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2011/10/19 10:00 · ニュース解説, 事業考察 · 1 comment

ドコモが今回の発表で、禁断の「制限無し自キャリア内完全音声定額」を打ち出しました。これに関して、一つ思い当たったので。いや、とっくに気づいている人も多いと思いますが。

例の新プラン、実は、Xi対応スマホ専用です。その他のスマホはもちろんフィーチャーフォンもこのプランを使うことが出来ません。Xiスマホを契約した人だけが、この新プランを利用することが出来ます。

つまり、このドコモのキャリア内完全定額、めちゃくちゃ壮大な「エサ」です。少しでも多くの人をXiに誘導するための。

なぜそこまでしてXiに誘導したいのか、それはもういわずもがな。既存WCDMA網の逼迫です。それを解消するには、周波数利用効率の高い方式に加入者を誘導することが必要です。

さらにXi(LTE)は周波数利用効率が高いだけでなく、その契約内容が実質のデータ通信従量制です。7GBを超えたら128kbps制限、たしかに月2~3GBしか使わないおとなしいユーザーにとってはさほどきつい制限ではありませんが、7GBも使うようなヘビーユーザからみたら7GB以上は使うなと言っているのと同じです。それ以上使いたかったら2GBごとに2,625円払ってね、と言う意味では、事実上のデータ従量課金と同義。

つまり、海外事業者がスマートフォンの通信量増大に耐えかねて定額制を廃止したのと同じことを、ばれないように超デカい「エサ」を使って実現しようとしているのが、このドコモのXi契約限定キャリア内通話定額です。

現実的に、1加入者あたり1GB以上にもなるといわれるスマートフォントラフィックに比べれば、音声を話し放題にするトラフィック増大なんて高が知れているわけです、今となれば。そりゃ昔は音声話し放題となれば凄まじいトラフィックがネットワークを襲うことが危惧されたわけですが、そんなものが屁にもならないくらい、今のスマートフォンたちは莫大なデータ帯域を消費してくれているわけです。

なんだかだで各社とも、回線交換コアのベースをIPに移行しつつあります。こうなると、回線交換特有のリソースの問題も、データ通信量の増大によるIPコアの逼迫と両天秤にかけて議論できるようになるわけですね。となれば、後は無線も含めて純粋なビット量の問題。圧倒的に大量のビットを消費するデータを追い出すためなら音声でそこそこのビットを発生させることもやむなし、と考えるわけです。

もちろん、ウィルコムやソフトバンクによる音声定額の実績も綿密に分析した上で、案外、大したトラフィック増にはならなさそうだ、とも考えていると思います。ヘビーな通話相手って結局は限られた友人と家族くらいしかいないので、「5000万人が定額対象」になっても影響は小さいと考えられるわけです。

ってことで、ネットワークや収益にさほどインパクトを与えずに、事実上の従量制移行をしてしまおうというのがXi音声定額の正体だと私は考えています。どうでしょ。

ところで。Xiに機種変更して契約をXi定額にして、そのUSIMを変更前の電話機に入れて使っても良いんですよね。いや確認しただけですよ。あ、でもそれだとパケット定額料がスマホ対象の料金に固定なのかぁ。よほどドコモ相手の通話が多くないと料金的に得ってところにまではならなさそうですねぇ。

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2011/10/19 10:00 · ニュース解説, 事業考察 · 1 comment

最近、いろいろなところで目にするのが、次の700/900MHz帯を誰が取るのか、と言うこと、それに付随して、これらの帯域を「プラチナバンド」と呼んで万能視する流れなのですが、これに関してはちょっと言いたいところがありまして、簡単にまとめて見ます。

700/900MHz帯の割当が近い今日この頃ですが、特にソフトバンクについて、「900MHzさえ手に入れば繋がらない問題などが全て解決する」と言う論調があまりに幅を利かせていて、これはもう完全に某氏の過剰宣伝に洗脳されているところが無くもないわけで、その辺の現実をある程度分析させていただきます。

と言うのも、900MHzを手に入れれば全てが解決する、と言うのはまず基本的には「嘘」です。確かに900MHz帯のほうが、2GHz帯よりも、電波の減衰が小さいのは事実です。しかし、過去に何度か書いたかもしれませんが、電波に関しては「飛ばす技術」よりも「飛ばさない技術」のほうがはるかに重要なんです。

もちろん出力を落とせば飛ばない、これ当たり前。なんですが、「設計どおりのところにはきっちり飛ばすけどそれ以外の場所には飛ばさない」と言うことなんです。これを行うためには、たとえば、地上2mくらいの低い位置にアンテナを置いて飛ばす、なんてことをやると完全にアウトです。

