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2012/5/28 10:00 · 技術動向 · (No comments)

少し古いですが、700MHz帯について、「米国と合わせるべきだと思いますか?」「10MHz3社という総務省方針についてどう思いますか?」という趣旨のご質問をいただいていました。ちょっと思いつきで軽く。

まず「米国と合わせるべきか」については、合わせちゃダメ、と思います。というか基本的にすでに結論は出ているので今更どうこう言う話でもないのですが、米国700帯は、世界有数の「ガラパゴス帯域」です。あんなにめんどくさい帯域も珍しいくらい。というのが、米国での放送とかのいろんな電波利用に関して、州間差異などの歴史的な経緯でへんてこりんな分け方になってそれぞれをブロックなんちゃらと呼んでいるわけですが、確かに米国が圧倒的大国だからこそそれでも何とかエコシステムが成り立っているだけで、もしあんな割り当てを極東の小国がやったら誰も見向きさえもしないくらい、意味不明で非効率な帯域ブロックになっています。

もちろん、米国がやってるから合わせれば多少は恩恵が、ってのもありますけど、それを補って余りあるほど非効率。米国内でさえあの辺のバンドはさまざまなしがらみで地域的にいろんな制限が入っているようで、フルの能力を活かしきれないだろうと思いますが、そんな非効率なやり方をわざわざ輸入する必要はないかと思うわけです。日本は徹底して欧州方式を踏襲するのがよく、欧州でまとまらないのならアジア地域で率先してまとめてしまえばよろしい。ってことで、アジア主導でまとめた今の日本割り当てプランは、今のところはもっともまともなプランになっています。

なってはいるんですが、それでも欧米でそれに追従する動きは乏しく、アジアでも整備の動きはまだそれほど活発ではないため、当面は「日本ガラパゴス状態」に近いかもしれません。また、日本独自事情でいえば、その上の800MHz帯からの被干渉が問題になりつつあるようで、結構使いにくいバンドになってしまいそうな印象です。

次に、10MHz3社という総務省方針について。これは、単に、「最初、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社で700と900を均等に割り当てればいいやと思ってたけど、なんかイーモバイルもすごく欲しそうだから700を三つに割ることにしました」ってだけだと思います。いやほんと、それ以上の合理的な理由はないはずです。

技術的な合理性でいえば、むしろ700を三つに割るなんてのは効率を下げるだけです。そりゃ、トラフィックと制御信号の比率から言えば、1システム10MHzよりも1システム15MHzの方が良いに決まってるし、1システム20MHzの方がもっといいし、30MHzが一番良いに決まってるんですよ。LTE-AdvancedのCarrier Aggregationではセカンダリコンポーネント側の制御信号を省略できるモードがあるので、30MHz丸々を20+10MHz構成で使えば、すごく高効率高性能なシステムが実現できるんですよね。また、同じバンドクラス内でのAggregationは同じデュプレクサのみで実現しダイプレクサ不要なので挿入損失も増えず、単一コンポーネントとほとんど同じ性能を複合コンポーネントでも出せる、といいことづくめ。だから、技術的観点から言えば、30MHzすべてを一社に割り当てるのが最もいいんです。

ほんと、いろんなしがらみがないんなら、今からでも、700MHz帯30MHzを一社に、800MHz帯30MHzを一社に、900帯15MHzを一社に(これは実現していますね)、1.5GHz帯35MHzを一社に、1.7帯を・・・というような割り当て方に総とっかえすべきだと、純粋な技術観点からは思うんですよ。だから、総務省の10MHz3社という方針は、技術的にはナンセンス。としか言えません。

とは言え、まぁ、周波数特性上の公平性的な観点から、希望者に均等に割り当てざるを得ない、という事情はあるのでしょうね。700と900でも特性や国際状況が大きく違うように、割り当てられた帯域によって非常に強く有利不利が出てしまうという事情もあるので、出来るだけ同じバンドを複数事業者に、ということになるのでしょう。そうなると、国際状況で抜きんでている上バンド幅も広い900帯をゲットしたソフトバンクが今回の割り当てでの唯一の勝利者ってことになります。せめて同じ帯域幅(15MHz)ならまだしも、国際協調も進んでなくて対応機器もレアな700でその上たったの10MHzってことですからね。頼みのバンドまたぎCarrier Aggregationも、700帯絡みが仕様化されるにはあと数年はかかるはず(CAの帯域仕様化作業は国際的に需要の多いところから順々にやっているので、実質ガラパゴスの700がらみの組み合わせなんて一番後回し)ですし、700は周辺状況が面倒なのでCA規定の策定には相当難航するだろうなんて思ってたりします。

そんな感じで700関係のご質問への回答、と言うよりは単なるコメントっぽくなりましたが、こんな感じで。でわ。

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2012/5/28 10:00 · 技術動向 · (No comments)

こんなサイトをやっているので、基本的には「無線大好き」と思われているかもしれません。究極的にはすべての通信を無線でカバーできればみんな幸せ、みたいな技術思想を持っていると思われているかもしれません。しかし、実は、私は有線通信こそ本当に通信を支えることができるものだと思っています。

