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2013/6/14 23:59 · ニュースコメント · 2 comments

日本通信、Wi-Fiルータを出荷停止–本来あり得ない理由で
なんでこの会社ってなんでもかんでもすぐにこうやって他責にしようとするんでしょうね。だいぶ前から姿勢がちょっとおかしいとは思っていましたが、これはいくらなんでもあり得ない。メーカのせいにしてるけど、要求仕様書いて受け入れ試験をする義務があるのは日本通信じゃないですか。要求仕様レベルの試験なんて普通の会社なら発売の一か月前には終わっているレベルです(日本のキャリアなら新機種発表をする前にはすべて終わっているくらいの話)。そういうことを完全に怠って、メーカからの報告を受けてあわてて発売を取りやめたばかりか、メーカに責任があるかのような非難プレスリリースを出すなんて、ちょっとまともな会社とは思えません。本当に、どうしてこんな会社になっちゃったんでしょうね。完全に言いがかり企業。PHSのMVNOを始めたころは謙虚な会社だったと思うんだけどなぁ。

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2013/6/14 23:59 · ニュースコメント · 2 comments
2013/6/14 10:00 · その他技術ネタ · (No comments)

地下鉄のトンネル内で駅に着く前に電車が止まると、車両によっては圏外になったりすることを見たことがあります、地下鉄の駅間カバーとかってどんな感じで作っているんでしょうか、と言う質問をいただきました。

まず、前にも似たようなことを書いた気がしますが、地下鉄の携帯カバーについての基本。地下鉄など需要はすごくあるけどスペースが全然ない、と言うような場所をカバーするために、JMCIAと言う組織があります。これは、トンネルや地下街などの携帯電話カバーを、事業者みんなで協力して整備しましょう、っていう組織。

と言うのも、たとえば地下鉄の場合、鉄道会社としては他人の装置をおかせたくなんてない、っていう事情があり、置く装置をできるだけ少なくしたいという事情があります。そこで、みんなで共用できるものは共用しましょう、ということで、JMCIAが出てきます。

具体的にどんな感じで置いているのか、と言うところについてですが、代表的なものを説明してみます。これ以外にもあるかもですが、私はあまり聞いたことがないです。

1つ目。トンネルの入り口に、奥に吹き込むように基地局(またはレピータ)アンテナを設置。あんまり主流ではなさそうですが、あるというウワサを聞いたことがあります。これは簡単なことで、入り口から奥に向かって電波を吹き込むことでトンネルの奥までカバーするようなもの。なので、一番奥、あるいは(反対側も同じ処置をしていない場合は)反対側の出口近くは電波が届かないことが往々にして起こります。

2つ目。トンネルの中の随所に、アンテナを設置。実際には、基地局から出たアンテナ線を共用の装置でたくさんに分割し、分割した信号線の先にさらに増幅装置+アンテナを設置するようなやり方。これを、トンネル内に一定間隔で置いておきます。すると、その個別の装置からのカバーエリアは狭くてもそれが細かく置いてあるので結果としてトンネル内をしっかりをカバーできます。難点は、一つの基地局の信号をたくさんに無理やり分割するのでノイズがすごく上がり、電波は良くても品質が下がりやすくなる、ということ。

3つ目。今はもうほとんどこの方式じゃないかと思うんですが、漏えい同軸ケーブル方式。トンネル内に長ーい同軸ケーブルを這わせるんですが、そのケーブルに、じんわりと電力が空中に漏れるように隙間を作ってあります。その隙間から漏れた電力が、そのものズバリ、携帯電話の電波と言うわけです。分割・増幅なんてことをしないのでノイズも上がらないし、その割にはしっかり遠くまでカバーできます。普通にアンテナを置くと円形に出ていく電波を一旦無理やり同軸ケーブルに閉じ込めて、ところどころに抜け穴を作ってあげるというイメージですね。すごく細長いエリアを作っているようなものです。実はやっていることの本質は1つ目の「片側から吹き込んであげる」と全く同じことだったりします。なので短所も質的には同じ。ただ、手前を漏れにくく奥を漏れやすく、みたいな使い方で割と奥まで一定して届かせるといったやり方が常套手段となっているので、奥の方が届きにくいという短所はカバーされています。

