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小ネタ。[ZTE ジャパン] ZTEがWireless City Planningに納入したAXGP基地局が2011年11月に商用予定と言うニュースに関してのコメントで、「ICICやCCIAは自律分散じゃないか」との指摘があるとの話、どう思いますか、と言うメールをいただきました。

さて、元々のPHSの自律分散機能とは、基地局が隣の基地局の電波を自分で受信し、それを邪魔しないように自分の居場所を見つける、と言うような機能と、端末に通話チャネルが割り当てられるときに、一定時間キャリアセンスを行ってチャネルが空いていることを確認する、と言う機能の二つを指しています。

一方、件のリリースに書いてある「ICIC」と「CCIA」と言うのは、標準技術的なものであると仮定すれば、隣同士のセル(基地局)が、お互いに自分が使っているリソース情報を交換して、リソースの使い方を変える、と言う技術です。つまり、基地局同士が接続され協調するという意味では「自律分散」ではなく、汎セル・リソース制御とでもいうべきものです。

具体的に何をするかと言うと、LTEで定義されているリソースブロック(RB)の単位で自分がどこを使っているかを隣接セルに通知し、隣接セルはそれに基づいて同じ周波数&スロットを占有するRBの電力を落として距離の近い端末に割り当てる、と言うようなことをします。こうすることで、お互いにセル端にいる端末に同じRBを高い電力で割り当てて干渉してしまうことを防ぐわけです。

CCIAについては標準の用語ではないようですが、標準でこれに該当しそうなのは、セルIDとRACHの割り当ての協調機能。セルIDは、それによってセルから常時送信しているリファレンス信号の位置が決まるため、セルIDをお互いに被らないようにすることで干渉を減らせますし、RACHは端末から基地局への最初のアクセス信号、これを送信可能なタイミングは基地局が決めるのですが、これもタイミングが被らないように協調することで端末の信号同士が混信してしまうのを防ぐことが出来ます。これを総称してCCIAとしているのだと思います。

つまり、LTEの協調機能は全然「自律」じゃないんですね。他律。あくまで他律。相手から教えてもらった情報を元に動作を変えるもの。そしてもっと重要なのは、そうやって隣同士を関連付けること自体には技術の入り込む余地がありません。「どのセルとどのセルが隣り合っているか」と言うのは、人手で決めるしかないんです。もちろん、「隣接セル情報の自動更新」と言う機能も標準で定められていますが、この場合の「隣接セル」とは「ハンドオーバ可能な隣接セル」のことであり、「セル端の干渉協調をするための隣接セル」とは全く別物になってしまうことが予想されます。と言うより、仮にハンドオーバ可能な全ての局と干渉協調関係を結ぶと、それが積み重なってあらゆるリソースが制限対象になってしまい、まともに動かなくなると思います。あくまで特別なパートナーシップを結んだ局同士での協調。

と言うことで、そういう設計が必要と言う意味でも「自律分散」とは程遠いんですね。PHSの自律分散は、実際に電波を受信してみて邪魔になっているかどうかで判断します。だから設計不要。その代わり、「受信してみる」と言う動作に非常に長い時間がかかるため、接続が遅い、移動に弱い、広帯域化しにくい、などなどのデメリットも出てくるわけです。

ちなみに、ICICなどは標準化されていますが、実際は標準化されていないのと同じ。一番重要な、「隣からこういう情報が来たらこう動く」と言うところが白紙です。つまり、そういったアルゴリズムは、キャリアやベンダが自分で決めなさい、と言うこと。となると、この機能を有効に働かせるためには、全ての基地局ソフトウェアをキャリアが開発するか、同じエリアは同じベンダの基地局で統一するかしないといけないということになります。非常に使いにくい技術なんですね。ってことで、一部の例外を除き大抵はエリアごとにベンダを統一し、こういった独自機能をうまく使う方法で進めているようです。

以上、LTEの局間協調機能に関する小ネタ。でした。

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2011/10/27 10:00 · ニュース解説 · 1 comment

小ネタ。「iPhoneのモデムチップがMDM6610で、auのHIGH SPEED対応のARROWS ZがMDM6600で、後継チップ使っているはずのiPhoneがHIGH SPEED対応していないのは納得いかない」(意訳)とのことです。

