スマートフォン 表示
メールフォームでよろづ質問受付中
スマートフォン速度統計への人柱ご協力をお願いします。

DTI ハイブリッドモバイルプランが安すぎる、と巷で話題騒然(笑)となっていることから、この安さのからくりとかを考えてみる今日の解説。

いやもう、答えは簡単で。元々、MVNOってそういうものじゃないですか(笑)。大元のMNOより高く売っても顧客を獲得できるわけが無いので、基本的には安く売る。ではそれをどうやって実現するのか?と言う点について。

この辺はMVNOの仕組みのところでも軽く書きましたが、MNOとMVNOの接続の仕組みとタリフの仕組みがポイントです。多くのMVNO向けタリフでは、「接続点におけるトータルビットレート」を課金対象としています。MNO(今回はドコモ)のネットワークと言うのは、基地局からそれを集約する制御局からユーザデータを転送するコアまで全部含めてMNOネットワーク。そのMNOネットワークからMVNOネットワークへは、契約上は一つの接続点しか定義されません。つまり日本中のすべてのデータがその接続点目指して集まり、その一点をすべてが通る、と言うものです。

その接続点におけるビットレートが課金の対象となり、100Mbpsならいくら、と言うような契約をします。もちろん契約形態によっては、接続点を地域ごとに2点設けてその合計とか平均とかそういうことをやることも出来ますが、基本的には「どの端末がどの程度の速度でどのくらいの量通信したからいくら」みたいな課金はしないものです(もちろんそういうMVNO=再販型MVNOもありますが)。

と言うものなので、実は、エンドユーザへの提供価格はかなり自由に設計できます。ドコモMVNO接続料金は10Mbpsで1300~1500万円。たった10Mbps、とみることも出来ますが、少なくともHSDPA端末一台がフルスピードで通信してもぶつからない天井です。そしてHSDPAでフルスピードが必要なデータダウンロードがどのくらいの頻度かと考えると、そんなに高くはありません。この「10Mbps」は、端末がつながっている時間ではなく、すべての時間ダラダラと10Mbpsを借りられるというものなので、多くの端末は接続さえしていないし、接続していてもダウンロードはしていないでしょう。所詮インターネットはベストエフォートの世界。複数人が同時にダウンロードして合計で10Mbpsの天井にぶつかり、一人1Mbpsに落ちてもだれも気にしません。

ぶっちゃけ、これを確率的に完全にばらつく、と割り切ってしまえば、収容可能数は飛躍的に伸びます。簡単に言えば、10Mbpsと言うのは、1ヶ月通しでみれば3240GBのデータ量です。モバイルデータ通信で一人当たり2GBくらい使うと仮定すれば、10Mbpsだけで1620人を収容できる、と計算できます。それでも一人当たり1万円くらいの原価ですが、別に、この「1620人」と言うのは、「制限」ではないんですよね。いくらでも増やせます。ただ、時々接続点のビットレート天井に引っかかって使用感が悪くなるなぁ、と思われるだけ。

つまり、MVNOにとっては、品質と価格はいくらでもトレードオフが効く、と言うことです。ドコモ自身にこれが出来ずMVNOに出来るのは、この辺がポイントです。ドコモは、自社ネットワークの隅々まで常に最良の品質に保つ必要がありますが、MVNOにとってはそれは「接続点」と言う壁の向こう。MVNOにとっては、単に「接続点のビットレート」を何人でシェアさせるか、と言う単純なトレードオフが出来るわけです。

さらに今回は、MVNEが間に入っています。MVNEは、MVNOを取りまとめるような役目。流行り言葉を使ってしまえば、クラウド的に「MVNOサービスが出来る仕組み」をまとめて提供する人です。MVNOをやりたいと思った事業者は、MVNEに「MVNOサービスに必要なコンポーネントを貸して~」と頼むだけでサクサクっとMVNOサービスが出来てしまいます。クラウドに関して以前コメントしましたが、クラウドは複数の利用者間でリスクとコストをシェアできることがポイント。これを利用してMVNOをする限りは、さまざまなリスクに備えたコストを自前で積み上げる必要が無いため(たとえば万一に備えて地域別冗長構成にするなんていうコストが直接は発生しない)、ドコモと直接取引するよりも結果的に安いトータルコストでサービスを実現し易いといえます。もちろん、MVNE自身も、多くのMVNOを収容する集線効果を見込んで安めのタリフを提案することもあるでしょう。

と言うのが安さのからくりなわけですが、実際こんな値段で提供されてドコモは痛くないのか、となると、これもまた痛くもかゆくも無い。だって、どんなにエンドに安く提供されようが、ドコモにとっては「全国で契約Mbps分しかトラフィックを食われない」と言う絶対的な保証があるからです。ドコモは全国トータルで何十何百Gbpsと言うトラフィックをさばき、それに対して毎月のように「やばい○Gbps増えたどうしよう」と悩んでいるような状況、そこに10Mbpsが何束加わったって蚊に刺されたほどの痛みも無いわけです。

と言うような感じで、ぶっちゃけちゃえば「ピークデータレート」こそ7.2Mbpsとは言いながらも、全国トータル帯域としてはかなり強い制限があるからこそ安く出来ている、と言うことになるかと思います。MVNOの原則の問題なのでそれだからどうこうと言うことはないわけですが、全く無関係な青森で大量ダウンロードする利用者のせいで帯域が消費されて東京で使っている人の速度が出ない、と言うことが起こる様なタイプのサービス、と言うこと程度は知っておいたほうが良いかと思います。といったところで、このへんで。

tweet TWEET

さて、ソフトバンクがウィルコムのコンクリート柱併設を利用して基地局を大幅に増やしているというお話が出てきているようですが、この件について、心配というか突っ込みと言うか。

前にマクロセルとマイクロセルのお話を書いたときに、次のような絵をお見せしました。

これは一体何かと言うと、「都市部で」「セルを小さくしていくと」セルの形状がどのようになってしまうか、をあらわしたものです。都市部では遮蔽物が多く、またセルを小さくするためには遠方への干渉を小さくするためにアンテナ高を低く、チルトを大きく下げるような調整をしなければならないため、より小さな遮蔽物によってもセル形状が影響を受けてしまいます。

この形状になって何が問題になるのかと言うと、簡単に言えば「予想が出来ない」ことが一番の問題です。きちんと予想が出来て設計が出来るのならどんなセル形状になっても問題ないわけですが、一般的にはセルを小さくした場合のセル形状を完全に予想するのはまず不可能です。

