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2011/3/24 10:00 · 事業考察

携帯電話の料金プランはどのように決まるのか?と言う点について、憶測混じりのたわごとを並べてみたいと思います。

もちろん、単純には、「こういったプランを作ってみたら売れるんじゃね?」と言うところから始まり、いくつかのパラメータを振って路上アンケートなどで加入意向度を測定し、基準以上の加入意向が測定されたらサービス化、と言うのが、おそらく普通の流れだとは思うのですが、そこにもう一つ、重要な要素があるような気がするのです。

それが、課金システム。携帯電話網には、当然ながら、通話や通信の量を測ってそれに対して料金を課すためのシステムが付随しています。そしてこの課金システムは、どちらかと言うと通信技術上のインターフェースよりは、加入者データベースの構造とか事業者の財務会計システムの構成などに引きずられる傾向が強い、と言うようなイメージがあります(あくまでイメージです、一部ウワサ程度にそういう傾向があると聞いたこともありますが)。

さて話を料金プランの設計の段階に戻します。たとえば、こういうプラン、考えるだけならタダですが、実現できるでしょうか。

通話料は10円/30秒だけど半径1km以内にいる人との通話は無料で、メールも同じく1km以内の人とのやり取りは無料で、加えて自分と相手の両方が5年以上のユーザなら一度メールや通話をやり取りすれば基本料から300円引きになります。

こういうプランを作れるかな、と考えると、まぁなんとなく作れそうな気がします。発信と着信のときにGPSで位置情報を取る、と言うような余計な手間がかかりますが、対応した端末だけ、と言うようにすればできますし、毎月の請求書発行のときに全通話ログを検索して発信位置と着信位置の直線距離を計算して1km以内なら非課金にするという処理をすればいいし5年以上加入の相手がいるかどうか判定すれば割引も出来ますよね。

多分、携帯電話キャリアで課金システムを作っている人がこれを見たら「ふざけんな」と怒るんじゃないでしょうか(笑)。理屈上こういうことが出来る、と言うことと、現実にこういうプランが作れる、と言うことは全く別と言うこと。たとえば、通話ログにGPS情報を載せるというだけで通話ログデータベースの構造がごっそりと変わり、もちろん情報量が一気に膨れ上がります。GPS情報をhttpベースでどこかのサーバに一旦保存するとすれば、そこから毎回位置情報を引っ張り出して通話ログに付与する、と言う処理が必要になります。それを、だれがどんなトリガーでやるのか、さらに呼処理系NWとコンテンツ系NWと端末の時刻同期はどうするのか、なんて考え始めたら気が狂いそうです。

また、請求書発行のときに全通話ログと相手先加入期間を検索、なんて、データベースの負荷を考えるとありえない処理です。少なくとも日本の事業者は数千万の加入者を持っていて、属性ごとにその数倍の加入者データベースを保持しています。それに対して、通話ログ数倍した検索をメッシュで行う、こんな処理が1日どころか1ヶ月かかっても終わるかどうか。

さらに、割引や無料化は、財務上の処理も必要です。そこももちろん「決め」の問題なのですが、単なる決算報告なら請求情報だけ積み上げることにすればたいした手間ではないですが、実際には管理会計のために一旦売り上げてから消しこむ、みたいな事をしないといけないことが多いはずです。もし財務会計システムがたとえば通話相手先別にそういう手順に対応していなかったら、このプランも実現できません。

と言うように、課金システムの作りや処理能力で、料金プラン自体が実現できないことが多々出てくるのではないか、と考えられます。実際そういう制約でお蔵入りした幻のプランのウワサも聞いたことがありますし、むしろ料金プランの企画者が何度もそういう理由でプランをお蔵入りさせられることを繰り返され、意識をそれに縛られてしまって自由なプランの発想が出来なくなっている、と言う現実があるはずです。

このため、私は正直、この課金システムと言うのは、携帯電話事業者の競争上、非常に強力な競争力確保と差別化の武器になると考えています。他社が容易に追従できないような料金プランを矢継ぎ早に繰り出せる柔軟な課金システムと言うのは、それだけでインフラ力や端末調達力をはるかに超える強力な武器だと思うのです。なにせ、「通信」と言う無形の役務(=サービス)を提供するという事業者の本質の観点からは、料金プランと言うのは唯一加入者に見える商品です。端末売り切りが一般になりさらにSIMロック解除さえも進行中にあっては、ますますその性質は強くなるはずです。

であれば、料金プランをいかに魅力的に、しかし他社が真似できないようにするか、と言うのが、今後の競争では重要な位置を占めると思うのです。

真似できないという一つの裏づけは「インフラ」でしたが、これも、「品質度外視」と言う通信事業界の非常識を常識として持ち込む事業者が現れ、その裏づけは崩壊しています。となれば、真似できないという裏づけの一つは、確実に「柔軟な課金システム」であり、ここに力を入れない事業者は確実に凋落していくと考えます。

と、えらそうに書きましたがこれは後付の理論。実は、ソフトバンクがなぜこれだけ躍進し、KDDIが凋落しているのか、と言うのを分析した結果。ソフトバンクは例のブループランとかオレンジプランとか「24時間以内追随宣言」とか、あの頃、「そんな馬鹿なことが出来るわけがない」と各事業者(の課金システムに明るい人々)が高をくくっていたところに、それをほぼ実現して見せました。

実はあの当時、課金システムが全く追いつかないため半ば手作業でそれをやっていると言う笑い話もあったくらいだったのですが、その経験を活かしてしっかりと課金システムを練り上げ、どんなプランにも柔軟に対応できるように昇華していったことが、後のソフトバンクの躍進を支えているはずです。何しろ、他社がどんな魅力的なプランを出してもすぐに追随してその魅力を削いでしまうのですから。今考えればまさに「料金プラン殺し」。相手の身じろぎさえ許さない強力な作戦です。

一方、KDDIはその対極。一つの料金プランを作るのに半年も一年もかけて課金システムの改造をしなければならないようです。課金システムの柔軟性そのものにはほとんど手を入れず、新しい料金プランのために専用の課金スクリプト(?)を投入しなければならないようなシステムのようで、散々遅れた挙句投入したメール放題プランはさくっと真似されて終わってしまっています。

ドコモはソフトバンクのような動きこそ見せていませんが、背後では相当しっかりしたシステムの改善があったように思われます。KDDIのメール放題プランの投入から1ヶ月に満たずに追随プランを発表しています。これがKDDIなら半年も一年もかけて旬を逃してしまうところですが、ドコモはうまくKDDIの発表直後にかぶせて、ドコモからKDDIへの流出を防ぐことに成功しました。

つまりKDDIは料金施策上何をやっても他社に潰されるし他社の真似さえできない、と言う状況、一方ソフトバンクは最初に超魅力的なプランを出しておいて、システム対応の鈍重な他社が魅力的なプランをリリースしようとすれば即座に同じプランをぶつけて潰すということを繰り返して自社のブランドを守ることで躍進した、と言う対極の対応が見えるんですね。

こういうことについて、「なぜやらないのか」ではなく、おそらく課金システム上「できない」と言うのが事実ではないかと私は考え及んだ挙句、こういう文書を書かせていただくこととなりました。と言うことで上に書いたことは大半は憶測ですので、あまり真に受けないで下さい、と予防線を張りつつ、このあたりで。

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2011/3/24 10:00 · 事業考察 · (No comments)
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