな 医学都市伝説: 1958年の原子力自動車、あるいは根底的渋滞対策 http://med-legend.com/mt/archives/2007/10/1958.html ただ原子力というのはまずは熱エネルギーになるわけだが そこから動力を取り出そうとするといくつかの手段がある ……

  3. […] メールで質問をいただきました。以前、DTIモバイルが安い理由で、非常に広い範囲(基本的に全国)の利用者全体の利用帯域の合計がコストになっているので安い代わりに無線が混んでいなくても接続点の混雑で遅くなることもありますよ、と書いた件について、UQのMVNOでも同じことが起こるでしょうか、という質問をいただいています。 […]

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