と言うことで、地下鉄も漏えい同軸で作ってると思うんですが、それでも駅に近づくと圏外になる、と言う辺りがなぜと言うのは不思議です。が、そもそも漏えい同軸と言うのは、ケーブルから離れるとあっという間に電波が弱ります。あんまり飛ばないんですね。特に軸方向。

と言うことで、漏えい同軸ケーブルの「始まり点」と「終わり点」がどこにあるか、と言う辺りで、ケーブルの始まり点がホームの電波が届くよりも奥にせざるを得なかったような駅間では、ホーム前で停車したりすると、電波が届かないエリアができている可能性はあります。こればっかりは、トンネルの構造などによるのでどうしようもない場所ってのは出てきます。トンネル内の電源用の溝とかを活用してるんだと思いますが、この出入り口をホームぎりぎりに置かなきゃならない理由なんてそもそも無いですからね。できる範囲でやるとなると、どこかに穴はできるでしょうね。

JMCIAの事業計画を見ると、駅構内のセル分割なんてのもあるようで、もしホーム内のセルを分割すれば、ホームからトンネルにしみこむ範囲ももう少し広がることになると思うので、こういった穴も徐々に埋まっていく可能性はあると思います。まぁなんにしろ、JMCIA頑張れー、と言うことで。何もしていないくせに後から来てtwitterで自慢して自分の手柄にするようなどっかのインチキ社長なんぞに負けるなー。

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2013/6/14 10:00 · その他技術ネタ · (No comments)
2013/6/13 10:00 · 技術解説 · 3 comments

もう私から見ると雲の上のレイヤーの話になっちゃうのですが、VoLTE、LTE上の音声サービスについて、解説を希望する声が絶えないので、取り上げてみます。嘘書いてても知らないよ!!

VoLTE=Voice Over LTEの略で、LTE無線・システム上で音声サービスをするための仕組み、あるいはサービスそのもののことです。

従来、3Gまでのシステムであれば、音声交換専用のシステムと、音声伝送専用の無線チャネルが定義されていて、音声サービス=これらのシステム・チャネルを使ったサービス、と言う様にされていました。3Gまでは、基本的に、こういった音声サービスをベースに開発が始まり、データは付随物に近い扱いだったわけです。

しかし、LTEは最初からデータ向けシステムとして開発が始まり、もちろんご存知の通りデータ通信サービスから開始されました。少なくとも国内ではLTEはまだデータ専用システムで、ほとんどの諸外国でも同じ状況です。

従来3Gが、音声・データそれぞれで伝送システムやチャネルを異にしていたように、新しいシステムでも音声データ分離が行われるのであれば話は簡単なのですが、LTEはフルIPフラットネットワークを一番の売りにしています。ここに、音声専用の伝送系統が追加されるなんていうのはいくらなんでも筋が悪い。と言うことで、LTE上の音声は、最初からVoIPを流用したシステムとなることが決まっていました。むしろ、「IPのパイプさえ通っちゃえばあとはVoIPでもなんでも使えば音声だろうがビデオだろうがいくらでも通せるんだから気にしなくていいよね」的な発想でIP接続専用サービスとしてLTEが作られていった、と言うのが真相です。

ただしそうはいっても、素のLTEデータ回線上で、極ふつーのVoIPクライアントを使っても、電話サービスとして求められる品質の担保と言うところからほど遠いのは想像に難くありません。確かにアプリレベルでVoIPで通話ができるようなサービスはたくさんあり、ほどほどの品質を確保できているものもありますが、結局そういったアプリは無線の不安定さ、ネットワークの輻輳、そういったものに対しては完全に無力です。できることは、巨大なジッタバッファを用意することくらい。これは当然音声の盛大な遅延となって現れるため、単にバッファを大きくすればいいというわけでもなく、どこかで折り合いをつける必要があります。

