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携帯電話事業者も今回の震災では大変な被害を受けていて、さらに生活インフラの一つとしての「通信」を被災の中で提供するという奮迅の活躍を見せてくれたわけですが、被災がどういう状況かとか対策や復興がどのように行われるのかを簡単に考察してみたいと思います。

今回の大震災で携帯電話ネットワークが被った被害のうち、私が知る限り最大のものは「停電」です。小耳に挟んだお話によると、8割から9割は停電による停波が原因となった障害。であるので、電源回復に合わせて勝手に復旧しているものも多いようです。

停電の場合、通常は無停電電源装置によるバックアップが効くのですが、今回は停電時間があまりに長く、ほとんど役に立ちませんでした。また、そのような長時間の停電を想定していなかった一部事業者では実際に停電で倒れた基地局数の把握もうまくいっていなかったのではないかと考えられます(停波エリアに対して発表停波局数が少なすぎる事業者とか)。実際その某事業者は某所(一応3/19時点魚拓)では復旧が最も遅れていて、これは「倒れていることが把握できていない」ためにリスタートをかけることも出来ない状態が続いているからなのかもしれません。

実際、停電した局は電源が回復しただけでは即座に回復は出来ず、復旧したというセットアップ信号に対して何らかのネットワーク側からの応答コマンドとそれによるネットワークへの参加が必須です。であるため、「勝手に復旧する」とはいえ、この復旧には大変な労力がかかり、電源が回復している地域でも完全な復旧には時間がかかる場合があるといえます。

しかし電源断による障害は軽いほうであるといえます。それ以外の障害については、「ゆれ・津波による設備故障(倒壊・内部ケーブル断など)」「ゆれ・津波によるバックホール断」が考えられます。いずれもかなりインパクトの大きな障害です。

前者である場合、実際に現地に立ち入っての作業が必要となります。また当然ながら、修理機材の持ち込みも必須です。このため、故障箇所によってはかなり大きな工事用車両が現場に入れなければならないことがほとんどでしょう。ゆれや津波で大規模な破壊が起きた場所では当然交通も被害を受けており、なおかつ、被災者への物資輸送が最優先されなければならないため、このような状況で被災した基地局の復興はかなり遅れることが見込まれます。陸前高田市や釜石市など被害の大きかった地域では、かなりの長期間にわたって、近隣基地局によるカバーと移動基地局車による対応が続く可能性が高いといえます。

さらに厄介なのが後者。バックホールが何らかの形で断たれてしまった場合、特にそれが有線ケーブルによるバックホールであれば、その断地点を特定し、地面をほじくり返すような工事が必要です。こういったバックホールは路線沿いに埋設されているのが一般的であるため、道路を長期間占有しての工事になります。これは先ほどと同じ理由でさほど優先度を上げられる工事ではないため、復旧はさらに遅くなるでしょう。

もちろん、無線バックホールであれば簡単そうに思えますが、無線バックホールが損なわれているという場合、それを中継するアンテナが障害を受けている可能性が高いといえます。そして、そのような中継アンテナは得てして被害を受けたビルの屋上に取り付けてあったりするものです。ビルの被害の回復が最優先ですし、被害状況によってはビル自体が取り壊しとなるでしょうから、有線バックホールと同じく復旧は困難を極めるでしょう。また壊れているのがピンポイントではなく広範囲にわたっている場合もありえますし、再設置となれば無線回路の再設計ですから、これもまた復旧を遅らせる面倒な手順です。

また、ウワサレベルですが、コア中継網がいくつか断たれているという話も聞こえてきます。たとえばKDDIやNCOMの海底ケーブルの陸揚げ局が被災して米国向け回線が狭くなっているというニュースがありましたが、おそらく同じ陸揚げ局に国内コア網の海底ケーブルも接続されていたはずです。もちろん国内網は二重三重の冗長がかけられているので通信途絶にまでは至っていないようですが、冗長回復を急がなければ単純な設備障害で通信に影響が出るという綱渡り状態を脱せないわけで、これも各社急務と言えます。

