さて、光の道云々に関して、今回は、あのお方も大好きな「米国では」と言う視点で考えてみたいと思います。
米国では昨年3月に日本の「光の道構想」に相当する「National Broadband Plan」(以下NBP)がFCCにより策定されています。この中でブロードバンド化に必要とされている要件の一つが「安定した競争を促進すること」とされています。これは某ソフトバンクが一生懸命主張していることと真逆です。
たとえば、光・銅線・ケーブルに関わらず競争事業者が多いほどその地域全体の品質が向上しているという調査結果が出ていることから、技術に関わらない競争環境の重要さが指摘されています。この提言全体では、ブロードバンドを実現する方式として、光ファイバーはもちろん、同軸、銅線、そして特に無線を積極的にブロードバンドの実現のために活用すべきであるとしています。
これは、「アクセス線」と言うインフラの有無によってサービス提供が制限されることを出来るだけ抑制するためです。原則としてアクセス線はオープンな環境で公平に、自発的に投資が行われるものであって、しかしブロードバンドサービスはどのアクセス方式によっても公平に全国民が享受できるものでなければならない、と言うのが米国流の考え方です。私もこの考え方に強く賛同します。
この考え方は、利用者の視点からみて「アクセス層」と「サービス層」を分離した考え方で、それぞれの層の中で横方向での競争を促進する効果があります。これに対してソフトバンクの考え方は、利用者視点を無視し、資本的な視点からのみアクセス層とサービス層を分離し、アクセス層を独占支配化して利用者からはアクセス層の選択肢をなくして「サービス層」しか選択できなくし、「安かろう悪かろう」が許されるようになる考え方です。
米国は広大なので、アクセス網を築くのは大変だから、と言う考え方もありますが、実は日本と言う国は世界でも有数の固定網敷設困難国の一つです。と言うのは、極端な都市集中人口分布にも関わらず一方で極端な山岳地形+多島構成と集落の広域分布があるからです。こういった場所があるからこそ、不採算地域のユニバーサルサービス維持と言う名目でユニバーサルサービス料金を電話番号すべてに課しているわけで、このような完全な不採算地域に都市部と同一のアクセス網を、と言っても、不採算と分かっていて出資する投資家は出てきません。
もちろん純民間の既存事業者でも正常な事業判断をするならこういった不採算地域への投資は行うわけも無く、となると政府方針を実現するためには一部政府出資とならざるを得ず、政府出資(=税金投入)のサービスと競合できる他の民間事業者は生き残れるわけもなく、市場は閉塞へと向かいます。それよりは、そういった地域でも採算の取れる別のアクセス方式を利用したアクセス網への出資を促進し、しかしそのアクセス方式の上でのブロードバンドサービスは同等のものが得られるように、と考えるのが実に自然です。利権構造などに左右されず公平な判断の出来る米国の役所(FCC)は実に優秀であると感じます。
こういったことが実現できるよう、NBPでは、「ケーブルテレビインターネット方式の統一・機器のオープン化」「ライセンス無線周波数の拡大」「アンライセンス無線周波数の拡大」などなどが具体的に提言されています。
私もかねがね活用を主張している衛星回線についても、NBPでは積極活用を促しています。もちろん衛星回線は非常に速度が遅くリソースも馬鹿食いなのですが、極論1基あればすべての世帯をカバーできます。アンテナの信号処理技術もきわめて向上しているためアレイによるセル化も簡単になっているので、順次衛星を増やしてカバレッジを小セル化していけば速度や容量の問題もいずれ解決できます。
また、この提言では「カネ」の問題に関しても事細かに提案しています。具体的には、大方針として「整備ファンドの設立・活用」が提言されていますが、ソフトバンクの主張のように「だれがどのくらいカネを出してどう整備すれば採算がいくら」なんていうくだらない議論はしていません。「カネがほしければ公共ファンドから出資してやる」「どう使おうと知らんが、使い道はオープンにしろ」「採算が取れるかどうかは事業者次第、失敗しても一切関与しない」と言うように、カネと事業はきっちりと区別しています。
整備ファンドとして、既存の固定回線ユニバーサルサービス用ファンドの活用に加えて、CATVを想定したアクセス線用ファンド、無線ブロードバンド用ファンドの新規立ち上げを提言し、さらにそれらからの資金の拠出は、実際にアクセス線を整備した会社の「実績」に基づいて行われるように配慮しようとしています。
そもそも論的には全世帯整備について「カネ」が大問題であることは疑う余地もないのですが、それに対して「こうすればカネを節約できる」と言うような事業計画への口出しは一切ありません。カネは必要なだけ供給し、使い道はすべて事業者の自由裁量。ただ、実績も無くカネばかり要求することの無いよう金を出した事業者の事業内容をオープン化させ、不適格な事業者からは資金を引き上げる、ただそれだけ。事業者の自由意志と事業者間競争を損なわないシステムとしてはかなり優れたやり方だと感じます。
とにかくこの提言書はその他非常に細部にわたって「どうあるべきか」を何百と言う提言にまとめ上げてあり、しかもそれがすべて特定の企業の意見などに左右されない公平な視点での提言であることが日本の光の道構想とは対称的です。これに比べれば、日本の光の道構想などは、一言で言えば「みんな頑張りましょう」、この提言書の序文にも満たない内容無しの構想。ソフトバンクの主張はさらに酷く、「ブロードバンドインターネットアクセスは唯一の技術で唯一の事業者により事実上『専売化』されるべき」と言う主張であり、ブロードバンドの独占化と参入のクローズ化を目指しているとしか言えません。
本来、「米国では」なんていう引用無しでも、ソフトバンクが目指している光の道がおかしいということは分かってしかるべきなのですが、残念ながら技術やインフラは「あって当たり前」と言うようにリテラシが極めて低く、某社の意見広告やCMで「値段が高いか安いか」なんていうくだらない議論としてこの問題を植え付けられてしまっている日本国民からはこういった視点は出てこないのかなぁ、と残念に思っています。
今のうやむやに済ませてしまった「光の道構想」は一旦ご破算にして、いっそFCCを拝んで日本の戦略を策定してもらったほうがよほどマシなのですが、まぁともかく、今は将来どうあるべきかをもっと真剣に、公平に議論をしていただきたいと思っています。それでは。
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