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2012/5/31 10:00 · 事業考察, 技術動向

だいぶ前に、地下鉄駅構内でドコモの携帯電話がほとんど使い物にならない、という話を書きましたが、最近は、auの方も結構ダメダメになってきました。スマホなのでパケットにつながってるのかつながってないのか辺りが少し不明瞭なのですが、通信状態を表す矢印を見ていると、上り方向は点滅するけど下り方向が全く点灯しない、という感じ。これはあくまで上位プロトコルから見た状態なので、おそらく、無線がちゃんとつながってなくて、上位から見ればデータを送ったつもりなんだけど、たぶん下位プロトコルのところで完全に滞留している(無線がつながってないので)、という感じだと思われます。

さて、この話を以前にも書いた時、ほかの地上のターミナル駅でも結構ひどいよ、というお話もいただいたり、あるいは、「地下だからしょうがないじゃん」的なコメントもいただいたりしたのですが、よく御存じの方から見れば「地下だからしょうがない」というのは至極当然かと思われますが、今日はそのあたりの話を少し。

私が特に地下鉄駅を取り上げたことには、やっぱり意図があるというか、だからこそ地下鉄駅を、というのがあります。それは、地下という閉鎖性が問題です。

今現在、地下で携帯電話が使えるのは結構当たり前になっていますが、特に地下鉄駅などの公共の地下で携帯電話が使えるようになるのにはいろんな紆余曲折があったりなかったりするわけです。とにかく何を置いても問題になるのが、「基地局をどこに置くのか」です。

確かに普段、地下鉄の駅構内で天井を眺めたりしても、そこかしこに入り口があってあちこちに無駄なスペースもあって、携帯電話の基地局なんてどこに置いたっていいじゃん、と思うこともわからないでもないのですが、一方、地下鉄事業者にも地下鉄事業者なりの言い分があります。すなわち「あれは無駄なスペースなんかじゃない」と。

地下掘るのだってタダじゃないし、出来るだけ効率よく必要な装置・機材を収容できるように作るのは当然の話で、そういう前提であるにも関わらず何か無駄っぽいスペースがあるってことは、それは、たとえば保守・作業用のマージンとして必要欠くべからざるものであったり、あるいは、地下鉄事業者自身が将来的に装置設置のために確保してあるものだったりするわけです。それを赤の他人にホイホイと貸すかというと、それも無理のある話でしょう。

もちろん、スペースに十分な空きがあったとしても赤の他人の装置を置くこと、置くために工事をすること自体、地下鉄事業者にとってはリスクでしかありません。スペースの消費はもとより、そこに重さもわからない装置を置くようなリスクも取れないし、そのための電源や回線を引き回すためにダクトなりなんなりの経路を使わせることは、自社サービスのための配線に対するリスクでもあります。さらには携帯電話基地局は事業法電波法に守られた装置、法的に触ってはいけないケーブルがそこにあることで、自社用のケーブルの工事に制限ができてしまう可能性もあるわけです。そもそも鉄道用の保守スペースとかに他の知らない作業者を立ち入らせる、って時点でかなりハードルが高いわけで、まず第一声は「ヤダ」でしょう。私ならそう言います(笑)。

そんなわけで、携帯電話事業者と地下鉄事業者は話し合いに話し合いを重ね、こうやってスペースを節約してこうやって必要スペースを確保するし、こういう仕組みにすることで作業員の出入りや回線の取り回し作業を最小化するので何とか置かせてください、という様にして、基地局設置を実現しているわけですね。

で、地下鉄事業者などとの交渉の内容はまぁ想像するしかないのですが、一番よく知られているところで言うと、「各社のアンテナを出来るだけ共用化してスペースを節約すること」なんてのがあったりします。基地局本体もかさばりますが、アンテナもかさばる物。それを各社が好き好きにつけたんじゃぁたまらないから、多バンド対応のアンテナを共用で使う様にしなさい、なんていう形になっていることが多いようです。

一番技術的に厳しいアンテナ共用さえさせるほどですから、それ以外にもおそらく細かい点でいろんな縛りがあることは想像に難くありません。回線数を増やすために基地局を増設するとか、無線キャリア数を増やすとか、そういったことに対してはかなり厳しく制限が入っているはずですし、もちろん、バックホールの物理線をいろいろいじくることも難しいはず。となると、たとえば、アクセスが増えて大変になってきたのでバックホールを太くしよう、なんてことは簡単にはできないわけです。

おそらく、全くやっちゃダメ、という程の制限ではないでしょうが、たとえば、配線してある天井裏に潜るには○ヶ月以上前に申請して審査を受けなきゃならないとか、鉄道事業者の工事や調整が優先なのでそういった作業が一切ない時期まで待たなきゃならないとか、新しい機器や線などはどんなものが入るのかの仕様を開示して審査を受けなきゃならないとか、二社以上の事業者の工事が一度にできるよう事業者同士で話をつけてこい(単独工事は不可)とか、たぶんそんな感じではないかと思います。私が鉄道屋さんなら、たぶんこの程度のことは吹っかけると思います。だって触られたくないもん(笑)。