さて、こういった根本的な復旧に先立ち、各社ともに暫定対応を進めているようです。まず単純なところでは、移動基地局車。衛星回線をバックホールに使った基地局を背中に乗せた車を派遣し、その周辺をエリア化するという対処です。これが最も早かったのは衛星回線の手配がしやすいKDDI、それからドコモ。一週間ほど遅れてソフトバンクも出したようですが、衛星回線なのか中継リピータなのかは不明です。

この対処で当面エリアは回復しますが、「バックホール容量・処理能力が低いため多回線収容が出来ない」「送信電力が限られるためエリアが狭い」と言う弱点があります。やはり車載程度の基地局ではどうしても送信電力を大きく出来ない。正確には、そりゃ送信機で10Wとか20Wくらい吹くのは簡単ですが、それだけを吹いても性能を維持できるアナログ装置群は消費電力と発熱が半端じゃないわけで、車載装置には厳しい。と言うわけで、どうしても車載基地局ではカバーできる範囲に限界があります。

もう一つ、既に各社が始めているのが、周辺基地局によるカバー。周辺の基地局のアンテナチルト(傾き)を調整し、停波している基地局のカバーエリアにまで電波が届くようにしています。これに関しては、大抵の場合はやはり手作業での調整が必要となるのですが、基地局装置の修理とは違い、工員が鉄塔に上ってネジをぐりぐりやれば済むので、大きな作業は必要ないはず。なので、この対策で復旧しているエリアも多いかと思います。遠隔でチルトをにょろにょろ変えられるアンテナもあるとは聞きますが、信頼性を考えると携帯インフラの一番の肝であるアンテナの根元に駆動部を持たせるなんてことを(日本の事業者が)するとは思えないなぁ、と言うのが私の感触。なので大抵は手作業かなぁと思っています。

と言う感じで、当面は移動局と周辺局からのカバーでしのぎ、壊れた局を徐々に再建設していくという形になるでしょうね。ビル自体が壊れちゃったなんていう話もあるはずなので、震災前と同じ状況にまでは戻れないでしょうが、半年くらいあれば何とか近いレベルにまでは復旧するのではないかなぁ、と言う感じです。

と言うことで、震災による携帯電話インフラへのインパクトと復旧についての考察でした。でわ~。

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2011/3/14 12:38 · ニュース解説 · 1 comment

「ゆれくるコール」で緊急地震速報と同じことがスマートフォン(iPhone)でも可能と言うお話が盛り上がっているようですが、原則「全然違う仕組み」なので、一応注意喚起。ゆれくるコールは、RCソリューションが提供する緊急地震速報サービスのための通知情報を、プッシュ通知機能を使ってIP上で再送信するサービスですので、基本的に「すべてのiPhoneが別々に呼び出されている」状態です。ですので、最初に呼び出されるものと最後のものでは大きな時間差がありますし、登録数が増えればRCソリューション側のサーバの負荷も高くなります。もちろん、ソフトバンク網は1台ごとに呼び出し信号を送りそれぞれIPセッションまで立ち上げる必要があるため、一斉に呼び出されれば一斉にアクティブになり、無線区間が一気に逼迫します。どちらにしろRCソリューション側のサーバがまずボトルネックになるでしょうが、そうでなくても、毎回IP接続(再接続)が行われているため、無線的には全台個別チャネルの割り当てが行われ、大変な負荷が発生します。一方、緊急地震速報(本物)は、無線上は基地局から端末に向けて特殊なページング信号を送るだけと言うのが基本的な仕組みです。個別チャネルは一切起動されないため、遅れも輻輳も発生しません。この辺の違いを理解したうえで使うのであれば問題ないのですが、これがあるから大丈夫、と考えたり、あるいはフィーチャーフォンを持っているのにも関わらず不用意にゆれくるコールを導入してしまうと、ゆれくるコールの負荷がどんどん高まりソフトバンク網への負荷も大変なものになります。いざと言うときに役に立たないということを避けるためにも、ゆれくるコールの利用は最低限にしておきましょう、と言うお知らせ。

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2011/3/14 12:38 · ニュース解説 · 1 comment

DTI ハイブリッドモバイルプランが安すぎる、と巷で話題騒然(笑)となっていることから、この安さのからくりとかを考えてみる今日の解説。

いやもう、答えは簡単で。元々、MVNOってそういうものじゃないですか(笑)。大元のMNOより高く売っても顧客を獲得できるわけが無いので、基本的には安く売る。ではそれをどうやって実現するのか?と言う点について。

