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2011/1/11 10:00 · 事業考察, 海外動向 · 6 comments

さて、光の道云々に関して、今回は、あのお方も大好きな「米国では」と言う視点で考えてみたいと思います。

米国では昨年3月に日本の「光の道構想」に相当する「National Broadband Plan」(以下NBP)がFCCにより策定されています。この中でブロードバンド化に必要とされている要件の一つが「安定した競争を促進すること」とされています。これは某ソフトバンクが一生懸命主張していることと真逆です。

たとえば、光・銅線・ケーブルに関わらず競争事業者が多いほどその地域全体の品質が向上しているという調査結果が出ていることから、技術に関わらない競争環境の重要さが指摘されています。この提言全体では、ブロードバンドを実現する方式として、光ファイバーはもちろん、同軸、銅線、そして特に無線を積極的にブロードバンドの実現のために活用すべきであるとしています。

これは、「アクセス線」と言うインフラの有無によってサービス提供が制限されることを出来るだけ抑制するためです。原則としてアクセス線はオープンな環境で公平に、自発的に投資が行われるものであって、しかしブロードバンドサービスはどのアクセス方式によっても公平に全国民が享受できるものでなければならない、と言うのが米国流の考え方です。私もこの考え方に強く賛同します。

この考え方は、利用者の視点からみて「アクセス層」と「サービス層」を分離した考え方で、それぞれの層の中で横方向での競争を促進する効果があります。これに対してソフトバンクの考え方は、利用者視点を無視し、資本的な視点からのみアクセス層とサービス層を分離し、アクセス層を独占支配化して利用者からはアクセス層の選択肢をなくして「サービス層」しか選択できなくし、「安かろう悪かろう」が許されるようになる考え方です。

米国は広大なので、アクセス網を築くのは大変だから、と言う考え方もありますが、実は日本と言う国は世界でも有数の固定網敷設困難国の一つです。と言うのは、極端な都市集中人口分布にも関わらず一方で極端な山岳地形+多島構成と集落の広域分布があるからです。こういった場所があるからこそ、不採算地域のユニバーサルサービス維持と言う名目でユニバーサルサービス料金を電話番号すべてに課しているわけで、このような完全な不採算地域に都市部と同一のアクセス網を、と言っても、不採算と分かっていて出資する投資家は出てきません。

もちろん純民間の既存事業者でも正常な事業判断をするならこういった不採算地域への投資は行うわけも無く、となると政府方針を実現するためには一部政府出資とならざるを得ず、政府出資(=税金投入)のサービスと競合できる他の民間事業者は生き残れるわけもなく、市場は閉塞へと向かいます。それよりは、そういった地域でも採算の取れる別のアクセス方式を利用したアクセス網への出資を促進し、しかしそのアクセス方式の上でのブロードバンドサービスは同等のものが得られるように、と考えるのが実に自然です。利権構造などに左右されず公平な判断の出来る米国の役所(FCC)は実に優秀であると感じます。

こういったことが実現できるよう、NBPでは、「ケーブルテレビインターネット方式の統一・機器のオープン化」「ライセンス無線周波数の拡大」「アンライセンス無線周波数の拡大」などなどが具体的に提言されています。

私もかねがね活用を主張している衛星回線についても、NBPでは積極活用を促しています。もちろん衛星回線は非常に速度が遅くリソースも馬鹿食いなのですが、極論1基あればすべての世帯をカバーできます。アンテナの信号処理技術もきわめて向上しているためアレイによるセル化も簡単になっているので、順次衛星を増やしてカバレッジを小セル化していけば速度や容量の問題もいずれ解決できます。

また、この提言では「カネ」の問題に関しても事細かに提案しています。具体的には、大方針として「整備ファンドの設立・活用」が提言されていますが、ソフトバンクの主張のように「だれがどのくらいカネを出してどう整備すれば採算がいくら」なんていうくだらない議論はしていません。「カネがほしければ公共ファンドから出資してやる」「どう使おうと知らんが、使い道はオープンにしろ」「採算が取れるかどうかは事業者次第、失敗しても一切関与しない」と言うように、カネと事業はきっちりと区別しています。

整備ファンドとして、既存の固定回線ユニバーサルサービス用ファンドの活用に加えて、CATVを想定したアクセス線用ファンド、無線ブロードバンド用ファンドの新規立ち上げを提言し、さらにそれらからの資金の拠出は、実際にアクセス線を整備した会社の「実績」に基づいて行われるように配慮しようとしています。

そもそも論的には全世帯整備について「カネ」が大問題であることは疑う余地もないのですが、それに対して「こうすればカネを節約できる」と言うような事業計画への口出しは一切ありません。カネは必要なだけ供給し、使い道はすべて事業者の自由裁量。ただ、実績も無くカネばかり要求することの無いよう金を出した事業者の事業内容をオープン化させ、不適格な事業者からは資金を引き上げる、ただそれだけ。事業者の自由意志と事業者間競争を損なわないシステムとしてはかなり優れたやり方だと感じます。

とにかくこの提言書はその他非常に細部にわたって「どうあるべきか」を何百と言う提言にまとめ上げてあり、しかもそれがすべて特定の企業の意見などに左右されない公平な視点での提言であることが日本の光の道構想とは対称的です。これに比べれば、日本の光の道構想などは、一言で言えば「みんな頑張りましょう」、この提言書の序文にも満たない内容無しの構想。ソフトバンクの主張はさらに酷く、「ブロードバンドインターネットアクセスは唯一の技術で唯一の事業者により事実上『専売化』されるべき」と言う主張であり、ブロードバンドの独占化と参入のクローズ化を目指しているとしか言えません。

本来、「米国では」なんていう引用無しでも、ソフトバンクが目指している光の道がおかしいということは分かってしかるべきなのですが、残念ながら技術やインフラは「あって当たり前」と言うようにリテラシが極めて低く、某社の意見広告やCMで「値段が高いか安いか」なんていうくだらない議論としてこの問題を植え付けられてしまっている日本国民からはこういった視点は出てこないのかなぁ、と残念に思っています。