すみません、正直、チップ屋のラインナップポリシーは分からないんですが、Qualcommに関しては、数字が大きければ単純に機能が多いというものでもなかった気がします。最初にデモンストレーション的な意味で全部いりスペシャルチップ出して、機能削ってコストを安くした版を後から出す、ってこともあった気がする。

ので、ひょっとすると、6610はHIGH SPEED (Rev.B)対応を削った版かもしんないですね。Rev.Bって結構でかいバージョンアップだから回路規模もかなり大きくて、それ削るだけで全然コストが違う、なんてことは十分にあるかも。受信帯域幅が3倍なのでアナログ回路にも大きな影響がありそうだし。あるいは、6600に対してRev.Bを削って空いたダイ容量(?)にUMTSを入れた、とかかも。

よくわかんないですが、6610が単純に6600の機能アップ版と言うものでもなさそうなので、UMTS対応&機能限定版か、あるいは、アナログ回路部分のコスト削減のために機能をOFFにしてあるか、って感じかなぁ、と。

ついでに小ネタその2。「iPhone4Sのau版で○が出て速度が遅くなるのは一体何?回避方法はないの?」と言うご質問。

なんなんでしょうね、あれ(笑)。いや、多分1xに落ちてるんだろうって言う話は処々で出ていて、まぁ多分その通りなんでしょうけど、「1x」って表示しないで「○」ってところが、微妙な笑いを誘います。

で、1xってのは回線交換ベースのシステムで、と言ってももちろんパケット通信(的な)システムも持っていて、その最大速度が一応144kbpsなので、速度がかなり制限されてしまう、と言うのはその通り。

なんですが、噂になっているほどの高確率で出るようなものじゃないと思うんですけど。ってのが、私も、iPhone4Sと全く同じ無線構成、つまり2GHzと新800MHzしか対応していないEVOを常用していて、1xになっていることってほとんど無いんです。

1x表示を見るのは、地下鉄でトンネル内の圏外状態におちて、その後次の駅が見えてきたときに数秒間だけ1x表示が出ます。その後、すぐに3G表示に変わって、普通の3G通信が出来るんですよね。それ以外の場所で1x表示を見たことが無い。

ただ、この地下鉄のとき、1x表示になった瞬間にブラウザのリンクをクリックしたりすると、もちろん1xで通信が始まるんですが、この通信が終わって落ち着く(つまり休止状態=ドーマントになる)まで、1x表示を引っ張る傾向があります。1xからEVDOへのアクティブ状態での遷移ってのはあまりうまく出来ないのかも(出来ることもたまにあるので)。一応違う搬送波なので、周波数間ハンドオーバになり、つまり、別周波数メジャメントって言うめんどくさい動作が必要になるので、確かに1xがアクティブに通信中は遷移しにくいのかも知れません。

でもなぜiPhoneでは噂になるほどこれがおきているのか。不思議です。多分、ですが、一応、完全なTDMAのEVDOと違って、1xは拡散方式なので拡散利得があり、その分わずかながらEVDOよりエリアが広いことが考えられます。そこにきて、iPhone4Sでもおそらくデスグリップ問題は存在します、筐体がアンテナである以上は確実に。今回はダイバシティ受信でデスグリップ問題の顕在化を回避するようになっていますが、パイロット信号(待ち受け信号)を受信するときはダイバシティは働かないはずなので、このデスグリップで受信感度が劣化し、結果としてわずかに優位な1xを掴んじゃうケースが増えているのかも。←大嘘書いてるかもしれないのでご注意。

と言うことで小ネタ二連発でした。

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2011/10/27 10:00 · ニュース解説 · 1 comment

先日、ドコモが災害対策用の大ゾーン局を展開するというニュースに関して、ご質問を頂いています。

曰く「基地局→端末の電波は届いても、端末→基地局の電波が届かなくなったりしないのか」「セルエリア内に大量の端末が含まれることになるがそれだけの同時接続に耐えられる技術があるのか、もしあるならそれを普通の基地局に適用できないのか」。

まず第一の問題、電波が届くのかどうか。これは、前に技術解説でも書いたリンクバジェットの考え方が必要です。つまり、「無線回路設計」です。

無線回路設計では下りのリンクバジェットと上りのリンクバジェットを計算し、それがきっちり平衡するようにします。下りのリンクバジェットが大きすぎれば基地局のパワーを落としたりして調整するなんてことをします。その前提で、この大セルが出来るということは、きちんと上りと下りのリンクバジェットがバランスできる条件になっているといえそうです。