飛ばさないようにするには、非常に高い位置から吹き降ろすように電波を発射することが必要です。だからこそ、携帯電話の基地局は高い位置にアンテナを据えつけるわけです。また、鉛直面内の指向性をアンテナに持たせなければならない都合上、直列アレイ型のアンテナを使わなければなりません。

高い周波数であれば自然に減衰してくれるので、ほどほどの高さからほどほどの角度で吹き降ろせばよく、逆に低い周波数の「飛ぶ」恩恵を受けつつもきっちりと「飛ばさない」ためには高い位置から角度をつけて吹かなければなりません。細かい議論を考えればずれてきますが、これはもう大雑把に周波数に反比例すると思って良いです。

また、アンテナの素子サイズ、こちらはほぼ厳密に周波数に反比例します。それを直列アレイで並べなければならないため、アンテナ全体のサイズも周波数に反比例します。

要するに、900MHzの基地局に関しては、2GHz基地局に比べると「鉄塔の高さはほぼ2倍」「アンテナのサイズもほぼ2倍」と言うことが言えるわけです(もちろん厳密には違います)。

でこれはもう勘所の話になるので厳密な話ではなく恐縮ですが、「寸法が倍」ってことは、面積は4倍、体積は8倍です。従来の4倍の面積の土地を必要とし、8倍の重量の躯体となる、と言うことです。従来の2GHz基地局とは何から何まで違います。当然併設なんて出来る話ではありません。

つまり、ロケーションも設備もこれから新たに手当てしなければなりません。ドコモが1990年代にPDCでコツコツとエリアを広げてきた、あの努力を再現しなければならないんです。ドコモはその努力の結果、800MHzに対応したロケーションと設備を持ち、そこにFOMA 800MHzを併設することで「プラスエリア」の広大なエリアを一挙に構築できました。残念ながらソフトバンクにはそれをする基礎がありません。「ドコモがプラスエリアを広げたようにエリアを広げる」ことは絶対にありえないというわけです。もちろん、入手したウィルコムのロケーションも使えません。1.9G用の設計であるウィルコムロケーションは、2GHz帯には転用できても、900MHz帯には絶対に転用できません(聞いたところ、ウィルコムロケーションにおいているのは結局1.5G局ではなく2G局だそうです)。

最近、割当が決まってもいないのに900MHz用のロケーションの手配をしている、なんていうニュースが出ていましたが、それはもっともな話で、はっきりいって再利用できるロケーションと設備が無いためゼロからやり直し、割当をもらってから始めても何年もかかってようやく追いつけるかどうかと言うくらいに、低い周波数帯の整備は大変だからなんです。これだけの勇み足でも、おそらく当面は全く整備が追いつかないと思います。ともかく900MHz帯は、資本的コストも時間的コストも非常に高額になる帯域だということが意図的に無視されている気がするんですよね。

また、端末の問題もあります。よく「iPhoneが900MHzに対応しているからそのまま使える」と言う議論がありますが、日本の900MHzは、近くにドコモ850MHzがあるため、与干渉の基準をクリアしなければなりません。現行の標準で作ったものは(たまたまクリアできるものもありますが)基本的にこの基準がクリアできることを試験できていません。たまたまクリアできても試験を通していないものは「クリアできない」扱いで電波法違反。つまり、端末も全て準備しなおしです。

いや、一生懸命ソフトバンクを貶すばかりの議論になってしまっていますが、ちょっと最近の「900さえ取れればなんとかなる」的な論調があまりに浅薄でイラついていて、こんな感じになっちゃってるところもあって、ちょっとごめんなさいしておきます。

ちなみに、もしドコモやKDDIが900を取れたら、現行の800MHz用の設備をほぼ再利用可能なので、あっという間に全国にエリアが広がります。700も基本は同じ。

「プラチナバンド」と言って利点ばかりがもてはやされることが多いのですが、それらの利点があっても余りあるほど「高コスト」なのが、このプラチナバンド。「プラチナ」が単に「優れている」だけでなく「お値段が高い」と言う意味も含んでそう呼ぶのであれば、まさに的を射た表現ではあるんですけどね。

と言うことでプラチナバンドに関してこういう意見もありますよのお話でした。

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2011/10/3 10:00 · 事業考察, 技術解説 · 2 comments

さて、光ファイバが行き渡れば当然ながら古くて容量の小さなカッパーケーブルは不要になるから全部引っこ抜いちまえ、と言う論調があるのはご存知のとおりですが、私は(あくまで個人の意見として、ですが)カッパーケーブル全廃、あるいは部分的廃止にも賛成しかねるところでして、その辺について、論じさせていただきたいと思います。