今のうやむやに済ませてしまった「光の道構想」は一旦ご破算にして、いっそFCCを拝んで日本の戦略を策定してもらったほうがよほどマシなのですが、まぁともかく、今は将来どうあるべきかをもっと真剣に、公平に議論をしていただきたいと思っています。それでは。

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2011/1/11 10:00 · 事業考察, 海外動向 · 6 comments
2010/12/27 10:00 · ニュース解説, 事業考察 · 1 comment

IPv4アドレスはどう枯渇し何を変えるのか
IPv4枯渇問題を非常に分かりやすくまとめた良記事。大体知りたいことはここにほぼ詰まっている感じです。組織が割当を上位に申請するときの話とかも実はちょっと関わったことがあるんですが、あれ、結構恣意的な予測を盛り込めるんですよね。顧客の△△社が○○なサービスをやるのでここで1.5倍の消費量になる!とか。なので、需要に則って配分とはいえ、枯渇が近いとなると、プロバイダなどはみょうちくりんな需要予測をでっち上げて一斉に駆け込み申請に入るんじゃないかと私は思っています。IPv6への移行も大変ですよね。IPv4なクライアントはIPv4なサーバとしかお話が出来ないし、逆もまた然り。お互いに一台でも「IPv4しか理解できない」装置が残っていると、否応無くIPv4とIPv6のデュアル運用を続けなきゃならない(トンネルだろうとネイティブだろうと)。ってことは、相変わらずIPv4は使用中と言うステータスになるわけで、まぁ実際、通信の世界で古い基準の機器が自発的に全廃されたことって一度も無いので(ケータイの古い方式が停波って時に結局何十万加入が残っていました、なんてニュースでやりますよね)、どこかで古いPC/OS/サーバは切り捨てる、って言う判断を各プロバイダが行っていくことになるんだと思います。IPv6サービスに移行したら、接続できなくなる加入者とかアクセスできないWEBサイトが出てきますよー、って感じで。問題はエンタープライズ向けで、特に大企業に多いデータセンターまたぎの特注業務システムとか。サーバもクライアントもすべて特注ソフトだったりすると、ソフト自体がIPv6を想定していないし、そのための改修となると大変な費用もかかるし、じゃぁその費用をだれが負担するのとか、そういう揉め事でいつまでも移行できないことになりかねません。お金がかかる話なので、「いつかは必要」と思いつつも、いまだほとんどの会社が先送りしていて手をつけていないだろうなー、と推測中。

IDC Japan、クラウドサービス市場における通信事業者の市場機会と課題を分析
クラウド(っぽい)サービスが発展しているベースは、安くて高速なアクセス網が提供されるようになったからと言うこともあり、通信事業者にとってはもちろんビジネスチャンス。しかし、一方で、最近では一定帯域であれば定額と言う品目がメインであるため、単にクラウドサービスを充実させても通信料収入は増えないというビジネス上の問題もありそうです。また、最近あちこちの事業者から悲鳴が聞こえてくることは、こういったサービスが「定額回線の上で」やり取りされるために、中継網が逼迫しつつあるという話。と言うのが、通信事業者が全く想定していなかったようなヘンテコなトラフィックを発生させるサービスが、その利用数も多様性も増しているということです。たとえば、ひたすらTCPセッションを張って切ってを繰り返すようなトラフィックは、従来のWEBアクセスではあまり考えられなかったため、中継網が予想外の形で逼迫を迎えているわけです。従来はありえなかったところにボトルネックが生じるという事態に対して、通信事業者は「あらゆる指標ですべてのボトルネックが高いレベルで平衡するような」ネットワークの構築を求められることになるため、ネットワークへの投資やその維持費はノードや回線の低価格化を加味しても増大していくかもしれません。この「ピンチ」を「チャンス」に変えられるかどうかが、通信事業者の成長の鍵なのではないかと思います。

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2010/12/27 10:00 · ニュース解説, 事業考察 · 1 comment

野村総研、モバイル市場はスマートフォンでV字回復と予測
モバイル市場が縮小してきた背景には、端末の分割払い、あるいはそれに類する分割相当割引による端末買い替え期間の拡大と、そもそも、新しい端末に買い換える動機付けとなるような新しいサービスが登場しなかったことにあると考えられます。そのように考えると、端末買い替えの動機付けとして、全く新しいUIを提供するスマートフォンは、大きな転換要因となるのは事実だといえます。

実際、ある程度ケータイに詳しい人の間では、スマートフォンが日本で流行るとは言われていませんでした。その理由が、当初のスマートフォンの定義付けにもよるものだと考えられます。当初、スマートフォンは、PCと同じWEBサイトを閲覧でき、PCと同じように自由にアプリケーションをインストールし、PCと同じようなカスタマイズ性を持った高機能電話機とされていたからです。

実に、このすべてが既存の「ケータイ」で実現できていたことなんですよね。しかも、スマートフォンよりはるかに簡単に。待ち受け画面にさまざまなアプリを貼り付けてカスタマイズしたりメニューやフォントを総入れ替えしたり、あるいは何万と言う公式アプリと何十万と言う非公式MIDPアプリから好きなものを選べる状況で、大抵の要求はアプリを自力で探して満たすことが出来る。WEBサイト閲覧にしても、フルブラウザで多くのスマートフォンさえ対応していないFLASHにも対応している。はっきり言って、機能の面では既存ケータイの優位は明らかだったんです。

しかし、意外なことが起こったのは、スマートフォンを自称するiPhoneが、いわゆるそれまで一般の「スマートフォン」とは全く逆のことをやったところから。アプリは公式からしか落とせない、ブラウザもお仕着せブラウザのみ、待ち受けのカスタマイズはアイコンの並べ替えだけ、と言うように、徹底的に機能を削り、その代わり、タッチオンリーでどこまで「説明無しで」使えるか、と言うUIのブラッシュアップに注力しました。

結果この試みは大成功し、それとともに、スマートフォンの定義が根底からひっくり返りました。つまり「ケータイよりカンタンで直感的なUI」がスマートフォンの代名詞になってきたのです。「スマート」の定義も、単に「賢い電話機がドキュメントもアプリも何でも解釈できる」と言う意味から、「賢い電話機がユーザの操作上の不便をカバーしてくれる」と言う意味に近くなっているように思います。

