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2010/11/10 10:00 · ニュース解説, 事業考察 · 1 comment

ドコモがLTEサービスXiを12月24日に開始と言うリリースが出ました。つまりこれはあれか、クリスマスに何の用事も無い非モテ用サービスってことか。どうせお前ら予定なんか無いんだろうからXi買いに来いよ、ってことか。馬鹿にすんなよ。用事くらいあるわ。Xi買いにヨドバシいくとか。

さて冗談はさておき、前にロゴ発表のときも笑ったんですが、3ヶ月ほどたって改めてロゴと読みを見て、やっぱり笑っちゃった。これ、受け狙いなんですかね。一応、社運をかけた次世代マイグレーションのはずなんですけど、そのサービス名称が「クロッシィ」ですよ。くろっしぃ。

「モバイル何使ってる?」「ん?くろっしぃ」・・・こんなむずがゆくなるような会話をしなきゃならないのですか。ちょっとやだ。

で、ここまで来てようやく本題ですが、一応日本で初めてのLTEサービス開始と言うことで、その実力がいかほどになるのか、と言う点に注目したいですね。最大のスペックが下り75Mbpsときわめて大きく出ましたが、もちろんこれは、他に誰も使っていなくて、しかも基地局が目の前にあるという条件。そうでなければてきめんに速度が低下することはもはや常識。

さてその速度がどのくらいになるのか。たとえば、WiMAXでは、10MHzで下り40Mbpsと言いつつ、実際には5Mbps程度です。まぁこれでも十分速い訳ですが。ドコモのLTEも同じく10MHz、といいたいところですが、FDDで上下あわせて20MHz、TDDで10MHzを上下分割して使っているWiMAXの倍の帯域を使っています。で、同じOFDMを使っているし、伝送路と伝送速度は方式が変わってもあまり変わらないものですから、Xiの実際の速度は10Mbps程度かなぁ、と予想してみます。

また少し技術的に踏み込んでみますが、WiMAXでは、30MHzをすべて使って隣同士を別周波数にし、干渉が少ないネットワークとしていますが、ドコモLTEは10MHzを1波だけ繰り返し使います。このため、干渉がどうしても多くなってしまい、WiMAXよりも「快適に使えるエリア」がかなり狭まってしまうのでは、と読んでいます。ちなみにドコモは2GHz利用だそうで、伝播特性はWiMAXよりも多少よい程度。

一方、LTEはWiMAXよりも低SNR、高速移動を想定したさまざまなチャンネル強化技術が盛り込まれていますので(1波繰り返しが出来るのもこの辺のおかげ)、「快適ではないけど通信の継続性は保たれる」と言うシチュエーションが増えます。要するにWiMAXよりかなり粘るシステム、といえます。

さらに言えば、同じ3GPP規格同士なので、LTEとHSDPAの相互ハンドオーバが高速に出来ます。おそらく断時間は1秒に満たない程度じゃないでしょうか。もしLTEの粘りでも足りなくなったら即座に人口カバー率100%のドコモHSDPAにハンドオーバして通信を継続できます。はっきり言って、今考えられる中では日本で最も優れたモバイルサービスとなることは間違いありません。

問題は値段で、20MBで1段目の上限6510円に張り付いちゃう。さらに2GBごとに2675円が追加、と言う青天井プラン。通信量のことをなーんにも気にせずに使う、と言うことが難しいです。特にアホみたいに高速になっているので、どのくらいでギガバイトのオーダーなのか、の感覚が当初はつかめず、セーブしすぎちゃってもったいないことをしちゃったりあっさりと2段目3段目を突破しちゃったり、なんてことになっちゃうと思います。

個人的にはWiMAX+CDMAのDATA-01で何も困っていないので、実は当面は手を出すつもりはありません。エリアも狭いし料金プランも微妙だしね。でも、初期ユーザである程度データがたまったら、完全定額に出来る目も出てくるんじゃないかとにらんでいます。月額390~4980円とかだったら即飛びつくんだけどなぁ(苦笑)。LTEで無線効率上昇とか言ってるんだから、そのくらい考えて欲しいなぁ。

と言うことで、まずはサービススタート、今後の展開(主に料金面)に期待したい、Xiに関しての所感をおおくりしました。

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2010/11/10 10:00 · ニュース解説, 事業考察 · 1 comment
2010/11/8 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 1 comment