確かに、機能を見れば、すでに無線通信で有線通信の需要をカバーできるだけの面やスペックがそろいつつあります。LTEで75Mbps、これがすべての面で使えるわけではないとはいえ、それでも、家庭用の光回線の一般的なスペック「100Mbps」とほとんど変わらないスペックです。さらに無線は発展し、高速化技術が次々と取り入れられていきますから、1Gbpsという通信速度もさほど遠くない未来に実現することは間違いありません。

もちろん、無線特有のリスクである盗聴に関しても、最近の通信方式は非常に強力な暗号方式を採用しているため、通常の手段で破ることはまず不可能です。WCDMAが始まる前後のころですが、WCDMAに採用する暗号方式があまりに強力過ぎて各国の輸出規制に引っかかってしまい、国際取引に面倒な躓きを生じさせる原因になってしまったほどです(もちろん今は問題は解消されています)。

ということで、「つながる」「速い」「安全」という基本的な機能を有線と同様に備え、なおかつ、設置位置のフレキシビリティやモビリティを備える無線通信は、すべての有線通信を置き換えるかもしれない、という論調があっても全く驚きません。それが実現する可能性がゼロだと言うつもりもありません。

しかし、「有線通信が無線通信に置き換わる」という様に考えず、まずすべては無線通信である、というところから考え始めると、これが案外答えが変わってくるんです。なにしろ、通信(コミュニケーション)の源流は、身振り(光)と声(音)、どちらも無線通信ですからね。

まずもっとも原始的な無線通信を考えてみます。それは、点のアンテナから出た電波を受信者が捕捉してデータを読み取る、というもの。点の送信アンテナと点の受信アンテナをつなぐわけですが、点から出た電波は全方向に球形に広がっていきます。そうなると、送信アンテナから出た電波は、受信アンテナの実効受信面積で拾われる分以外はすべて無駄に捨てられることになります。送信電力の99.99…%を無駄にするわけです。

そこで、一つの案としては、ほかの方向に飛んで行った電波をほかの人にも拾ってもらおう、と考えます。ある時刻にあるデータが乗せられた電波が球形に広がって複数(非常に多数)の受信者に届く、という状況なら、無駄にする電波はかなり少なくて済みます。これがご存知「放送」です。しかし、通信は放送だけではありません。すべての人が異なる相手と異なる内容のコミュニケーションをしたいわけです。そうなると、たとえばこの時間はAさんのデータ、この時間はBさん向け、と区切って送ってあげるようにするわけですが、どんな区切り方をしたとしても、やっぱり、ある時刻にあるデータを乗せた電力が球形に広がっていくと、その受取先のアンテナに拾われた以外の大半の電力は無駄に捨てることになります。

要するに、無線通信は大半の電力を無駄にする、というところがスタート地点です。実は、携帯電話技術(LTEも!)のほとんどは、基本的に電波の大半を無駄にしています。同時に使う人が増えれば増えるほど速度が遅くなったりするのは、それぞれ個別の相手に送る電波(を一定の法則で区切った一部分)をほかの人が使えないために空間中に捨ててしまうことが原因です。電波が空間中を自然に広がってしまう現象である限り、これは原理原則であり避けられない損失です。

とはいえ、やっぱり出来るだけ無駄にしたくないですよね。そこで、アンテナに工夫をし始めます。ここまでの話では、電波はある場所で発生すると球形に広がっていく、ということになっていました。しかし、一般的に地上に住んでいる限りは、横方向に届けばよくて、宇宙や地面に向かって飛んでいく電波はどっちにしろ誰も拾うはずがない電波です。これを飛ばさないようにできないかしら。

出来るんですね。アンテナの形をうまく工夫すると、上下に飛ばずに横方向にだけ飛ぶようにすることができます。単純放射なら上下に飛んじゃってた分を、全部なしにしてその分横方向に上乗せする、ということができます。そうなれば、同じ横方向でもより遠くに飛ばせ、同じ距離でもより多いデータを送信することができます。

さらに言えば、相手がいない方向に送信する電力も無駄です。だったら、同じようにアンテナを工夫して片方にしか電波が出ないようにできないか。もちろんできます。そうすれば、電力の利用効率はさらに倍です。その代わり後ろ方向には電波が飛ばないので、そちらにいる人には別の送信アンテナを使うなどして通信を提供してあげる必要があります。

前と後ろの2つに分割できるなら、当然3つに分割することもできます。アンテナの工夫で相手のいる方向を含む全方位の1/3に電波の飛ぶ方向を絞ることができます。これは、アンテナさえ増やせばいくらでも数を増やすことができます。

そうやってどんどん分割する、というのは、究極的には、送信アンテナから出た電波が受信アンテナに入るまでの間に周囲に漏れる電力をゼロに近づけようとする努力です。とにかく周囲に漏れにくくすれば漏れなかった分の電波は受信アンテナに届いて、通信の能力・品質の向上に役に立つわけです。たとえばパラボラアンテナなんていうのは、飛ぶ方向を完全に一本の線にしようとする試みの一つです。パラボラ(放物線)に、焦点から電波を放出するとそれらはすべて一方向に反射します。