この辺はMVNOの仕組みのところでも軽く書きましたが、MNOとMVNOの接続の仕組みとタリフの仕組みがポイントです。多くのMVNO向けタリフでは、「接続点におけるトータルビットレート」を課金対象としています。MNO(今回はドコモ)のネットワークと言うのは、基地局からそれを集約する制御局からユーザデータを転送するコアまで全部含めてMNOネットワーク。そのMNOネットワークからMVNOネットワークへは、契約上は一つの接続点しか定義されません。つまり日本中のすべてのデータがその接続点目指して集まり、その一点をすべてが通る、と言うものです。

その接続点におけるビットレートが課金の対象となり、100Mbpsならいくら、と言うような契約をします。もちろん契約形態によっては、接続点を地域ごとに2点設けてその合計とか平均とかそういうことをやることも出来ますが、基本的には「どの端末がどの程度の速度でどのくらいの量通信したからいくら」みたいな課金はしないものです(もちろんそういうMVNO=再販型MVNOもありますが)。

と言うものなので、実は、エンドユーザへの提供価格はかなり自由に設計できます。ドコモMVNO接続料金は10Mbpsで1300~1500万円。たった10Mbps、とみることも出来ますが、少なくともHSDPA端末一台がフルスピードで通信してもぶつからない天井です。そしてHSDPAでフルスピードが必要なデータダウンロードがどのくらいの頻度かと考えると、そんなに高くはありません。この「10Mbps」は、端末がつながっている時間ではなく、すべての時間ダラダラと10Mbpsを借りられるというものなので、多くの端末は接続さえしていないし、接続していてもダウンロードはしていないでしょう。所詮インターネットはベストエフォートの世界。複数人が同時にダウンロードして合計で10Mbpsの天井にぶつかり、一人1Mbpsに落ちてもだれも気にしません。

ぶっちゃけ、これを確率的に完全にばらつく、と割り切ってしまえば、収容可能数は飛躍的に伸びます。簡単に言えば、10Mbpsと言うのは、1ヶ月通しでみれば3240GBのデータ量です。モバイルデータ通信で一人当たり2GBくらい使うと仮定すれば、10Mbpsだけで1620人を収容できる、と計算できます。それでも一人当たり1万円くらいの原価ですが、別に、この「1620人」と言うのは、「制限」ではないんですよね。いくらでも増やせます。ただ、時々接続点のビットレート天井に引っかかって使用感が悪くなるなぁ、と思われるだけ。

つまり、MVNOにとっては、品質と価格はいくらでもトレードオフが効く、と言うことです。ドコモ自身にこれが出来ずMVNOに出来るのは、この辺がポイントです。ドコモは、自社ネットワークの隅々まで常に最良の品質に保つ必要がありますが、MVNOにとってはそれは「接続点」と言う壁の向こう。MVNOにとっては、単に「接続点のビットレート」を何人でシェアさせるか、と言う単純なトレードオフが出来るわけです。

さらに今回は、MVNEが間に入っています。MVNEは、MVNOを取りまとめるような役目。流行り言葉を使ってしまえば、クラウド的に「MVNOサービスが出来る仕組み」をまとめて提供する人です。MVNOをやりたいと思った事業者は、MVNEに「MVNOサービスに必要なコンポーネントを貸して~」と頼むだけでサクサクっとMVNOサービスが出来てしまいます。クラウドに関して以前コメントしましたが、クラウドは複数の利用者間でリスクとコストをシェアできることがポイント。これを利用してMVNOをする限りは、さまざまなリスクに備えたコストを自前で積み上げる必要が無いため(たとえば万一に備えて地域別冗長構成にするなんていうコストが直接は発生しない)、ドコモと直接取引するよりも結果的に安いトータルコストでサービスを実現し易いといえます。もちろん、MVNE自身も、多くのMVNOを収容する集線効果を見込んで安めのタリフを提案することもあるでしょう。