PSTNのマイグレーションに関する概括的展望についてと言うリリースがNTT東西から発表されました。

PSTN、つまりはNTT東西の持つ回線交換網を今後どのように代替わりさせていくか、と言う大方針で、この方針では、そもそも回線交換網による中継を廃止する、と言うことが発表されています。

回線交換網と言うのは、古いやり方ではありますが、それゆえに伝送路の品質が非常に高いものです。と言うのはどういうことかと言うと、古い方式と言うのは、デジタル処理技術の未熟だった時代に作られたものです。つまり、デジタル的にエラーを補償できない時代だったわけで、エラーを防ぐには伝送路のエラー率を低く保たなければならなかった、つまり伝送路の品質は高いということです。

実際には、回線交換網と言っても、物理的な信号線が発信元から受信先まで一つにつながってしまう、と言うような原始的な回線交換網はとっくに絶滅していて、ある程度デジタル的な処理で仮想的に伝送路の確保が行われています。たとえば、時分割された通信スロットの一つを完全に占拠するような形での伝送路の確保などです。

NTT東西では、これに対して、すべての交換網のIP化を進めるとしています。IPは伝送プロトコルではないため、伝送路はまた別の方式を使うことになるのですが、IPを交換網の伝送路的に使うことの利点として、IPを運ぶための伝送路にさまざまな方式を選ぶことが出来、それらが混在することが許される、と言う点があります。

IPが比較的安く構築・維持・管理が出来るのはまさにこのアダプタビリティによるところが大きく、大容量高品質を要求される基幹部分は高価な装置を、末端部分は民生品に近いイーサ程度でお茶を濁す、と言うような混在により、トータルで大幅に安くすることが出来ます。これに対して従来の回線交換では基幹から末端まで同じ品質の伝送路を確保する必要があり、末端の装置も高価にとどまってしまうというきらいがありました。

と言うことで、比較的維持費の安いIPへとシフトしていくという今回の方針ではあるのですが、やはり、古い人間としては、IPの「あやしさ」にはまだ戸惑うところも多いんですよね。何しろ、実装が自由すぎる。実装次第で遅延量も変わるしルートさえ変わりうる。ところが世の中意外と「NTT遅延量にあわせて作りました」な通信機器って多かったりして、たとえば、フルIPになって、その後その中継機器が寿命を向かえて新しい機器に取り替えてみたら遅延プロファイルががらりと変わって上記のような「NTT合わせ込み機器」が突然誤動作を始めたり、何てことも、起こり得る話なんじゃないかなぁ、なんて心配したりしています。まぁ九割九分杞憂に終わるとは思いますが。

さてもう一つ触れられているのが、相互接続の話。電話回線と言うのは事業者一人の中に閉じていてよい世界ではなく、事業者同士がお互いに接続して他事業者の加入者とも通話できる必要があります。そのために、事業者同士の相互接続と言うものがあるわけですが、現状、この相互接続方式はNTT式回線交換を利用しています。

いろんな事業者が電話網をIP化するというとき、IP同士だから直接接続すべきだ、そのほうがよいはずだ、と誰もが分かっているんですが、結局は回線交換で接続する。それはなぜかと言うと、これは先ほども書いた、「IPの実装が自由すぎるから」です。逆にNTT式回線交換は自由度がほとんど無いため、仕様どおりに作りさえすれば簡単に相互接続が可能です。

特に、IP化すると言うときは、ほとんどの場合、SIP+RTPかその派生品を使ったVoIP網を作ることになるわけですが、何しろVoIPの実装は百のベンダがあれば百通りのやり方がある、と言うくらい自由度が高い。これを相互接続可能なレベルまで集約するのはめちゃくちゃ大変です。

何しろ、結局は、直さなくて良い人は多くても一人、それ以外の人はみんな何らかの修正を自社IP網に入れなきゃならないわけです。公共電話網向けのネットワークは、どんなに小さなくだらない作業でも、びっくりするほどの開発費がかかります。しかも、実際には規模が大きく声の大きい大事業者の要望ほど通りやすく、零細事業者側の改造量のほうが増えてしまうため、事業へのインパクトは比率的に大きくなってしまいます。とすれば、零細事業者から順に相互接続アライアンスから逃げ出すということも起こりかねません。