カッパーケーブル、すなわち銅線ですが、これは、電話黎明期から通信線の主役として活躍していて、今でも固定電話の大半はまだ何らかの銅線を使った通信を使っています。まだ、データに関してもADSLのシェアは結構高いレベルを保っていて、これらがすべて光に置き換わるにはまだ相当の年数がかかることが予想されます。

その光への置き換えが達成された暁には、銅線の廃止と言う選択肢も見えてくるのでしょうが、しかし、そこには、光ファイバと銅線の明らかな「機能の違い」を無視した議論しかないように思うのです。

重要なのは「性能」ではなく「機能」、パフォーマンスではなくファンクションです。

たとえば、音楽テープがCDに取って代わられる、ということが起こる事が一部で予想されながらも、結果としては音楽テープとCDは共存し、音楽テープを置き換えたのはデジタルオーディオ装置のメモリやHDDでした。当初は、「音楽テープより音もよく容量も大きいCDが音楽テープを駆逐しない理由が無い」とと言う論調さえあったのに、そうならなかったのは、そういった議論が性能比較に終始し機能差を無視したからでした。つまり、「録音可能」と言うCDには無い機能があったからこそ、当分音楽テープは共存していったわけです。

さて、光ファイバと銅線についてもこれがいえます。この二つは、全く別の機能を持った装置であり、前提や応用が全く異なるもの、と言う点を無視した「銅線全廃論」にはどうしても待ったをかけたいわけです。

光ファイバの「機能」は、「千数百ナノメートルの波長の電磁波を低損失で伝送する」だけです。波長域は多少異なることもありますが、基本的に「電磁波を伝送する」と言う以上の機能は持っていません。

一方、銅線は、「電圧波形を伝送する」と「電力を伝送する」と言う二つの機能を持っています。前者が情報の伝送に使われ、後者は電力の伝送に使われます。しかし、同じ銅線である限り、この両方の機能を常に持ちます。電力線を通信に応用しようと言う「電力線通信」がいろんなところで実用化され、家庭で導入しているという読者の方も多いかと思いますが、その逆のことが、つまり「通信用の銅線を電力の伝送につかう」と言うことが、実はかなりの割合の家庭で普通に使われていることをご存知でしょうか。

銅線を使ったアナログ電話を使っている家庭では、これが普通に行われています。アナログ電話では、常に電話局から電力が供給されているのです。最近は多機能になったため電源をコンセントから採る電話も増えていますが、少し前の電話は、電話線を接続するだけで動作していたことを覚えている人も多いかと思います。これは、電話局から通信用電話線を通して供給されていた電力で電話機が動作していた、と言うことなんです。

このように、「情報を伝えることに特化した光ファイバ」と、「情報伝達と電力輸送の両方に使える銅線」、全く異なる機能性を備えた二つのものを比べると言うことが行われているわけで、個人的には、その二つは「比較するもの」ではなく「相補するもの」だと思うんですね。

私は、光ファイバはあくまで「高度な文化的生活を支えるオプショナル・インフラ」であり、銅線は「最低限の文化的生活を支えるマンダトリ・インフラ」だと考えています。

通信が正常に動作するには、二つの前提がそろわなければなりません。「通信媒体」と「電力」です。光ファイバは「通信媒体」を提供できますが「電力」を提供できません。一方、銅線は一つでその両方を一度に提供できます。だから、光ファイバを引っ張っても通信は開始できませんが、銅線があればそれ単体で通信が成立するわけです。

と言うと、各家庭にくまなく張り巡らされた電力網を無視するのか、と言う話も出てきます。当然、光ファイバはその「電力網」を当てにしたシステムです。光ファイバを設置する以上電力が供給されていないということはありえません。

しかし、通信の継続性、責任の一貫性、と言う観点で見るとどうでしょうか。つまり、電力が落ちるような大災害時です。

電力が落ちれば光ファイバは能力を失います。通信は完全に遮断です。また、光ファイバ自体が代替の電力を家庭に供給できるわけではありません。言ってみれば、「通信線」「電力線」と言う2系統のうち片系が落ちただけで確実に通信が落ちてしまうということになるのです。そして、重要なことですが、「通信会社が光ファイバサービス継続性全体を責任を持って管轄できない」と言う問題があるわけです。