こうなると、Windows Mobileなどの古いスマートフォンは、もはや「古典的スマートフォン」と呼びなおさなければならないと言えます。古典的スマートフォンはまさに「PC的自由度と煩雑性」の同居であったのに対して、現代スマートフォンは「シンプルと統一とある程度の自由」がそのテーマといえます。iPhoneに対する後発であるAndroidも、完全に同じ方向を目指していますし、Windows MobileでさえWindows Phoneと言う形で自由度を制限してUIの統一を図ったタイプへとシフトしようとしています。

要するに、iPhoneは、物理学における量子力学登場的な役割を果たしたと言えます。スマートフォンの定義に大きな転換点を作ったわけです。しかし、だからと言って古典物理学が不要にならなかったように、古典的スマートフォンもまだ需要はあると私は考えます。ただし、その古典的スマートフォンの需要は全く増えていません。つまり、「スマートフォンは日本で流行るか?」と言う命題に対して、「(古典的)スマートフォンは依然として流行っていない」と答えることも可能だと考えます。個人的には、この古典的スマートフォンが完全に見捨てられた状況は、あまり好ましくないなぁ、なんて思っています。

と言うことで、現代スマートフォンの「新登場」とその隆盛でモバイル市場は再び活性化している、と言うのが、スマートフォンで市場が再活性と言うニュースのキモなのかなぁ、と。決して、古いタイプの何でもできるぞーなスマートフォンが突然市場に受け入れられたというわけではないということです。結局、市場が求めているのは今も変わらず「誰かにお仕着せしてもらえるサービス」なんだよー、とコメントしておきたいと私は思うのです。

と言うことで、スマートフォンによる市場回復についての一言でした。

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割り込みエントリー。総務省が、iPhoneのフィルタリングについて問題にしているという話。

フィルタリングに関しては、法で事実上対応を必須とされてしまっていて、これはどんな弱小キャリアであっても加入者が少なくてもフィルタリング装置を設置しなければならないことになっています。フィルタリング装置ってそんなに安いものでもないし、お金のいっぱいあるキャリアなら楽かと言うとそんなことはなくて、フィルタリング装置のライセンス料が「1加入者いくら」のことが多いため、キャリアにとっては結構な負担だったりします。

「1接続セッションいくら」ではなくて加入者あたりいくら、と言う課金と言うのが、大変なんですよね。この辺、実質日本のフィルタリングシステムを独占している某社の決めた体系に従うしかないと言うこともあってキャリアも文句を言えない部分はあるんですが、その辺もいろいろ怪しいウワサはあったりなかったり。

で、iPhoneに関しては、ソフトバンクがそもそもiPhone向け接続ポイントをフィルタリング装置のないネットワークに収容している(らしい)と言うのが問題で、他社のようにネットワークで一律フィルタリング出来るような仕組みが無いことが論点です。決してiPhoneを狙い撃ちなんていう意図は無くて、どっちかと言うとソフトバンクの対応を求めているという話。

一方で、無線LANを経由して直接インターネットに抜ける通信はフィルタリング対象に出来ない問題について、クライアントでの対応を求める、なんていうニュースも出ていたりしますが、携帯電話であっても公衆無線LANなどで直接インターネットに抜ける通信は「法規制の対象外」と言うことで総務省では整理がついているようです。

しかしこうなると、そもそものフィルタリング法の意味が怪しくなってくるんですよね。ケータイで簡単に違法なサイトや犯罪に巻き込まれる危険性のあるサイトにアクセスできてしまうのを何とかしましょう、と言うのが目的のはずなのに、無線LAN経由ならべつにいーよ、と整理する根拠が分からないし、逆にそれもダメ、と止めるとなると、すべての端末メーカにフィルタリングソフトの導入を義務付けることになる。じゃぁ、PCは?ちょっと小さいPCは?PC型のAndroid端末は?スマートフォンの大きさのWindows PCは?と線引きをする基準があいまいになる。どうしようもなくなるんですね。ってことで、事実上、フィルタリング提供必須の対象は「携帯電話事業者」になるわけです。

上記携帯電話の原則提供(17条)でだめなら、提供義務(18条)でISP事業者を押さえれば何とかなる可能性はありますが、それでも問題はあります。たとえば、自宅の無線LANなら、自分でISPのフィルタリングに加入できるので問題ありませんが、公衆無線LAN、その中でも、相互ローミングしている場合や、あるいは、個人のBB回線を公衆無線LANとして使ってしまう(FON)ようなものは、18条の対象であっても提供義務を果たせていないものがあります。FON提携というとこれまたソフトバンクで、FON利用のソフトバンクWi-Fiスポットは特に携帯電話・スマートフォン向けサービスなのにフィルタリングを(求められても)提供できていない違法状態。

上記のようなパターンでは、そもそも論として技術や契約上、提供不可能なんですが、となると、法(に基づく判断基準)自体に何か問題があると考える必要さえ出てきます。あるいは、その法を厳格にしたいのであれば、上記のようなパターンに関するネットワーク構成・機能・義務に関して、事業法の立場から何らかのガイドラインを定める必要があります。はっきり言って、ソフトバンクのFONやフェムトは、この辺の事業法上のグレーゾーンそのもので、事業法がはっきりしないからこういった隙間につけこまれるし、事業法的な基準しかない上にフィルタリング法を作るから、フィルタリング法も抜け穴だらけになるわけです。

この辺は、総務省があらかじめこういった可能性が出てくることを机上で出し切れなかったことが問題だと私は思っています。世論だのどっかの事業者からの押し込みだのに押されて不完全な議論で結論を出す、と言うことが、総務省には結構あります。FONやフェムトの問題も、かなり昔からこういった「事業法上のグレー性」を指摘する声はあるし、何かの意見募集でもそういった点を懸念する声がかなり昔からあったと記憶していますが、検討せずに放置した結果、ルールが出来る前になし崩しでサービスを始めちゃった。昔なら、行儀の良い事業者ばかりで「総務省がまだ検討していない」と言うステータスなら「じゃぁもう少し待とう」と言う人ばかりでしたが、今じゃぁ「総務省が未検討?じゃぁ今が始めるチャンスだ」という事業者が増えてきているんですよね。そういった事業者のモラルに関する感度も、総務省は低すぎなんですよね。と言って、そういったインモラルな事業者に対して勝手なことをするなと顔を真っ赤にして怒ったりするんですけど。