と言うことは、ある場所に基地局を建てたとき、その電波がどこまで届いてしまうのか、と言うのが確実に予想できません。チルトを下向きにしても、反射で飛ぶ分は飛んでしまうからです。

このような状況で問題になるのは、もちろん「干渉」です。PHSであれば、通話チャネルを周波数分散、制御チャネルを時間分散する技術があったため、どちらも干渉を自律的に避けることが出来ますが、WCDMAは、その技術がありません。その代わり、CDMAによるコード分散が行われます。しかし、コード間干渉までは起きなくても、電力方向の干渉は確実に起こります。簡単に言えば「自身のネットワークにより自身の容量を削る」と言うことが起こるわけです。

PHS基地局は非常に高度が低く密度が高いものです。それに対して、せいぜい5~10mほど伸ばした場所にWCDMA基地局アンテナを取り付けているようですが、このくらいの高さでは、先ほどの不定形な形状が顕著に出てしまいます。その「枝」の伸びた先が他のセルに確実にダメージを与えてしまうわけです。

しかも、免許情報を確認する限りでは、どうも10W~30W以上と言うかなりの大出力の局を設置しているようです。となれば「枝」の長さはそれだけ長くなります。より遠方の他局まで攻撃対象になってしまう、と言うことです。

一時、基地局数競争でドコモを超えると豪語し自分ルールの数字を勝手に作って「達成した」と宣言したものの、それが全然できていなかったことを免許情報から暴かれ大恥をかいた経験から、今度はPHS局に併設可能な小型局を大量に設置して回っているようですが、これは今度は「免許数情報からのツッコミを避けるための単なる数稼ぎ」としか思えません。そのような設置形態では、自身の容量にダメージを与えるばかりだからです。

いや、本当に大真面目に容量のことを考えてそのような設置形態をとったのならいいんですが、私の妄想(?)が事実であったとすれば、全く利用者のことを考えていない、株主と株価のことしか考えていない施策で非常に残念に思うわけです。ドコモなどはそういった設置に敏感で、光張り出しのRFは位置や高さや周辺環境に合わせて1W~10Wの間で非常に細やかに電力を設計しているようですし、KDDIはセル縮小をあきらめてキャリア数増大とWiMAXオフロードに向かっています。ソフトバンクだけが、周波数設計なしで電力設計なしWCDMA向け設計なしの既設物件再利用で建設を突貫しているようで、どうも「WDCMA基地局数は(IR向けの)宣伝用、実際の容量は無線LANに吸わせりゃいいだろ」と言う安易な考えが見えるような気がするんですね。

と言うことで、一時はインフラ投資の力の入れ具合を測るのに良い指標だった「基地局数」も、今後はいくらでも粉飾の効く指標になってしまうかもしれません。まぁ、ソフトバンクの基地局建設が本当に容量に効果的なのであれば、http://mpw.jp/←この辺の結果で顕著になるはずなんですが、今のところ、uid平均値は既に基地局数で大きく上回ったはずのKDDIにも遠く及ばないようで。「一日何百局の建設」なんて大言を吐いても、結果が伴わない限り、投資家向けの宣伝にしか見えない、と言うことです。

と言うことで本日はソフトバンク基地局バラマキ(?)について考えてみました。

tweet TWEET

NTTの光ファイバ貸し出し議論、「一分岐貸しか一芯貸しか」と言うものがあり、今日はこれに関して技術的な面も含めて私の考えをまとめてみたいと思います。

そもそも分岐がどうとかいうのは技術的には何を意味するのか、と言う点から話をしておきたいと思います。ここが完全に前提が違っている(と言うかあえてミスリードして議論している)事業者がいるので。

光ファイバと言うのは、一本の線です。この線の上に流れるビットストリームは、原則、1つだけです。物理層で複数の波長を使うとか何とか、いろいろと拡張する技術はありますが、その物理層が上のリンク層に提供するビットストリームは一つだけです。

しかし実際には、光ファイバのビット速度はものすごく速いため、これを1対1で使うのはもったいない、と言われるような用途がたくさんあります。そこで、相手先が複数ある場合、その近くまで一本の光ファイバを引っ張り、そこで分岐して使っちゃえ、と言うことを思いつきます。これが、分岐だなんだといっている話です。

この分岐と言うのが実際に何をしているのか、と言うと、実は、「LANのハブと同じ」です。正確にはリピータハブと同じ。単に、受信したフレームを複数にコピーして別個の光ファイバに乗せなおしているだけです。受信した側が、あて先アドレスを見て、自分宛なら取り込み、自分宛じゃなければ破棄する、と言うことをしている、それが「光の分岐」の正体です。

ソフトバンクなどはあたかも「一本の光ファイバの中に複数の光伝送エンティティがある」かのように説明をするのですが、これは完全に間違い。光伝送エンティティは一つしかなく、その上で、伝送フレームのアドレスであて先を区別しているだけなのです。

そうなると、おかしいことに気がつきますね。そもそもなぜ「8分岐」が前提で議論しているのか。この仕組みなら、8分岐どころか、100分岐でも1000分岐でも可能です。だって、単にLANのハブに複数の端末を接続しているだけなんですから。

その答えは、NTTがフレッツサービスのために採用した「B-PON」と言う特定技術です。B-PONは、この同報&あて先指定のためのベースとして「ATM」を採用しました。このATMでは伝送フレームをセルと呼んでいますが、これを使うと、同時に送信できるあて先が制限されてしまいます。その制限数が32。で、NTTは局舎内で一旦4本の光ファイバに分岐させていて、個宅近くで再度8分岐する、と言うやり方で32同報を使っているのですが、この「個宅近くの8分岐」と言うのが槍玉に挙げられているわけです。注記:語弊がありました。その後NTT自身もGE-PONなどに移行しましたが、当初B-PON採用で32分岐に縛られた経緯から、事務手続き上、当初の32分岐の設計を引き継いだため現在も4×8構成となっているだけで、「現在ネットワークの分岐数の技術的裏づけ」がB-PONと言うわけではありません。

しかし、光ファイバの同一の信号列を複数で使うやり方は、ATMを使うB-PONだけではありません。最近主流は、イーサネットフレームを使うGE-PONです。これを使えば、実際、100分岐でも1000分岐でも可能です。まさにLANのハブと全く同じだからです。普通に考えれば、後発サービスとしてはこの技術を使うほうがコストも抑えられるし収容力も上がるし、しかもイーサネットフレームは可変長なのでベストエフォートで光ファイバの最大能力を引き出すことも出来、競争上こちらを使う事業者も増えています。NTTコミュニケーションズやKDDI、地域電力系などは個人向けも法人向けもほぼGE-PONにシフトしています。