銅線であれば、通信会社が情報の疎通を担保し、必要であれば銅線に電力を供給して通信のための電力を補填します。もちろん通信会社も電力会社から電力供給を受けていますが、通信会社は自社の責任と独自の方法で電力供給を継続する努力をすることが出来ます。電力ルートの冗長化や非常発電装置などです。そのため、重要な拠点などに特に手厚く電力供給を確保するなど、通信と電力を一貫して管理できます。光ファイバでは、電力供給は完全に電力会社の責任範疇であるため、努力のしようもありませんし、どこか特別な重視拠点を手厚く、などとしたければ、会社間の面倒な調整が必要になり、復旧に時間がかかることは間違いありません。

通信会社が通信会社自身の責任で通信の継続を保つ努力をするためには、やはり銅線は必要であると考えるわけです。通信会社だけが努力すれば銅線の通信は復旧可能であり、であれば、一刻を争う救急連絡が多発する災害発生時を想定すれば、それは光ファイバでは代替できない役割であると思うわけです。

幸い、銅線は既にほとんどの世帯に張り巡らされているため、最低限の生活を守るための基礎は出来ていると思うのですが、やはりこれは最低限のシステムとして保持し続けなければならないと思うのです。コストは大変なものになるとは思うのですが、それこそ、NTT東西に課された責任と考えます。

銅線の全廃とは、つまり、「通信は電力よりも重要度の低いインフラ」と改めて定義しなおすということと等価であると考えます。従来は、通信事業者の自らの責任で一貫したインフラとして管理・維持されていたものを、「需要者が電力を準備することを前提」とし、つまり、不通の事態に「需要者が電力を用意してくれないから」と言う言い訳を許す一ランク低いインフラと再定義するものです。電力や交通などの社会インフラではそんな言い訳は許されません。

私自身が通信に対してあまりに高尚なものを期待しすぎているきらいがあるのは百も承知ですが、通信業界に関わる身にあっては、やはり「通信とはこうあってほしい」という理想を語らずにはいられず、こうやってまとめてみました。いろんな考えがあるとは思いますが、こんな考えもありますよ、と言うことで。それでは。

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2011/10/3 10:00 · 事業考察, 技術解説 · 2 comments

メールで頂いた疑問についての話です。頂いた質問の趣旨は以下のとおり。

イオンSIMを使っているが、ある場所で圏外となるため、エリア要望を出そうと思った。サービスのページでは「エリアはドコモのページで確認しろ」となっているためドコモのページで確認してみるとエリア内。なので、そこからエリア要望をドコモに送付したら、ドコモから「イオンSIMの人の要望は受け付けていません、提供元の日本通信にどうぞ」と門前払い。インフラ整備はドコモがやっているはずなのに、ドコモが受け付けないのはおかしいのではないか。

と言う感じ。ドコモのエリアのことをドコモに問い合わせて何が悪い、って事なんですが。

この話、二つの面での謎解きが出来そうです。一つが「事業者としての責任分界点」、もう一つが「顧客サービス」。

まず、責任分界点の話。要するに、MVNOとしてサービスをする事業者と、そのMVNOにネットワークを貸すMNO事業者の間で、どのように責任を分担しているか、と言う話です。

MNOは、MVNOに対してネットワーク機能の一部を貸すことを責任として負っています。ですから、ネットワーク、つまり、回線やエリアに関しては、MVNOに対して説明する責任を負っているわけです。しかし、MNOはMVNOの加入者に対しては何も責任を負っていません。MVNO加入者に対しては、MVNO事業者が窓口となる責任を負っているわけです。

このような責任の分界になっている理由の一つは、MNO事業者と末端加入者との間に契約関係が無いからです。エリアの確認となると、当然ながら、その加入者がどのエリアでどのように移動した結果なのか、と言う点も確認する必要が出てくることがあります。しかし、MNOは末端加入者のそういった情報を自由に扱ってよいという許諾をもらっていないので、やりたくても出来ません。

ですから、この場合は、契約関係のあるMVNOが窓口となり、MVNOが加入者の代わりにMNOに対して調査することを許諾し、MNOが調査した結果をMVNOに伝えて、最終的に末端契約者に情報が提供される、と言う形式を取るしかないわけです。

MVNOがMVNOであり単なる代理店ではない理由はこういったことにあります。MVNOはMNOに対して自分の顧客の情報を一切開示する必要が無いのです。開示しなければならないのは、自分が借り受けるネットワークに対して接続するであろう端末の情報だけ。MVNOは責任を持ってその端末と加入者の情報を管理し、それらを契約で保護することが必要なわけです。

と言うことで、もしドコモが直接の問い合わせに対して答えてしまうと、MVNOに対する越権行為になります。契約関係なしで調査を行うと個人情報保護法違反になる可能性さえあります。と言うことで、ドコモ的には「やりたくてもやれない」と言うのが答え。