ただし、パラボラでも、反射面以外の部分に飛んでしまうとそれは「漏れ」です。もれないようにするには、パラボラの反射面をどんどん伸ばしていく必要があります。放物線なので、その伸びていく方向は、送信方向に一致します。パラボラ型の細い筒が相手に向けてどんどん伸びていくイメージ。最終的に、受信アンテナもパラボラにしてそれを伸ばした筒と、送信アンテナが伸びた筒がぴったりとくっつくところまで行くと、理屈上は漏れがゼロです。これが「究極完璧な無線通信」です。

送信側から伸びた細い筒と受信側から伸びた細い筒がくっついてるって、これなんでしょう。はい、有線通信です。実際はその筒から漏れないように工夫してあれば、放物線である必要もないし空洞である必要もなくなります。筒の側面で反射しながら目的地まで漏れずに伝わるのなら一直線である必要もなくなります。ついでに、時には電波じゃなくて純粋な電圧波動にしちゃっても結構。光ファイバというのは、細い筒の中を電磁波が反射しながら目的地まで伝わるという電波を筒に閉じ込めただけのモノだし、銅線による通信も電波がちょっと純粋電圧波動になっちゃっただけのモノです(電磁界の波動も伴うけどそれは周囲にもやもやと漏れてるだけ)。

言ってみれば、有線通信というのは、無線通信の特殊解の一つ、ということなんですよ。無線通信には数々の解(ソリューション)があり、たとえば面をカバーしモビリティを出すために効率を犠牲にしたものやモビリティを犠牲にして遠距離通信に特化したものなどなどがある中に、「特別効率を重視しコストやモビリティを完全無視した特殊解」として有線通信がある、というのが私の有線通信に対するイメージなんです。

この特殊解は、通信の効率(すなわち品質と性能)に関してはずば抜けて優秀であるため、この特殊解をあえて他の解で置き換えていく必要はないはず、と思うんです。もちろん、コストなどの問題もあるんですけど、現時点ではまだまだ拡張可能で応用可能な優秀な筒(光ファイバ)が、結構安いコストでかなりのエリアで使えるわけで、まずそれが使える場所ではそれを使うのが当然です。

何より、無線周波数が空間ドメインでも周波数ドメインでも有限の資源である、ということ。一般解ともいえる通常の「解放空間での無線」は、その有限の資源をドカ食いしますが、特殊解である有線通信は、特にその空間ドメインでの資源浪費が非常に小さい、「筒」の中の空間でだけしか浪費しない、という意味で、有限資源の効率的利用という意味では最重要な解なんです。資源は、枯渇に近づけばよりコストの高い資源採掘の解が採用されていくわけですが、最もコストが高いながらも最も小さな空間内から資源を掘り起こせるのが「有線通信」です。枯渇を待たずとも、コスト的にバランスが取れる場合(「筒」が短くて済む場合)に関しては積極的に有線を使うことで資源の浪費を防ぐことができるわけですよ。

そんなわけで、「筒」が短くて済む場合(低コスト)の有線通信と、解放空間をぜいたくに使う無線通信が、市場原理に従ってコスト的にバランスの取れるところで公平に競争することが最も望ましい。というのが私の考え方。コスト度外視して全部有線を採用しろとか全部無線にしてコスト最低を目指せとかいう極論はあまり好みません。上述の思考実験から言えばどちらも極論すれば「無線通信の一種」であるわけで、「有線 v.s. 無線」という二極構図ではなく、完全開放無線と完全閉じ込め無線の間の(統計的に)なめらかなパラメータ変化に対して、いつ、どこ、どんな用途、に合わせて適切なパラメータを選ぶだけの問題だと思うわけです。

ということで、「すべては無線になるべきか」に対する私の考え方のご紹介でした。でわ。

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2012/4/24 10:00 · その他技術ネタ · (No comments)

今日は質問いっこだけの短いエントリ。

Xi対応端末はXiとFOMAの両方の電波を受信するので待ち受け時間が短いという話を聞いたけど本当でしょうか、というご質問。

前にもLTEの質問に答えるの回である程度なぜバッテリの持ちが悪いのか、という話は書きましたが、一方で、この「両待ち受け説」には全く触れていませんでしたね。というかそんな説があったのか。

この辺については、LTE他システム連携の話で本当に一言だけで触れていたのですが、他システムと連携するLTEは、LTEシングル待ち受けが原則です。デュアル待ち受けをすることもできないわけではありませんが、よほどの理由がない限りやりません。それは、まさに「バッテリライフが極端に短くなるから」という理由です。

他システムと連携する(というか音声肩代わりさせる)タイプのLTEでは、LTE側に音声着信信号が飛んできます。その着信信号を受けた端末が、即座に音声対応システムを立ち上げて音声通話を開始する、そのために、音声セッション情報を音声システム(ドコモでいえばFOMA)とLTE(Xi)の間で共有するために、連携システムが作られています。この辺の話は、LTE音声着信率の話でも詳しく書いてあります。

ということで、「両待ち受け説」は基本的に間違い。LTEとWCDMAで着信連携をする、という前提でネットワークを作っているところは両待ち受けはしないはずです。ただ、たとえばとりあえず適当なEPCとLTE局を買ってきて適当にばらまいて本当に仮のLTEサービスを突貫で始めちゃうみたいなことをやる事業者だと、WCDMA側の連携システム対応が間に合わずにしばらくは両待ち受け、なんていう状態もなくはないですが、いまどきのUMTSコアはたいていはいつでも対応できるのでソフト買ってね状態だと思うしもちろんEPCも適当なの買ってきてもたいていは連携対応してるとは思うしインターフェースも標準化されてるからベンダが違ってもつながっちゃうと思うし。