通常、狭いセルの下にいる端末は、規定で定められた最大パワーを使うことはほとんどありません。相当な余力があるのが普通です。なので、まずは単純に、WCDMA規格の中の電力制御だけで上り下りの不均衡の大部分を是正することが出来ます。

また、もう一つリンクバジェットで重要なのは「受信感度」です。受信感度と一言で言ってもその中にはいろんな要素があり、無線デバイスの本当の受信感度にくわえて、ダイバシティ受信などの受信技術で受信感度を積み増しすることも出来ます。

受信感度の最大の敵は、自己干渉。機器自身が出すさまざまな電磁ノイズが受信機に回り込んで受信感度を下げること。これを防ぐことは実は簡単で、そういった回り込みを避ける非常に高級な設計にすれば良いわけです。もちろんこれは大変なコストになりますが、この大ゾーン局採用の部品は災害用専用設計の特注品で単品コスト度外視で作っちゃおう、と割り切るだけでOK。要するに災害用大セルでは非常に高価なデバイスと非常に高価な設計を使うことで受信感度を極限まで高めて、上りリンクバジェットの不足を補っていることが想像できます。

と言うことで、要するに、非常に高性能の電磁気回路を使うことで、端末→基地局の電波の通りが悪くなる可能性は防げます。元々、基地局って結構たくさん使うものなので、受信感度はある程度妥協してコスト低減するものですが、コストさえかければ受信感度はいくらでも上げられるわけで、この大ゾーン局のような実質一品もの(と言っても全国100台ほどありますけど)は相当お高いものを使ってもコストインパクトはさほど大きくありません。

次に、セル内にたくさんの端末がいることによる問題。残念ながら、こればかりは解決法はありません。いくら基地局の処理能力を高めても、信号干渉比とエラー率の関係は崩せません。信号干渉比、つまりSIRは、ある端末の信号が、他の端末の信号の合計に対してどの程度の強さか、と言う値。つまり、端末の数が増えれば、単純にこの比率は落ちていきます。

SIRは、理想的な電力制御が出来ていて、10台いれば1/10、100台いれば1/100です。一方、エラー率とは、無線上のビットが劣化・干渉などの原因でどの程度潰れて読めなくなるかと言う比率。単純比例ではありませんが、SIRが増えればエラー率も増えるという単調な関係がありますし、情報理論上の限界値も明らかになっていて、それ以上の通信品質は物理的に絶対に得られません。

つまり、どんな技術を使っても、宇宙の法則を崩せないのと同じ理由で、究極的に同時に通信できる端末の数を増やすことは出来ません。もちろん通常はその前に基地局の装置処理能力の限界のほうが先に来ちゃうわけですが、東京みたいな超密集地であれだけの大セルを動かせば、物理的な限界が先に来る可能性も十分にあります。

現実には、やはり「緊急じゃない通信にはご遠慮いただく」と言う原則で運用するんじゃないかなぁ、と思います。緊急通報と優先端末以外にはかなりきつい発信制限をかけるという感じで。WCDMAなのでサイコロ方式ではなく循環方式、利用者からみれば、一定時間ごとに一定の確率で発信できるチャンスをもらえる、と言うことになります。

元々、携帯電話のシステムって、セル(基地局)一個で10kmとか30kmとかをカバーする前提で作ってあるんですよね。その前提は最新の仕様の諸所にも痕跡を残しています。現実には、デジタルデバイスが極端に値下がりしたため、安い無線デバイスを使った安い基地局で小さなセルを多数並べたほうがコスト的にも容量的にもお得という状況になったので、1セルが1~2km以下と言うのが一般的になっています。別にドコモの超大ゾーン局、無線方式的にはイレギュラーでもなんでもなく、むしろクラシカルでオーソドックスな使い方なわけで、容量以外に関しては無線技術的には難しいところはありません。

まぁそうは言っても、日本のような過密都市ではビル陰などの不感地帯が多発するため大ゾーンセルは通常サービスには向きません。あくまで緊急用として、こういった超大ゾーン局ですっぽりと覆っておくというのは一周回って面白いアイデアだと思います。