ってことで、総務省は、iPhoneだのソフトバンクだのを目の敵(?)にするまえに、今までの検討の甘さを反省するところから始めるべきだと思います。だって、もうどうしようもないんですよ、始まっちゃったサービスに関しては。ソフトバンクを擁護するつもりもありませんが、とはいえ、こういった規制や基準に関しては、「決まらないうちにやったもん勝ち」がもはや正論なんです。特定業者への利益誘導ではなく本気で安全な通信環境を実現したいと思っているなら、もっと本気で取り組まないと。この辺を決めている部局の人ももっと増やさないと。あの程度の人数じゃぜんぜん足りませんよ。

ってことで、安易に特定業者に依存してしまうフィルタリングを考える前に、不正利用や危険利用や公衆安全を脅かす可能性のあるようなネットワークが出来てしまう可能性をまず検討・対策し、それでもどうしてもダメならフィルタリングに頼る、と言うようにきちんと「規制のかけ方の順番」を守ってほしいなぁ、と言うひとりごとでした。

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2010/12/17 10:00 · 事業考察 · 2 comments

携帯キャリアの収益拡大のために、一人当たりの利用料、いわゆるARPUを向上させる競争が激しくなっています。加入者数で今後爆発的な伸びが期待できない以上、ARPUをどのように向上させるか、と言う視点に移行していくのは自然の流れです。

さてそこで、どのようにすればARPUを向上させられるのか、と言う点について、今回は一般論的に考えてみようというお話。大昔にも別サイトの前身のサイトで似たような話題を書いたこともありますが。

ARPUを向上、と言うことは、支払額を増やさせなければなりません。携帯電話利用者が支払う料金は、大きく分けて「基本料」「通信・通話料」「オプション定額料」「コンテンツ利用料」と言う感じです。これらに分けてまずは考えて見ます。

基本料は、その名があらわすとおり、基本的な料金で、基本的には増減しません。もちろんプランによって異なる料金で、また、割引サービスなどによる高低もありますが、多くの場合は、減ることはあっても増えることはありません。増える場合も、利用者がプランを高額なものに変更するか、利用形態の変化から割引サービスが廃止されるか、です。他の利用料の変化がその原因となることが多いので、これ自体を増やすことが目的となることはまずありえないでしょう。しかし、利用量を増やすことで間接的に増加方向に持っていく(大量利用の場合安くなるのは高額の基本料の場合が多いため)ことは出来ます。

通信・通話料については、利用者がたくさん利用すればするほど増えるものです。つまりこれに関しては「たくさん利用させる」「たくさん利用する人を増やす」と言う直接的な方法が直接支払額を増やすことにつながります。定額サービスなどのオプション定額料のセット率を増やすこともここがスターと地点です。

オプション定額料は、通信・通話料に何らかの割引を受けるため、あるいは付加サービスを利用するために必要となります。と言うことは、これに関しても利用者がたくさん利用する、あるいは、利用者が付加サービスを利用する、と言うことを促進することで間接的に増加させることが出来ます。

最後のコンテンツ利用料ですが、これは利用者がコンテンツを使う、と言う状況を作らなければ絶対に追加されないものですし、コンテンツを使うにしても、有料のコンテンツがそれを支払うのに十分な価値を持っている(無料のもので代替出来ない)ことが条件となります。こればかりはコンテンツの魅力そのものを増す必要があるため、上記のような単純な一方向の評価は出来ません。

要するに、コンテンツ利用料を除けば、何を置いても「利用者の利用量を増やす」ことがARPUを向上させる一番の方法となります。

ここで、携帯電話事業者にとって、無線リソースの次に重大なリソース問題に直面します。それは、利用者の「人間リソース」です。

一人の人間が一日の間に処理できる情報量と言うのは、せいぜいたかが知れていますし、これが何らかの技術革新で増えるということはまずありません。無線リソースと同じく、原理的なものでその上限が縛られている「貴重な資源」のひとつと言うことができます。

情報量と言っても、単にビットで見るなら、目に入りもしないような画面の隅に莫大なビット数の情報を詰め込めば閲覧しているビット数を増やすことは出来ます。ただ、それは実際には何の意味もないビット。人間のリソースと言うときは、その人が持っている「時間」に注目すべきで、つまりその人の人生の時間を何秒間奪うことが出来るか、と言うのが、今後のARPU向上に向けての一番重大なテーマになるのではないかと考えます。

たとえば、データだけ先に読み込んでしまって後はじっと閲覧するだけ、とか、ゲームで遊んでいるだけ、と言う時間は、厳密にはデータ通信を発生させませんので、利用量を直接増やすことには貢献しません。しかし、その時間を奪えたという結果が重要で、その奪った時間に徐々に通信料やコンテンツ課金を乗せこんでいく、と言うことが可能になります。無料ゲームサイトなどはまさにこの発想で、まずゲームに没頭させ時間を奪い、次いでアイテム課金で奪った時間の上で収益を得る、と言うモデルです。

また、静止画や音楽や動画などの単純なコンテンツでも奪う時間に差が出てきて、それに伴って収益機会も増やせます。たとえば、静止画なら保存していつでも見られるので奪う時間は最適化されて少量で済みますが、音楽は最初から最後まで連続した時間領域を奪いますし、動画は音楽で奪った「聴覚の時間」に加え「視覚の時間」も奪うわけでその分データ量を大きくし、収益チャンスを増します。と考えると奪う時間自体は感覚多重が出来るとも言え、たとえば次は香りの出る動画とすれば追加で嗅覚の時間を奪い、それに伴って通信量やコンテンツ料を上乗せするチャンスが比例して増えるわけです。

さてそうなると、たとえば最近増えてきた3D液晶端末は、この発想の一つの方向で、2次元しかなかった視覚にもう1次元を追加して、視覚に関する奪う時間を1.5倍に多重化している、と考えることが出来ます。この考えで言えば、無意味に高詳細なディスプレイは奪う時間を増やすことにはあまり貢献しないということも言うことができます。つまり、人間リソースの拡大と言う視点では、高詳細化よりも3D化のほうがよい、と言うわけです。