そんなわけで、Xiでバッテリ消費が大きい話の補足でした。

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2012/4/24 10:00 · その他技術ネタ · (No comments)
2012/4/10 10:00 · 技術動向 · (No comments)

少し前のご質問なのですが、「イベント会場やサッカー場などの人の集まるところにはどのような対策をしているのでしょうか」というご質問をいただいております。特に、1局当たりの容量の小さいウィルコムPHSの場合を気にされているようですが、何となく、こんな感じじゃね?というのを考えてみましたのでお答え。

人が大量に集まると、それだけ通話が発生する頻度も高くなるため、回線容量を多めに確保する、というのは各社ともに共通です。ただ、そうはいってもやっぱりコストの問題もあるので、その辺は会社の考え方やシステムの作りによって違うように聞きます。

仮に、その会場の最大収容数きっちりまで人が埋まり、しかもその全員が通常と同じ頻度で音声通話やデータ通信を行う、という前提を立てると、おそらく一つの町をカバーするのと同じくらいの容量が必要になってきます。しかし、サッカースタジアムを細切れにして別の基地局に収容させる、というのはさすがに無理があり、キャリア数の増設などがせいぜいの限界ではないかと言えます。

一方、そういった会場では、試合や催し物が無いときには人っ子一人いないという状況も生まれます。逆にいうと、ほとんどの時間は、通常以下の人口密度となっているわけです。となると、そのために基地局を増設し、それに合わせたバックホール容量を確保する、というのは、コストパフォーマンスで考えれば実はかなり無駄なことになっています。

ここからは事業者ごとの考え方によるのですが、こういった場合、おそらく、完全に収容できる容量までは確保しないはずです。せいぜい周辺地域の容量と同程度かプラスアルファ程度にとどめていることが多いはず。試合などで人がたくさん集まると多少つながりにくくなったりはしても、それ以外の無駄時間を考えるとこれでもコスト的には普通の住宅地をカバーするよりかなり効率が悪いはずです。

なんだかだで、コンサートやサッカーの試合とかであれば、はっきり言って携帯電話の使用は通常以下になるはずです。そりゃ、twitterとかで中継しまくるなんていう新しい使い方も出てきたので今後はわかりませんが、そういった用途にしてもみんながシェアしやすいパケット通信を使います。シェアの難しい回線交換(音声通話)に関しては、コンサートや試合中に通常以上の使用率になるとは考えにくく、終了時の一斉の通話開始とかでちょっとつながりにくくなっても、その一瞬であれば、まぁさほど悪評にもならないんじゃね?程度で放置しているような気がします。

一方、通話も多発しやすいイベント会場とかになると、疎と密の波がスタジアムなどよりもかなり大きく間隔も広くなり、「密」の時に合わせて設計した場合の無駄レベルがかなり上がってしまいます。コミケをやるときと書道展覧会をやるとでは全然違ってくる、という話。なので、イベント会場では、特に大きなイベントに合わせて移動中継車を出して対応することが前提となっていることが多いようです。ちょっと前、何かのイベント会場に「移動中継車を出して品質向上します!」とかって自慢げに発表してた事業者があったかと思いますが、別にあれは当たり前の話、というか、イベントがあるときに移動中継車を出すという前提のもと、常設の基地局・回線は最低限のものにしてコスト削減をしているわけです。最初から、移動中継車を出さないと回線があふれるような設計なんですよね、ああいうところって。

さてここまでは一般的な携帯電話事業者の話ですが、一方、PHSはどうなのか、と言うと、こちらは案外通常時からやや多めに置いてあるようです。というのも、設計フリーで置くだけで勝手に容量補完できるという設計コストの低さや回線コストの低さがあるため、イベントに合わせた設置・撤去のコストよりも常時置いてある方が結果として低コストだったりするからです。また、それでもあふれてしまう極端なイベントに対してですが、そもそもPHSは屋内局をかなり簡易的に設置・撤去できるため、屋内イベント会場では始まる前日とかに天井裏だか運営スペース裏だかにどかどかとダース単位の局を置いて終わった翌日にさっさと撤去、なんてくらいのことをやっているっぽいです。

という感じで、人の集まる場所への回線容量手当はどんな感じかというのを考えてみました。でわ。

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2012/4/10 10:00 · 技術動向 · (No comments)

ウィルコムのALL ITX化が済んだという情報。なんだか公式発表されないのが腑に落ちないのですが(NTTへの配慮とか?)、転送時の発信元電話番号が通知されるようになったことを確認できました。これで結構便利になります。

今、メインの回線はウィルコム定額プランGに誰とでも定額をつけてあるので、転送先をドコモのメイン回線にしても転送通話料はかかりません(のはず)。誰定でも通話料かかるようです。しょっく。まぁ、そこまで電話がかかってくることはないので誰定は外してしまった方が安くなるとは思うのですが、気分的な問題で。

