「スマートフォンなどで容量がひっ迫するなどの問題が出ていますが、これを抑制するために定額を廃止する流れなどに今後なっていくでしょうか」というような質問を数件いただいています。
障害が多発するのも一因はスマートフォンによる通信量の増大といわれていますし、もちろん、その通信量をさばくために多大な投資を強いられる各社としては、定額料金で使い放題というのがその一因となっていることに当然気が付いています。そこにメスを入れようとする動きが起こることが予想されます。
「予想されます」なんて言っちゃいましたが、実際には、実質の定額廃止がすでに行われていますよね。ドコモのXi定額は5985円で通信量制限が月間7GB、7GBと言えば結構多い量ではありますが、それでも、「完全定額使い放題」ではなくなっていますし、ソフトバンクLTEは同じく5985円でドコモより厳しい5GBまでの制限が付きます。それ以上はいずれも128kbpsで通信できるとしていますが、実際には、128kbpsでは動画一つも満足に再生できないわけで、実質の従量料金制度に移行したわけです。
結局、結構前から各社ともに従量制への移行は課題だったわけです。たとえば米国の事業者のように、「今日からiPhoneの定額制の受け付けはやめます」なんて言うことをやってもよかったんでしょうが、おそらくそれは日本では受け入れられないのではないかと考えたのでしょう(というかAT&TとVerizonの定額廃止チキンレースを見ていれば、定額廃止が営業に莫大なダメージを与えることは明らかですし)。そうなると、なにか別の理由をつけて従量制に移行しなければなりません。
で、折よく同時期にスタートしたのが、次世代の通信方式「LTE」ということになります。LTE向けの新プランということにして、LTEを新しく利用するにはこのプランしかありません、という形で従量プランを用意すれば、比較的スムーズに従量への移行が可能になるわけです。
実際問題として、たとえばWCDMAとLTE、どちらの方が大量のデータに弱いか、と言えば、もちろんWCDMAです。無線としても容量が小さく効率が低いうえに、有線ネットワークにおいてもWCDMAの方が拡張がしにくく、拡張するにしてもコストの高い方式とならざるを得ないため、実は、WCDMAをこそ従量にしたいくらいのはずなんですよ。それでも、LTE向けプランを従量にするのは、やはり「新サービスにかこつけて従量化したい」という強い意志があるからだと思うわけです。
実際、ソフトバンクやイーモバイルがすさまじく勇み足気味でLTEを開始した理由は、この辺じゃないかと思っています。とにかく現行ネットワークで定額制をやっていくのはほぼ限界が近い、とはいえ、同じネットワーク同じサービスでいきなり従量です、というのは他社がやらないうちは無理、という状況にあって、一番厳しい状況にあったドコモが「新サービスでーす」と言って従量をはじめちゃった。こうなると、従来サービスのまま従量移行を、というのは無理で、ドコモと同じ方式での従量化を狙うしかなく、そのために大急ぎでLTEを仕上げた、というような気がします(妄想です)。
料金検討中のイーモバイルが半従量の料金になったりしたら、上の妄想が結構正しいのかも、なんて思います。もちろん、最後発KDDIも、「ドコモがやったなら」という形で同じように従量化するはずで、最初の目的はどうあれ、「LTE化」という節目を「定額料廃止」としてうまく利用する、というのが各社の思惑ではないでしょうか。むしろ、この大きな節目は最後のチャンスに近く、ここで手を付けないとずっと完全定額を提供せざるを得なくなると思います(もちろんそのぶん料金競争力は強いわけですが)。
ということで、「定額廃止の流れ」はすでに起きている、というのが私の見方。今年中に各社(ひょっとするとイーモバイルだけは除く、かもしれないですが)が、LTE系新サービスでは従量制プランだけを提供し、新サービス対応端末を販売主軸に据えて旧サービスを巻き取っていくことで、徐々に従量制に移行していく、という形でしょう。7GBや5GBは高い閾値ですが、「上限がある」という心理的キャップだけで相当通信量は抑制されるような気がします。ということで、各社の定額廃止についてでした。
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