と言うのが安さのからくりなわけですが、実際こんな値段で提供されてドコモは痛くないのか、となると、これもまた痛くもかゆくも無い。だって、どんなにエンドに安く提供されようが、ドコモにとっては「全国で契約Mbps分しかトラフィックを食われない」と言う絶対的な保証があるからです。ドコモは全国トータルで何十何百Gbpsと言うトラフィックをさばき、それに対して毎月のように「やばい○Gbps増えたどうしよう」と悩んでいるような状況、そこに10Mbpsが何束加わったって蚊に刺されたほどの痛みも無いわけです。

と言うような感じで、ぶっちゃけちゃえば「ピークデータレート」こそ7.2Mbpsとは言いながらも、全国トータル帯域としてはかなり強い制限があるからこそ安く出来ている、と言うことになるかと思います。MVNOの原則の問題なのでそれだからどうこうと言うことはないわけですが、全く無関係な青森で大量ダウンロードする利用者のせいで帯域が消費されて東京で使っている人の速度が出ない、と言うことが起こる様なタイプのサービス、と言うこと程度は知っておいたほうが良いかと思います。といったところで、このへんで。

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NTTの光ファイバ貸し出し議論、「一分岐貸しか一芯貸しか」と言うものがあり、今日はこれに関して技術的な面も含めて私の考えをまとめてみたいと思います。

そもそも分岐がどうとかいうのは技術的には何を意味するのか、と言う点から話をしておきたいと思います。ここが完全に前提が違っている(と言うかあえてミスリードして議論している)事業者がいるので。

光ファイバと言うのは、一本の線です。この線の上に流れるビットストリームは、原則、1つだけです。物理層で複数の波長を使うとか何とか、いろいろと拡張する技術はありますが、その物理層が上のリンク層に提供するビットストリームは一つだけです。

しかし実際には、光ファイバのビット速度はものすごく速いため、これを1対1で使うのはもったいない、と言われるような用途がたくさんあります。そこで、相手先が複数ある場合、その近くまで一本の光ファイバを引っ張り、そこで分岐して使っちゃえ、と言うことを思いつきます。これが、分岐だなんだといっている話です。

この分岐と言うのが実際に何をしているのか、と言うと、実は、「LANのハブと同じ」です。正確にはリピータハブと同じ。単に、受信したフレームを複数にコピーして別個の光ファイバに乗せなおしているだけです。受信した側が、あて先アドレスを見て、自分宛なら取り込み、自分宛じゃなければ破棄する、と言うことをしている、それが「光の分岐」の正体です。

ソフトバンクなどはあたかも「一本の光ファイバの中に複数の光伝送エンティティがある」かのように説明をするのですが、これは完全に間違い。光伝送エンティティは一つしかなく、その上で、伝送フレームのアドレスであて先を区別しているだけなのです。

そうなると、おかしいことに気がつきますね。そもそもなぜ「8分岐」が前提で議論しているのか。この仕組みなら、8分岐どころか、100分岐でも1000分岐でも可能です。だって、単にLANのハブに複数の端末を接続しているだけなんですから。

その答えは、NTTがフレッツサービスのために採用した「B-PON」と言う特定技術です。B-PONは、この同報&あて先指定のためのベースとして「ATM」を採用しました。このATMでは伝送フレームをセルと呼んでいますが、これを使うと、同時に送信できるあて先が制限されてしまいます。その制限数が32。で、NTTは局舎内で一旦4本の光ファイバに分岐させていて、個宅近くで再度8分岐する、と言うやり方で32同報を使っているのですが、この「個宅近くの8分岐」と言うのが槍玉に挙げられているわけです。注記:語弊がありました。その後NTT自身もGE-PONなどに移行しましたが、当初B-PON採用で32分岐に縛られた経緯から、事務手続き上、当初の32分岐の設計を引き継いだため現在も4×8構成となっているだけで、「現在ネットワークの分岐数の技術的裏づけ」がB-PONと言うわけではありません。

しかし、光ファイバの同一の信号列を複数で使うやり方は、ATMを使うB-PONだけではありません。最近主流は、イーサネットフレームを使うGE-PONです。これを使えば、実際、100分岐でも1000分岐でも可能です。まさにLANのハブと全く同じだからです。普通に考えれば、後発サービスとしてはこの技術を使うほうがコストも抑えられるし収容力も上がるし、しかもイーサネットフレームは可変長なのでベストエフォートで光ファイバの最大能力を引き出すことも出来、競争上こちらを使う事業者も増えています。NTTコミュニケーションズやKDDI、地域電力系などは個人向けも法人向けもほぼGE-PONにシフトしています。