で、少なくとも転送番号表示が可能になったということは、ALL ITXが完了したということのはず。というのは、ITX化局と非ITX局が混在すると、番号通知の際にインターフェースの不整合が起こってしまうので、そういう状況が起こりえない、ということが確定するまではサービスできないからです。

さて、ALL ITXが達成すると、ほかにも(潜在的に)できることがいろいろと出てきます。まず、ぶっちゃけMNPには相当近づきます。というか、070もMNPに参加しましょうという総務省のお達しはたぶんウィルコムからの申し入れで、それを実現する大前提は、1局の漏れもなくITX化することです(1局でも非ITX局があるとその局配下の通話は誤った通話先につながってしまう)。これができるようになることがおそらく直近の効果。

あとは私の妄想レベルの話になりますが、ライトメールとSMSの相互互換が可能になる可能性が出てきます。後は細かい点だと、現在はできない「発信中(呼び出し中)」のハンドオーバができるようになり、今までよりも移動中の発着呼に強くなるかもしれません。これができないのは、もう本当に単純にNTT交換機の機能制限のせいだと聞いたことがあるので。それと、PHSのPS-IDをたくさん持たせた端末でたくさんのセッションを同時に張る、なんてこともできるようになるかも(無線機は一台で)。要するに、音声とパケットの同時接続とか。

また、ITXからの光ファイバの足を直接貸し出すサービスも考えられます。というか、すでに自治体向けにそれに近いサービスをしていますが、すべてのPHS収容局舎がITX化しているということは、おそらく日本でも有数の広さのIP網を持っているということです。下手するとNTT東西のフレッツよりも広いところさえあるかも、くらいの話。NTT東西が変な品質規定のために光もADSLも足を出せないような田舎にも、光か銅線の足を出してIP系サービスを提供できるかもしれません。まぁユーザには直接恩恵はありませんが。

ってことで、ウィルコムのALL ITX化についての簡単なコメントでした。

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2012/4/6 10:00 · 技術動向 · (No comments)

ご質問をいただいていて、「基地局の装置をそのままにモジュールを交換するだけでLTEに換装できる的な話をよく聞きますが、そんなことは本当に可能なのでしょうか」というものに関して、何となく、実はあまり詳しくないんだけど、基地局の話をしてみたいと思います。

携帯電話の基地局の機能は、おおざっぱに三つくらい。「制御局とお話しする」、「無線ベースバンド処理をする」「RF(無線周波数)送受信をする」、という感じでしょうか。これに関して、ちょっと踏み込んでみます。

制御局とのお話は、光ファイバか何かの物理インターフェースと、制御局と話すための上位プロトコルからなります。制御局からもらったメッセージによる内部的なイベントを、ベースバンドモジュールに教えて、あるいは、ベースバンドモジュールから制御局にこういうことを伝えなさい、ともらったメッセージを送る、そういうことをやります。これは、ベースバンドと一体化されているのが一般的な気がします。

次にベースバンド。移動機との間の制御を行うためのメッセージを自分で作ったり制御局からもらった情報に基づいて作ったり、あるいは、より上位のデータペイロードを無線プロトコルのデータコンテナに押し込んで送信できるように成形する、というような役割を負います。制御や入出力を制御局との会話にかなり依存するので、上の機能と一体化されていることが多いようです。

最後にRF。RFは、ベースバンドのデジタル的な信号を、アンテナから放出される電波の信号に変換します。最近はインテリジェントなRFモジュールも増えていていろんな制御ができるようですが、基本的には、相手はベースバンドモジュールとアンテナだけで、単に高周波の無線周波数と低周波のベースバンドをお互いに変換するだけの機能です。

これら以外に、筐体の電源制御やバス制御や共通通信モデム(ONUとか)などを切り出して小さな共通モジュールとして持っているようなこともあります。

さて、大体こういう感じ、という前提で、次にそれぞれのモジュールの形を考えてみます。

ベースバンドモジュールと制御局インターフェースを一体とすると、光インターフェース(につながるインターフェース)と、RFにつながるインターフェースが必要になります。RFモジュールには、ベースバンドにつながるコネクタと、アンテナにつながる無線同軸線などがあることになります。また、それらに通信線と電源を供給するための電源装置あるいはそれを一体化した筐体(自作PCの電源付きケースみたいなイメージ)がおまけとしてくっついているような感じ。たとえばこの筐体に通信モデムも備え、筐体の中は別の一般的な高速方式(たとえばイーサネット)に変換してしまう、とすれば、ベースバンドモジュールが持つインターフェースはイーサネットだけでよくなります(イーサネット上に制御局相手のパケットもRFモジュール相手の信号も乗せちゃう)。さすがに無線制御用の信号線にイーサネットはありえませんけど。実際にはもっと信頼性が高いRF用に標準化された方式を使います。でも、どちらにせよ、標準的なインターフェースが二つと電源だけ、ということ(極論すれば)。

さてこうなると、何となく、ベースバンドモジュールを取り換えてみたくなります。自作PCで例えれば、マザーボードごとOSを取り換えちゃう感じ。マザーボードを取り換えても、USBやモニターなどのコネクタが共通なら、たいていはそのまま起動するわけで、外観上はケースはそのままなのに別のOSが動いちゃった、ということができます。要するに、基地局もそういうもの、ってことです。