と言うわけで、将来的な完全なIP化のためには、NTT東西だけでなく、周りの電話網事業者もがっつり巻き込まないといけないわけで、なかなか一筋縄ではいかないかもしれません。しかし、2025年、今から15年と考えれば、ネットワーク機器は2、3順くらいしてしまう期間です。それまでに国内相互接続のための標準実装をTTCだかどこだかで規定してしまえばまだ間に合う期間。そういう意味もあって、今この時期に大方針の発表という運びになったのかなぁなんて思います。

本日はNTTマイグレーションに関してでした。

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2010/11/8 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 1 comment
2010/10/27 10:00 · 事業考察 · (No comments)

さて、一時期はiPhoneは本当に普及し定着するのか、と危ぶむ声も無きにしも非ずだったのですが、最近の動向を見ていると、どうやらiPhoneの定着はほぼ確実になってきているように思われます。

個別に情報提供頂いたところによると、iPhoneの国内販売数は、毎月30万台を超えている模様で、まだまだ伸びの弱いAndroid(合計10万台程度)に大きく水をあけています。

新規販売がこれだけの勢いであれば、累計利用者数はかなりの数に上るわけで、少なくとも、ほぼ単一の機能性を持ったほぼ単一の機種群がこれだけの数稼動していた状況と言うのは過去にはほとんどなかったはずです。となれば当然、この機種に特化した市場が生まれますし、事実そうなってきています。iPhoneにしか提供されないサービスやシステムが雨後のたけのこのように増えてきています。

要するに、全く新しい市場が形成されてきており、それが、普及と定着を後押ししている、と言う状況です。これは、iPhoneにはあれができないこれができない云々とは別問題で、機能性とは独立して数の論理でインフラ化してきているということです。

iPhoneが一つのインフラとして認識されていることの現われとして、iPhone上で動作するさまざまなサービスのクライアントの提供があります。従来はPC向け、あるいは携帯電話向けにしか提供されなかったようなクライアントがiPhone向けとして独立して提供され、そのバリエーションはもはや数える気にもならないほどです。

よく、iPhoneの利点として「世界で何十万のアプリケーションが」と言うことが言われますが、単にアプリケーションが提供されるだけではインフラ化が進んでいるとはいえません。それよりは、他の(元々は)無関係のサービスのクライアントが提供され、他のサービスのインフラとして利用され始めることが、普及と定着の一つの指標ではないかと私は考えます。

そういう意味では、Androidはまだまだ出遅れているといわざるを得ません。数こそ出始めていますが、他のサービスにインフラを提供するというところまでまだ到達できていないように思えます。それでは、Androidはどのようにしたら普及と定着、つまりインフラ化するのでしょうか。

一つは、iPhoneと全く同じように、他のサービス向けのクライアントを充実させていくことです。しかし、これは先行しているiPhoneを後から追うことはできても、追い抜くことは難しいでしょう。インフラビジネスの基本は「数で先行したら勝ち」です。自社の製品やサービスを、より多い数、早い時期にユーザの手元に届けたほうが勝ちです。追うほうはそう簡単に逆転にはたどり着けません。

もう一つの案は、iPhoneとは全く別の方向のインフラ化です。それは、たとえば、ケータイキャリアの統合サービスのベースOSとしての価値です。ベースOSをAndroidにし、その上にケータイキャリアの統合サービスプラットフォームを載せる(たとえばドコモのオペレーターパックのように)、そのためのインフラとしてAndroidを利用する、と言う方向なら、iPhoneと競合せずにインフラ化を狙えます。

以前にニュースコメントでも少し書きましたが、日本では「放り出し系サービス」はあまり流行りません。機能や拡張性を提供して後は好き勝手にやればいい、と言う市場は確かに存在しますが、現実には「すべてお仕着せ」を望む消費者のほうが圧倒的に多いということが過去の例で既に分かってきています。実を言えばiPhone自体が「お仕着せ系」統合型サービスとさえいえます。となれば、今後も従来の統合型サービスは継続するでしょうし、相変わらずメインマーケットであり続けるでしょうが、Androidはこういったキャリア個別の統合型サービスのベースとして利用されうると考えます。