さて、「分岐」と言うものがこういうものだと分かれば、ソフトバンクたちの言っている事がいかにおかしなことか、気がつきますね。ここで、「光」ではなくて通常のLANケーブルで話を置き換えてみましょう。先ほども書いたとおり、技術的には「光の分岐」は「LANのハブ」と同じだからです。

ビルの管理者であるNさんがLANケーブル貸し出しサービスを始めました。どこでも好きなところにLANケーブルを敷設するというサービスです。ただ、このLANケーブルはとてもグレードが高くとても壊れ易いため、月額100円の維持費がかかってしまいます。良心的なNさんは、原価そのままの100円でだれにでも貸し出しますよ、と通知しました。また、ケーブルを通す導管だけなら1円で貸しますということもやっています。

次に、Nさんは、維持費100円のケーブルを100円で貸していても儲けにならないので、せっかくなら何とか商売にしようと考えました。そこで、一本の線の先に8ポートのハブを取り付け、維持費100円の長いLANケーブル1本と維持費10円の短いLANケーブル人数分だけで最大8人の通信を支えるサービスを、月額50円で始めました。他のKさんなどは、LANケーブルの先に自分で100ポートの高級ハブを設置し月額40円のサービスを打ち出して大人気になっています。1円の導管だけ借りて自分でもっと壊れにくいLANケーブルを引っ張ってNさんに対抗するサービスをする人も出てきています。

さてここで言いがかりをつけてきたのがSさん。Nさんに対して「お前だけハブを使って原価が安いのはずるい」といい始めました。「そのハブを使って通信させろ。ハブにつながってるLANケーブルはお前が勝手に引っ張ったものだから賃料は払わない。その代わり、ポート利用料として原価の8分の1の12円だけ払ってやるよ」と言います。Nさんは自分が工夫して原価180円で最大400円儲かるサービスにしたのに、Sさんに12円で貸してはたまりません。ビルの管理者だからと言って、NさんはSさんに12円でハブのポートの利用権を貸さなければならないでしょうか。

もう答えは簡単ですね。Sさんは、自分も儲けるサービスをするなら、自分でハブを置いて使えばいいのです。もしそれで加入者が少なすぎてLANケーブルの原価が回収できないなら、さらに、他のサービスをしたいという人に、1ポート20円なりで貸して原価回収をすることも出来ます。Kさんみたいに高級ハブを使えばさらに原価を下げることも出来ます。維持費の安いLANケーブルを持ってくることさえ出来るはずです。こういう努力をすべて放棄して、Nさんの努力の結果だけを掠め取ろうとするのがSさんです。

光ファイバの物理層を維持管理する、と言う役務に対して支払うのが、各事業者がNTT東西に支払う貸し出し料金の正体です。これは法で縛られ、原価相当しか請求してはいけないことになっています。ところがソフトバンクはそれを勝手に拡大解釈し、リンク層のアドレスごとに原価(?)で貸し出せ、と要求しているわけです。そのアドレス宛のパケットが流れていない時間は自分の取り分じゃないから払わない、と。それを言い出したら、IPアドレスが割り当てられていない時間は原価外だとか利用者がPCの電源を切っているときの料金は減免しろとか利用者がWEBブラウザを立ち上げていない時間分減額しろとか利用者がダウンロードしていない時間分の料金は支払わない、なんていうことまで帰納的に言い出すことが出来てしまいます。

完全に事業者間交渉の範疇の話を、行政を巻き込んで大騒ぎし、世論操作する、と言うのはあの会社の常套手段なのでもはや珍しくも無いのですが、彼らが非常におかしな主張をしている、と言うことだけは、ぜひご承知置きいただければなぁ、と思います。といったところで本日はこれにて。

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AppleがTD-LTEを採用するかもと言うニュースについてコメントをくださいというリクエストをいただきましたので、簡単にコメント。