ところが、VoLTEは、事業者クラスの電話サービスとしての品質が確保されるようにしなければなりません。特に日本では緊急呼を扱うという要請上その品質はかなり高度に保つ必要があります。単にIPパイプがあるから何でもやり放題だぞー、と言うわけにはいかないんですね。

めんどくさいので答えを書いちゃうと、LTEでは、普通のベストエフォートのIP接続の仕組みとは別に、帯域確保型(Guaranteed Bit Rate)のチャネルを用意する仕組みがあります。優先制御は割と細かく決められているんですが、その中でざっくりと、帯域確保かそうでないか、と言うのが決められていて、サービスごとに使い分けて良いようになっています。細かく言うと、たとえば音声は多少パケットがロスってもいいから帯域確保かつ低遅延で、みたいな感じになっていて、リアルタイム性を重視しつつ無駄なフレーム再送なども起こらないようになっています。

なので、VoLTEを使う時には、ある端末に対してきっちりと○○bpsを割り当てる、と言うようなことができるようになっているんですね。もちろん、無線の割り当ての上でどういう戦略で一定帯域を確保するか、と言うのはまさに技術的な工夫のしどころの一つで、この仕組みの出来如何でエンドトゥエンドの音声品質が全然違うということも起こると思います。

さて、そうはいってもVoLTEも中身はIP電話です。SkypeやLINEと違い、IPベースで通話を始めてもきちんと上に書いたような帯域の確保が行われるのはなぜか、と言う点も気になります。

ポイントは、こういった制御のためにきめ細かに定義された上位システムです。以下にざっくりと動きを書きますと。

まず、端末がLTEに接続するときに、VoLTE用のセッション管理サーバ(CSCFなど)(SIPサーバみたいなもの)の情報をLTE網(正確にはデータ接続ゲートウェイ)からもらうことができる仕組みがあり、これを通知してもらったらその内容に従ってセッション管理サーバに位置登録します。この専用のセッション管理サーバが後述のポリシー管理サーバ(PCRF)と連携して帯域保障無線チャネルを起動できるVoIPサーバのイメージです。この連携があることが、一般のVoIPとVoLTEの大きな違いとなります。

実際の通話のときは、端末がセッション管理サーバに向けて「今から音声通話したいです」と要求し、セッション管理サーバがポリシー管理サーバに対して「こいつに音声通話をさせてやりたいんですが」と問い合わせします。ポリシー管理サーバはここで、その加入者に音声サービスを提供できるかと言うポリシー的な判断をし、LTEネットワークに対して、その端末のための帯域保障チャネルを割り当てするようにお願いを投げます。これで、IP上で音声通話をすると決めただけなのになぜ帯域保障チャネルが張られるのか、と言う点がわかってきます。音声専用の伝送系があるわけではないのですが、上位システムとしてはやはりLTE音声のためのシステムが定義されている、と言うことで、「IPパイプがあるからVoIPサーバ立ててみた」と言うレベルとは厳然たる隔たりがあるわけです。

と言うことで、こういった連携で帯域保障チャネルを確保して、そこにVoIPデータを流すように端末とネットワークで調整を行い、音声が通る、っていうのがVoLTEの大まかな仕組みです。伝送系はIPで共有するので低コストながらも標準的なQoS制御と何よりも無線チャネルの専用割り当てを使うことで高品質を維持できる、というわけです。以上、VoLTEってのがどんなのかっていうお話でした。

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2013/6/13 10:00 · 技術解説 · 3 comments

エレコム、旅行や出張時に便利な超小型Wi-FiルーターWRH-300シリーズを発表。300Mbps対応、56×42mm、重さ23g
どうでもいいんですが、リンク先のプレスリリースとか製品情報とかに、「LTEの4倍速い!」なんていう文字が躍っていて、スペック上は固定系システムがLTEと本気勝負をしなきゃなんない時代なんだなぁ、と。セル内の他ユーザとリソースを共有するモバイルと少なくともメディア的にはリソースを独占できる有線をスペックの数字だけで比べるのはよろしくないので、自ら相手の土俵に上がるようなこういうアピール方法はやめたほうがいいと思うんですけどねぇ。