さて、「分岐」と言うものがこういうものだと分かれば、ソフトバンクたちの言っている事がいかにおかしなことか、気がつきますね。ここで、「光」ではなくて通常のLANケーブルで話を置き換えてみましょう。先ほども書いたとおり、技術的には「光の分岐」は「LANのハブ」と同じだからです。

ビルの管理者であるNさんがLANケーブル貸し出しサービスを始めました。どこでも好きなところにLANケーブルを敷設するというサービスです。ただ、このLANケーブルはとてもグレードが高くとても壊れ易いため、月額100円の維持費がかかってしまいます。良心的なNさんは、原価そのままの100円でだれにでも貸し出しますよ、と通知しました。また、ケーブルを通す導管だけなら1円で貸しますということもやっています。

次に、Nさんは、維持費100円のケーブルを100円で貸していても儲けにならないので、せっかくなら何とか商売にしようと考えました。そこで、一本の線の先に8ポートのハブを取り付け、維持費100円の長いLANケーブル1本と維持費10円の短いLANケーブル人数分だけで最大8人の通信を支えるサービスを、月額50円で始めました。他のKさんなどは、LANケーブルの先に自分で100ポートの高級ハブを設置し月額40円のサービスを打ち出して大人気になっています。1円の導管だけ借りて自分でもっと壊れにくいLANケーブルを引っ張ってNさんに対抗するサービスをする人も出てきています。

さてここで言いがかりをつけてきたのがSさん。Nさんに対して「お前だけハブを使って原価が安いのはずるい」といい始めました。「そのハブを使って通信させろ。ハブにつながってるLANケーブルはお前が勝手に引っ張ったものだから賃料は払わない。その代わり、ポート利用料として原価の8分の1の12円だけ払ってやるよ」と言います。Nさんは自分が工夫して原価180円で最大400円儲かるサービスにしたのに、Sさんに12円で貸してはたまりません。ビルの管理者だからと言って、NさんはSさんに12円でハブのポートの利用権を貸さなければならないでしょうか。

もう答えは簡単ですね。Sさんは、自分も儲けるサービスをするなら、自分でハブを置いて使えばいいのです。もしそれで加入者が少なすぎてLANケーブルの原価が回収できないなら、さらに、他のサービスをしたいという人に、1ポート20円なりで貸して原価回収をすることも出来ます。Kさんみたいに高級ハブを使えばさらに原価を下げることも出来ます。維持費の安いLANケーブルを持ってくることさえ出来るはずです。こういう努力をすべて放棄して、Nさんの努力の結果だけを掠め取ろうとするのがSさんです。

光ファイバの物理層を維持管理する、と言う役務に対して支払うのが、各事業者がNTT東西に支払う貸し出し料金の正体です。これは法で縛られ、原価相当しか請求してはいけないことになっています。ところがソフトバンクはそれを勝手に拡大解釈し、リンク層のアドレスごとに原価(?)で貸し出せ、と要求しているわけです。そのアドレス宛のパケットが流れていない時間は自分の取り分じゃないから払わない、と。それを言い出したら、IPアドレスが割り当てられていない時間は原価外だとか利用者がPCの電源を切っているときの料金は減免しろとか利用者がWEBブラウザを立ち上げていない時間分減額しろとか利用者がダウンロードしていない時間分の料金は支払わない、なんていうことまで帰納的に言い出すことが出来てしまいます。

完全に事業者間交渉の範疇の話を、行政を巻き込んで大騒ぎし、世論操作する、と言うのはあの会社の常套手段なのでもはや珍しくも無いのですが、彼らが非常におかしな主張をしている、と言うことだけは、ぜひご承知置きいただければなぁ、と思います。といったところで本日はこれにて。

tweet TWEET
2011/2/21 10:00 · 事業考察, 技術動向 · (No comments)

今日は私がネットワークインフラに対して思うことを。ネットワークの多重化ってことで。

ネットワークって、いろんな通信事業者がいろんな技術を使って作っています。事業者の数だけネットワークがあり、1事業者で複数ネットワークを持っている場合も少なくありません。それに対して一時期は、ネットワークの統合が提言されることもよくありました。

と言うのは、たとえば、無線ネットワークAと固定ネットワークBがあった場合、無線ネットワークAを廃止して固定ネットワークBのアクセス部分に仮想的に無線ネットワークAを設置するような手法です。こうすることで、ネットワークの維持費を大幅に削ることが出来ます。

こういった例はまだ良いのですが、たとえばもうちょっと「明らかに無駄」とか言われるのが、一つの事業者が同じカテゴリのネットワークを複数持つ場合。たとえば、ある事業者がWCDMAとCDMA2000の両方のネットワークを持ったり、と言うことがこれに当たります。

ちょっと考えれば確かにこれは無駄と言うことがすぐに分かります。WCDMAは音声とデータを扱う無線ネットワーク。そしてCDMA2000も同じく。この両方を持つことは、実際に無駄といわれても仕方がありません。

私も、こういった例に対して、「いや、それは全然無駄じゃない!」なんてことを強く言うつもりはないんですが、とはいえ、それぞれが「違う技術」であること、そしてそれらがその技術であることに起因するさまざまな特性を持っていることをあえて無視して「完全に無駄」と決め付けることにはちょっと抵抗感があります。

たとえば、WCDMAとPHSのネットワークを持つ会社があるとします。WCDMAは音声とデータ、PHSも同じく音声とデータを扱えるネットワークです。そして、PHSは明らかにWCDMAよりもデータ通信速度が低いわけで、またさまざまな要因から広大なエリアや高速移動も苦手としている、と言うことが分かっています。この会社は、「ではPHSは完全に無駄ですね」と結論するかもしれません。

こういった状況に対して、私はちょっと待った、と言いたくなるんですね。無駄と決めるための要素を拾い集めているだけにしか見えないんです。逆にPHSの持つ他の特性を生かすことを全力で考えるべきと私は思うわけで、たとえば、PHSであれば実質占有ライセンス不要の広大な帯域が割り当てられているという制度面での有利があり、自律分散によるエリア設計フリーと密集配置の実現など技術的な有利もたくさん持っています。