むしろ、汎用OSをカスタマイズしたものより、最初から電話や通信向けAPIやサービスが用意されている分、Androidを利用することでキャリア統合型サービスのプラットフォームの提供も容易になり、新たな参入さえ期待できるかもしれません。新たに参入したメーカも、キャリア提供のプラットフォームを載せるだけで簡単にキャリア仕様の端末が作れます。

iPhoneはおそらく今後も(ほぼ唯一の)グローバルな統合サービスとして発展していくでしょう。しかし、キャリアは各国各地域にローカライズした統合サービスをきめ細かに提供することで、iPhoneでは埋められない独自の要求に答えていくことになります。iPhoneがローカルなインフラにはなりにくいように、キャリアサービスはグローバルなインフラにはなれません。そのため開発には大きな投資がしにくく、開発の容易性を高めるにはきわめてオープンなOSが必要であり、そこがAndroidの一番重要なマーケットであると考えます。今からグローバルなインフラでiPhoneと真っ向から競合することだけを考えても無意味ではないかと思います(長い時間をかけて競り勝つというシナリオももちろん考えられますが、時間がかかりすぎます)。

と言うことで、今回はiPhoneの普及とAndroidの追い上げの可能性について考えてみました。

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2010/10/27 10:00 · 事業考察 · (No comments)
2010/10/13 10:00 · 事業考察 · 4 comments

※この記事は別サイトで2009年5月25日に公開した記事に加筆したものの再掲です。

さて、人口カバー率と実際のエリアの間の乖離についてはたびたび取り上げられますが、それが本当のところどうなのか、という点について、なかなか客観的な数字を出して議論が出来ませんでした。

そこで、一念発起。総務省国勢調査の市区町村人口一覧と、国土地理院面積調の結果をつき合わせて、人口カバー率と実際の面積カバー率の関係を求めてみることにしたわけです。

ただし、この関係を求めるにあたって、やはり人口カバー率と同じように非現実的な仮定を置いています。それは、市区町村の役所をカバーすれば、その市区町村の全面積をカバーしたこととみなす、というような仮定です。ですので、「本当の面積カバー率」はこの関係から求められる面積カバー率よりもかなり下になることになりますが、その点をお断りしておいてから、ご紹介します。

横軸が市区町村数。それに対して、青い線が人口カバー率、赤い線が面積カバー率です。

人口カバー率を上昇させるという前提のもと、人口の多い市区町村から順次カバーしていくものと考えると、最初の1000市区町村までは一気に90%以上まで伸びますが、それ以降は伸びが鈍化し、いくらカバーエリアを拡大しても人口カバー率の数字は上昇しない、という非効率ゾーンに突入します。

いや、このグラフかいてみて、こんなに見事な人口分布になっているとは、と改めてびっくり。本当に滑らかですよね、青い線。これ関数で書いたんじゃなくて、実は折れ線グラフなんですけど、本当にきれいです。

それに対して、赤い線は、それぞれの市区町村の面積を積み上げています。一応きちんと市区町村一つ一つについて人口と面積を積み上げていっていますが、面積については、人口の多少にかかわらずほとんど平均値周辺に集中していて、ほぼ1:1の傾きで上昇していきます。多少、人口の多い前半のほうが少しだけ面積が広い傾向があるようです。

この図を見ても分かるとおり、人口カバー率は、人口の多い大都市をカバーすることで大きく増えるのに対し、面積はほぼカバーした市町村数に比例するため、人口と面積のカバー率には大きな差が出てしまっています。

たとえば、人口カバー率90%でも面積カバー率は50%に満たず、98%、99%と言う数字であっても、面積的には7割、8割と言う程度でしかありません。もちろん、市町村の全面積をカバーできる例は非常に少ないため、実際の数字はもっと低いことが考えられます。

これが、人口カバー率のマジックですね。つまり人口は多いところには極端に集まっていて、少ないところはとことん少ない、という特徴があるため、少ない市区町村をカバーすれば人口の大半を押さえたことになるわけです。

