[追記]アップデートしました→国内各社のLTE展開プランのアップデート2012年8月号
ということで、主要携帯電話事業者の次世代マイグレーションプランがほぼ見えてきた感じですね。
箱を開けてみれば、元から具体的なプランのあったドコモとKDDIに加えて、イーモバイルがスモールスタート方式で、ソフトバンクが子会社利用方式でそれぞれLTEをスタートさせることになり、一応、全社LTEサービスを提供する形になっています。いや、日本はLTEに関してはずいぶん遅れていたんですが、一方、国内全事業者がLTEなんていう国は逆にほとんどなくて、誰か始めるとみんな一斉に対抗しちゃうっていう形、そういう意味ではちょっと珍しいお国柄なんでしょうね。
で、内容を見てみると、意外とバリエーションに富んだ感じ。ドコモは王道フルスペックLTEを、これまた国際メインバンド2GHzをしっかりと確保しながら進める形。KDDIはCDMA2000からのマイグレーションというハンデがあるからかかなりの出遅れがあるものの、800MHzと1.5GHzをたっぷり奢って最初から広大なエリアと大容量を狙う感じ。ソフトバンクは自社整備はとりあえず置いといて、これまたTD-LTEの国際メインバンドとなるであろうWiMAXバンド2.6Gを持つ子会社にそれをTD-LTEに転換させてさくっと整備する形、イーモバイルはエリクソン、Huaweiなどの持つ集中型同梱局を活用して既存WCDMAを足早にLTE化していこうという形だろうと思われます。
どっちにしろ主戦場はLTEに移ることになるわけで、上記の特徴を踏まえて、各社の長短と今後の戦略について簡単に私の考えをまとめてみます。
ドコモに関しては、まず国際バンドの2GHzを転換していくということで、既存のWCDMA主力バンドを削る必要があるという意味では、非常に整備の難しいやり方です。今後一気にエリア化を加速するとは言っていますが、そうはいっても、現状の過大なトラフィックを捌くことを考えると主力バンドをおいそれと削るわけにはいきません。非常に難しい運用が必要になりそうです。
とはいえ、2GHzはLTEに関してはほぼすべてのグローバル端末が対応していくでしょうから、端末の調達は非常に容易。よく、「2GHzはほとんどの国でWCDMAに使われているからLTEでは対応しない」という話が出てくるのですが、それは誤り。いや、事実としては間違っていないのですが、結局端末の対応可否ってのは、無線部品なんです。無線部品が対応するかどうか。すると、「2GHzに対応した無線機」であれば、その上に乗る通信方式はWCDMAでもLTEでもいいんですよ(一応エミッションマスクも少し変わるけど、それは枝葉の問題)。で、ベースバンドチップも今後はすべてLTE+WCDMA+GSMになりますから、全く同じ部品構成でどちらも行ける。要するに、「WCDMAのついで」で対応することになるんです。同じことが、GSMメインバンドの900MHzや1900MHzにも言えます。よほど面倒な帯域周辺環境がない限り、基本は方式に依らずついでに対応できる帯域はついでに対応しちゃうのが移動機ベンダの考え方です(テスト工数は増えてちょっとだけコストが上がりますけど)。
今後のドコモは、まずは1.5GHzの開始というのが、下手するとかなり早めに来るんじゃないかな?という気がします。いや、もちろん免許上は2014年春まではダメなんですけど、現状使っているMCAをドコモ負担で早期巻き取りする、なんていうことをやりかねない気がするので。もちろん、免許のない地域での開始は今年中にはあるんじゃないかと思います。後は、800MHz。5MHz程をLTEに振り向けそうな気がします。とにかくそういったことをやるための土台は持っているので、やり始めればすごいスピードでやっちゃうはずです。
KDDIは、今予定しているバンドが800MHz帯と1.5MHz帯ということで、おそらく端末調達に苦労するはずです。実はどちらも日本ローカル。ほかの国でも断片的に同じ構成を使っていることもありますが、唯一かなり重なりの大きい北米850が、KDDIの800MHz帯を見事にギリギリ外していて、逆に近すぎる構成のため両対応端末を作るとコスト激高、というのは割と有名な話。こうなるとKDDI-LTE端末はすべて自社調達ということになってしまうため、従来出てきたようなグローバル端末は、KDDI-LTEではほとんど期待できなくなると思われます。