それからもう一つ、顧客サービス的な視点で考えると、たとえばドコモは、エリアの不満に対して48時間以内の駆けつけサービスを行っています。これは、ドコモの加入者に対する特別サービスです。ドコモの加入者以外の人にはそういったサービスを行いません。

そして、MVNO加入者は当然ドコモの加入者ではありません。そして、ドコモから見れば、MVNOは立派な「競合事業者」です。MVNOとは、MNOも含めて公平に競争することが前提で作られた制度ですから、当然です。競合事業者の満足度向上のために自社のリソースを消費するかというと、それはありえません。ドコモがソフトバンク加入者に対してエリア調査をしてあげるようなものと同じ話です。たとえネットワーク自体は同じものとしても、タテマエ上は「別の通信網による別の通信サービス」なんですよね。本当は「ドコモのネットワークを使っています」なんて書いちゃうこともよろしくない、と言うレベルのもののはず。なんせ競合事業者のインフラの評判にただ乗りしようってんですから。

そんなわけで、ドコモとしては、ライバル会社に手を貸してあげるなんてもってのほか。一方、大切な顧客であるMVNO(日本通信)様から問い合わせがあれば、そりゃもう手取り足取りサポートします。「顧客である日本通信」と「競合である日本通信」をきっちりと割り切る必要がある、と言うことですね。

と言うことで、イオンSIMのサービス利用者がドコモに問い合わせをしても冷たくあしらわれるのも、道理と言えば道理なんですね。とはいえ、そこで逆にドコモとして暖かく対応することで、ドコモのイメージアップにつなげ、ドコモネットワーク利用のMVNO利用者の満足度を上げる、と言う間接的な満足度アップにつなげるという芽もあるのに、もったいないなぁ、と思う気持ちも無きにしも非ず。と言うことでMVNO加入者へのドコモの対応についてでした。

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セブン-イレブン 23区1200店に非常用電話と言うニュースに関して、災害時に繋がりにくくならない回線ってなんなんでしょう、と言う趣旨のご質問をいただきましたので、簡単に。

えー、ざっくりと言ってしまうと、基本的には、日本の通信事業者は法令に従って「災害時優先電話」の仕組みをみんな備えています。なので、災害時に繋がりにくくならない電話としては、どの事業者の回線を使っても同じです。

もちろんNTT東西も優先電話システムを持っていますので、その回線をセブンイレブンに引っ張って配備すればOK。これで疑問は解決ですね。よかったよかった。

・・・と言いたいところですが、法令ではもう一つ決まりがあって、それは、「優先電話が置けるのは法令で定められた対象だけ」となっています。それは、救急・消防、警察、自衛隊、ライフラインインフラ事業者、新聞・通信・放送事業者、その他の防災機関、と言う感じになっています。どう考えてもセブンイレブンはこれに該当しません。

それはそうで、元々法令で優先電話を決めたのは、こういった機関の通信を確保したいからで、こういった機関以外にも無節操に優先電話をばら撒いていては、そもそもの「優先したい」と言う目的を達成できなくなります。優先電話同士で輻輳が起きてしまうからです。

さてこういった縛りがある中で、どうやってセブンイレブンへの災害用電話配備を成し遂げたのか。私は、二つの方法のどちらかだと思っています。

一つ目は、NTT東日本の独断で、セブンイレブンの1500店舗を「その他の防災機関」に指定した、と言うもの。対象の指定は、実は事業者の判断に委ねられています。もちろんあんまり外れたことをやると怒られるんでしょうが、災害時の通信用スポット、と言う考え方であれば、それがたまたまセブンイレブンでした、と言い張ることはさほどおかしいこととは思えません。

もう一つは、公衆電話。実は、公衆電話は、優先電話に指定されています。それは、災害時などの通信用スポットとして機能させるため。また、公衆電話自体は事業者自身の持ち物なので、「優先電話を該当しない団体に与えた」と言うことになりません。であれば、そういった「公衆電話」がたまたまセブンイレブン1500店舗にくまなく配備されているんです、と言う言い分でこのサービスを実現することが出来ます。

と言うことで、上記のどちらかで実現しているんだろーなー、とは思うのですが、ここから先はよく分かりません。多分後者かなぁ、と言うくらい。と言うことで、災害用電話のコンビニ設置のからくりについての考察でした。でわ。

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2011/9/16 10:00 · 事業考察, 海外動向 · (No comments)