何度か書きましたが、TD-LTEはLTEのサブセットに過ぎないものなので、将来的にはほとんどのベースバンドチップがTD-LTEをサポートするようになると私は考えています。残りは、RF回路の問題ですが、これも要するに「900MHzバンドと2GHzバンドをサポートする」と言う端末に対して「じゃぁ1.9GHzもサポートしてみる?」と言うのと同じくらいのインパクトしかないと考えます。そんなに遠くない将来にマルチバンドサポートをするのと同じくらい気軽にTD-LTE対応は出来るようになると考えます。

なので、現行の3G iPhoneで「北米に加えて欧州もサポートしましょう」とやっているのと同じくらいの感覚で、サポート可能といえるわけで、そのくらいであればAppleが最大市場である中国のシステムをサポートするのは必然的な流れかなぁ、と。

また、北米も欧州も、ノンペアバンドのTD-LTE利用への動きが非常に活発です。この1年だけで合計100MHzくらいのノンペアバンドがTD-LTEレディになったんじゃないかな?北米は技術基準が緩やかで、大体の規定さえ満たせばシステムは問わないという仕組みなので、後は3GPPなど標準化機関で対象バンドのバンドクラスを定義してあげればすぐに使えるんですよね。そういった欧米向け新バンドクラスが近頃大量に追加されているみたいです。

と言う感じで、はっきり言って日本以外の先進国はほとんどTD-LTEに積極的です。TD-LTEに及び腰なのは、人口密度が低く少数局で広大なエリアをカバーしなきゃならないという要件のある途上国ばかり。そういった国では確かにTD-LTEの恩恵は活きにくいですし、だったらGSMと同じバンドクラスを再利用できるFDDしか使わないという選択をしてもおかしくないんです。日本だけが、ちょっと変。GSMバンドクラスの再利用なんていう要求も無いし人口密度が高いし細切れ周波数の再利用の需要も高いのに、TD-LTEを無視しまくり。なんなんでしょうね。

まぁとにかく、AppleのTD-LTE採用の方向、単に中国市場を狙うというだけでなく、世界的な趨勢を読んだ上での方針なんじゃないかなぁ、なんて思います。

ちなみに記事中ではTD-SCDMAについても触れられていますが、こっちはぜんぜん難易度の違うもので、TD-LTEをサポートするならTD-SCDMAもいくよね、なんて気軽に言えるほどのものではありません。ありませんが、大手チップベンダはLTEとTD-SCDMAのデュアルモードなんていうチップをラインナップする意思もあるようなので、ありえないとはいえないですね。

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先日、Skypeが全Androidで利用できるようになったという件で、auの優位性は一気になくなった、と言うような発言も目立ったため、一言コメントした話、もう少ししっかりと解説してみます。

おさらいしておくと、Skype auの仕組みは、Skype音声通話に、携帯電話網の回線交換音声通話チャネルを使うというところが特徴的。携帯電話網を通った音声は(おそらく)インターネットを介してSkypeサーバとつながっているであろう変換装置でレガシー音声からSkype音声パケットに変換されていると思われます。

また、ステータス管理とかチャットやメッセージなど他のサービスは通常通りパケット通信によってインターネット上のサーバに直接接続されています。そして、SkypeサーバとSkype変換装置が何らかの連携をして、ユーザの状態をアップデートしているようです。

↑これが全体イメージ。音声は回線交換網を通してつながり、その他はパケット網を通ります。

まず重要なのは、技術解説:回線交換とパケット交換でも書いたとおり、理論上は伝送に伴う遅延ゆらぎがなく、どんな場合でも音声通話チャネルが維持できる電波状態でさえあれば安定した音質の通話を利用できるという点です。

これに対して、パケット交換網と言うのは、どんなに大容量で組んでもどんなに高速な処理装置を使っても、必ず遅延の増大と遅延の揺らぎが発生します。このため、ある程度遅延量が蓄積すると、音声がぶつっと途切れます。もちろん、遅延量が大きいためにSkypeアプリが回線が細いと判断して音質が異常に落ちてしまうこともあります。

つまり音声に関しては「安定して」「高音質で」利用できるのが、Skype auの第一の特徴です。

そしてもう一つの非常に大きな特長は、着信です。こちらも図をご覧ください。

↑これはSkype auでの着信です。Skypeサーバから着信を知らせるパケットが出ますが、Skype auの場合は、これがau網に設置してある変換装置に向かいます。