ってことで、ドコモが大ゾーン災害対策セル展開についての解説でした。

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2011/10/19 10:00 · ニュース解説, 事業考察 · 1 comment

ドコモが今回の発表で、禁断の「制限無し自キャリア内完全音声定額」を打ち出しました。これに関して、一つ思い当たったので。いや、とっくに気づいている人も多いと思いますが。

例の新プラン、実は、Xi対応スマホ専用です。その他のスマホはもちろんフィーチャーフォンもこのプランを使うことが出来ません。Xiスマホを契約した人だけが、この新プランを利用することが出来ます。

つまり、このドコモのキャリア内完全定額、めちゃくちゃ壮大な「エサ」です。少しでも多くの人をXiに誘導するための。

なぜそこまでしてXiに誘導したいのか、それはもういわずもがな。既存WCDMA網の逼迫です。それを解消するには、周波数利用効率の高い方式に加入者を誘導することが必要です。

さらにXi(LTE)は周波数利用効率が高いだけでなく、その契約内容が実質のデータ通信従量制です。7GBを超えたら128kbps制限、たしかに月2~3GBしか使わないおとなしいユーザーにとってはさほどきつい制限ではありませんが、7GBも使うようなヘビーユーザからみたら7GB以上は使うなと言っているのと同じです。それ以上使いたかったら2GBごとに2,625円払ってね、と言う意味では、事実上のデータ従量課金と同義。

つまり、海外事業者がスマートフォンの通信量増大に耐えかねて定額制を廃止したのと同じことを、ばれないように超デカい「エサ」を使って実現しようとしているのが、このドコモのXi契約限定キャリア内通話定額です。

現実的に、1加入者あたり1GB以上にもなるといわれるスマートフォントラフィックに比べれば、音声を話し放題にするトラフィック増大なんて高が知れているわけです、今となれば。そりゃ昔は音声話し放題となれば凄まじいトラフィックがネットワークを襲うことが危惧されたわけですが、そんなものが屁にもならないくらい、今のスマートフォンたちは莫大なデータ帯域を消費してくれているわけです。

なんだかだで各社とも、回線交換コアのベースをIPに移行しつつあります。こうなると、回線交換特有のリソースの問題も、データ通信量の増大によるIPコアの逼迫と両天秤にかけて議論できるようになるわけですね。となれば、後は無線も含めて純粋なビット量の問題。圧倒的に大量のビットを消費するデータを追い出すためなら音声でそこそこのビットを発生させることもやむなし、と考えるわけです。

もちろん、ウィルコムやソフトバンクによる音声定額の実績も綿密に分析した上で、案外、大したトラフィック増にはならなさそうだ、とも考えていると思います。ヘビーな通話相手って結局は限られた友人と家族くらいしかいないので、「5000万人が定額対象」になっても影響は小さいと考えられるわけです。

ってことで、ネットワークや収益にさほどインパクトを与えずに、事実上の従量制移行をしてしまおうというのがXi音声定額の正体だと私は考えています。どうでしょ。

ところで。Xiに機種変更して契約をXi定額にして、そのUSIMを変更前の電話機に入れて使っても良いんですよね。いや確認しただけですよ。あ、でもそれだとパケット定額料がスマホ対象の料金に固定なのかぁ。よほどドコモ相手の通話が多くないと料金的に得ってところにまではならなさそうですねぇ。

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2011/10/19 10:00 · ニュース解説, 事業考察 · 1 comment

最近、いろいろなところで目にするのが、次の700/900MHz帯を誰が取るのか、と言うこと、それに付随して、これらの帯域を「プラチナバンド」と呼んで万能視する流れなのですが、これに関してはちょっと言いたいところがありまして、簡単にまとめて見ます。

700/900MHz帯の割当が近い今日この頃ですが、特にソフトバンクについて、「900MHzさえ手に入れば繋がらない問題などが全て解決する」と言う論調があまりに幅を利かせていて、これはもう完全に某氏の過剰宣伝に洗脳されているところが無くもないわけで、その辺の現実をある程度分析させていただきます。