直接通信のネタではないんだけど、通信とのコラボが期待されつつもなかなか普及しないシステム、電子カルテについて考えます。

電子カルテは、単に各病院でカルテを電子化する、と言う話ではなく、それをオンラインに置き、複数の病院が同じカルテを共有できるシステムのことを特に指すことが多いように思いますが、日本ではそういったタイプの電子カルテが全く普及しません。

電子カルテが実現すれば、病院を移るたびに診療情報提供書を抱えて右往左往する必要もないし、他の病院での治療・処方がすぐに参照できるので、それにあわせた治療計画を立てることが出来ます。しかし現状は、別々の病院で別々の治療をする場合、特にどちらかが全身性疾患の治療である場合は、処置や投薬のたびに患者自身が診療情報提供書を持って何往復もするハメになります。

マルチクリニック電子カルテが実現することによる恩恵は明らか過ぎるほどに明確なのに、なぜこれがいつまでたっても普及しないのか。考えるに、「有力な旗振り役がいない」と言うことに尽きるような気がします。

最近読んだある医療関係の記事によると、アメリカでは数百万~一千万人規模の病院間電子カルテシステムがいくつも稼動しているようです。もちろんそれぞれのシステム間での連携はまだ出来ないでしょうが、各病院の患者数とこの規模を考え合わせれば、数十から数百以上の病院で同じカルテが参照できるシステムがいくつも動いていることになります。

こういうことが日本でどうしても遅れているのはなぜか、と言うことを考えると、そこにはアメリカ独特の事情と日本の事情の違いがあることに気がつきます。アメリカは国民皆保険ではなく、個人個人が好きな健康保険会社を選んで加入する仕組み、と言うところがポイントのような気がします。

アメリカの健康保険会社は、財務上の要請と競争上の要請から、医療費を抑えるモチベーションが強く働きます。そのとき最も有効なのは、できるだけたくさんの治療記録を集めてコストが低く効果の大きい治療を見つけ出し、その治療に対する配分を大きくする、と言う戦略。もちろん、加入者の身体状況に対する保険料率の決定においても、できるだけたくさんの記録を持つことが重要になります。

となると、そういった治療や身体状況の記録が一まとめになっている情報源としては、病院のカルテこそが最も適したソースになりうるわけです。であるからこそ、多少の費用をかけても、加入者がかかるであろう病院に自社の電子カルテシステムを押し込んで、患者の電子カルテを一元管理しようと言うモチベーションに繋がるわけです。

これを日本で考えると、そういったモチベーションを起こすところがありません。保険料率はいろいろなしがらみでほぼ一律、対象治療と診療報酬は監督官庁が臨床試験に基づき決定し、負担額は横一線で競争要素はゼロ。これでは、わざわざコストをかけて健康管理に精を出そうという健康保険会社は現れません。

だから日本では監督官庁(つまり厚生労働省)こそが、電子カルテシステムを導入して保険負担を減らす「経営努力」をしなければならないはずが、返さなければならない借金も無く競争相手もいないと言うぬるま湯にいるためにそういった有用なシステムの導入に意識が向かない、と言うことになります。

で、なんだかだで通信事業者や電子カルテシステム屋さんなどが率先して電子カルテシステムの試運用をしていたりするのが昨今の日本の状況。といって、たとえば通信事業者などが旗振り役になりうるか、と言うと、やっぱりなりえません。

通信事業者は、そういったシステムから通信料収入と言う上がりがあることを期待しています。それを払うのは誰?ということ。現状問題なく運用できている病院がわざわざそれを支払う必要は全くありません。むしろ、「システム移行を嫌がる病院に無理やり電子カルテを押し付けてくれる旗振り役」が必要なはずなんです。当然その場合、旗振り役が最終的には通信料やシステム導入費などの一部または全部を負担することになるわけです。これを通信事業者自身がやることはありえないですよね。自分がもらう通信料を自分が払うってことですから。

だから、通信事業者や電子カルテシステム屋さん以外で、電子カルテを導入することで非常に大きな見込み利益が期待できる「旗振り役」が必要で、それが日本には存在しない、と言うのが、日本で電子カルテが普及しない最大の理由であると考えます。今後、病院単位でカルテをクラウド化するモチベーションは徐々に起こるでしょうが、「他の病院と共通にする」モチベーションは絶対に起こりません。自病院の過去のカルテとの後方互換のほうがはるかに重要ですから。あらゆる病院のあらゆる種類のカルテを包含できる電子カルテシステムなんてものを作れるとしても、そのあまりのインターフェースの複雑さにやはり誰も導入しないということになるでしょう。