なぜこのように感覚多重方向に走らなければならないか、と言うことはもはや説明するまでもないでしょう。人間リソース、つまりある人の「人生の時間」は限られていて、しかも、恐ろしく強力な競合が世の中にひしめいているからです。おそらく最強の競合は「睡眠」ですし、「仕事」「趣味」「家族」などもかなり強い競合となります。そういったもろもろとガチで時間の奪い合いをするほどのサービス・コンテンツを作るか、さもなければ、既に奪えたわずかな時間をいかに多重化するか、どちらかしかないわけです。

通信事業者がARPUを増やすというときには、まさにこのような苦しい戦いが待っていて、しかも、最近は2台3台持ちが珍しくなくなりつつあり、通信やインターネットがヒトから奪うことが出来たわずかな時間でさえさらに事業者間で奪い合うという状況になりつつあります。人間リソースの利用効率の向上は、ARPU向上を目指す事業者にとっては喫緊の課題としなければならないと私は考えます。

ただそもそも、こういった「人間リソースの壁」を考えたとき、ARPUを向上させるという営業目標そのものが既に今の情報が溢れた時代に即さないと思うんですよね。一番簡単に人間リソースを増やす方法は「人間を増やす」ですもの。つまり、ARPUを上げる努力をするよりは加入者を増やす努力をするほうがはるかに実効的で即効的だと私は思います。

と言うわけで、ARPU向上を考えたときに立ちはだかる一番大きな壁の存在の提言として、僭越ながら稿を上げさせていただきました。でわ。

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2010/12/17 10:00 · 事業考察 · 2 comments

ソフトバンクが光の道はA案かB案か、なんていう広告を大量に出しています。WEB広告くらいかと思ったら、TVCMまで出しています。ここまで必死にやるには、裏には相当困っていることが起きているんだろうなぁ、と言うところで、いろいろな情報もでてきたので、簡単にまとめ。

まず、ソフトバンクの言っている「A案」「B案」について。A案は光が5000円で地方切捨て、整備も遅い、といい、B案は光が1000円ちょいで地方も全部整備で整備も早い、と広告しています。まずどう考えてもこの二つが比較になっていない、と言うことに気づきます。

だって、この情報だけでは、B案以外に選択肢が無いじゃないですか。それ以外に全く差が無く、この条件だけしかないのであれば、だれが考えてもB案になります。しかし国はA案を選択し、ソフトバンク以外のすべての事業者がA案に同意している。これはおかしなことです。

その根本的な理由は、B案は実現不可能な案であるから、と言うところです。ソフトバンクの投票サイトでも、なぜかA案に10%あまりの票が入っているんです。これは本来ありえないことで、それでも10%の人は、「何かおかしいぞ」と気づいているということです。

なぜB案が実現不可能なのか。それは、ソフトバンクが提出した「B案の提案書」と、NTTの提出した「光網の維持費に関する資料」を見れば分かることなのですが、簡単にまとめると、次のようになっています。

整備投資額 NTT 3.8兆円 ソフトバンク 3.1兆円 (7000億円過小見積もり)
設備保全費 NTT 3400億円/年 ソフトバンク 840億円/年 (2500億円過小見積もり)
減価償却費 NTT 3670億円/年 ソフトバンク 2370億円/年 (1300億円過小見積もり)
管理コスト NTT 2850億円/年 ソフトバンク 990億円/年 (1860億円過小見積もり)
その他省略

その他、おかしな点はさまざまあるわけですが、とりあえず一つずつ解説します。

設備投資額、その主な部分である工事費ですが、ソフトバンクは、「エリアごとに一斉工事を行うことで大幅な工事費削減か可能」と言います。これは、以前ニュースコメントでも触れたとおり、それが非現実的であることは明らかです。

工事と言うものが、事業者の都合で一方的にできるものであればそれも可能ですが、実際には、施工業者、納入業者、地権者、そして加入者のすべての都合が合わなければなりません。そして、ソフトバンクが以前出していた試算では、3件/日の工事ペースであれば日本の通信施工業者の全能力で間に合うとしていながら、工事費の見積もり試算シートでは5件/日でやるので工事費は削減できる、などと完全に自己矛盾した仮定を立てていたりします。

もちろん、何より大きいのが、加入者、地権者の都合の調整で、あるエリア内のすべての加入者・地権者の都合が一斉に都合が付けられるということは絶対にありえません。前にも書きましたが、私の近所でわずか4軒のガス管工事の日程調整に6ヶ月かかりました。ソフトバンクの「一斉工事」の前提は5件/日、これが出来るのは移動や足場などの準備・撤去にかかる時間が徹底的に削減できた場合、つまり実質隣接した区画の個宅と地権者が同時にそれぞれ5軒都合が合うことが必要で、さらにこれを365日休まずに続けなければなりません。これが実現できるのは天文学的低確率です。NTTは「仮にそれが出来たとしてもまだ7000億円過小だ」としています。

次に大きな問題が、設備保全費です。この場合、架線や電柱や基礎、そして加入者宅内配線などが事故や経年劣化などで損なわれたときにそれを修繕する費用。NTTは3400億円近くかかると言っているのにソフトバンクは840億で済むと主張し、またその主張の根拠は全くゼロです。単に「弊社ならこれが出来る」と言っているだけ。今まで何十年も架空線と電柱を維持してきたNTTと、その経験が全く「ゼロ」のソフトバンク、どちらのほうが正しい試算を出せるかは、言うまでもないでしょう。勘違いしないで欲しいのは、ソフトバンクがやっている直収電話やADSL、あの架空線も、修繕して費用を出しているのはNTTです。ソフトバンクは1円も出していませんし、修繕のためにどんな工事をするのかさえほとんど知らないというレベルのはずなんです。