と言うのも、900MHzを手に入れれば全てが解決する、と言うのはまず基本的には「嘘」です。確かに900MHz帯のほうが、2GHz帯よりも、電波の減衰が小さいのは事実です。しかし、過去に何度か書いたかもしれませんが、電波に関しては「飛ばす技術」よりも「飛ばさない技術」のほうがはるかに重要なんです。

もちろん出力を落とせば飛ばない、これ当たり前。なんですが、「設計どおりのところにはきっちり飛ばすけどそれ以外の場所には飛ばさない」と言うことなんです。これを行うためには、たとえば、地上2mくらいの低い位置にアンテナを置いて飛ばす、なんてことをやると完全にアウトです。

飛ばさないようにするには、非常に高い位置から吹き降ろすように電波を発射することが必要です。だからこそ、携帯電話の基地局は高い位置にアンテナを据えつけるわけです。また、鉛直面内の指向性をアンテナに持たせなければならない都合上、直列アレイ型のアンテナを使わなければなりません。

高い周波数であれば自然に減衰してくれるので、ほどほどの高さからほどほどの角度で吹き降ろせばよく、逆に低い周波数の「飛ぶ」恩恵を受けつつもきっちりと「飛ばさない」ためには高い位置から角度をつけて吹かなければなりません。細かい議論を考えればずれてきますが、これはもう大雑把に周波数に反比例すると思って良いです。

また、アンテナの素子サイズ、こちらはほぼ厳密に周波数に反比例します。それを直列アレイで並べなければならないため、アンテナ全体のサイズも周波数に反比例します。

要するに、900MHzの基地局に関しては、2GHz基地局に比べると「鉄塔の高さはほぼ2倍」「アンテナのサイズもほぼ2倍」と言うことが言えるわけです(もちろん厳密には違います)。

でこれはもう勘所の話になるので厳密な話ではなく恐縮ですが、「寸法が倍」ってことは、面積は4倍、体積は8倍です。従来の4倍の面積の土地を必要とし、8倍の重量の躯体となる、と言うことです。従来の2GHz基地局とは何から何まで違います。当然併設なんて出来る話ではありません。

つまり、ロケーションも設備もこれから新たに手当てしなければなりません。ドコモが1990年代にPDCでコツコツとエリアを広げてきた、あの努力を再現しなければならないんです。ドコモはその努力の結果、800MHzに対応したロケーションと設備を持ち、そこにFOMA 800MHzを併設することで「プラスエリア」の広大なエリアを一挙に構築できました。残念ながらソフトバンクにはそれをする基礎がありません。「ドコモがプラスエリアを広げたようにエリアを広げる」ことは絶対にありえないというわけです。もちろん、入手したウィルコムのロケーションも使えません。1.9G用の設計であるウィルコムロケーションは、2GHz帯には転用できても、900MHz帯には絶対に転用できません(聞いたところ、ウィルコムロケーションにおいているのは結局1.5G局ではなく2G局だそうです)。

最近、割当が決まってもいないのに900MHz用のロケーションの手配をしている、なんていうニュースが出ていましたが、それはもっともな話で、はっきりいって再利用できるロケーションと設備が無いためゼロからやり直し、割当をもらってから始めても何年もかかってようやく追いつけるかどうかと言うくらいに、低い周波数帯の整備は大変だからなんです。これだけの勇み足でも、おそらく当面は全く整備が追いつかないと思います。ともかく900MHz帯は、資本的コストも時間的コストも非常に高額になる帯域だということが意図的に無視されている気がするんですよね。

また、端末の問題もあります。よく「iPhoneが900MHzに対応しているからそのまま使える」と言う議論がありますが、日本の900MHzは、近くにドコモ850MHzがあるため、与干渉の基準をクリアしなければなりません。現行の標準で作ったものは(たまたまクリアできるものもありますが)基本的にこの基準がクリアできることを試験できていません。たまたまクリアできても試験を通していないものは「クリアできない」扱いで電波法違反。つまり、端末も全て準備しなおしです。

いや、一生懸命ソフトバンクを貶すばかりの議論になってしまっていますが、ちょっと最近の「900さえ取れればなんとかなる」的な論調があまりに浅薄でイラついていて、こんな感じになっちゃってるところもあって、ちょっとごめんなさいしておきます。