ってことで、一般の通信市場が飽和しつつあり、M2Mと合わせて次のフロンティアかもしれないといわれることもある「医療」ですが、電子カルテの普及と言うのはなかなか進まないかもなぁ、と思いますのお話でした。

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2011/9/16 10:00 · 事業考察, 海外動向 · (No comments)
2011/9/9 10:00 · 事業考察 · (No comments)

小ネタ。ケータイやスマートフォンで、外部メモリカードに対応したものがもはや普通になってきていますが、そんな中で、メモリカードのスロットがバッテリカバー内部にあるものが増えています。これはなぜかを勝手に考えるの話。

もう8割9割くらいは、そういう機種になっている気がします。バッテリカバーを開け、バッテリを取り外さないとmicroSDカードの取り付け・取り外しが出来ない機種。そうすると、いちいち電源を切らなきゃならない、入れなきゃならない、でかなり不便に思っている人が多いのではないかと思います。

さてなぜこんな面倒なことに。昔のケータイでは、すぐに取り出せる位置にメモリカードスロットがあることが多かったのですが、徐々に変わってきました。その辺が鍵と言えるかもしれません。

これが正しい答えだとは断定できませんが、私が考えるに、これは「ソフトウェアのコストダウンのため」と考えています。

電源が入った状態で外部デバイスを接続・切断するというのは、ソフトウェア的には結構めんどくさい仕様です。たとえば昔のWindowsではデバイスをつけるたびに再起動が必要だったりしましたが、その再起動が不要になったというだけで一大フィーチャー扱いでした。そのくらいめんどいんですよ。

いや、既に作ったことのあるソフトならコードを流用すれば、と言う話も出てくるとは思いますが、なんつっても面倒なのは、テストですよ。特に最近のケータイは、何百何千と言う内部ステートを持っていて、そのあらゆる場面でmicroSDが取り付けられたり取り外されたり、と言うイベントが起こる可能性があり、それらをすべてテストしなければなりません。

同じコードを使ったからと言ってこういったテストを省けるということはなく、新しい機種を作るたびにすべての状態をテストしなければならないわけで、たとえば仮に内部ステートが3000あって、それぞれに取り付け・取り外しなどなどのテストの実施、それぞれに起因するサブステートのテスト、そしてレポート作成で各2時間かかるとすると、大体こういったテストの工数単価は5000~10000円ですから、3000万円~6000万円、+管理コスト、と言う感じになってきます。

一方、バッテリを外さなければならないところにスロットをつけるだけで、メモリの取り外しは必ず電源OFF時になりますから、ソフトウェアのテストをする必要は一切ありません。単にスロットの位置を変えるだけで3000万~6000万のコスト削減になる、となれば、そりゃぁみんなそっちを選ぶわけです。

Androidスマートフォンなんて、Android OSの細かい動きまですべて把握できているメーカのほうが少数派(と言うか実質いないんじゃないかな?)でしょうから、もうどこまでテストをしてもきりがない、と言うくらいにテスト工数が膨らんでいるはずです。であれば、少しでもテスト工数を減らすために、microSDスロットをバッテリカバー内において電源ONの状態で取り付け・取り外しが出来ないようにしてしまおう、と考えてしまうのも無理からぬことのように思われます。

ということで、microSDカードが取り付けにくい位置にあるのは、メーカがめんどいから、ってことで。たまにはmicroSDが取り付け取り外しし易い、ってのを売りにした機種が出てくれてもいい気はするんですけどね。

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2011/9/9 10:00 · 事業考察 · (No comments)
2011/8/30 10:00 · 事業考察, 技術動向 · (No comments)

さて先日のインフラ力分析を受けて、「インフラ最強のドコモとはいうけど、実際に使っていると印象が違うがどういうことだろうか」と言うメールをいただきました。

具体的には、レスポンス。RTT。要するに、インターネット接続をして使っているときの、そのレスポンスの速さで言うと、ドコモはいまいちだというお話です。

実は私もそれは認識しています。ちょっと古いデータですが、全社のpingデータを取った2年ほど前の記録によると、ドコモが120ms台、auがもう少し遅くて180近く、ソフトバンクがさらにやや遅くて200ms台、イーモバイルは90ms前後くらい、ウィルコムが6、70ms程度、と言う結果が出ています。詳しくはレスポンスを比べてみるをご覧下さい。