そうすれば、たとえばデータ通信速度の必要ない需要、テレメトリングやプレゼンスアプリの定期通信用など、PHSでも十分と言える使い道を見つけることが出来ます。逆に、こういった用途にWCDMAを使うと、コンテナのオーバヘッドの分だけWCDMAの資源を実際のデータ量以上に食ってしまうことにもなりかねません。WCDMAではデータ密度の高い効率的で大容量の通信に使い、密度の低い非効率的な使用をPHSに追い出すことでWCDMAの容量を飛躍的に向上させることが出来るわけです。

この例ではWCDMAとPHSでしたが、これはその他の組み合わせでも多かれ少なかれ出てくるはずです。たとえばWCDMAとGSMであっても、定量の容量を消費してしまう音声を積極的にGSMに逃がすことでWCDMA上で統計効果の出易いデータ比率を上げ、統計的に容量を向上させることも出来ます。あるいは、下りデータの多いインターネットトラフィックを扱うときは下り偏重構成としたTD-LTEに積極的にハンドオフさせそれ以外のデータのためにFD-LTE帯域を温存する、と言うことも出来ます。複数の技術のネットワークを持つと言うのは、こういう強みがあるはずなんですね。

つまり、一つの事業者が複数のネットワークを持ち、秒単位ないし分単位のフレキシブルさでそれらを使い分けることが出来れば、ネットワーク容量もユーザエクスペリエンスも大幅に向上すると思うんですよ。実際、日本の事業者はすべてこれが出来る可能性を持っていると私は思うんです。

しかし、大事業者であるドコモとKDDIはこういった視点にあまり積極的ではありません。いや、今もっているものを活かすという意味ではまぁほどほどにやっているとは思うんですが、積極的に多重ネットワーク化を考えているかと言うと、むしろ逆だよなぁ、と。ドコモもKDDIも2020年代には全LTE化を済ませ旧来のネットワークをすべて巻き取りたい、と言う趣旨の発言をしています。個人的には、これは非常にもったいないと感じるわけで。

だって、「CDMA」と言う一技術カテゴリを丸ごと捨てると言ってるわけです。CDMAは確かに扱いにくい技術ですが、特に都市部で屋内も地下もみっちりカバーする方式としては、むしろかなりイケてる方式だと思うんですよね。OFDMAになると、多分都心に細かい屋内セルを打っていくとき必ず強烈な干渉問題にぶつかるし、それをキャンセルするためには自ら容量を削るような真似をしなきゃならないはず。その「削る量」は必ずある程度のマージンを持つ、つまり干渉キャンセルに(原理的に)必要な量を必ず上回るはず。それに対してCDMAはその方式の原理が自動的に干渉をキャンセルしてくれる(干渉と容量を自動的に変換してくれる)。CDMA系がエリアカバーを担当し、OFDMA系は最大速度と容量を受け持ってエリアの穴は許容する、そういう棲み分けができると思うんです。

そしてさっきも書いた、TDD系の活用に全く目を向けていないですよね、この2社。これも、この2社にある種の「失望」を禁じえない部分なんです。はっきり言って、死蔵されてるノンペアバンドは結構あるんですよ。たとえばアイピーモバイルが撤退した2G帯とか。その他、空く見込みがあるけどペアじゃないから積極的にモバイル向け法制整備に手をつけてないっぽいところもちらほら見えます。そういったところにTDD系技術、と言うかTD-LTEを入れて、インターネットトラフィックの補助として使う、と言う視点が全くないんですよね。

その点、ソフトバンクだけは、こういった多重技術の利点をよく知っているように思えます。自らが技術開発をしていたら多分自らの技術に自負を持ちすぎて、他の技術に目を向けられなくなる、ソフトバンクはそういう意味で自ら技術を持たないことが幸いしているように思います。ある意味死蔵一直線だったウィルコムのXGPバンドにいち早く目をつけTD-LTE化を推進しています。実はこのバンド帯、アメリカでは既にTD-LTE化の準備済みなんですよね。おそらくそういったところ向けベンダから基地局などの機器も安く手に入るでしょう。また、現存のWCDMA帯を可能な限り引き伸ばして活用すると言う方針も、ある意味でCDMAとOFDMAのいいとこ取りを考えているとすれば、かなりセンスが良いと感じています。

要するに「TD-LTEに目を向けろ」「CDMAを捨てるな」ってのが、ここ最近の私の技術哲学のトレンドなんですが、なんか、嫌いな(笑)ソフトバンクだけがそれを実践していると言うのが、ねぇ(苦笑)。古株事業者諸氏にもぜひとも広い視点を持っていただきたいものです。といったところで、多重ネットワーク化の利点、について、でした。

tweet TWEET
2011/2/21 10:00 · 事業考察, 技術動向 · (No comments)
2011/2/18 10:00 · 事業考察 · 5 comments

一足先に普及の域に達したiPhone、シェアこそiPhoneを抜いたもののまだまだアーリーアダプターに支えられていて普及まではもう少しのAndroid、ノキアの採用表明でようやく芽吹く可能性を見せてきたWindows Phone 7(以下WP7)、おおむねスマートフォンプラットフォームとしてはこの三つに絞られたと見て、これらの今後について軽く予想っぽいことをして見ます。

そもそもこれらのプラットフォームの特徴を、なんてことをやるとこのサイトをごらんの皆様に向けては釈迦に説法になるかもしれませんが、自分用のメモの意味もこめてまとめてみますと。

iPhone(iOS)は言わずと知れたApple独自プラットフォーム。Apple製品限定で、ハードウェアからアプリ配信まで完全垂直統合と言う、言ってみればエコシステム時代に極端に逆行したシステムです。とはいえそれが逆に汎用性を求めすぎて煩雑になった従来スマートフォンやフィーチャーフォンに対する独自性となり、大ヒットしたことはご存知のとおり。

アプリの開発言語もC言語をベースとした独自環境となっており、しかしながらC言語ベースであることから幅広い開発者の参入を可能としています。加えて、ハードウェアアーキテクチャのバリエーションを一切考慮する必要がないため、最初からネイティブコードへのコンパイルが可能となっており、動作速度と言う面では他を圧倒すると聞きます。とにかく開発者には非常に優しいプラットフォームで、これから新しくモバイル向け開発をやるというならその取っ掛かりとして最も適しているのではないかと感じます。