たとえば、ある新しいサービスに対して、開業から90%までを数年でカバーできたとしても、90%からの1%1%がいかに重く、大変な作業であるかが逆にわかるかと思います。とにかく、カバーする市区町村を増やしても増やしても人口カバー率が上がらないわけです。たとえば人口順位のトップ付近にいる川崎市は川崎市1つだけで1%人口カバー率が上昇しますが、ドベ近くにいる上九一色村などは0.001%しか上昇しません。「人口カバー率」という数字を前提にすると、ドベ付近の市町村を1000カバーするのと川崎市一つをカバーするのが、数字としては同じ結果しか生まない、ということです。

ということで、改めてちゃんと調べてみると、やっぱり人口カバー率はこれだけの誤解を生む数字なんですね。もちろん、面積カバー率も、全面積をカバーできているわけがない、という意味ではそれ自身もまた現実よりずいぶん良く見える数字であることは間違いなく、実際の面積カバー状況はさらに悪い、と言えそうです。

以上、人口カバー率の現実との乖離の実態について、きちんと統計数値から作図してみました。

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2010/10/13 10:00 · 事業考察 · 4 comments
2010/10/8 10:00 · 事業考察 · 1 comment

ウィルコムは既に破綻企業、実質ソフトバンクグループ入りした以上個別に扱うのもちょっと変かも知れませんが、しかし一応ほら、一発逆転があるかもしれないし。

ウィルコムは2004年の独立から2005年の音声定額でブレークしましたが、それ以外の時期は、いまひとつ存在感がありません。存在感が無いというか、存在していなくても世の中変わらないというか。唯一無二の価値を提供できていないという感があります。

たとえば2000年から2004年までのKDDI時代、データ通信を主軸にした展開を行いましたが、これもいかにも消去法的戦略。音声では見放されているし本体と競合するし仕方なくデータ専業に、と言う感じ。

そして、2006年にソフトバンクの音声定額が始まると、今度は自主的なサービス拡大を放棄し、「低電力高音質は唯一無二の価値である」と言って動きませんでした。ウィルコムのテーマは、「動かない」、これに尽きます。

業界では最も小さな身なりで一番動きやすい体質であったはずにも関わらず、わずかな減収のリスクが怖くて動けない。わずかでも品質が落ちるリスクがあると動けない。わずかでも失敗のリスクがあると動けない。ひたすら動かない会社。動いたのは、外から入った社長が指揮を執っていたわずか2年の間だけでした。今のウィルコムの収益源はその2年のわずかな成功にすべて依存しています。

そして、あらゆる施策がすべて「コスト削減」を志向しています。コスト削減とは「会社の縮小」です。自ら船底に穴を開けゆっくりと沈むという決断です。ITX投資はNTT依存からの脱却と言う前向きなコストだったはずなのに、ITXだからこそ実現できるサービスというのはついぞ現れませんでした。結局、「アクセスチャージ削減」と言う後ろ向きの目的が主になってしまっていたと考えられます。

大胆な値付けもできず大規模な販売や投資をするほどの資金も無く採用技術に圧倒的優位があるわけでもない。条件だけ並べれば、破綻すべくして破綻したということがよく分かります。今挙げたうちの一つでも解消できればまだ違った未来が見えます。そしてこの中で、ウィルコムと言う会社に実現できるのはただ一つ、「大胆な値付け」だけです。

消去法で経営するだけでも実は答えは簡単だったはずなんですね。不振になる前に、少なくとも私が別サイトで「音声定額はバブルだ」と指摘した頃に「大胆な値付け」を検討し、他社追随の機先を制して実施していれば、このような状況にまで落ちることは無かったでしょう。あのころ、ウィルコム社内にはバブルだという意識は無かったのでしょうか。

今後ウィルコムが立ち直るには何をするべきか。もう答えは一つしかなく、「大胆な値付け」です。とにかく、サービスプロバイダとして「動く」ことです。サービスの本質は値付けです。サービスを提供している会社として何か施策を打つのであれば、それはまず「値付け」からスタートしなければなりませんし、値付けを動かすことなく会社を動かす方法はありません。大胆な値付けは社員のモチベーションも高揚させるはずです。

破綻企業としてどうあるべきか、唯一のPHS事業者としてPHSと言うシステムの社会的責任をどのように総括するか、「潔く腹を切る」と言う選択肢もまたあるのかもしれませんが、もし「もうひとあがき」を考えているのであれば、今度こそ、サービスプロバイダとして「動く」こと、「値付けを動かす」ことを考えるべきでしょう。

