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2011/1/13 10:00 · ニュース解説, 事業考察

SIMロック解除が云々の話。今年から、原則としてSIMロックを解除しましょう、と言うガイドラインが総務省界隈で作られたので、今年はSIMロック解除元年になるんじゃないか、と言う話もあるわけですが。

しかし、SIMロック解除の実現そのものがかなり怪しい骨抜きガイドラインであるということ、そして、SIMロックを解除したとしても現実には何も変わらないのではないかということ、この辺、いろいろと問題があるような気がするんですね。

と言うことで、ガイドラインの有効性と、それから技術的なSIMロックの有効性、分けて考えてみたいと思います。

まず、解除の実現そのものが怪しいという話。そもそも、「対象端末」が、「23年度以降発売で対応可能なもの」です。そして、この「対応可能」には一切定義がありません。つまり、どのような要件で「対応可能」とするのかが明確でなく、逆に言えばどんな端末でも「対応不可能」とすることが出来ます。

「対応可能なものは対応する」と言うガイドライン、要するに何も決めていないのと同じです。「山を動かせる人は山を動かさなければならない」と決めてもだれも山を動かさないのと同じです。あるいは「100円を支払える人は100円を支払わなければならない」と決めたら、ある人は「財布の紐が堅すぎて100円を取り出せません、支払えません」と言い、ある人は「1000円札しか持っていないため『100円を』支払うことは出来ません」と言い、支払いを逃れるでしょう。

たとえば、「現金あるいは現金化可能な資産を100円以上所有する人は100円を支払わなければならない」と言えば、否応無く100円以上持っている人は払わなければならなくなりますが、結局「100円を払える」の定義が不明確なので、どんな屁理屈の理由でも支払えない理由になってしまう、これが、SIMロックガイドラインにも同じことが言えるわけです。

もう、こういう屁理屈を言わせたらもちろんあの会社が筆頭なのですが、間違いなくこういう屁理屈をこねて解除を拒むと思います。ドコモはそういった屁理屈封じなのか、機先を制して自ら解除を明言しましたが、もし普通の会社であればさすがに恥ずかしくてその状況で屁理屈をこねることは出来ないでしょう。

しかし、あの会社はそういった状況でも世間の目や常識論などどこ吹く風で我を通し成長した会社です。恥ずかしげも無く「出来ません」と言うでしょう。おそらく「ローン残債のある間は所有権が云々」などと言って2年は解除不可能とかその辺で落ち着かせようと考えているはずです。何より、タダ同然で売っているiPhoneはあの会社の純増とARPUのすべてを支えているといっても過言ではありませんから、そのSIMロック解除は絶対に受け入れがたいはずで、必ず「不可能な理由」をこじつけると思います。

と言うことで、実質、このガイドラインがあったとしても、そもそも強制力もないし、内容にも巨大な抜け穴がぽっかり開いていて、SIMロック解除が足並みをそろえて実現する可能性は低いと考えます。

次に、SIMロックの解除をしたとしても、どれほどモバイル市場の活性化につながるか、と言う話です。一つは、無線方式と無線周波数の違い。これは大雑把に言って「無線ハードウェアの問題」とまとめてしまいます。

WCDMA系とCDMA2000系ではそもそも方式が違うため、ロックを解除しても何の意味もありません。この段階で、auの端末のSIMロック解除には全く意味がありません。ただし、GSMローミング端末としての相互利用は可能になります。auのGSMローミング端末のロックを解除して、そこにドコモSIMを挿せば、グローバル周波数であればおそらく問題なく海外で使えるはずです(そうでなければならない)。海外用端末としてなら、融通の可能性がありますが、しかし、そこまでです。

もちろん、LTEと言う目も見えていますが、これも現実的ではありません。LTE導入は、ドコモが2GHz、KDDIが800M+1.5GHzと見事に分かれています。海外でも2GHzでLTEを導入する動きはまだほとんどありませんから、KDDI端末が2GHz帯LTEにわざわざ対応する可能性はかなり低いですし(デュアルモード対応チップであればCDMA2000のついでに対応する可能性はありますが)、ましてや田舎バンドの800M+1.5GHzにドコモLTE端末が対応するはずもありません。