対するAndroidはGoogleによるきわめてオープンなプラットフォーム。ハードウェアに関しては規定範囲内であれば許容可能として自由な実装を許し、端末開発者はコードをカスタマイズしてハードウェア特化機能をサポートしてネイティブコードを作ってね、と言うスタンス。アプリ配信もある程度オープンになっているので、端末開発メーカや事業者が独自の配信サイトを公開することも可能です。

アプリは原則Javaに似たコードで書かれたオブジェクト。これを仮想マシンの上で逐次ネイティブコードに翻訳しながら実行するものです。汎用的なJavaのサブセットを使うので開発者が多く参入し易い、と目論んでいたのでしょうが、正直、C言語とJava、どっちの開発者が多いかと言うと今時点でもまだ微妙なくらいではないかと思います。加えて、VM上動作なので基本的に動作が遅いという難点があります(ただしこの点はAndroid側に事前にネイティブコード化してキャッシュしておく的なバージョンアップがあってそこそこ改善した模様)。

最後にWP7。先代のWindows Mobileからがらりとアーキテクチャを変え、アプリの互換性も失った事実上の新プラットフォーム。それに伴ってハードウェアアーキテクチャの制限も少し厳しくなっているようです。従来のスマートフォンの代名詞的存在だったWindowsCE PocketPCファミリーからブランドを引き継ぐもソフトウェア資産をほぼ全放棄状態であるため従来ユーザをそのまま取り込むのも難しいという逆境。しかしノキアがスマートフォン向けOSとしてWP7導入を決めて今後の伸びがやや期待できるかな、と思われます。

WP7のアプリは、ブラウザのプラグイン向けプラットフォームであるSilverlight。Silverlightの普及率はまだまだだと思うのですが(Silverlight必須のサイト見たことないし)、Silverlight自体は.NET frameworkのサブセットとなっているので、Windows向け開発者と言う非常に広い開発資源の裾野が見込めます。ただ正直、WMのときも.NETアプリは結構ありましたが、どれも超もっさりが基本だったので、動作速度は全く期待できそうにありません。

さて上記のとおり、いくつか的を絞って考えています。「ハードウェアの互換性」「アプリ配信」「アプリ開発の難易度」「アプリ実行速度」と言うあたりですが、個人的にはこの辺の項目がプラットフォームの普及を決める重要なポイントではないかと思っているからなんです。

なんと言っても、プラットフォームが魅力的かどうか、それは、どれだけ多くのアプリが供給されるかによると考えます。1つだけ超絶的に便利で楽しいアプリがあってもダメ。とにかくたくさんあること。Windows対MAC OSと言う構図で、実際MAC OSにはWindowsよりもはるかに便利なアプリなどがありましたが、MSDOS時代からの資源を受け継ぎつつそれを膨らませていったWindowsに数で圧倒されました。これを見て、やはり勝負は「数」ではないか、と。

数さえあれば、その中に突然変異的にウケるアプリが出てくるわけです。それこそ、完全に徹底的に設計したソフトよりも、素人が遊び半分で投げやりに作ったものが大ブレイクするような形で。そういうモノが生まれる土壌は何よりも「数」です。なので、アプリの配信、開発難易度はプラットフォームの普及を左右すると考えます。配信方法が複数用意され登録も簡単なら開発者の意欲も向上しますし、難易度が低ければ当然より多くの開発者が参加するようになります。

また、「アプリの実効速度」も重要だと考えていて、と言うのも、大抵の素人開発者は全然最適化されていないロジックを書いてもっさりな動きに悩まされることになるし、その素人開発者も自分で納得出来ないものは手数料を払ってまで公開しないわけで、となると、素人が組んでも十分な快適性で動く、と言うのは、作られたアプリが実際に公開されるかどうかと言うところの閾値を大きく下げる効果があると私は考えています。

そしてハードウェアの問題。もちろんより多くの第三者がハードウェアを供給できるほうが良いのでしょうが、とはいえ、ハードウェアの設計指針が緩すぎる場合、これは意外とハードウェア開発を難しくします。逆のような気もしますが、プラットフォーム屋によるハードウェア基準を「設計書」と読み替えればなんとなく想像がつきますよね。より詳細に、解釈の余地を残さない形で書かれた設計書のほうが開発は楽。それこそCPUにはどこ社のどれを使え、くらいにまで書いてあれば作るのは本当に楽だと思います。仕様をオープンにしつつ詳細な基準が決められている、と言うのが、ハードウェア普及の鍵かなぁ、と。

そういう意味で見てみると、なんと言ってもiPhoneは、リリースからの時間と言う圧倒的なアドバンテージでアプリの数は十分。多くのヒット作も出ています。また、C言語似の開発言語も、素人アプリ開発者には意外と良い条件。個人的にはJavaよりも敷居は低いんじゃなかろうか、なんて思います。そしてもちろんアプリの動作速度でもおそらく他を圧倒していると思います。ただ問題はハードが専売ってことですね。もちろんそれにこそ魅力を感じる層がiPhone人気を強く下支えしているのも事実ですので、ここまで定着したiPhoneがそのシェアを落とすとしてもかなり時間がかかるはずです。5年は大丈夫かな?と言う感じ。

Androidは、アプリ数こそ増えていますが、VM上で動かすという弱点のために、どうしてもiPhone向けアプリの同等品に見劣りするという評価をされがちです。これはAndroidが普及するための大きな壁になると思います。2.2からの事前コンパイルがどのくらい効くのかはまだあまり評価を聞きませんが、個人的には、機械翻訳コードが手作業で最適化したコードにかなうはずがないと思っています。一方ハードウェアは、既に出荷数で大きくiPhoneに水をあけるほどに成長しています。比較的緩やかながらも必須となるポイントをしっかりと押さえた優れたハードウェア指針が公開されているおかげだと思います。とはいえなんとなく、まだ生活に定着するフェーズには遠そうなイメージ。生活に定着するには何よりゲームとエロですから(ミもフタもないですが)、この辺の充実が今後のAndroidの定着感増大には必須ではないかと感じています。