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2010/10/8 10:00 · 事業考察 · 1 comment
2010/10/7 10:00 · 事業考察 · (No comments)

イーモバイルは、100円PCを始めた頃からきわめて安定した高い純増数を維持していて、加入者の数字を見た限りは安定した事業を営んでいるように見えます。

その一方、今年には産業活力再生特措法に基づいてイーアクセスとの経営統合を申請しています。これは資金ショートによる実質破綻と言う言い方もできます。もちろん破綻は言いすぎとしても、当初用意した現金をPC代金肩代わりでジャブジャブと使っていたわけで、タイミング的にはちょうど現金が尽きる頃ではありました。

実質的には、ソフトバンクと同じく「100%回収保証つき」の出費ではあったのですが、「貸付+割賦回収」と言う形をとらず「100%肩代わり+通信料回収」と言う形であったため、ソフトバンクのように「債権」と言う形の収入がバランスシートの左肩に乗らず、調達も持ち出しもままならなくなったものと思われます。

この辺は財務モデルと販売モデルの連携の詰めが甘かったといわざるを得ませんが、とはいえ、当初用意した現金をめいいっぱいに使って300万にも及ぶ加入者を得たことは評価できると思います。市場へのエントリー戦略としては、「いかにコストを加入者に変換できるか」が鍵で、コストばかりかかって加入者が取れないようなヘボ経営者もいることも考えれば、当初資金1000億で300万加入(1加入3万円程度)の変換率は上出来ではないでしょうか。

しかし問題は、この豊かな加入者資源(マーケット)を活かすコンテンツ(商品)が無いということ。単に加入者から通信料をもらうだけの商売は通信技術トレンドの変化に飲まれいずれ破綻してしまいます。加入者=マーケットと言うことを意識し、それを活かした新たな戦略を立てなければ、LTEやWiMAXなどの高速通信が一般的になってくると加入者漸減の時代に突入してしまう恐れもあります。

イーモバイルがこれを生き抜くには二つの方法があると思っています。一つは、徹底的に土管屋になりきってしまうということ。特にソフトバンクとの提携はそれを体現していますが、インフラ資源の足りない他社に補助的に網を貸し出す、と言うコバンザメ戦略は、今からでも十分に成り立つと思います。要するに、周波数帯域の切り売りです。

この戦略を成功させるには、もちろん十分なインフラ投資も必要ですが、他社が安価に利用できる無線モジュールも必要になってきます。簡単に携帯電話機に組み込める単一モジュール(要するにW-SIMみたいなもの)を提供したり、イーモバイルバンドに対応したRFチップの紹介や、イーモバイルバンド対応製品をテストするためのテストハウスの立ち上げなど、周波数が違うことを埋め合わせるさまざまな工夫が必要になってくるはずです。

もう一つの戦略は、自社マーケットの二周目需要を狙うこと。そもそもイーモバイルは、格安PCを目当てに加入する人が多かったわけですから、現在の加入者に格安PC販売「二周目」を提供していく。最初のPCを引き取り新しいPCを無料かそれに近い価格で販売し、その販売益(の回収を兼ねた通信料)で食っていく。

PC格安販売目当ての顧客は2年後により高速なサービスに逃げ出してしまう恐れがある、というのが問題なら、通信方式を売るというよりは、PCそのものを繰り返し格安で提供し続けると言うモデルのほうがまだ目があるような気がします。可能なら、提供するPCはすべてHSDPAモジュール内蔵PCでPCと契約を意味のある結合にしてしまうのがよりよいでしょう。永久に最新PCをレンタルし続けるモデル、と言った方が早いかもしれません。

いずれにせよ、既に飽和状態の「ケータイ」への食い込みは難しく、早めに音声系は切り捨ててしまって何か「別の商品」にくっついていくコバンザメ作戦が、イーモバイルに求められているのではないかと思います。

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2010/10/7 10:00 · 事業考察 · (No comments)
2010/10/6 10:00 · 事業考察 · 1 comment

今、日本で一番うまく行っているように見えるのがソフトバンク。純増数は全キャリア一位を維持し、過去最大を更新し続けているような状況です。そんなソフトバンクのテーマは、ずばり「割り切り」。