また、現状同じ技術のドコモとソフトバンクにしても、ドコモは800MHz帯をいまやメインとしつつあります。2GHz帯はLTEへ移行し、徐々にフェードアウトを狙っており、となると、共通周波数としては2GHzでしか動かないソフトバンクの端末を持ってきても、主なエリアで使えないということになります。

また、ソフトウェアの問題もあります。まず、基本的な問題として、ケータイでのネット接続サービスに互換性がありません。要するに、iモードとY!ケータイは相互に利用できないということです。それぞれのケータイネットサービスは完全にクローズ網で、他社から接続することは出来ません。メーラも専用品だしブラウザもそのクローズネットの言葉を話すように作られているし、その他、SMSをキッカーとして使うようなリアルタイムサービスも当然動かないし、サーバアドレスが端末埋め込みとなっているさまざまな情報サービスも使えなくなるし、となると、現実には「音声通話と自動着信なしのEメールとフルブラウザでのネット閲覧」だけがSIMロック解除端末で出来ることになってしまいます。

しかも、ネットワークの接続先は、自分で用意しなければなりません。どこかのプロバイダと契約し、そのアクセスポイントを端末に自分でセットしなければならないということです。もちろん、ケータイネット専用接続先やフルブラウザ用接続先やスマートフォン用接続先とも異なるアクセスポイントですので、PC接続向けのパケット料金が適用されます。フィーチャーフォンでもスマートフォンでも、です。

しかしそれでも使いたい、と思える端末もあるのも事実です。要するにiPhoneなど、グローバルモデルの輸入品。グローバルモデルはそもそもネットワークにほとんど依存しない機能しか持っておらず、ネットワークに依存しなくてもほぼすべてのサービスが利用可能となるように作られていますから、こういったモデルはSIMロック解除することに意義があります。

要するに、上の「定義があいまい」の議論と併せて言えば、ぶっちゃけ「海外でも複数事業者向けに平行販売されているモデルはSIMロック解除しなければならない」と言う決まりにしてしまうのが一番手っ取り早いんじゃないか、なんて思うんですね。いやこの文言でもいくらでも抜け道はありますが、その辺の定義もしっかりとするという前提で。

なんていうアイデアはどうでもいいのですが、今年の「SIMロック解除」の時には、実質的にはその主眼とされる「解除されて意味のある端末」は解除されない、と言うことになるのではないかと考えられます。しかしドコモだけは原則解除と言っているので、それを受ける側のソフトバンクはSIMのみ契約と専用のアクセスポイントと料金プランを用意しておいしいところだけは頂く、なんてことをやりそうです。これで市場がどう動くのか、唯一技術もバンドも共通していながらも態度を保留中のソフトバンク次第といえそうですね。といったところで本日はこれにて。

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3 Comments to “SIMロック解除はどう動く”

  1. みっく

    次期iPhoneは日本の主要3キャリア全てが取り扱い可能?
    http://iphone-lab.net/archives/7484
    >iPhone 2010年モデルでは、CDMA2000規格でサービスを展開している米Verizonをターゲットとして、CDMA2000とW-CDMAの両規格に対応する米Qualcomm社のハイブリッドチップを搭載するという噂が有るようです。

    日本の3キャリアどれでも使える端末が出てきたら、ユーザーからのSIMロック解除要求が怒涛のように出てきそうな予感が…

  2. […] This post was mentioned on Twitter by コータロ and 石川学, 無線にゃん. 無線にゃん said: [SIMロック解除はどう動く] http://wnyan.jp/405 ◆SIMロック解除が云々の話。今年から、原則としてSIMロックを解除しましょう、と言うガイドラインが総務省界隈で作られたので、今年はSIMロック解除元年になるんじゃないか、と言う… […]

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