そしてこの設備保全費、個人的には、NTTの試算も甘いのではないかと思っています。何しろ、光ファイバが本格的に普及し始めてまだ数年。いわゆる「バスタブ曲線」の底がまだ見えていない状態です。実際に空中に架線した光ファイバの故障率がどのような曲線を描くのか、実はNTTでさえ知らない可能性があります。となると、仕様どおりに「20年の平均故障期間」で見積もっている可能性もあります。しかし、空中架線は光ファイバにとっては過酷な条件です。特に地震や台風の多い日本はシビアな環境です。実は故障率は大きくうわぶれするのではないかと私は思っています。

減価償却費もほぼ同じ話で、ソフトバンクは機器の耐用年数を過大に見積もっています。一般的には6年、特に陳腐化や故障の少ない機器で9年といわれる通信機器の世界で、強引に13年に引き伸ばして試算しているため、非常に甘い数字になっています。実際には、交換局内はともかく、過酷な環境の個宅装置は耐用年数はかなり短くなると考えられます。自宅に13年も同じ光ルータが鎮座しているという状況のほうが想像が難しいですよね。

最後に管理コスト。これには、回線の管理、特に、固定ナンバーポータビリティや局間引越しなどに関わる加入者番号管理などが大きなコストがかかっているわけですが、ソフトバンクは「弊社実績です」と回線あたりのコストを過小に見積もっています。ソフトバンクは、今までに一度たりとも、NTTのような管理をやったことがありません。すべてNTTまかせです。日本の固定電話番号は原則すべてNTTが管理し、事業者間移管や局間移管や収容変更などすべてNTTがやっています。NTTにこういったもろもろの面倒な作業をすべて押し付け、その上でかかっていた費用がソフトバンクのいう「弊社実績」になります。全く試算の根拠が間違っているわけです。

このようにして、何千億円もの費用を無視して築き上げた「案B」ですから、もしこれを現実にしてしまったら、当然、毎年何千億円もの赤字が出てしまいます。これを補填するのは、当然「国」、そして「納税者」です。そして一番得をするのは、ただ同然で光回線を借り放題の事業者です。

しかし、それにしてもなぜソフトバンクが、WEB広告どころかTV広告まで打ってソフトバンクの「架空の案」を推し進めようとするのか。これには私なりの推論があります。

ソフトバンクの案の一番の肝は、光の整備期限でも貸し出し価格でもありません。一番の肝は、「メタル線の全廃」です。現状の電話サービスとADSLサービスを提供している線をすべて廃止することに一番こだわっています。ここに特にこだわっているところから、ソフトバンクの目的が透けて見えます。

ソフトバンクは、今、ADSLの加入者を大量に抱えています。そのため、日本中のNTT局舎にADSL収容装置を設置しています。もし、メタル線が全廃と決まれば、ADSLもすべて廃止です。廃止費用・移行費用は新しいアクセス会社が負担することになっています(ソフトバンク案では)。

となるとどうなるか。ソフトバンクは1円も出さずに、ADSLサービスをやめることが出来ます。つまり、ソフトバンクの最大の目的は、「だれにも文句を言われず1円も出さずにADSLをやめたい」と言うことなのではないか、と言うのが私の考えです。

実は、Yahoo!BBに入っている知り合いから、おかしな話を聞き始めました。それは、「11月ごろから突然、Yahoo!BBの光への乗りかえ勧誘が増えた」と言うのです。一社や二社ではなく、十社近くのYahoo!BB代理店から電話があり、「工事費も無料にするし料金などの条件はすべて引き継ぐので光に乗りかえて欲しい」と営業されたというのです。

光に乗りかえても料金もほぼ引き継ぐという条件から考えれば、増収のための営業ではありません。ではなぜこういう営業を行っているのか。それはもう、ADSLを止めたいということしか考えられません。この話を聞いたときにいろいろなものが一気につながったわけです。

そう、ソフトバンクのADSLの局舎装置、そろそろ耐用期限になるんです。ソフトバンクの言う「13年」だとしても、ここ3~4年の間に耐用期限が来てしまう。これが、とにかく初期の獲得攻勢のために日本中の局舎にばら撒いた装置すべてに到来してしまう。ADSLの初期の過大投資に伴う累積損失は大変なもので会計操作で消えてはいますが実質は赤字のまんまだったと聞きますが、要するにそれと同じものが「もう一巡」来てしまうわけです。

ADSLのサービスを継続する限り、どんなに利用者の少ない地域であっても設備の更改をしないわけにはいきません。よほどの事情がない限り、事業者側から一方的に回線を切断すると言うことはできないためです。おそらくこれに大いに頭を痛めた結果、いっそメタル全廃と吼えまくってみるか、と言うのが今回の「光の道」の一件だと思っています。

ちょうどソフトバンク社長室長の嶋氏と新進党同期当選である原田原口氏が総務大臣になったタイミングで一気に仕掛けた、と言うことでしょう。で、原田原口氏の事実上更迭で一気に逆転され、今度は意見広告作戦に出た、と言うことだと思います(そうでなければ、こういった意見広告は議論の始まった今年前半から出てしかるべき)。その後原田原口氏は部外者であるにも関わらず度々議場に出てきては未練たらしくソフトバンク案を推す発言をしている模様ですが。ソフトバンクのプレゼンでは「NTTへの天下り一覧」などと個人名のリストまで掲げてWEBで公開するといういやらしいことをしていますが、政治的便宜を一番活用しようとしていたのはソフトバンク自身じゃないの?、と言うのが私の所感です。

私はこの件に関しては、どんな事情があってもソフトバンク案を認めない立場です。と言うのは、内容が嘘だらけと言うこともありますし、にもかかわらず大臣に直接接触して強引に押し込もうとしていたという手続き論的な不誠実さも際立つからです。今回タスクフォースがまともな結論を出してくれたことに一応ほっとはしていますが、万一、今後ソフトバンクの意見広告に騙された人たちが議論を蒸し返すようなことになったら大変です。それでもしソフトバンク案が採用されたら、将来的に毎年何千億円の赤字を税金で補填し続ける会社が日本の通信の毛細血管を支える、と言う通信業界の閉塞時代の到来を意味します。光、同軸、無線など多様なアクセスシステムが多様な価値観で競争し続ける社会こそが私の理想で、その多様性を潰しなおかつ自身も潰れるというソフトバンク案は全く考慮に値しません。