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いま、一番読まれている記事は:4G/スマホ時代への対応に甘さがあった、KDDI田中社長が一連のLTE障害で謝罪
いやー、この記事を読むと、MMEのクラスタ、いわゆる「MMEプール」に、MMEが2台しかなかったっぽっく見えますね。そりゃ落ちますわ。システムが複雑化しているので、一時的な偏りによる輻輳や何らかの故障ってのは必ず起こるというのはLTE時代の常識、しかし古い事業者はそういう前提で考えてないからこういうナンセンスな構成を平気でとっちゃうんでしょうね。LTEではシステムは常に1:Nで冗長・分散する前提で標準仕様が作ってあるので(だからこそすべての無線制御機能を最下位のeNBまで分散させた)、当然MMEも比較的小規模のものを10台とかで分散処理するのが当たり前だと思って今ましたが、KDDIの構成にはさすがにびっくりです。突貫的にLTEを立ち上げたので、旧来の考え方が抜けきらないまま設計しちゃったんだろうなぁ。まぁ、徐々に「LTE時代の常識」に合わせて網を強化してくれればと思います。こないだの障害で、自分がいかにLTEに飼い慣らされていてLTEが止まると超不便って体になっているかに気づかされました。OCNの980円プランの入手にも動いていますけどね。やっぱりKDDIのLTE800Mのエリアの広さに慣れるとグレード下げられないっす。

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2013/6/10 20:33 · 更新情報 · (No comments)

こちらのLTE基地局数グラフで、グラフ作成がうまくできない不具合がありましたので修正しました。

ご迷惑をおかけしました。

言い訳をすると、なんか先月にありえない無線搬送波共存パターンを削らなきゃならなかったときに、削るための判定ルーチンが月をまたぐと動かないとかいう超めんどくさいバグを作りこんでました。我ながらすごい。

なおっていますので今後ともよろしくです。

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2013/6/10 20:33 · 更新情報 · (No comments)

またまたauがやらかしたみたいで、いろいろ解説希望のメールをもらっているわけですが。

今回の故障個所は「基地局制御装置」みたいに発表されていますが、具体的にどこと言うのはよくわかりません。が、LTEのシステムの中でそれに相当しそうなのは、たぶんMMEかなぁ、と言う気がします。もちろん、基地局の監視制御用のシステムとかの独自装置の可能性もあります。

で、確か前回もMMEが障害って言ってたなぁと考えた時にふと思った件があって。こちらの基地局数で見ると、2013/05/30現在の総基地局数(バンドごと(細かいことを言うとキャリアごとだけど現在は実質1バンド1キャリアしか入らないので)に別のノードなので「制御装置」から見えるノードの数という観点で数えた時)は、ドコモが27716局、auが46575局、SBMが23249局と、auはほぼダブルスコアで他よりも局数が多いんですよ。しかも、建設開始からの期間も短くて。

つまり、MMEであれ独自装置であれ「基地局制御装置」の故障というのは、この基地局数の急増とそれが多すぎることに起因するんじゃないか、と思うんです。

3Gだと、何年もかけて徐々に増やしていった基地局数を、auはこの1年で一気に5万近くにまで増やしているわけです。正直、正気の沙汰とは思えないペース。

普通この手のシステムって、ノード数や加入者数の増加に合わせて、容量比で使用率が○%を超えたら装置を増設しましょう、みたいな形で管理しているはずなんですね。それが全然追いついていない疑惑が出てきます。

auの基地局の急増の理由は簡単で、ほとんどの3G基地局にアドオンでLTE局を追加できる仕組みになっていたから。もちろんドコモでもSBMでもそういうタイプの局はありますが、au程徹底して既設局にLTEをゴリゴリと追加していってはいないはずです。CDMA2000を一秒でも早く収束させたいがために全エリアを強引にLTE化していこうという意思が感じられる、と言うのは前にも書いた通り。

