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2010/10/13 10:00 · 事業考察

※この記事は別サイトで2009年5月25日に公開した記事に加筆したものの再掲です。

さて、人口カバー率と実際のエリアの間の乖離についてはたびたび取り上げられますが、それが本当のところどうなのか、という点について、なかなか客観的な数字を出して議論が出来ませんでした。

そこで、一念発起。総務省国勢調査の市区町村人口一覧と、国土地理院面積調の結果をつき合わせて、人口カバー率と実際の面積カバー率の関係を求めてみることにしたわけです。

ただし、この関係を求めるにあたって、やはり人口カバー率と同じように非現実的な仮定を置いています。それは、市区町村の役所をカバーすれば、その市区町村の全面積をカバーしたこととみなす、というような仮定です。ですので、「本当の面積カバー率」はこの関係から求められる面積カバー率よりもかなり下になることになりますが、その点をお断りしておいてから、ご紹介します。

横軸が市区町村数。それに対して、青い線が人口カバー率、赤い線が面積カバー率です。

人口カバー率を上昇させるという前提のもと、人口の多い市区町村から順次カバーしていくものと考えると、最初の1000市区町村までは一気に90%以上まで伸びますが、それ以降は伸びが鈍化し、いくらカバーエリアを拡大しても人口カバー率の数字は上昇しない、という非効率ゾーンに突入します。

いや、このグラフかいてみて、こんなに見事な人口分布になっているとは、と改めてびっくり。本当に滑らかですよね、青い線。これ関数で書いたんじゃなくて、実は折れ線グラフなんですけど、本当にきれいです。

それに対して、赤い線は、それぞれの市区町村の面積を積み上げています。一応きちんと市区町村一つ一つについて人口と面積を積み上げていっていますが、面積については、人口の多少にかかわらずほとんど平均値周辺に集中していて、ほぼ1:1の傾きで上昇していきます。多少、人口の多い前半のほうが少しだけ面積が広い傾向があるようです。

この図を見ても分かるとおり、人口カバー率は、人口の多い大都市をカバーすることで大きく増えるのに対し、面積はほぼカバーした市町村数に比例するため、人口と面積のカバー率には大きな差が出てしまっています。

たとえば、人口カバー率90%でも面積カバー率は50%に満たず、98%、99%と言う数字であっても、面積的には7割、8割と言う程度でしかありません。もちろん、市町村の全面積をカバーできる例は非常に少ないため、実際の数字はもっと低いことが考えられます。

これが、人口カバー率のマジックですね。つまり人口は多いところには極端に集まっていて、少ないところはとことん少ない、という特徴があるため、少ない市区町村をカバーすれば人口の大半を押さえたことになるわけです。

たとえば、ある新しいサービスに対して、開業から90%までを数年でカバーできたとしても、90%からの1%1%がいかに重く、大変な作業であるかが逆にわかるかと思います。とにかく、カバーする市区町村を増やしても増やしても人口カバー率が上がらないわけです。たとえば人口順位のトップ付近にいる川崎市は川崎市1つだけで1%人口カバー率が上昇しますが、ドベ近くにいる上九一色村などは0.001%しか上昇しません。「人口カバー率」という数字を前提にすると、ドベ付近の市町村を1000カバーするのと川崎市一つをカバーするのが、数字としては同じ結果しか生まない、ということです。

ということで、改めてちゃんと調べてみると、やっぱり人口カバー率はこれだけの誤解を生む数字なんですね。もちろん、面積カバー率も、全面積をカバーできているわけがない、という意味ではそれ自身もまた現実よりずいぶん良く見える数字であることは間違いなく、実際の面積カバー状況はさらに悪い、と言えそうです。

以上、人口カバー率の現実との乖離の実態について、きちんと統計数値から作図してみました。

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2010/10/13 10:00 · 事業考察 · 4 comments
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4 Comments to “人口カバー率と面積カバー率をちゃんと調べてみる(加筆再掲)”

  1. […] ソフトバンクのプラチナバンド開始、スギちゃんがアピール プラチナバンドが始まりましたー、と大々的に発表していますが、別の記事によると、今年度中の「人口カバー率」が22.2%らしいですよ。人口カバーと面積カバーの関係の図を見ていただければわかりますが、人口カバー率(青線)で22.2%のところを下に伸ばして面積カバー率(赤線)を見てみると・・・ちょっと読むのも難しいですが、せいぜい3%程度。900MHzでカバーされる日本の面積は、今年度末まで待ってもたったの3%なんです。これを「垂直立ち上げ」と言うらしいですよ、ソフトバンクという会社的には。前にも書いた、プラチナバンドだからと言って何でも解決するという論調は危ないですよ、と言う危惧が、見事に現実化していますね。低い周波数帯は一朝一夕の整備が難しいことはわかりきってるんだから大ぼら吹かずに地道に整備すればいいのに、そういうところを最初から隠して「プラチナバンドを最初から持ってるドコモauはずるい」と他社攻撃を続け、いざもらえる段になるとその論調を裏打ちするためにできもしない大ぼらを吹く羽目になり、その大ぼらで貴重な周波数を強奪した結果は、一年近くもかけてたったの3%カバーです、と言う見事な自爆。まぁ元からそういう会社だから今更こんな叩き方しても痛くもかゆくもないんでしょうけど、がっかりです。貴重な周波数が。 […]

  2. […] ソフトバンクのプラチナバンド開始、スギちゃんがアピール プラチナバンドが始まりましたー、と大々的に発表していますが、別の記事によると、今年度中の「人口カバー率」が22.2%らしいですよ。人口カバーと面積カバーの関係の図を見ていただければわかりますが、人口カバー率(青線)で22.2%のところを下に伸ばして面積カバー率(赤線)を見てみると・・・ちょっと読むのも難しいですが、せいぜい3%程度。900MHzでカバーされる日本の面積は、今年度末まで待ってもたったの3%なんです。これを「垂直立ち上げ」と言うらしいですよ、ソフトバンクという会社的には。前にも書いた、プラチナバンドだからと言って何でも解決するという論調は危ないですよ、と言う危惧が、見事に現実化していますね。低い周波数帯は一朝一夕の整備が難しいことはわかりきってるんだから大ぼら吹かずに地道に整備すればいいのに、そういうところを最初から隠して「プラチナバンドを最初から持ってるドコモauはずるい」と他社攻撃を続け、いざもらえる段になるとその論調を裏打ちするためにできもしない大ぼらを吹く羽目になり、その大ぼらで貴重な周波数を強奪した結果は、一年近くもかけてたったの3%カバーです、と言う見事な自爆。まぁ元からそういう会社だから今更こんな叩き方しても痛くもかゆくもないんでしょうけど、がっかりです。貴重な周波数が。 […]

  3. […] ここらへんの具体的な数値は公開された統計数値から計算で求めることができますが、死ぬほど面倒なので、この記事で扱ってる数値は無線にゃんさんが作ったグラフを見て判断してます。最新の情報に基づいたグラフではないと思います。当時と今では、都市部への人口集中は更に加速しているでしょうから、現実の面積カバー率は更に低いと想像できます。 […]

  4. […] 実人口カバー率がどうとか言う話が増えて、昔ながらの人口カバー率について人口カバーと面積カバーの関係と言うのを作ったのがあまり役立たずになっちゃってる感じなので、実人口 […]

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