ちなみに、もしドコモやKDDIが900を取れたら、現行の800MHz用の設備をほぼ再利用可能なので、あっという間に全国にエリアが広がります。700も基本は同じ。

「プラチナバンド」と言って利点ばかりがもてはやされることが多いのですが、それらの利点があっても余りあるほど「高コスト」なのが、このプラチナバンド。「プラチナ」が単に「優れている」だけでなく「お値段が高い」と言う意味も含んでそう呼ぶのであれば、まさに的を射た表現ではあるんですけどね。

と言うことでプラチナバンドに関してこういう意見もありますよのお話でした。

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またご質問より。「iPhoneの話題で、au版は音声とパケットが同時に出来ないといわれていますが、そもそもなぜ出来ないのでしょうか」と言うご質問を頂いています。

そもそもなぜ出来ないか。これは、CDMA2000の標準仕様の問題である、と誤解されている方が大半だと思うのですが、実は、CDMA2000標準仕様では、音声パケットの同時接続は禁止されていません。ではなぜなんでしょうか、と言うと、前にちらりと書いた、「音声とパケットが別の搬送波である」と言うことが関係しています。

別の搬送波、と言うより、全く別のシステムなんですね。だから、同時接続には全く縛りはありません。ただ一方、普通は携帯電話の無線機は1個しか積んでいません。なので、音声の搬送波に無線機をチューンすれば音声しか使えなくなり、パケットの搬送波に無線機をチューンすればパケットしか使えなくなる、と言うこと。

ここまで書けばなんとなく想像がつくと思います。たとえば、テレビやレコーダのダブルチューナーなんてのは、二つの搬送波を同時に受信するために使われていますが、これは、言ってみれば無線機が二つある、と言うこと。CDMAでも、無線機を二つ積めば、音声とデータを同時に扱うことは出来るわけです。

去年流れたiPhoneが初のCDMA音声パケット同時接続対応機器になるかもと言う噂は結局実現はしていませんが、標準仕様的にもネットワーク的にも、同時接続が出来ない理由は全くありません。単に、端末コストと実装サイズの問題で、無線機を2台積むということが出来ないという点が問題なだけなんですね。標準仕様の問題ではなく、コスト削減したい端末屋さんの問題なんです。

また、ここまで音声とパケットと言うように書いてきましたが、厳密には、「1xシステム」と「EVDOシステム」で、実は両方とも音声とパケットを持っています。たまたま世界のほぼ全てのCDMAキャリアが1xを音声と低速データ用、EVDOをパケット専用、と言う使い分けをしているだけです。EVDOでも、VoIPベースの音声を提供することが出来、実はauでもシステム的には可能になっています。もうすっかり忘れられていますが、昔auがテレビ電話をやっていたあれ、あれはEVDO上のVoIPシステムそのもの。だから、この仕組みを使えば音声とパケットの同時接続は無線機1台でも可能です。が、この場合はEVDO音声コアとレガシー音声を相互接続するという非常に面倒な手続きが必要になるため、実現性は無線機を二個積むよりははるかに低いと思います。

と言うことで、要は無線機をもいっこ積めば出来る、って言う話なんですが、まぁただでさえ実装密度が上がっている最近の端末では、これは厳しいでしょうね。無線機はアナログデバイスなので実装面積も広め。無線機をもう一個積む余裕があるのなら、WiMAXでも積んだほうがよほどご利益があります。ただ、VerizonもiPhoneで同時接続できないことをAT&Tからかなりネガキャンされてまいっているので、新しいiPhoneで無理に押し込んだ可能性もゼロではないですが、まぁ、無いでしょうね(苦笑)。あれ、でも4Sは無線アンテナが二系統になったって話も・・・?←追記:ゴメン、これ単なるアンテナ切替式ダイバシティ受信なので受信機は一個しか積んでないみたいです。

追記:じゃぁなんでWCDMAはできるの?と言う質問もいただきました。簡単に言うと、WCDMAでは一つの搬送波に音声とパケットが混在しています。なので、無線機1台で両方扱うことが出来るわけです。もちろんそれは利点ばかりではありません。以下、簡単にまとめておきます。