その強引な局数の急増に対して、「制御装置」の増設が間に合わなかった、と見ます。もちろん局数増設計画と制御装置増設計画はリンクしているでしょうが、LTE開始からまだわずか半年、おそらくその計画はLTEのノウハウが貯まる前に設計した古い基準なので、いざ始めてみると全然追いつきませんでした、と言うのが今の状況なんじゃないかと思うわけです。

前回は発表は「MMEバグ」となっていましたが、ソフトなんてバグがあるのは当たり前、バグで1台2台つぶれてもいいような冗長構成をとっておくべきで、幸い、LTEはフルフラットNWなので冗長とロードバランスがやりやすいようなシステムなわけで、そういうことはやりやすいようになってるんですよね。それでも障害ってことは、MMEの台数が局数に全然追いついていない、ってことだと思うんです。バグを出すのが悪いんじゃなくて、バグが出ても誰にも気づかせないってことが重要なんですよね、前にも似たようなことを書きましたが。LTEは単に台数を増やせばこういうところをカバーできる便利なシステムで障害は顕在化しにくいシステムのはずなんですが、それでもこれだけやらかすってことは、絶対的な処理量不足とか、その辺の疑いが強いです。

そんな感じなので、昨日今日みたいなのは、もうしばらく繰り返すんじゃないかなんて思っています。んー、データ回線をauのみに依存する生活は危ないですね。昨日今日は3Gで使ってましたが、3Gの遅いこと遅いこと。ドコモ系も一つ確保しておきますかね。

そうそう、「3Gもつながらない」という質問もありましたが、私もしばらくそんな状態でした。障害そのものというよりも、LTEな端末がみんな3Gに落ちちゃったことが原因でしょうね。LTEのために3Gのキャリア数も減らしているでしょうから従来よりも簡単にひっ迫するようになっているはずです。でわ。

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2013/5/24 10:00 · 技術解説 · (No comments)

何回か似たようなことを書いたことがあるので繰り返しになるかもしれないのですが、「ビームフォーミング」と言う言葉(あるいは技術)にはあまり意味がない、と言うお話。

ビームフォーミングは、アンテナでの位相制御などにより、ダイナミックに電波の「ビーム」を形成し、必要なところへはしっかりと届け、不要なところにはきっちりカットする、そういうことを指している技術です。

ただ、この「ビーム」っていう言葉が独り歩きしていて、本職の技術者でさえビームフォーミングの本当のところを理解していない人を結構見ることもあるので、この辺をまとめてみたいと思います。

とりあえず、ビームフォーミングの概念と恩恵はこちら。

beamforming1

複数のアンテナアレイを使って電波の飛ぶ方向に指向性を作り、「あっちの角度」と「こっちの角度」の間の相関を小さくする、と言うのが技術の概要。すると、特定の端末のいる方向だけは強く送受信できるので品質アップするし、そうじゃない方向には送信しないので、たとえば隣の別の基地局と通信している端末に対して干渉を与えることが無く、もちろん、その隣の端末の発する電波も除去できるので干渉を受けることもない、そういうことを目的としています。

割と本職に近い人でも実はここまでの理解で止まっていることが多いんですよね。と言うのも、「あ、要するに端末のいる方位角に合わせてビームを向けるだけでいいんですね」とか言う人がいるんです。

この理解で話を進めちゃうと話が変になってくるんです。もちろん本来のビームフォーミングの神髄は端末の居場所によってダイナミックに制御することなんですが、「まてよ、あらかじめ端末分布の濃淡に合わせて方向の重みづけしとけばいいじゃん!」とか考えちゃうと大変なことになります。たとえば、駅があるからあっちにビーム向けて、複数局のビームが重ならないように角度調整しちゃえーとやっちゃうわけですが。

