地下鉄のトンネル内で駅に着く前に電車が止まると、車両によっては圏外になったりすることを見たことがあります、地下鉄の駅間カバーとかってどんな感じで作っているんでしょうか、と言う質問をいただきました。
まず、前にも似たようなことを書いた気がしますが、地下鉄の携帯カバーについての基本。地下鉄など需要はすごくあるけどスペースが全然ない、と言うような場所をカバーするために、JMCIAと言う組織があります。これは、トンネルや地下街などの携帯電話カバーを、事業者みんなで協力して整備しましょう、っていう組織。
と言うのも、たとえば地下鉄の場合、鉄道会社としては他人の装置をおかせたくなんてない、っていう事情があり、置く装置をできるだけ少なくしたいという事情があります。そこで、みんなで共用できるものは共用しましょう、ということで、JMCIAが出てきます。
具体的にどんな感じで置いているのか、と言うところについてですが、代表的なものを説明してみます。これ以外にもあるかもですが、私はあまり聞いたことがないです。
1つ目。トンネルの入り口に、奥に吹き込むように基地局(またはレピータ)アンテナを設置。あんまり主流ではなさそうですが、あるというウワサを聞いたことがあります。これは簡単なことで、入り口から奥に向かって電波を吹き込むことでトンネルの奥までカバーするようなもの。なので、一番奥、あるいは(反対側も同じ処置をしていない場合は)反対側の出口近くは電波が届かないことが往々にして起こります。
2つ目。トンネルの中の随所に、アンテナを設置。実際には、基地局から出たアンテナ線を共用の装置でたくさんに分割し、分割した信号線の先にさらに増幅装置+アンテナを設置するようなやり方。これを、トンネル内に一定間隔で置いておきます。すると、その個別の装置からのカバーエリアは狭くてもそれが細かく置いてあるので結果としてトンネル内をしっかりをカバーできます。難点は、一つの基地局の信号をたくさんに無理やり分割するのでノイズがすごく上がり、電波は良くても品質が下がりやすくなる、ということ。
3つ目。今はもうほとんどこの方式じゃないかと思うんですが、漏えい同軸ケーブル方式。トンネル内に長ーい同軸ケーブルを這わせるんですが、そのケーブルに、じんわりと電力が空中に漏れるように隙間を作ってあります。その隙間から漏れた電力が、そのものズバリ、携帯電話の電波と言うわけです。分割・増幅なんてことをしないのでノイズも上がらないし、その割にはしっかり遠くまでカバーできます。普通にアンテナを置くと円形に出ていく電波を一旦無理やり同軸ケーブルに閉じ込めて、ところどころに抜け穴を作ってあげるというイメージですね。すごく細長いエリアを作っているようなものです。実はやっていることの本質は1つ目の「片側から吹き込んであげる」と全く同じことだったりします。なので短所も質的には同じ。ただ、手前を漏れにくく奥を漏れやすく、みたいな使い方で割と奥まで一定して届かせるといったやり方が常套手段となっているので、奥の方が届きにくいという短所はカバーされています。
と言うことで、地下鉄も漏えい同軸で作ってると思うんですが、それでも駅に近づくと圏外になる、と言う辺りがなぜと言うのは不思議です。が、そもそも漏えい同軸と言うのは、ケーブルから離れるとあっという間に電波が弱ります。あんまり飛ばないんですね。特に軸方向。
と言うことで、漏えい同軸ケーブルの「始まり点」と「終わり点」がどこにあるか、と言う辺りで、ケーブルの始まり点がホームの電波が届くよりも奥にせざるを得なかったような駅間では、ホーム前で停車したりすると、電波が届かないエリアができている可能性はあります。こればっかりは、トンネルの構造などによるのでどうしようもない場所ってのは出てきます。トンネル内の電源用の溝とかを活用してるんだと思いますが、この出入り口をホームぎりぎりに置かなきゃならない理由なんてそもそも無いですからね。できる範囲でやるとなると、どこかに穴はできるでしょうね。
JMCIAの事業計画を見ると、駅構内のセル分割なんてのもあるようで、もしホーム内のセルを分割すれば、ホームからトンネルにしみこむ範囲ももう少し広がることになると思うので、こういった穴も徐々に埋まっていく可能性はあると思います。まぁなんにしろ、JMCIA頑張れー、と言うことで。何もしていないくせに後から来てtwitterで自慢して自分の手柄にするようなどっかのインチキ社長なんぞに負けるなー。