ソフトバンクは、ボーダフォンから譲られたときから、さまざまな部分で大胆な「割り切り」を実施してきました。「このユーザをだますような割賦システムはどうか?」→「今数を取れさえすればよい、満足度低下はそのときに考えろ」、「この料金プランでは無線容量は逼迫してしまうのでは?」→「安さを追求することが先、足りなくなったらそのとき考えろ」。

一応公共の通信を担う電気通信事業者としては、過去に類を見ない、大胆すぎるほどの割り切りを実施してきたのがソフトバンク。言ってみれば、「ソフトバンクの獲得戦略が第一、通信事業者としての責務は後回しにしろ」と言う、超大胆な割り切りがまずあったように思います。

もちろん、私は、ソフトバンクの通信事業者としての責任を度々追及していますが、会社戦略としてはこんなことは枝葉のこと。怒られて頭を下げるだけで済むのなら、こんなに安いことはありません。容量が足りなくて速度が出なくなってきた、それでだれが困りますか、といわれて、困る人はいないと割り切ったらそれでOK。実際、だれも困っていないんです。速度が出なくても使っている人はそれなりに満足している。特にiPhoneなどは比べる相手がいないわけですから、比較されて評価が下がる心配も無い。

そんなもの(インフラ)にわざわざ金をかけることこそ、経営者としては無能の範疇なのかもしれません。インフラに1億円つぎ込めば、100人の解約者中一人くらいの解約は防げるかも知れませんが、販売店に1億円入れれば1000人以上の加入者がとれます。こんな単純な損得勘定ができないドコモやauは、なぜならソフトバンクにできる「割り切り」ができないでいるからだと考えます。

十分な加入者数を稼ぎ上げ、販売コストへの注ぎ込みによる獲得と投資コスト削減による満足度低下による解約が同じ額でつりあうようになったときに、ようやくインフラ投資の腰を上げればよい。先に完璧なインフラを作っておくなんてのは、愚策下策最悪手。インフラ事業者として褒められた態度ではないですが、だからこそ、インフラ事業者にこういう考えを持ち込める孫先生の「天才性」を感じずにいられません。

しかし不安は、ドコモの圧倒的なインフラ力。ドコモはインフラを最強にした上で、今ゆっくりと仕切り線の前に立ったところです。このドコモが本気でぶつかったとき、ソフトバンクは耐えられるのか。

ソフトバンクの財務は、はっきり言ってまだ脆弱です。しかしそれでもバランスシートを拡大し続けているのは、要するにあくなき成長戦略です。昔からソフトバンクの戦略は身の丈を超えるほどにバランスシートを拡大し圧倒的なコストパワーで一瞬のうちに業界トップを獲る、と言うもの。ところが、この戦略が成る前にドコモがさまざまな常識のくびきをかなぐり捨てて販売面で本気を出したら、危ないかもしれません。

ソフトバンクがその危機を避けて成長していくにはどうすればよいか。これは、これまでソフトバンクがやってきたことを再生産すればよいと思います。つまり、業界や資本や思想に縛られない合従連衡。使えるものは何でも使い、必要ならライバルにも塩を送る。今、以前はライバルとしてしのぎを削っていたウィルコムを手中に収めその基地局ロケーションを得ました。あるいは次は、既に蹴散らしたKDDIとあえて組み、KDDIの磐石な地上網(中継・光・CATV)を得るというのが、一番大胆な戦略と成りうるかもしれません。

もしソフトバンクKDDI連合対NTTグループと言う対立構造が実現したら、過去の通信業界で一番エキサイティングな時代が来るかもしれません。「割り切り」のソフトバンクにしか実現できない未来だと思います。

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2010/10/6 10:00 · 事業考察 · 1 comment
2010/10/5 10:00 · 事業考察 · 1 comment

本日はauとUQをまとめて考えます。いや、まとめて考えてあげないとかわいそうなくらい悲惨な状況(笑)なので。

au、つまりKDDIは、日本で唯一の市内インフラ+県間インフラ+国際インフラ+衛星インフラ+CATVインフラ+移動体インフラを一社で手がける企業です。・・・のはずです。実際にはばらばら。唯一の接点は請求書。別会社体制のソフトバンクグループよりばらばらのサービスです。