さて問題のWP7。アプリ実効速度もおそらく激もっさり、まだ有力なハード提供メーカは片手間の数社とノキアだけ。ちょっと普及する萌芽を見出せません。しかし一点個人的に注目しているのが、Silverlightと言うところ。VCでもVBでもなんならJavascriptでもOKと言う裾野の広さは、ひょっとすると多くのWindows向け開発者を引き込めるのではないかと思います。なんつっても、Windows向け開発者の数はiPhoneどころじゃない。フリーソフト配布サイトとか見ても、その開発者の多さに驚きます。従来VBでWindows向けお遊びソフトを作って遊んでいたような人が、iPhoneを見て頑張ってiPhone開発言語を覚えて遊んでたけど、WP7なら昔取った杵柄とソースコード資源を再利用できる、となれば、気軽に舞い戻ることも十分に考えられます。WP7が普及するとすれば、おそらくこの流れが完全にハマったときでしょうね。そのためには、マイクロソフトが開発環境の提供などで数多くの優遇をしていく必要があるような気がします。要するにマイクロソフト次第かなぁ、と。

と言う感じで三つのプラットフォームを比較するでもなくなんとなくどういう感じなのかまとめてみました。いろいろと認識間違いとかあると思いますので、お気軽にご指摘いただければと思います。でわ~。

いくつかのご指摘はごもっともで、何より私自身三つのプラットフォームをひとつとして持っていません(サンプルをいじくるくらいなら全部試しましたが)。ということで、あくまで上のまとめは聞きかじり情報のまとめとしてみてください。ただ、「発売から半年のWP7と3年半もたったAndroidのメーカ数を比べるのは無意味だ」という指摘にだけは反論させてください。プラットフォーム競争で「時間」というのは最大の競争資源で、絶対に取り返しのつかない資源です。同じ性能や状況なら登場が遅いというだけで圧倒的なディスアドバンテージです。遅いのだからこそ最初から相手を圧倒するラインナップで望まなければ勝負にさえなりません。WP7が3年後に今のAndroidと同じくらいに参加ベンダを増やしても、その間Android勢が立ち止まって待っていてくれる保証はないのです。常に今ある状況で勝つ要素を見出さなければならない。その点、WP7はsilverlightという開発しやすい環境とノキアでの事実上の排他的採用、という活かさなければならない差別化ポイントがある。これを活かすためには、すでに先をはしるiPhoneやAndroidのようなメーカや口コミ頼みではなくMS自身が強気の施策を打たなければならないと私は感じています。

さらに追記:いくつかさらに指摘されている方の中には完全に誤読している人が多いように思われます。すなわち私の主張を「WP7=もっさり」と誤読しているということ。私が言っているのはアプリの話ですよ?WP7の基本UIとか初期搭載アプリがぬるぬるなのは知っていますしそれは当然ですが、では、silverlight上で書いたコードが、iPhoneやAndroidで全く同じロジックで書いたコードと同じ実行速度を実現できるか?と言う点です。この点がはっきりしているのならそれを指摘いただければいいのですが、これをはっきりさせず「こいつはWP7触ったこともないだろw」と言う反応しかないのでは、私が認識間違いなのかどうかさえ分かりません。少なくとも私の中のイメージでは.NETはもっさりだし、以前VB5.0からVB.NETにフリーソフトを移植したときあまりにもっさりだったので公開を諦めたこともあったからです。この心配を払拭するデータ(つまり素の.NETとWP7のプラットフォームであるサブセットのベンチマークデータ)があれば上の記述はすべて改めることが出来るのですが、それがない以上、イメージで語るしかないわけです。

一部の方々へ>いやもう寝言だなんだはいいからさ、具体的にObject-CやJava with dalvikとSilverlightで同じロジックを書いたらSilverlightのほうが速いと断言してよ。ソースがどうとか言わないから。断言さえしてくれればいいんですよ。私のほうが間違ってる可能性は高いんだからさ。なんでその一言だけ言えないの?こっちも結論が出なくてもやもやしっぱなしなんですよ。

さて上記のように女々しくグダグダと書いていたら、きちんと解説をいただけました。ありがとうございます。
Windows Phone 7 に対する勘違いを正そう
私が懸念していたのは、Object-Cで開発していた素人プログラマが軽い気持ちでSilverlightに同じロジックを持ち込んだときにあまりにもっさりで開発する意欲をなくす→アプリが充実しない、と言う点でした。その点に関して、「絶対に速いとは言い切れないが差は縮まりつつある」との見解をいただきました。なので、懸念払拭とは行かないまでも、まぁそこそこ頑張ってるんだな、と意識を改めさせていただきます。
ちょっとだけ補足。「もっさり」について、一応私は最初からロジックの動作速度を指していました。「大抵の素人開発者は全然最適化されていないロジックを書いてもっさりな動きに悩まされることになるし」と書いたとおり。要するに素人開発者が書いたクソコードでもそこそこ速く動けば、それだけ公開される閾値が下がってアプリが充実するという論理です。.NETのプロフェッショナルな方々には我慢ならない言いっぷりだったとは思いますが、ウンコみたいなアプリを大量生産するのはクソコードを書く素人開発者なんです。私なんてその典型。だから、私の書いたクソコードは.NETではまともに動かなかった。.NETに最適化した書き方を出来ればきっとまともに動くものになるとは思うんですが、あくまで「素人プログラマ」の視点を重視しているということを、ご承知くださればと思います。気分を害した.NET関係者の方々には、お詫び申し上げます。

tweet TWEET
2011/2/18 10:00 · 事業考察 · 5 comments
2011/1/18 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 2 comments

昨年末にスタートしたドコモLTE、これが今年どのように活用されるのか、について、予想と言うよりは個人的な戯言を並べてみます。

ドコモのLTE、この展開計画が、よく言えば実に慎重、悪く言えば遅すぎ、ってなことになっているのは周知のとおり。具体的な数値は調べるのがめんどくさいので割愛しますが、とにかくかなりの長期間、基本的には「都市部の高トラフィックエリアにスポット的にセルを置くだけ」と言うような時期が続くことになります。

このようなことになっている一つの理由は、ドコモが元々WCDMAを採用しているため。LTEは、高次レイヤのプロトコル/ステートマシンはWCDMAとの互換性が高いものになっており、そのために、チップはデュアルモードが当然、連係動作もかなりスムーズ、と言うようになっています。つまり、LTEとWCDMAの間でIPセッションのハンドオーバも出来るし、待ちうけも連携してどちらで待ち受けてもちゃんと着信できるし、と言うように、です。

このため、ドコモは全エリアをべったりとLTEでカバーする動機がほとんどありません。LTEだなんだといっても、結局ピークレートこそ37Mだ75Mだと言いつつ、実質は10Mにも届かないのが実情。だったら、カタログレートとして75Mと書けるのなら、後は実使用感さえ落ちなければ、方式がLTEでもHSDPAでもどっちでも良いわけです。