ベースバンド処理に関しては、ほぼ100%デジタル処理の塊です。ってことは、昨今のデジタル技術の発達の恩恵をそのまま得られます(それに対してアナログだらけのRFモジュールはさほど変化がない)。WCDMAではこの大きさのボード上にWCDMAモデム機能を持つのが精いっぱいだったんだけど、今となっては、LTEモデム機能に加えてLTE特有の分散制御機能(制御局不要で自律動作する基地局)さえこのボードの上に乗せられちゃうぜ、ということになっているわけです。

で、電源はもちろん変わりようがないですし、RFもたいていは5MHzが10MHzになったくらいでは平気なモジュールです。対応する幅という意味では、たとえば2GHz帯なら20MHz幅に対応しますし、搬送波帯域幅もWCDMAの5MHzよりも広い10MHzになるとはいえ、標準化されたベースバンド-RF間伝送方式が十分な帯域幅があるので、それに合わせて(サボらずに)作ってあるRFモジュールならまず対応可能。というか、たとえば、5MHzのWCDMAの搬送波を最大4つ同時にさばけますので増設時にRFモジュールを再利用できますよ、みたいな売りのモジュールもあるわけなので、そういうRFなら仮に10MHz幅のLTEを食わせても問題ないわけです(もちろんそうじゃないヘボRFだったら5MHzLTEであきらめるしかないけど)。

さすがに実物はここまで単純ではないでしょうが、もともと大手基地局ベンダの作っているものは、最初から将来の帯域幅拡張や方式変更に備えて、こういう形で作っています。というか、少なくともWCDMAサービス開始の2000年ごろにはすでにその次のLTE的なものは見えていたわけで、「具体的にどんな方式になるかはわかってないけど、だったら高速処理・高速伝送が可能なように外部インターフェースと内部バスに余裕を持たせておいてモデムボードだけ変えればOKって作りにしておこう」と考えます。なぜなら、その基地局をキャリアに売っておけば、次の方式に行くときに、キャリアはコスト低減のためにボード入れ替えだけで済む同じベンダから新方式を調達することになるからです。ほかのベンダを選んだら筐体ごと買い替えなわけですからキャリアも得。ベンダコンペに参加せず労せずして新方式のハード/サポート契約をゲットできてベンダも得。というわけで。※なので、インターフェースをわざと少しだけ標準から逸脱させておくなんてことをするベンダもあったりするようです(笑)。

ってことで、まぁ、本当にRFまで一体化した小型局とかだと丸ごと置き換えの方が早いでしょうが、そうでもないものだと、同じ筐体やRFやアンテナを使いつつベースバンドモジュールを入れ替えるだけでLTEにできる例は多く、加えて、もう少し拡張性に幅があるものになると、複数のベースバンドモジュールを入れて同時にサービスしたり、両方式のモジュールを入れておいて片方はOFFにしておき、遠隔でON/OFFを入れ替えることで一斉にWCDMAエリアをLTEエリアにしちゃう、なんてこともできたりします。世界のいろんなキャリアを相手にするベンダは、ラクしたいので、いろんな運用形態に対応できるように汎用的に作っていることが多い、ってことです。

ってことで、最初の質問に関しては「最初からそういう風に作ってあれば可能」「WCDMAが出始めたころから拡張されることは確実だったので囲い込みの意味も込みでそういう風に作ってあるベンダは多い」というのがお答えになるのかなぁ、という感じ。

以上携帯電話基地局の話でした。

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2012/4/6 10:00 · 技術動向 · (No comments)
2012/3/30 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 1 comment

質問、というか記事希望があったもので、とりあえずドコモ関係のサービス終焉に関するお話二題。

その1。マイエリア終了について。始めてからわずか三年でのサービス終了となりました。

マイエリアとは、言わずと知れた「フェムトセル」。フェムトセルという言葉の定義はちょっといろいろと異論があるかもしれませんが、基本的には「ユーザ回線を借用した超小型の携帯電話システム基地局」と言ってしまいます。ポイントは「ユーザ回線の借用」で、仮に同じ超小型基地局であっても、ユーザ回線を使わない場合はあえてフェムトと呼ばない、という頑固者もいたりするようです。まぁどっちでもいいんですけど。

基本的にドコモの「マイエリア」は、エリア補完目的ではなく、フェムトセル特有の特徴を活かした単独のサービス。もちろんエリア補完目的に使うこともできますが、十分にエリアである場合でも、申し込めば設置してもらえる、そういうタイプのサービスです。となると問題になるのが、干渉です。

もともとエリアである場所に新たにフェムトセルを打った場合、同じ周波数ペアを使う屋外のセルに対する干渉になります。特に問題が、端末から基地局への上り向けの電波。前の記事にも書いた通り、いくら端末~フェムトセルが近くても、フェムトセルそのもののアンテナゲインと受信感度がさほど高くない以上、端末はそれ相応の電力で送信しなければなりませんし、特に家の中で電波の通りの悪い場所に行った場合などは、それを乗り越えるために端末が大きな電力で送信した電波が、屋外の一般局に大きな干渉波として入射します。