NTT以外の光や同軸や無線が1400円で提供できるか?・・・出来ません。しかし、NTT光だけは税金による補填で1400円で提供可能となれば、他の光や同軸や(固定目的の)無線は全滅です。光は1400円で使えるようになる代わり、「本当の光の価格」との差額を税金として負担することになります。ソフトバンクは「税金を使わない」としつこく言いますが、ソフトバンクがしつこく繰り返す部分こそ一番疑わなければなりません。赤字が出てきたら、なんだかだと議論した上で「政府が出資してるんだから」と言う理由で税金で補填と言う話になるしかないんじゃないかと思います。これは、JR民営化や郵政民営化やJAL再建のごたごたを見てればまずそうなるよなぁ、と。

そんなわけで、こんな駄文ごときでソフトバンクの意見広告に対抗できるとは思いませんが、こういう意見もありますよー、と言うことで掲載させていただくことにしました。ではー。

反論が出てるようだけど一言だけ。
携帯電話網の番号管理と固定電話網の番号・所管管理の手間と複雑さと責任は全然ちがうって。それで「携帯電話網での実績と経験が~」とか言われても、ねぇ。その他突っ込みどころ満載だけど、以前のバトルで、突っ込みを入れると論点をずらして突っ込みに答えない人だとわかっているので、無視。どっちが正しそうかは皆さんで判断してください。

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2010/11/26 12:00 · 事業考察, 技術解説 · 9 comments

今も続いているのかな?ちょっと前に話題になった、ソフトバンクの上り回線が64kbpsに制限されている、と言うお話を、技術的に考察してみます。

まず事の真偽は置いておいて、そういう制御自体は出来るのか?と言うお話があるわけですが、答えから書きますと、簡単に出来ます。

特に、「全員一律に規制する」と言うのなら、きわめて簡単に出来ちゃいます。W-CDMAでは、パケット通信とはいえ、その通信チャンネルの速度が通信開始時に基地局から割り当てられ、それを守って通信が行われます。実際にはデータのあるときには相当するチャンネルを占有するような形で割り当てられるのですが、それが非常に細かく制御されているため、パケット単位でのやり取りに見える、と言うような感じです(やや語弊あり)。

とすると、基地局のパラメータをちょこっといじって、「上り方向は64kbpsしか割り当てません」と言うフラグを立てちゃう(と言うか他の速度のチャンネルの割当をOFFにしちゃう)だけで規制は実現できます。実際は、何らかの「規制レベル値」がダイナミックに通知可能になっていて、規制レベル値ごとに各チャンネルの割当可否パラメータセットがあらかじめ設定されている、と言う感じだと思います。

おそらくこれまでも時々こういう制御はやっていたはずですし、一日の中でも時間帯によってこういうことをやっていた可能性は高いと思います。また、加入者別に規制することも可能なようになったと聞きますので、加入プラン別にこういう規制が行われていたと考えられます。もちろんこれはソフトバンクだけでなく、ドコモやauも当然同じような制御をやっているはずです。

さて問題は、なぜここまで大規模に、長時間規制をするような羽目になってしまったのか、と言う点です。もちろん元々ソフトバンクは無線容量が足りずそれに加えてiPhoneと言うトラフィック大量生産装置を販売数一位になる勢いで売ったわけで、無線容量が逼迫するのは分からないでもありません。しかし、インターネットトラフィックのメインである「下り」ではなく「上り」が長時間にわたって規制されてしまったのは不自然に思えます。

私は、この規制は、単にトラフィック増大による容量逼迫によるものだけとは思っていません。実は、もう一つ、ソフトバンクのネットワークに重大なインパクトを与えるものがあります。それは、フェムトセル。

ご存知のとおり、フェムトセルは、ほとんどの場合、自社ネットワークの周波数に干渉を及ぼします。そしてあまり知られていませんが、フェムトセルによる干渉は、実は「下り」よりも「上り」のほうがはるかに深刻だったりします。

「下り」に関しては、フェムトセルが出す電波が、屋外セルの出す電波に重なって、屋外セルの受信品質が多少悪くなることが考えられますが、実際には、屋外セルの電力に比べてフェムトセルの電力は微々たる物です。干渉を与える範囲はきわめて狭い範囲に限られ、そういった範囲(せいぜい数メートル)さえ無視してしまえば、ネットワーク全体に影響を与えることはまずありません。

ところが上りはそうは行きません。フェムトセルは出力も小さいですが、アンテナもきわめて小さく、利得も低いものです。このため、これと通信するための端末は、フェムトセルに近い場所でも比較的大きな電力を送信してしまいます。その端末の発射した電波は、基本的には全方向に広がり、最終的には周辺の屋外セルの基地局に受信されてしまいます。

屋外セルにとっては、このフェムトセル配下の端末が出した電波は完全な「干渉波」です。しかも、他の屋外端末が送信しているのと同程度の電力で飛んできます。さらにフェムトセルが増えれば、このフェムト端末も増え、屋外セルが受ける干渉も単純に足し算で増えます。CDMA方式にとって、「干渉量」=「容量消費」です。何も通信に寄与しない干渉波により、大量の容量が浪費されてしまう可能性があるわけです。

このようなわけがあるので、ドコモもauも、フェムトセルを開始しておきながら、都市部では積極的に展開していません。一方、ソフトバンクはもともとの下り容量不足を補うためにものすごい勢いで配っています。となれば当然、この「上り」の干渉は確実に深刻化するはずです。

今回の上り規制は、こういった事情があるのではないかと考えています。もちろん、ソフトバンクが全個宅にフェムトセルを配ってしまえば、そもそも干渉を受ける屋外セルに端末がいなくなるので、規制をする必要もなくなりますが、それは実質不可能です。一方、配ってしまったフェムトを引き上げるわけにも行きませんから、「ソフトバンクの上り容量逼迫」は、根本的な問題として残ってしまうと考えられます。

と言うような感じでソフトバンク上り規制を考察してみましたが、この推察が当たっているかどうかは分かりません。しかし、少なくともフェムトセルを増やす限り上り回線は逼迫に向かうというのは事実ですので、一時的に解消しても、今後も同じく上りサービス品質は劣化する方向じゃないかなぁ、と思います。と行ったところで、本日はこれにて。