変換装置はこのパケットを受け取ると、呼び出し先に該当するau加入者を検索し、その加入者に対して自らが発信者となって通常の電話をかけます。

すると、回線交換網で処理が行われ、最終的には基地局(公衆アンテナ)から一斉呼び出しが行われ、エリア内にさえいればどこにいても確実に着信を受け取ることが出来ます。端末が着信に反応すれば、後は変換装置が端末からの音声チャネルとSkypeサーバをつなぐだけです。完全に通常の電話と同じ仕組みなので、通常の電話と同じ待ち受け時間が実現できます。

次に、一般のSkype(au以外のAndroid、iPhone、PC、その他)の場合の動作です。

↑これが一般の場合です。着信があると、同じようにSkypeサーバから呼び出しパケットが送出されます。しかしその向かう先は、オンライン中の端末に直接向かうルートです。端末はパケット通信でSkypeサーバに登録されていますから、呼び出しパケットもパケット網に向けて飛んでいきます。

そして、呼び出しパケットは、パケット網から無線網に入り、無線基地局と端末の間のパケット接続を通って直接端末に届き、端末がそれに反応することで音声通話が始まります。

この図を見ても分かるとおり、一般のSkypeでは、端末とインターネットの間にアクティブなセッションが存在しないと着信を受けることが出来ません(※必ずしも無線がアクティブである必要はない)。インターネット接続のアクティブセッションを維持するためには、OSもアクティブである必要がありますし、アプリもOSからのパケット受信のイベントを取り逃さないようアクティブでなければなりません。つまり、一般のSkypeで待ち受けをしっぱなしにすることは、ものすごい電力の消費を伴うわけです。

たとえば、同じ「連続待受300時間、連続使用3時間」と言うAndroid端末があったとすると、Skype auの場合は300時間待ち受けが出来ますが、その他のSkypeでは3時間しか待ち受けが出来ないことになります(ちょっと嘘です、連続使用時間よりは多少長くなります)。

このように、通常発着信に使う電話として考えると、Skype auとその他のSkypeは天と地ほどの差があります。私がSkype auのニュースを聞いて大興奮したのも、こういう仕組みだと説明されたからなんですね。

と言うことで、もしSkypeを使うのであれば、au一択なんですが、スマートフォンよりは、フィーチャーフォンでこそ、この機能は使いたいと思うんですよ。仕組み的にはフィーチャーフォンで対応できない理由はないし、auも対応を検討していると発言しているので、この辺、今後にぜひ期待したいと思います。それでは。

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2011/1/19 10:00 · ニュース解説 · 2 comments

ドコモの新サービス「Xi」レビュー
サービス開始!LTEの実力をチェックしてみた!
ドコモのLTEサービス「Xi」を都内でを試してみた
ドコモのXiのレビュー記事いろいろ。それほどユーザが多くない状況にも関わらず意外と記事によって通信速度に開きがあるのが気になります。

一つは、私が昔から言っている、OFDMAの弱点。OFDMAは電界の変動に弱く低電界そのものにも弱い、と私は思っています。いろいろな補償技術はてんこもりですが、それでもCDMAよりは圧倒的に弱い。だから、安定しないのです。モバイル、セルラー方式としては、やはりCDMAこそが本命で、OFDMAは高速大容量のためのスポット的サポートに徹するべきと私は考えています。

そんな話はともかく、そういった弱点があるので、基地局からの距離や屋内への浸透具合によってはあからさまに差が出てきてしまうことが予想されます。

それともう一つ気になるのが、周波数。元々2GHz帯には20MHzがあり、ドコモは混雑エリアではHSDPAで5MHz x 4波を使い切っていたはずですが、LTEのために1波あるいは2波を割いていることになります。

その分はもちろん1.7GHzなどに逃がしてはいるでしょうが、それでも、元々大混雑エリアだった場所で2波をあっさりと移行させるのはかなり厳しく、実際は、むしろやや空いている地域が2波分をLTE10MHzに移行させたと考えたほうが良いでしょう。つまり、非常に混雑しているところはまだむしろLTE5MHzにとどまっている可能性が高いと考えます。なんだかだで、まだトラフィックの中心を演じているのはHSDPAのスマートフォンですから。