実のところ、インフラの強さとユーザエクスペリエンスはそのまま比例はしません。インフラの強さ弱さよりも、無線方式、ネットワークアーキテクチャ、そして何より事業者ポリシーによるところが大きいからです。たとえば、あるノードのポリシーについて、「輻輳を起こし易くなっても良いからレスポンスを最優先する」と言う設定もできるし、「輻輳を出来るだけ防ぎそのためにレスポンスを犠牲にする」と言う設定も出来ます。輻輳だけでなく、バルクのスループットだったり収容セッション数だったり、レスポンスのトレードオフになる要素は山ほどあります。

上のリンク記事の中にも軽く書いてありますが、たとえばドコモとauのレスポンスの差は、ほぼ100%、方式による差であると特定できます。一方、同じ方式のドコモとイーモバイルの差、これについては、ネットワークアーキテクチャとポリシーの差です。

ドコモは、イーモバイルに比べると圧倒的に多数の加入者を抱え、パケット接続トランザクション数で言えば100倍では足りないでしょう(iモードによるこまめな接続・切断が繰り返されるため)。くわえて、IP接続契約者数から推定すれば音声ユーザは1000倍の規模に近いはずです。

携帯電話サービスでは、パケットよりも音声を優先するのが基本です。少なくともWCDMAでは音声もパケットも全く同じ無線帯域を共有するので、音声が多ければその分パケットを我慢しなければなりません。我慢するにも単に割当を小さくする方法もありますし、あるいは、できるだけ無線ペイロードぎりぎりの大きさにまでデータを貯めてから送信することでパケット占有率を下げるとう方法もあります。つまりパケットを最適化する過程で「待つ」と言う動作をあえて入れているためにレスポンスが落ちるということはありうるんですね。

こういった原因でのレスポンスの低下はもちろん一例に過ぎませんが、ネットワークにどの程度余裕を持たせるか、パケット通信のためにどの程度処理能力や有線/無線リソースを無駄づかいしても良いのか、そういった事業者ポリシーにより、レスポンスを調整しているという面があるわけです。

そういった中で、たとえばUQやイーモバイルなどの(実質)データ専業事業者では、データに特化することで数々の頚木を逃れ、思い切ったレスポンス向上の設定をすることが出来る、と言うことができます。

と言うことで、質問者の方も、WiMAXやイーモバはかなりレスポンスが短いけどドコモはどうしようもなく遅い、と書かれていましたが、莫大な音声加入者数を持つ以上、データ専業事業者に対してデータの性能で上回るのはさすがに難しい、と言えます。

もちろん、こういった理由も無く、本当に単なるインフラの弱さのためにレスポンスやセルスループットを落としてしまうようなことも起こりうるわけです。ただ、もし「インフラの弱さ」がレスポンスの低下を起こしているのなら、その場合は時間によってそれが大きく変動します。レスポンスでいうなら、極端に言えばレスポンス時間が有限の値から∞(レスポンスが返ってこない=パケットロス)の間でふらつくような状況(要するにランダムなパケロス)というのは確実にインフラの弱さです。逆に、レスポンスが多少遅くても時間帯に寄らず一定しているのなら、そのインフラはきわめて強いと言えます。インフラの強さを測るには、絶対値よりもその揺らぎの大きさを見るべき、と言うことです(もちろん、サービス利用者としては要件として絶対値を見るのが当然ですが)。

取り留めなくなりましたが、要するに、技術もポリシーも違う中ではさまざまな性能の絶対値自体はさほどインフラの強さを反映せず、むしろその与えられた絶対値がどれだけ安定しているかと言う方がインフラの強さを反映するのです、と言うことが言いたかったわけで。100Mbps出ます!と謳うサービスの実効速度が日によって10Mだったり90Mだったりするよりは、1Mbps出ます!と言うサービスが毎日変わらず1Mbpsで安定しているほうが「インフラの力がある」と言える、と私は考えます(自身のNWの実力を正確に把握できているという意味でも)。

もちろんベストエフォートのパケット通信で、サービスレベルの補償をしている例はまず無いと思いますが、最大瞬間風速よりもいかに必要な時間・必要な場所で必要な性能を安定して得られるかを重視する、と言う選び方もあります。最大瞬間風速をたたき出すのは比較的簡単ですが、安定した性能を出すことは非常に難しい、そこがインフラの底力として見えてくるわけです。そういった強さがありそれが評価されたからこそ、ミッションクリティカルな用途、たとえばIC決済自販機やタバコ自販機のTaspo対応などで、ドコモが選ばれる、と言うような結果となって見えてくるわけです。

と言うことで、インフラが強いはずのドコモなのにレスポンスがよろしくないのはなぜ、というところについて簡単に自説展開のひとことでした。でわ。

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2011/8/30 10:00 · 事業考察, 技術動向 · (No comments)