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2010/11/26 12:00 · 事業考察, 技術解説 · 9 comments
2010/11/15 10:00 · 事業考察, 技術解説 · 4 comments

「Skype au」の料金体系発表と言うニュースについて、本日の無線にゃん。

前にもちょっと書きましたが、Skype auは、音声通話に関しては回線交換を使うというかなり独特なサービスになっています。

どうして回線交換を使うのか、と言う点についてはいろいろな理由もあると思いますが、大きなところでは二つ、一つは「遅延が無い」、もう一つは「データ通信と干渉しない」と言うところだと思います。

auのネットワークは、CDMA2000とひとくくりにされてはいますが、実際には音声と低速データの「1x網」と高速データの「EV-DO網」に分かれています。auのデータで脚光を浴びているのはもっぱら「EV-DO網」を使った高速通信で、しかしその陰でこっそりと音声は「1x網」を使っている、と言う状況です。

このネットワークの分かれ方、単に論理的に区別されているだけでなく、実際の無線周波数が違っています。1x網の周波数とEV-DO網の周波数は別々なんです。と言うことは、1xの通信はどんなに無茶をしてもEV-DOに影響を与えないし、逆にEV-DO通信が1xに干渉することもありません。同じ帯域内でやりくりしているHSDPAとは根本的に設計が異なっています。

さて、もし単にSkypeのアプリを入れただけだとどうなるか。当然ながら、SkypeがIPで近所のSkypeノードに接続し、音声発呼をするとそのノードとの間でSkypeなプロトコルをIPの上にのせてやり取りして音声通話を行うことになります。IPがのっているのは当然データ通信接続なので、他の通信と同じパケット通信帯域を共有することになります。

この場合、音声がのったパケットがノードに届けられるのは、無線パケット送信機会がどのように端末に割り当てられるかによります。無線パケットのスケジュールが確保できなければパケットの送信はどんどん遅れるし、しかしSkypeアプリやIPプロトコルスタックは、原則として無線プロトコルスタックで渋滞が起こっていることを知る術がありません。ある程度以上パケットがたまると原始的なフロー制御が働いてバッファがいっぱいになったことを知ることが出来るだけで、さっき送ったパケットがどのくらい遅れているのか、をリアルタイムに知ることは出来ない、と言う問題があります。

と言う話になると、次に来るのが「QoSの仕組みを入れれば」と言うことになるかと思います。実際、IPパケットのTOSを使うことでIPまでしか知らないSkypeアプリからでもQoSをいじくれる可能性はありますが、そもそも無線の割当を決める基地局が「次のIPパケットのTOS値」を知る術がありません。となると端末や基地局は回線単位でしかQoSを制御できなくなりますが、Skypeを使っていれば他のパケットも一緒くたに優先処理されてしまう、つまり要するにSkype対応端末ばかりになればみんな同じ優先度になってしまいQoS自体が無意味になるということになってしまいます。

と言うことから、「Skypeの音声だけ」を優先する、と考えると、逆にSkype音声だけを別回線にしてしまえばよい、ならいっそ音声回線にしてしまえ、と言うことにたどり着いたものと思われます。なかなか賢い。これにより、データ回線は従来どおり電波状況に応じて公平に割当をするだけで良いし、キャリアサービスとしてのSkypeの品質も高く保てる。また、Skypeは余裕があればいくらでも音声帯域を広げて音質を向上させようとしますが、もしそれをパケット回線でやられるとパケットの逼迫が避けられません。音声回線交換なら最初から決まった帯域しか消費せず、パケットへの影響を確実に避けられます。

と言うのが、音声回線交換を使う理由の私なりの考察ですが、もちろんこれだけの利点があっても、やはりそれに見合うだけのリスクがあります。何より、「音声向け帯域を消費する」と言う最大の問題。パケットであれば統計効果で利用効率は上がりますが、音声回線はどんなに頑張っても利用効率は変えられません。どんな内容であれ律儀に1回線分のリソースを消費します。

で、前にも書きましたが、確かに無線の逼迫も厳しいのですが、同時に、回線交換特有の問題として「回線交換のための処理リソース」を確保してしまうという問題もあります。これが、基地局から制御局から交換局から中継局まで、一律に消費しちゃう。パケットのようにパケット単位で一瞬一瞬の処理リソースを食われるのではなく、完全に長時間にわたってハードウェアのリソースを占有しちゃう。いやこの手の装置って、意外とこういう処理リソースの過負荷に弱いんですよ、私の知る限り。しかもこの手の装置は寿命が長く、しかもその開発した時代でもかなり型落ちの「枯れたデバイス」を使う傾向があるため、処理能力は最新の家庭のPCにも劣る、ってくらい貧弱だったりします。少なくとも、回線を確保しているルートの中のどれか1台がこんな貧弱な機器だったら、あっという間に処理能力オーバーです。

いや、たとえば「ソフトバンクは音声定額やってるしそれで大丈夫じゃん」と言う声もあるかと思いますが、ソフトバンクの場合は何より最繁時間帯は定額外にするという対策がしてある。それに対してSkype auはそういった対策も無く、しかも無料通話相手は全世界のすべてのSkypeだというんですから、ちょっと予想のつかないトラフィックになってしまうんじゃないかと。そういうわけで私は「無料は難しいんじゃないかな」と予想したわけですが、見事に裏切ってくれました。

と言うことで、無料ですよ、Skype宛ての回線交換品質の音声通話が。ただ、一応逃げ道を用意していて「2011年11月まで」なんて言っていますが、そこになって「やっぱ無理」とか言って逃げたらいくらなんでも笑いものになるでしょう。何らかの対策案もあっての暴挙(笑)だとは思いますが、これはちょっと面白いサービスになるかもしれません。特に、これが一般のケータイ(フィーチャーフォン)に搭載されたら。売り方にもよりますが「電話」のあり方ががらっと変わるかも。

以上個人的にはちょっと面白いと思っているSkype au。例の、スマートフォン向けの割引サービスもあるので、一台調達して使ってみたいかも、なんて考えている今日この頃。といったところで、本日はこれにて。

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2010/11/15 10:00 · 事業考察, 技術解説 · 4 comments