WCDMA CDMA2000
利点 無線機1台で同時利用できる
搬送波が広いため最大通信速度を大きく出来る
音声の混雑がパケットに影響しない(逆も同様)
搬送波が多いため搬送波間でトラフィックが分散し混雑しにくい/品質が落ちても回復しやすい
欠点 音声が増えるとパケットが混雑する
1搬送波を多人数で共有するため混雑しやすい/落ちた品質を回復しにくい
無線機1台で同時利用できない
速度を上げるためには搬送波を束ねる上位技術が必要(Rev.B)
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2011/9/30 10:00 · ニュース解説 · (No comments)

先日、iPhoneに関してKDDIとAppleの思惑について書いたところ、やっぱり多かった反響は、Appleの思惑を満たすのであればKDDIよりドコモが適切ではないか、と言うものです。

もちろんそのとおりで、おそらく何も無いところから日本の4つの3Gキャリアの中から一社を選べといわれれば、誰だってドコモを選ぶと思います。

おそらくAppleだって、まずはドコモに持ちかけたはずです。あえてシェアの低い事業者を選ぶ、なんていう戦略をとっていたとは思えないので。たとえば最大マーケットの米国では、当然のように2頭の一角AT&Tを選び、次いでVerizonを追加。2大事業者をがっちり押さえているわけですから、日本でだってドコモに売って欲しいはずです。

ただ、当時の交渉の結果、ドコモとは折り合わず、ソフトバンクに売ることにしました。と言う状況から、今度は日本で次のキャリアを選ぼうと思ったとき、やはりドコモがいいなぁ、と思うのが当然だと思います。同じWCDMAなら認証の取り直しとかなんとか言う面倒な話も必要ないですしね。

ただ、一度は折り合わなかったドコモとの交渉、そう簡単に妥結はしなさそうだなぁなんて思ってたら、一方で、iPhoneで蹴散らして瀕死のKDDIが起き上がって仲間になりたそうにこっちをみているわけですよ、きっと。あ、そういえばKDDIもLTEやるらしいし、ちょっと調べたらKDDIのほうがLTE投資計画がでかいぞ、よし、まずはコイツを押さえとこう。・・・と思っても不思議ではありません。

要するに、Apple的なネットワーク拡大戦略の一端にKDDIが引っかかった、と言う状況だと思うんですね、KDDIから出るとするなら。一方、Appleは、何も販売キャリアを限定する必要は無いのですから、さらにドコモから売っても良いんですよ。

AppleがKDDIから出したい理由としてはこんなのが考えられる、と言うのに加え、実は、それよりも強い理由を、ドコモに対して持っているはずだ、と私は考えています。

だから、今度のiPhoneが、ソフトバンク、KDDIだけじゃなくドコモから出てもおかしくないと思うんです。結局そこは、ドコモがそこまでして自社垂直統合を破壊しかねないiPhoneを欲しがっているかどうか、そこだけだと思います。なんだかだでドコモはまだ順調ですから、急ぐ理由はなく、KDDIが販売数的に成功し、収益的にも成功しているのを見てからでも遅くない、と考えていてもおかしくないとも思います。

と言うことで、次のiPhoneについては、本命→ソフトバンク&au体制、対抗→ソフトバンクのみ体制維持、穴→ソフトバンク&au&ドコモ三社同時発売!、大穴→auのみ体制へ転換ソフトバンク涙目、って感じで考えています。あくまで、ドコモから出る可能性もある、と。と言うことでiPhoneに絡む思惑の補足でした。

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2011/9/30 10:00 · ニュース解説 · (No comments)
2011/9/27 10:00 · ニュース解説 · 4 comments

さて今日は、話題になっている、KDDIがiPhoneを出すとか出さないとか言う話について、KDDIとAppleの二社の視点から考えてみたいと思います。

まずはKDDI視点。

KDDIとしては、ここ数年絶不調で、とにかく何をやっても当たらないという状態が続き、シェア3位のソフトバンクが純増1位で伸び続け、グループ加入者数では間もなく逆転を許す、と言うところにまで追い詰められていると言う状況。

このような状況の中で、ようやく流行のスマートフォンに力を入れ始めたところですが、それでもいまいち市場は反応しない。おそらく渾身の一作であるIS03が、あっさりドコモ・ソフトバンクから同等機種が出たために平凡な売り上げに終わったあたりから、大きな方向転換を迫られたという事情があるかと思います。

そうなると、純増トップを支える強力なプロダクトであるiPhoneに目が向きます。折りしも、iPhoneはCDMA搭載タイプが話題になりつつあった頃。であれば、CDMAだからと言う理由で土俵にも上がれなかったKDDIにもチャンスがあるということになります。