むしろ、高トラフィックポイントのトラフィックを高効率で吸い込んでくれることがLTEに最も期待することであるはずで、であれば、余計なド田舎にLTEを敷設するほうがナンセンスと言われれば、確かにそのとおりだったりします。

問題は、LTEの大容量を期待するような端末やアプリ。動画など大容量コンテンツや、少量データの長時間セッションなど、従来の無線技術は苦手とするようなアプリケーションです。LTEのカバーが及ばない地域ではHSDPAリソースを非効率に使うか、そういう地域でアプリを使い始めたら合わせてLTEを整備するか、そういう端末をそもそも受け入れないポリシーとするか、そういった対策が必要になってきます。

どっちにしろ、ドコモのXiのプランは完全定額のない従量プラン、大容量・長時間利用は、まずはご遠慮ください、と言うポジションが見えています。当面は法人向けの特定ソリューションを主に売っていくのではないかなぁ、と思っています。

対して、KDDIのLTE計画はかなりアグレッシブ、かなり早期に面カバーで現行エリアをカバーしつくすつもりのようです。その理由の一つが、もちろん、CDMA2000とLTEの相性の悪さ。プロトコルが違うのはもちろん、基礎技術的にもブラインドサーチに対応していないCDMA2000にLTE側からハンドオーバするのは相当難しいと思います。と言う感じで、CDMA2000/LTEの連携はきわめてよろしくなく、と言うことは、連携するよりはLTEで全面カバーしてしまえ、と言うのがKDDIの戦略と言えそうです。

しかしそうなると、今度はLTE特化アプリケーションやそれを積んだ端末を展開し易くなるという恩恵が出てきます。全エリアLTE対応が前提なら、すべての端末で対応しても良いくらいで、LTEのないCDMA2000オンリーなエリアはレアケースとして処理できるわけです。もちろん、LTEアクセスを前提としたタイプの海外スマートフォンも早い時期から導入できます。

実は、ドコモもこの利点に気づき、そういったLTE対応スマートフォンを受け入れ易くするためにはLTEエリアの前倒しが必要だと言い始めている模様。またさらに、ドコモは建設前倒しと合わせてLTE上でのVoIP計画を前倒しし、音声サービスの全VoIP化もかなり前倒しするのではないかと言われています。

ともかく、ドコモの投資がまだ加速しないであろう今年中はあまり動きはなく、KDDIに先んじて加速するであろう年末から来年くらいに、いろいろと面白いサービスや端末が出てくるのでは、というのが私の感覚。と行ったところで本日はこれにて。

tweet TWEET
2011/1/18 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 2 comments

CDMA版iPhone 4、日本でも発売となるか?–キーになるのはキャリアとメーカーの関係
iPhoneがNTTドコモとKDDIから発売される可能性を考察–米国は複数事業者からの販売が現実に
VerizonがiPhoneで大反撃を開始、その後、国内メディアの興味は、auでの発売の実現性にシフトしつつあるように思えますが、これに関して。

まず技術的な問題はバンドですね。Verizonは850MHz帯をメインに使っていますが、これはauがメインにしている国内800MHz帯とは基本的には互換性がありません。下の記事中では新800MHz帯が重なっている、となっていますが、単に重なっているだけではダメで、日本国内独特のさまざまな電波法に基づく規定を満たしていないといけません。逆に、米国独自の規定があるために、安易に周波数を広げる(デュプレクサ特性を変える)と、米国の各種保護規定を満たせなくなる可能性もあります(と言うか可能性はかなり高いです)。

また、下の記事中で「1900と2GHzは近いので親和性が高い」と考察されていますが、これは完全なマチガイ。完全に重なってでもいない限り、周波数帯が近いことは逆に害悪です。上下間離隔がぜんぜん違いますし、そもそも、記事中の表を見てもわかるとおり、上りと下りがかぶっちゃってます。同じ無線デバイスでは原理的に対応できません。その意味では、一応auの新800が包含している850帯のほうがまだ親和性が高く、近いけどぜんぜん重なっていない1900と2GHz帯の共存はかなり難しくなります。少なくとも、ハードウェアの分離が必要です。

ただ、日本を含む何十カ国でローミングが可能、と言うようなスペックになっているので、どこかグローバルバンドに対応していると考えるのが自然で、となると、アメリカの田舎バンドである850や日本の田舎バンドである800ではなく、グローバルバンドの2GHzに対応している可能性が高いといえます。これは1900と近いからではなく、ローミングのためにあえて1系統無線機を追加していると考えるのが自然です。一方完全に重なっているとはいえローカル規定がぜんぜん違う850同士は、Appleがあえて日本の田舎バンドに対応するという決断をしない限りあくまでVerizonローカル仕様のままでしょう。

さてその前提で考えると、果たして、2GHzでしか動かないiPhoneをKDDIと言う会社が受け入れるか、と言う点です。KDDIはドコモにも劣らない旧体質の会社で、ちょっとでも品質の看板に傷がつく可能性があれば排除に走る体質(IS01のバージョンアップを早々に断念したことからもその体質が伺われます、ソフトバンクなら多少もっさり化しても機能を削るなりして断行していたんじゃないかなぁ)。ドコモがiPhoneを門前払い(?)にしたのもiPhoneの無線品質が酷すぎたからだとまことしやかに言われていますが、「無線機としてびみょー」「2GHzエリアでしか使えない」と言う端末を、同じくらい排斥主義のKDDIが受け入れられるか、ってことですね。「プライドを捨て商売のために受け入れる」「インフラ屋としてのプライドを守るために見送る」、どっちの決断をするか、これはKDDIと言う会社が今後どういう念持をもって市場に臨むか、どれだけ本気で「巻き返し」に取り組めるか、と言うことを測り、KDDIの浮沈を占う良い機会となるかもしれません。

万一KDDIがこの「決断」を下せるとしたら、KDDIと言う会社にとって大転換であるばかりでなく、日本のモバイル市場が大転換を迎えることになるかもしれません。

tweet TWEET

SIMロック解除が云々の話。今年から、原則としてSIMロックを解除しましょう、と言うガイドラインが総務省界隈で作られたので、今年はSIMロック解除元年になるんじゃないか、と言う話もあるわけですが。

しかし、SIMロック解除の実現そのものがかなり怪しい骨抜きガイドラインであるということ、そして、SIMロックを解除したとしても現実には何も変わらないのではないかということ、この辺、いろいろと問題があるような気がするんですね。