こればかりはいくら設計しても避けられない問題。ドコモフェムトセルでは定期的に周囲の下り電波を受信して、自身の周波数や送信電力を自律調整したりと、対策はしていたようですが、それでも、ユーザ申告ベースでいくらでも増えうるわけで、それこそちりも積もればの要領で干渉が増えていくことになるわけです。いつまでも申し込みを受け付けていてはいずれ破たんに向かうわけで、ここでとりあえず「誰でも申し込めるサービス」としては終了、ということになったのでしょうね。

また、LTEの問題もあります。ドコモはメインバンドの2GHzからLTE化していく計画。となると、市中に邪魔になる2GHzの他の基地局が多ければ多いほど、LTE化が遅れるわけです。このまま受け付けて、どうしようもないほどびっしりとマイエリアだらけになってしまっては、LTEどころじゃなくなる、というような事情もあったのではないかと勝手に思っています。

まぁ、実際には全然売れてなかったみたいですけどね(苦笑)。制限厳しいし有料だし。単にあんまりに売れないサービスだからやめた、ってだけな気もします(笑)。

ちなみに、他社のフェムトは。KDDIの方は、どうやら、2GHz帯のどこかをフェムト専用に確保してやってるようです。加えて、オプションサービスではなく、エリア申告時にKDDIが判断してレピータやマクロエリア調整ではどうしようもない時だけ使う、みたいな感じで徹底して既存エリアへの影響を除外しているようです。ソフトバンクは、とりあえずは数稼ぎで何万局もばらまいちゃったというのはご存じのとおり。もちろん屋外と共用の周波数なので、収拾は大変でしょうね。これがあるばっかりにLTEが始められない、なんていう情けない事態も起こりうるかも。少なくとも、ネットワークに対して良い影響を与えているとは思えません。

以上、マイエリア終了について。

その2。ついでに、ドコモのmova終了について。

mova、すなわちPDCサービスの最後の灯が、間もなく消えます。もし可能だったらmova端末一台もって停波の瞬間でも見たかったところですが、残念ながら随分前にデュアルネットワークは解約しちゃって。うーん、なんとなく残しておけばよかった。でも当時は本当に貧乏だったんだよなぁ(苦笑)。

今考えれば、PDCというのは、日本の事業者にとっては重荷にしかならないシステムでしたね。もちろん、日本の異常な人口分布やお粗末な周波数事情には非常に合致したシステムで、当時としてはある意味でその選択肢しかなかったのかもしれません。より粗密に強い方式(CDMA)と、周波数割り当ての大幅な整理など環境が整った結果、PDCはWCDMAなど後進に道を譲るしかないということになります。まぁそもそも、PDCネットワークを作れる会社が日本企業だけだし、数が出ないので装置価格も高騰必至なので、仮に延命しようとしても高コストに苦しむことになるでしょうね。

海外では、まだGSMがまったく問題なく現役だったりするわけですが、やっぱり装置もネットワークも安い、というのが大きいですね。互換性も非常に高く、端末もWCDMA対応であればまず間違いなくGSMも対応しているし、GSMだけの端末ならおもちゃくらいの原価で作れちゃったりするわけで、ローミング目的としてGSMはあまりに便利すぎます。今後、すべての国でWCDMAやLTEになりGSMが同じように消えるのか、と考えると、なんとなくそれはなさそうな気がします。途上国とかだと、一度GSMでエリアを作ったらそれこそ腐って朽ち落ちるまでそれを使い、一部の需要の多い地域だけを3GやLTEで、みたいな考え方が多いようです。GSMなら保守も安そうだし。

という話はともかく、これで、日本の第二世代はすべて終了となります。PHSや2.5世代を勘定に入れなければ。ある程度の国土と人口がある一国の中で第二世代が完全終了した例は、たぶんこれが初めてになるんじゃないでしょうか。というか、日本ほどめまぐるしくサービス終了と全端末巻き取り、みたいなことを繰り返している国も珍しいように感じます。アナログはともかく、デジタル化してからはあまりそういうことはほかの国では起こっていないイメージ。なんつーか、日本人の先見性の無さをすごく表している好例のような気がします(苦笑)。まぁ、新し物好き、っていう側面もあるんでしょうけど。

ってことで、もうすぐPDC終了です。長らく日本の通信を支えた技術に最後のお別れをしましょう。そういえば私の実家は最近になってもPDCレベルまでエリアが充実してないなぁ。まだ居間にいるとWCDMA圏外になることがあるんですけど。

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2012/3/30 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 1 comment
2012/3/29 10:00 · 技術動向 · 2 comments

先日のLTEの各社プランまとめを書いたところ、LTEがらみのご質問をいただいています。あまりボリュームがなさそうなのでまとめて。

Q.