ということで、地下鉄駅構内などでは、装置を追加しにくい、回線を増設しにくい、という事情があり、トラフィックの急増にはどうしても追いつかないということになります。地上の駅よりも地下鉄の駅が、より混雑の影響を受けやすいのは、これが一番強く効いていると考えられます。要するに、一昔前の前提のネットワークがいつまでも残ってしまう、ということ。

そしてもう一つ、これを加速させる地下の事情は、「逃げ道がないこと」です。地上だと、たとえば3Gではトラフィックが増えてくるとそれはノイズの増大として観測され、そうなるともっとノイズの少ないところへ行けないものか、という仕組みが働きます。いわゆるハンドオーバです。特に移動しなくても、トラフィックが集中して品質の落ちたセルからは端末ができるだけ逃げ出そうとするわけです。たとえ届く電波が弱くても、そのノイズが十分に低ければ利用できるわけで、本来その場所をカバーする目的ではなかった隣のセルなどにハンドオーバして品質を保とうとするんです。WCDMAではもともと品質ベースでハンドオーバをかける契機があるのでこれが有効に働いていますし、CDMA2000(EVDO)はスロット分割なのでこの仕組みが働きにくいのですが、先日のEVDO Advanced導入で能動的にこの契機をかける仕組みが入ったようで、いずれも、「やばくなったら隣のセルに逃げる」ということができるようになっています。

ところが、地下になると、その頼みの「隣のセル」が見えないんですね。基本的に最小限のアンテナしか設置しないということと、構造が複雑でしかも遮蔽力が強力なコンクリ+地盤に阻まれているため、ごく一部のエリアをのぞいて複数のセルがオーバーラップしていることはないと考えられます。であるため、ある一定のエリアはほとんど一つのセルが単独でさばいているようなもの。特に駅のホームとかとなると、設置位置も限られているためセル一つかせいぜい二つ、これで、乗車+列車待ちの千人単位の携帯電話利用者が殺到すれば、あっという間にパンクです。

で、これに加えて地下鉄特有の問題として位置登録輻輳も電車の入線のたびに起こります。地上駅であれば、駅の間のページングエリア境界でみんな一斉に位置登録を行うということは起こるわけですが、と言ってもアナログ現象である電波ですから、エリアが連続的であればある程度アナログ的にばらつきますが、地下は「一度完全圏外になる」「次に突然復帰する」というデジタル的なギャップがあるため、位置登録集中の効果は地上より非常に大きくなります。で、この位置登録輻輳のために一般のデータ接続への割り当てが先送りになったりして(一般的には位置登録などシステム上必須の接続はデータ接続などより優先処理されます)、溜まったデータがそのあとの時間帯にシフトしてトラフィックを底上げするわけで、トラフィックの増大による逼迫がより出やすくなっている、ということになります。

ということで、混雑が激しくなればまず地下鉄に来るはず、ってことで、地下鉄での品質には特に注目していたわけです。で、予想を超えて、地下鉄駅だと、ターミナルどころか乗り換え駅でもない近郊のヘボい駅でさえ症状が出るほどに混雑してきたことにびっくり、という感じなんですよね。

今、各社共同で地下鉄の駅間トンネルのカバーを進めていますが、これは上述の問題のうち、位置登録輻輳による逼迫を多少緩和してくれるのではないかと期待されます。というか、すでに都心で始まっている駅間カバー路線で、以前はかなりひどかった状態が同じ曜日・時間でもかなり緩和されているのを体感しています。位置登録や接続再開のアクセスが駅間でばらついてくれるだけでこれだけよくなるんだー、ってくらいです。

ってことで、地下ってのは何かと特殊な事情が絡みやすいので、トラフィック対策は大変なんですよ、というお話でした。ちょっと違うか。

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2012/5/31 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 4 comments
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4 Comments to “携帯電話が地下鉄で混雑のワケ”

  1. […] これは怖い。KDDIとSBもとのこと。確認しましょう 携帯電話が地下鉄で混雑のワケ (無線にゃん) 本で床は抜けるのか/ 続・本で床は抜けるのか […]

  2. […] これは怖い。KDDIとSBもとのこと。確認しましょう 携帯電話が地下鉄で混雑のワケ (無線にゃん) 本で床は抜けるのか/ 続・本で床は抜けるのか […]

  3. […] つまり、LTEのエリアの端っこをみんな同時に通過することで、3Gへのハンドオーバが一斉に起こって、その時の最初のランダムアクセスがぶつかり合ってなかなかチャネルの割り当てが行われない、と言うことが起こっているんだろうと思います。昔に書いた、地下鉄での混雑の後半に書いたような一斉アクセスが地上でも起きている、ってことです。で、たいていはチップの独自実装として一定回数ランダムアクセスが失敗するとしばらくお休みしちゃう、と言う動作をします(ネットワーク保護の観点で)。このチップの動作がおそらくパケ詰まりの原因。 […]

  4. […] 携帯電話が地下鉄で混雑のワケ (無線にゃん) […]

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