さらに言えば、CDMA2000とのデュアルを作らなければならないという、規格上の面倒さも残ります。言わずもがなですが、LTEは3GPP系。3GPP系のシグナリングルールをほぼ完全に受け継いでいるため、チップのデュアル化が容易です。一方、CDMA2000は3GPP2。3GPP2のシグナリングは非常に特殊な作法で、少なくとも3GPP系シグナリングとのデュアル化は難しく、もちろん他の標準のシグナリング作法にも則っていないので専用チップ(ないしチップ内の独立ダイ)とならざるを得ず、この意味でも、端末調達は非常に苦しいことになるはずです。
一方、元々周波数再編の関係で使っていない800MHz帯の10MHz幅が全国で丸々使えちゃうということもあって、「75Mbpsサービス」としてのエリアは当面(数年先まで)は断トツの広さを持つことになると思います。加えて1.5GHz帯も最初から10MHz幅を全国展開するみたいなので、エリアの広さに加えて容量も断トツで、とにかくインフラの地力としては他社を圧倒する期間が長くなるでしょう。おそらくKDDIの有利はこの点で、まずは「75Mbpsエリアが広くて厚い」というのが売りになっていくのかなぁ、という気がします。
ソフトバンク、というかその子会社WCPの開始したTD-LTEサービスは、基本的にはWiMAXバンドのみでのサービスで、全部で30MHz、ただし下10MHzは運用制限があるので実質20MHz、FDD換算で10MHz幅が一つのみ、ということで、今後、大きなスペックアップや容量アップは期待できません。また、TDDに関して新たな帯域確保も難しい状況であるため、LTE-Advancedで用意されている周波数間結合によるスペックアップも難しく、「今のスペックと容量」が当面の限界のスペックと容量と言えそうです。
とはいえ、おそらく今後、TD-LTEは容量補完のための技術としてかなり注目度が上がることが予想され、加えて、FDD-LTEとのデュアル化が非常に容易であるという特徴もあるため、グローバル端末の多くがTD-LTEモードを備えることになることが予想されます。そうなると、米国と日本という大市場でデファクト化した2.5/2.6G帯は実質のグローバルバンドとなることがほぼ間違いなく、すでに欧州でも2.6GをTD-LTE向けに確保する動きが盛んです。WCPのTD-LTEは端末調達という面ではドコモに次いで有利な立場になるでしょう。
また、TDDであるが故の、無線アナログ技術による容量アップや高速化技術が使えるようになることもTD-LTEであるところの優位。バンドの拡張性がないことを補うためにさまざまなTDD特有のアナログ技術を投入しての容量アップなどが期待できそうです。加えて、ソフトバンク本体がLTEでも始めようものなら、絶対的な容量の観点でも他社を相当キャッチアップできる位置に上れそうです。
最後にイーモバイルですが、今のところは、1.7GHzという国際的にも仲間はずれなバンドで、しかも、DC-HSPAのために大量の周波数を浪費されているうえでさらにLTEを、という状況であるため、最大スペックに対して実効スペックが制限されるエリアが広すぎ、特に、従来HSPAで重点的に対策してきた都市部が逆にLTE高スペック化の足を引っ張ることになるというのが問題点。
一方、もともとイーモバイルは非常に素直な機器調達とエリア設計をする会社。ドコモ・KDDIのように無茶な開発を入れたりしないしソフトバンクのようにセルラーシステムと相性の良くないPHS局ロケーションを再利用したりといったことをしていないため、本当にありもののLTE局をあるがままのロケーションで展開できるという強みがありそうです。
加えて、ありもののハードウェアプラットフォームを積極的に採用してきたため、ハードウェアをほとんど変えずにLTE化できるようなパターンも多いと考えられます。グローバル製品を素直に採用し、グローバルベンダ技術による素直なエリア設計をしていることが、LTE化の速度に関してかなり有利に働く可能性が高いと言えそうです。ひょっとすると、WCDMA-LTEデュアル端末がある程度シェアを増やしたところで、DC-HSPAエリアがある日突然一斉にLTE化する、なんてこともあるかもしれません。
ということで各社のLTEの現状と今後に関してあくまでも妄想レベルでまとめてみました。
[追記]アップデートしました→国内各社のLTE展開プランのアップデート2012年8月号

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