と言うことで、ガイドラインの有効性と、それから技術的なSIMロックの有効性、分けて考えてみたいと思います。

まず、解除の実現そのものが怪しいという話。そもそも、「対象端末」が、「23年度以降発売で対応可能なもの」です。そして、この「対応可能」には一切定義がありません。つまり、どのような要件で「対応可能」とするのかが明確でなく、逆に言えばどんな端末でも「対応不可能」とすることが出来ます。

「対応可能なものは対応する」と言うガイドライン、要するに何も決めていないのと同じです。「山を動かせる人は山を動かさなければならない」と決めてもだれも山を動かさないのと同じです。あるいは「100円を支払える人は100円を支払わなければならない」と決めたら、ある人は「財布の紐が堅すぎて100円を取り出せません、支払えません」と言い、ある人は「1000円札しか持っていないため『100円を』支払うことは出来ません」と言い、支払いを逃れるでしょう。

たとえば、「現金あるいは現金化可能な資産を100円以上所有する人は100円を支払わなければならない」と言えば、否応無く100円以上持っている人は払わなければならなくなりますが、結局「100円を払える」の定義が不明確なので、どんな屁理屈の理由でも支払えない理由になってしまう、これが、SIMロックガイドラインにも同じことが言えるわけです。

もう、こういう屁理屈を言わせたらもちろんあの会社が筆頭なのですが、間違いなくこういう屁理屈をこねて解除を拒むと思います。ドコモはそういった屁理屈封じなのか、機先を制して自ら解除を明言しましたが、もし普通の会社であればさすがに恥ずかしくてその状況で屁理屈をこねることは出来ないでしょう。

しかし、あの会社はそういった状況でも世間の目や常識論などどこ吹く風で我を通し成長した会社です。恥ずかしげも無く「出来ません」と言うでしょう。おそらく「ローン残債のある間は所有権が云々」などと言って2年は解除不可能とかその辺で落ち着かせようと考えているはずです。何より、タダ同然で売っているiPhoneはあの会社の純増とARPUのすべてを支えているといっても過言ではありませんから、そのSIMロック解除は絶対に受け入れがたいはずで、必ず「不可能な理由」をこじつけると思います。

と言うことで、実質、このガイドラインがあったとしても、そもそも強制力もないし、内容にも巨大な抜け穴がぽっかり開いていて、SIMロック解除が足並みをそろえて実現する可能性は低いと考えます。

次に、SIMロックの解除をしたとしても、どれほどモバイル市場の活性化につながるか、と言う話です。一つは、無線方式と無線周波数の違い。これは大雑把に言って「無線ハードウェアの問題」とまとめてしまいます。

WCDMA系とCDMA2000系ではそもそも方式が違うため、ロックを解除しても何の意味もありません。この段階で、auの端末のSIMロック解除には全く意味がありません。ただし、GSMローミング端末としての相互利用は可能になります。auのGSMローミング端末のロックを解除して、そこにドコモSIMを挿せば、グローバル周波数であればおそらく問題なく海外で使えるはずです(そうでなければならない)。海外用端末としてなら、融通の可能性がありますが、しかし、そこまでです。

もちろん、LTEと言う目も見えていますが、これも現実的ではありません。LTE導入は、ドコモが2GHz、KDDIが800M+1.5GHzと見事に分かれています。海外でも2GHzでLTEを導入する動きはまだほとんどありませんから、KDDI端末が2GHz帯LTEにわざわざ対応する可能性はかなり低いですし(デュアルモード対応チップであればCDMA2000のついでに対応する可能性はありますが)、ましてや田舎バンドの800M+1.5GHzにドコモLTE端末が対応するはずもありません。

また、現状同じ技術のドコモとソフトバンクにしても、ドコモは800MHz帯をいまやメインとしつつあります。2GHz帯はLTEへ移行し、徐々にフェードアウトを狙っており、となると、共通周波数としては2GHzでしか動かないソフトバンクの端末を持ってきても、主なエリアで使えないということになります。

また、ソフトウェアの問題もあります。まず、基本的な問題として、ケータイでのネット接続サービスに互換性がありません。要するに、iモードとY!ケータイは相互に利用できないということです。それぞれのケータイネットサービスは完全にクローズ網で、他社から接続することは出来ません。メーラも専用品だしブラウザもそのクローズネットの言葉を話すように作られているし、その他、SMSをキッカーとして使うようなリアルタイムサービスも当然動かないし、サーバアドレスが端末埋め込みとなっているさまざまな情報サービスも使えなくなるし、となると、現実には「音声通話と自動着信なしのEメールとフルブラウザでのネット閲覧」だけがSIMロック解除端末で出来ることになってしまいます。

しかも、ネットワークの接続先は、自分で用意しなければなりません。どこかのプロバイダと契約し、そのアクセスポイントを端末に自分でセットしなければならないということです。もちろん、ケータイネット専用接続先やフルブラウザ用接続先やスマートフォン用接続先とも異なるアクセスポイントですので、PC接続向けのパケット料金が適用されます。フィーチャーフォンでもスマートフォンでも、です。

しかしそれでも使いたい、と思える端末もあるのも事実です。要するにiPhoneなど、グローバルモデルの輸入品。グローバルモデルはそもそもネットワークにほとんど依存しない機能しか持っておらず、ネットワークに依存しなくてもほぼすべてのサービスが利用可能となるように作られていますから、こういったモデルはSIMロック解除することに意義があります。

要するに、上の「定義があいまい」の議論と併せて言えば、ぶっちゃけ「海外でも複数事業者向けに平行販売されているモデルはSIMロック解除しなければならない」と言う決まりにしてしまうのが一番手っ取り早いんじゃないか、なんて思うんですね。いやこの文言でもいくらでも抜け道はありますが、その辺の定義もしっかりとするという前提で。

なんていうアイデアはどうでもいいのですが、今年の「SIMロック解除」の時には、実質的にはその主眼とされる「解除されて意味のある端末」は解除されない、と言うことになるのではないかと考えられます。しかしドコモだけは原則解除と言っているので、それを受ける側のソフトバンクはSIMのみ契約と専用のアクセスポイントと料金プランを用意しておいしいところだけは頂く、なんてことをやりそうです。これで市場がどう動くのか、唯一技術もバンドも共通していながらも態度を保留中のソフトバンク次第といえそうですね。といったところで本日はこれにて。

tweet TWEET