スマートフォンの主軸がLTEに移るころに、徐々に混雑地域もLTE10MHzに移すでしょうが、そこがまだ5MHzにとどまっている可能性を考えると、混雑地域かそうでない場所かで極端にLTEのスループットが変わってしまうことが十分に想像できます。記事や記事中でも場所によって極端に速度が違うのは、OFDMAの弱点問題もさながら、こういった事情もあるのではないかと想像します。

LTEのスループットが意外と出ていない、しかもユーザが全然いないのに差が大きいのは、こんな事情があるのかなぁ、と言う考察でした。

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2011/1/19 10:00 · ニュース解説 · 2 comments

CDMA版iPhone 4、日本でも発売となるか?–キーになるのはキャリアとメーカーの関係
iPhoneがNTTドコモとKDDIから発売される可能性を考察–米国は複数事業者からの販売が現実に
VerizonがiPhoneで大反撃を開始、その後、国内メディアの興味は、auでの発売の実現性にシフトしつつあるように思えますが、これに関して。

まず技術的な問題はバンドですね。Verizonは850MHz帯をメインに使っていますが、これはauがメインにしている国内800MHz帯とは基本的には互換性がありません。下の記事中では新800MHz帯が重なっている、となっていますが、単に重なっているだけではダメで、日本国内独特のさまざまな電波法に基づく規定を満たしていないといけません。逆に、米国独自の規定があるために、安易に周波数を広げる(デュプレクサ特性を変える)と、米国の各種保護規定を満たせなくなる可能性もあります(と言うか可能性はかなり高いです)。

また、下の記事中で「1900と2GHzは近いので親和性が高い」と考察されていますが、これは完全なマチガイ。完全に重なってでもいない限り、周波数帯が近いことは逆に害悪です。上下間離隔がぜんぜん違いますし、そもそも、記事中の表を見てもわかるとおり、上りと下りがかぶっちゃってます。同じ無線デバイスでは原理的に対応できません。その意味では、一応auの新800が包含している850帯のほうがまだ親和性が高く、近いけどぜんぜん重なっていない1900と2GHz帯の共存はかなり難しくなります。少なくとも、ハードウェアの分離が必要です。

ただ、日本を含む何十カ国でローミングが可能、と言うようなスペックになっているので、どこかグローバルバンドに対応していると考えるのが自然で、となると、アメリカの田舎バンドである850や日本の田舎バンドである800ではなく、グローバルバンドの2GHzに対応している可能性が高いといえます。これは1900と近いからではなく、ローミングのためにあえて1系統無線機を追加していると考えるのが自然です。一方完全に重なっているとはいえローカル規定がぜんぜん違う850同士は、Appleがあえて日本の田舎バンドに対応するという決断をしない限りあくまでVerizonローカル仕様のままでしょう。

さてその前提で考えると、果たして、2GHzでしか動かないiPhoneをKDDIと言う会社が受け入れるか、と言う点です。KDDIはドコモにも劣らない旧体質の会社で、ちょっとでも品質の看板に傷がつく可能性があれば排除に走る体質(IS01のバージョンアップを早々に断念したことからもその体質が伺われます、ソフトバンクなら多少もっさり化しても機能を削るなりして断行していたんじゃないかなぁ)。ドコモがiPhoneを門前払い(?)にしたのもiPhoneの無線品質が酷すぎたからだとまことしやかに言われていますが、「無線機としてびみょー」「2GHzエリアでしか使えない」と言う端末を、同じくらい排斥主義のKDDIが受け入れられるか、ってことですね。「プライドを捨て商売のために受け入れる」「インフラ屋としてのプライドを守るために見送る」、どっちの決断をするか、これはKDDIと言う会社が今後どういう念持をもって市場に臨むか、どれだけ本気で「巻き返し」に取り組めるか、と言うことを測り、KDDIの浮沈を占う良い機会となるかもしれません。

万一KDDIがこの「決断」を下せるとしたら、KDDIと言う会社にとって大転換であるばかりでなく、日本のモバイル市場が大転換を迎えることになるかもしれません。

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