そんななかで、結局auは、独立した携帯電話会社として巨人ドコモやソフトバンク軍団と戦おうとしている。これじゃぁ勝てるわけがありません。UQとの連携サービスもようやく1個だけ始まりましたが、焼け石に水。au+UQの純増数で2位のドコモに及ばず、3位のイーモバイルを何とかしのげたか、と言う程度です。笑えるほど弱い。

これがどうしてこういうことになっているのか、と言うことを考えるにつけ、やはりどうしても気になるのが、auの戦力の「質」。端末・サービスの「種類方向」の戦略です。

はっきり言うと、auの戦略はきわめて単純で、「ドコモに対して、対称戦力をぶつける」と言うもの。対称、つまり、鏡に映したようにそっくりそのままの戦力を正面からぶつけるということです。2001年ごろはこの関係が逆でしたが、2003~4年ごろにサービス先行マージンがなくなりドコモに追い抜かれた頃から、auがドコモの対称戦力で後から追う方向で進んできています。

一方、ソフトバンクは、ドコモに対して「非対称戦力」で戦っています。ドコモにないもの、ドコモサービスと競合しないもの、共存共栄できうるもの、と言う観点です。別の言い方をすれば「ドコモとソフトバンクは直交している」ともいえます。auとソフトバンクの戦略の決定的な差はここにあると考えます。

対称戦力での対抗、つまり正面作戦は、確実に「量」で勝負が決まります。物量に勝るほうが勝つ、と言う原則に従うわけです。とすれば、ドコモにauが物量で勝っているかと言うと、これはもうまったくかなうはずもありません。auと固定を含んだKDDI全社でさえNTTの移動部門会社に過ぎないドコモ1社にはるかに及ばない戦力量です。これはもう勝てるわけがありません。

一方、ソフトバンクはドコモと直交したサービスや端末でシェアを伸ばしています。これは実は、ドコモにとってはまったく脅威ではありません。ドコモは淡々と王道のサービスを提供すればよいのです。現に、ドコモの純増数はソフトバンクの台頭によってもほとんど揺らいでいません。

ところが、ドコモが対ソフトバンク戦略として物量供給を増やした結果、それに正面からぶつかっているauが最大の被害を受けてしまう結果となってしまっています。むしろ、非対称戦力で戦っているソフトバンクはまったく影響を受けていません。auは完全にとばっちりといわざるを得ません。

しかし、ここにauの戦略のまずさがあります。そもそも量で勝てない相手に正面作戦を挑んだことが間違いであり、ドコモが直交競合に対して物量で攻める兆候を見せたときにすぐに別の直交軸に逃げ出さなかったことが大きな間違いです。

どんな市場であれ、飽和した市場においては、軸を共有する競合同士は必ずどちらかが相手を滅ぼすまで競争が続きます。ソフトバンクはそこからいち早く抜け出し、直交軸での共存を図りました。であれば、auも直交したサービスや端末を目指さなければなりません。そもそも、WCDMAとCDMA2000と言う違う技術であり直交化がソフトバンクが行うよりも容易であったはずなのに、それをまったくしなかったことが、auの敗因です。

市場での共存を考えるときは、先に新しい軸を作ったほうが有利です。auが今からソフトバンクの軸に算入しても勝ち目はありません(いまさらスマートフォンに力を入れるなんて愚策の極みです)。となると、ドコモとも直交しソフトバンクとも直交する新しい軸を作らなければなりません。これは、ソフトバンクがドコモと直交する軸を作ったよりもはるかに難しい試みとなるでしょう。

UQや固定(光・ケーブル)との連携が、この軸を作る一つのヒントと成りうるかもしれません。固定との連携はドコモは法的にできないしソフトバンクは「実質的に持っていない」と言う、KDDIだけの特徴。単なる大幅なセット割引(いっそ光かケーブルを持ってたらauはパケット定額まで含めて無料、くらい)あたりが、唯一戦える戦場になるのではないでしょうか。

とにかく、ドコモとの共存戦略を誤りガチンコバトルとなった末の今の窮状ですから、まずはそこから逃げ出すのが、auの今後の急務といえそうです。

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2010/10/5 10:00 · 事業考察 · 1 comment