もちろん障害物も何もないようなところなら、きれいに分かれてくれます。ところが実際には障害物があり、それぞれが固有の動きをするんですよ。ビルの壁はそれぞれのビルで固有の反射の仕方とかをするので、どんなに高性能なシミュレータでも予測できないような思いもよらないところに電波が飛んでいくんです。

beamforming2

こんなイメージ。左のビルに反射した電波と右のビルに反射した電波が真ん中でぶつかってる、こうなるとここは高干渉地帯になってしまいます。真ん中の干渉を減らしつつ必要な端末は狙う、と言うのが目的のはずが、真ん中にスポット的な干渉地帯を作っちゃってるわけです。実際にはこんなにシンプルじゃなく、ビルの壁の質やら窓の位置・数なんやらでいろんな反射の仕方をするし、それこそ路駐の車程度でも変わってきます。もちろん到達時の位相によっては強めあうだけでなく打ち消し合って電波がほとんど取れないということもあります。電波を一つ出すといろんな種類の反射があらゆる場所で置き、ある場所に到達した電波は数えきれないほどの反射波が重なり合った結果となります。このため、電波の波長くらいのオーダーで電波の強さがゴロゴロ変わるようなことが、特に障害物の多い都市中心部では起こりやすくなります。

実際に都心みたいなところでは、電波強度を厳密に計測して地図に落とすと、きれいな円形と言うことはまずあり得なくて、よくて足を広げたタコみたいな形、ほとんどはもっとひどくてヒョウ柄みたいなまだら模様になっているはずです。なので、ビームフォーミングと言う言葉から想像するような「地理的にビームを細めて狙う」と言うコンセプトは全く意味がないんです。

実際は、ある端末に到達する大量のマルチパスが重なり合った結果が端末のある場所で最良の結果を出すように位相制御をする、マルチパスを一つの軸としたパス空間上の仮想的な「ビーム」を作ることが、ビームフォーミングの神髄です。

beamforming3

たとえば端末が移動したとき、ビームフォーミングによる追跡と言うと左の図をイメージしてしまいますが、これは間違い。右の図のように、元々まだら模様に届く(という前提の)電波のスポットを、新しい位置でも良好な強度となるように調整する、と言うことが実際に必要なことで、その結果地理的なビームの主軸がどちらを向いているかどうかと言うことにはあまり意味がありません。もちろん、障害物によるマルチパスがそれほど強くないところでは左のようなイメージが現出する可能性は高いですが、それをビームフォーミングだと思ってしまうのは本当の意味でのビームフォーミングの威力の半分も見えていないことになります。

この考え方、PHSで早くから実現していたアダプティブアレイと考え方はおんなじなんですよね。これは上下同じ周波数を使うTDDだから早い時期から実現できていたという事情もあります。どっちの方向に向ける、と言うよりは、特定の端末からの受信波が一番良好となる位相パターンを送信に適用する、と言う形です。なので、もちろんきれいに物理的なビーム状になることもありますが、実際はヒョウ柄に近くて1mずれただけでも電界強度が急激に落ち込んでしまう、と言う可能性もあるわけです。

実は、新しい方式やメーカ独自方式などで「ビームフォーミング」と言われるものの中には単純な地理的な方位角ビームでしかないものもあったりします。一方、端末からの詳細なレポートをもとに高速で位相制御を行うマルチパスヒョウ柄模様プロファイルにも対応できるようなものもあります。このへん、どちらのビームフォーミングなのかってのはなかなか文脈からだけではわからないので、何となく「すごいビームフォーミング」と「大したことないビームフォーミング」がある、くらいに思っていればいいかなー、と言う感じです。

いずれにせよ、強いマルチパス環境では端末からのレポートに基づく高速でダイナミックな制御が必要になります。たとえば端末の移動はせいぜい40km/hで伝播距離も100mはあるだろうから角度の追従性はこんなもんでいいだろ、じゃぁダメなんですね、40km/hで走っているなら、たとえば2GHzなら波長15cmなので、15cm / 40km/h = 13.5ミリ秒後には全く別の位相プロファイルになっていることを覚悟する必要があるんですよ。

と言うような話はあまり教科書的な本でも見たことが無いので、何度か書いてきましたが、改めて、と言うことで。

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2013/5/24 10:00 · 技術解説 · (No comments)