一方、KDDIとてiPhoneによるトラフィックの増大は看過できない問題です。ソフトバンクがiPhoneトラフィックで四苦八苦している状況を目の当たりにして、iPhoneに手を出せるか、と言うのは微妙な問題。さらに言えば、Androidでも自社による垂直統合を目指す中にあって、完全に他社に主導権を渡してしまうiPhoneはビジネス的にも受け入れがたいものではないかと思います。

とはいえ、トラフィックの問題は、むしろiPhoneよりも通信量が多いといわれるAndroidへの対策を余儀なくされる状況にあり、また、Androidとて、KDDI垂直統合からは大きく外れ、むしろコンテンツ代行収入よりもパケット定額セット率向上によるARPU増のほうが収益向上に資する、と言う状況になってきたのかもしれません。独自Wi-Fi AP 10万局などトラフィック対策を打ち出した以上、最強プロダクトであるiPhoneを迎え入れたほうが得策と考えられたのでしょう。

さて次にApple。

Appleとしては、OSシェアでAndroidに追いつかれた後はあっという間に引き離され、このままではMacOSがたどった「シェアの力に潰される」と言う状況を再現しかねません。まだまだ安泰の人気を誇っていますが、それがいつどんなきっかけで一挙に潰されるか分からない状況。

その状況の脆弱さの原因は、「単一プロダクト」「取り扱いキャリア限定」であることは誰にも否めません。であれば、どちらも何らかの方法で解消し、常にオプションとバックアッププランを持ち続ける必要に迫られていたと考えられます。

「単一プロダクト」が脆弱性となりうるのは、やはり、その一つのプロダクトが市場の需要を大きく外してしまったときです。それは失望につながり、その次のプロダクトでの大きなシェア低減を招きます。まだ噂レベルではありますが、次(の次?)のプロダクトでは、新しいハードウェアとともに、現行のiPhone4の廉価版とも言うべきものを出す、とされていますが、これは、今現在確実に売れている、支持されているものを再生産し、新プロダクトの大ゴケに備えている、とも考えられます。

「キャリア限定」が脆弱性となるのは、もちろん今のソフトバンクのように、ネットワークが弱くユーザエクスペリエンスが低下するような状況。ネットワークに強く依存するプロダクトであるスマートフォンにおいては、ネットワークの品質低下はそのままスマートフォンプラットフォームの悪評にさえなりかねません。それを避けるためにも、あらゆるリージョンで2つ以上のネットワークの選択肢を提供すべく戦略転換している、と言うのが今の状況だと思います。

そして、キャリアを限定することにはもう一つのリスクがあります。それはテクノロジー、つまり「方式」のリスクです。もちろん、WCDMAとCDMA2000を比べて、WCDMAが負けて廃れて消えるということは絶対無いと言い切れますが、先進技術についてはどうでしょうか。つまり、LTE。日本でLTEを導入するのは今のところドコモとKDDIだけです。ソフトバンクは例によって口だけで、導入可能帯域はWCDMAで使い果たし、導入するかどうか自体に「?」マーク付き状態。となると、LTE導入が確実で、しかも日本では最もエリア充実が早いであろうKDDIを、LTE対応iPhoneの展開先として確保しておくことは、Appleにとっても重要なリスクヘッジの一つと言えます。もちろんネットワーク依存プロダクトとしてのスマートフォンにとっては、先進技術LTEがそのユーザエクスペリエンスを大きく改善する最大の武器ともいえますから、LTEキャリアを世界的に押さえていく必要があるという状況であるはずです。

と言うことで、強力なプロダクトが欲しいKDDIと、ネットワーク的なリスクヘッジとLTE展開先が欲しいAppleの思惑が一致した結果として、KDDIからiPhoneが発売される、と言うところに結びつくのは自然であると考えられるわけです。個人的には、KDDIの旧態依然とした体質が異質なiPhoneを受け入れられず退けてしまうだろうと考えていましたが、そうも言っていられない状況なのかもしれません。

と言うことで、KDDIとAppleについて、auネットワークでiPhoneを展開する理由を考えてみる一言でした。でわ。

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2011/9/27 10:00 · ニュース解説 · 4 comments