LTEはやたらと消費電力が多い(バッテリ持ちが悪い)みたいですが、なぜでしょうか。

A.
しょっぱなからLTEマイグレーションとは関係ないですが、端末がみんなLTE化してしまうと気になってくるのがやっぱりバッテリー。どうも、ドコモのLTEスマホはバッテリ持ちが悪いと評判(?)のようです。

これにはいくつか理由があると思います。まず一番単純な理由は、新しい技術だから。WCDMAが出始めた時も、連続待ち受け50時間なんていうスペックの端末があったくらいで、とにかく新しい技術はこなれていないがためにデバイスの消費電力が高めになってしまうことが多いですね。これは、ベースバンドチップの作りがちょっとずつ改善していって徐々に落ち着いていくことになると思います。

もう一つは、ネットワークパラメータがまだこなれていないこと。OFDMAのセルラーという全く新しい仕組みなので、どんなリソース配置にし、どんな間欠受信間隔にすればバッテリ消費を抑えられるのか、という点のノウハウがまだまだ足りないと思われます。たとえばリソースのスケジューリングだけをとっても、バルクで同じスループットを出すにしても、狭いリソースを連続割り当てした方が良いのか、大きなリソースを断続割り当てした方が良いのか、どっちの方が端末のベースバンドやRFの負担が少ないのか、というのはこれから探っていくことになるでしょう。まだまだしばらくはこういう状態が続くはずです。

まだ今のところはドコモ的にはパフォーマンス優先の設定にしてあるっぽいので、もう少しLTE加入者が増えて、パフォーマンスを突き詰めてもしょうがない、くらいに落ち着いたら、もうちょっと消費電力の少ないパラメータやアルゴリズムに変わってくるのではないでしょうか。スマホのように時々起きてちょこっと通信、みたいなやつがいることも考えて、条件によりスリープタイムアウトを超短くする、みたいなカスタマイズもできるようになるでしょうし。バッテリ持ちが悪いのは、発展途上だから、ってことで、一つ。

Q.

KDDIのLTEはグローバルが期待できないと書いてありましたが、KDDIからLTE iPhoneが出ることは期待できないのでしょうか。

A.
現状では難しいと思います。もちろん、iPhone自体はマルチテクノロジ対応となっていくので、これまでと同じくKDDIからはCDMA2000ベースでリリースされることは間違いないとは思いますが、LTEとなると、KDDIの持つ田舎バンドに対応する可能性は低いと思います。

一つ、参考になる情報があって、それは、先日出たLTE iPad。LTEに関しては、対応するバンドを大きく絞り込んでいます。それは、LTEの周辺不要発射があまりに大きいため、安く済ませるには特性の鋭いフィルタをかけざるを得なかったからと思われるのですが、AT&T向けが700帯+2100帯、Verizon向けが700帯のみ、という形。しかも700帯はAT&TバンドとVerizonバンドはほぼ隣り合っているのですが、明確に対応バンドを分けています(AT&T向けはVerizonバンドでは動かない)。これは、両バンドを同時にカバーできる高性能フィルタがコスト的に採用できず、特性の鋭いフィルタをシフトして使っていることを示唆しています。

それぞれが1億加入を持つ米国がこうですから、日本ローカルのKDDIバンドとなると、対応さえしないでしょう。ドコモと隣り合っていますが、上と同じ理由でドコモとKDDIの両対応は難しく、850対応フィルタをドコモ用シフト、KDDI用シフト、と使い分けた専用ハードウェア、ということになってしまいます。さすがにせいぜい3000万加入のキャリア向けに専用ハードを用意する、ということはありえなさそうな気がします。さらに言うと、日本の850帯は世界で最も性能規定が厳しいため、世界中の端末屋さんから嫌がられています。同一ハードのグローバル展開で低コスト、という戦略のAppleが、この超コスト高バンドに対応する可能性はかなり低いはずです。

ってことで、国内でLTE iPhoneをゲットするなら、今のところグローバルバンドをLTEに使っているドコモが第一候補、という感じになりそうな気がします。

ところで、この話をするとちょっと詳しい人は「Band26~」と思われるかもしれませんが、私の知る限り、あの新バンドに関しては、「あー、あの使い物にならないゴミバンドね」という反応しか聞いたことがありません(笑)。低周波数帯で幅35MHzで上下ギャップが10MHzしかないとか、何の冗談かと(笑)。

Q.

国際の2.5/2.6Gのうち日本では2.5Gを使っているみたいですが、2.6GHz帯の残りとかって日本では割り当てどうなるんでしょう。

A.
今のところ衛星通信に使っているようなのですが、2630~2655を使っているモバHOがサービスを終了したので、そのうち空くかもしれません。と言っても、同じ帯域・同じ衛星で韓国事業者がまだ使っているということもあって、まずは韓国での使用が終わらない限りは全く身動きができません。またそれが終わって空いたとしても、15MHzという半端な帯域なので、そのすぐ上の別の衛星通信帯域が空くまでは使いにくいかもしれませんが。

ここに関しては、WiMAXで使っている2595~2625に対して5MHzのガードバンドを挟んで隣接しているわけですから、ここを活用するとするなら、そこを全部きれいに均して、2595~2645までの50MHzの大きなバンドにして再活用する、という感じでしょうか。TDDの隣接を違う事業者同士でやるのはあまり現実的ではないので、UQにこの50MHzを全部任せるのが一番効率がよさそうです。たとえば、追加の20MHz分はTD-LTEじゃなきゃダメ、ってことにして、WiMAXの上下プロファイルとうまく合致するTD-LTEプロファイルで同期運用させ、ゆくゆくは全帯域をTD-LTE化させることを条件に、みたいな形が再利用の道筋としてはよさそうな気がします。

って感じで、また質問があったらこんな感じでやりますのでよろしく。

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2012/3/29 10:00 · 技術動向 · 2 comments